徹底監視!教育基本法「改正」法案審議


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月日 会議名 発言者など 監視員名 監視コメント
11月10日
衆議院教特法特別委員会
11月9日
衆議院教特法特別委員会

参考人意見陳述
教育再生会議座長代理・資生堂相談役 池田守男
品川区教育長 若月秀夫
法政大学教授 尾木直樹
ICU教授 藤田英典

質問
町村信孝(自民)
西 博義(公明)
高井美穂(民主)
塩川鉄也(共産)
阿部知子(社民)
糸川正晃(国民)
9日は午前9時より参考人質問がおこなわれ、池田守男(教育再生会議座長代理、株式会社資生堂相談役)、若月秀夫(品川区教育委員会教育長)、尾木直樹(教育評論家、法政大学教授)、藤田英典(国際基督教大学教授)の4氏からの意見陳述と質疑が行われた。池田、若月両参考人からは政府案に対して賛成の立場から、尾木、藤田両参考人は反対の立場からの意見陳述であった。改正賛成の2名とも現行法を評価するのであるが、その上で、改正案との連続性を述べる。しかし、現行法と改正案との間には、法原理的には大きな転換があって順接的に結びつけることはできない。

池田参考人:教育基本法が戦後大きな役割を果たしてきたという積極的な評価をするが、時代が変化し、さらに日本人の精神性が失われてきている。心豊かに生きるためには大きな改革が必要である。教育改革、再生が喫緊の課題。教基法改正は当然であり必要である。社会状況に照らし、重視すべきことは「公共の精神」である。多くの人々の中で、自然の中で生かされている。このことが公共の精神につながる。「公共の精神」が出発点。政府案はこれを高く称揚していることには意義がある。伝統と文化の尊重は国際社会の中で意義がある。郷里、祖国を愛することは人間として当然のこと。家庭教育、地域社会等との連携が盛り込まれていることは評価できる。その欠如が現在の問題の原因の一つとなっている。

若月参考人:政府案を支持する立場で意見を述べる。これまでの基本法で培われたものを継続している。その上で現在の課題を視野に納めており、時代に合っている。とくに第2条で目標を定めており、現場からみると大事なことを指摘してもらった。戦後教育の中で、児童生徒中心主義が現場教師の自信を失わせることが多々ある。子どもの主体性を重視することによって現場で誤った実践が行われた。

尾木参考人:「態度」を評価することについて、教育に評価を入れることは必ずしも否定すべきではないが、問題は、評価が自己目的化すること、評価するものが評価されていないという実態があることなどにある。競争は全体のボトムアップのために行われるべきであって、順位を付けるため、あるいは数値それ自体が目的化することは問題である。振興計画で行われる目標設定にはこの問題が含まれている。学力テストも、成績の悪い子どもを参加させない、不登校の子どもには連絡すらしないなどといったことが起こっている。いじめについて、子どもの権利委員会の政府に対する2度にわたる勧告を紹介しつつ、「競争」によってこの異常さがますます強化されると指摘した。

藤田参考人:数値目標を定めた競争をやめたフィンランドの例を挙げながら、目標設定の問題を指摘。

質疑で印象的だったのは、町村委員(前文科相)は、やはり「戦後60年間教育基本法のもとで教育を行ってきたが、その結果、今日のような状況になっている。だから教基法を変えなければならない」そのことをとくに藤田参考人に対して「ご理解いただきたい」とまで述べていた。教基法のもとで、教基法に従ってどんな教育が行われてきたのかの実証がなく、あいかわらずの主張であった。また、そろそろ「80時間も審議し、繰り返しの質問も多くある」「出口を考えないといけない」との発言も聞かれた。

町村委員は、若月教育長に対して、自分が大臣の時に品川区で学校選択制を導入してくれたことに敬意を表していたが、意見陳述に見られる「子ども」観、子どもの権利条約に対する無理解と言うよりも敵意を持っていることも丸ごと評価しているようにも思える。
11月8日
衆院文部科学委員会
馳浩(自民)
遠藤乙彦(公明)
笠浩史(民主党)
11月8日の文部科学委員会はいじめ問題、高校未履修問題についての集中審議。

伊吹文科相は、センター試験を高校卒業資格認定試験に性格を変えること、国の地方教育行政への関与を強めることを明言。その一方で高校未履修問題では学校現場は厳しく処分する一方で、文科省の役人が県教委に多数出向していたこともあり教委の責任問題は当面、追求しないと答弁。

*馳 浩(自民党)
最初はいじめの「定義」を見直せと質問。伊吹文科相は行政を行う上では「定義」をつくる必要がある。見直してもまた問題が出てくるだろうと答弁。「自殺予告」の手紙について、伊吹文科相は、「使われている文句や、教育行政についてよく知っていることから、いろいろな可能性がある」と大人が偽装したかもしれないという趣旨の発言をした後で、教育委員会などの行政に「隠すな」といっているので公表したと答弁。いじめは社会現象、自民党の中にもあるなどとも発言。文科相が問題を深刻に受け止めているかどうか疑問に思った。

馳委員は、教員経験から、「どの学校にもあの先生には任せられないという教員がいる。問題を抱えている子どもは一生懸命指導する先生のクラスに入れる」、教職員の評価にあたっては数字だけではなく、子どもとコミュニケーションをとってがんばっている人を評価してほしいと発言。ただし、教員評価そのものの是非にはふれていない。数値以外でどのように評価するのかを深めた議論はなし。

高校での未履修問題に関して、学習指導要領の法的拘束力とは何なのか、守らなくても罰則はないのかと質問。伊吹文科相は、学校教育法、政令(ママ)、それに基づく告示で指導要領は定めている。しかし学校教育法にはその法の性格からして罰則を設けることは難しい、指導要領を守らなかった場合のペナルティーは人事権、管理権で行う、しかし私には(地方の教員への)人事権、管理権はない、いずれ教育委員会と話し合うと答弁。しかし当面は今の混乱している問題の解決が先決と述べる。また、入試にあわせて指導要領を変えるという意見があるが、私はとらないと明言。センター試験では、必須科目で一定の点数があるか確認すべき、センター試験のあり方も変えなければならない、高校での習熟度のチェックが必要、高校長の認定には任せていくわけにはいかない、官僚に検討するよう指示したと答弁。これはセンター試験を高校卒業資格認定試験に変えようとするもの。重大な制度変更で高校教育全体に関わる問題である。

馳委員は私学を管轄する知事部局は私学助成で手がいっぱいで、私学の管理が出来ない、府県教育委員会が私学を所管するように要望。伊吹文科相は、私学行政のあり方は問題である、だから教基法改正案に私学の条文を設けたのだと答弁。今回、私学が行ったことは法律違反。しかし私学の人事権は私にはないと答弁。

・・・伊吹文科相はしきりに「私には権限がない」と発言している。地方で生じた「不祥事」を口実に国・文科省の権限を強めようとする意図が明確に見て取れた。

*遠藤乙彦(公明党)
遠藤委員は、いじめ防止対策の法的基礎について詳しく質問。スウェーデンのいじめ対策を例にだし、「いじめ対策防止基本法」の成立を求める。例によって、法律・制度を作ることによって公明党の業績にしようとする考えか。公明党は教基法改正が教育問題の解決につながると主張しているようだが、今日の質問では教基法改正案との関連での発言はない。教基法を政府案のように改正してもなんら問題解決に結びつかないことを暴露した。

遠藤委員は、いじめ問題に関してはスウェーデンの例を紹介することが中心で一夜漬けの学習をしての質問かと感じた。

高校未履修問題では、責任の所在、処分はと質問。伊吹文科相は、未履修問題での通知の時に、「私信」として、教職員をきちんと指導してほしいと書いた、軽微な処分でお茶を濁さないようにということを伝えてあると紹介。それへの反応を確かめたいと答弁。

*笠 浩史(民主党)

青森でのタウンミーティングでのやらせ質問について質問。責任は文科省にある、処分はと質問。伊吹文科相は、やらせがあってはいけないが今回の事例は特別なものだという趣旨の発言。 

いじめによる自殺の発生件数で、文科省の調査と警察庁の調査とでは大きな違いがあることを追求。つづいて、高校未履修問題で、文科省の役人が「報道されたから全国調査をした」と発言したと紹介し、文科省の体質改善が必要なこと、文科省も規範意識が低下していることを問題にし、さらに形骸化した教育委員会は廃止をと主張。

伊吹文科相は、県教委に権限があっても問題が生じている、知事部局に与えて良くなるのか、どのような権限を与えるかが問題。携わるものの規範意識がないとだめだ。県教委と、市町村教委、国の関係は今のままではいけない、もう少し国の関与を強くすると発言。地方分権法のあり方がよかったか疑問に思うとも発言。

未履修問題を利用して、国の権限を強くすること、地方分権を見直すことまで答弁。

笠委員は、未履修をわかっていた教委の数を質問。伊吹文科相は、現場は混乱している、これが終わらないと調査にも取りかかれないと答弁。

・・・伊吹文科相は未履修問題については府県教委(さらにはそこに出向していた文科省の出身者の責任)の詳細な調査を行うことを拒否。
11月6日(午後)(2)
衆議院教特法特別委員会
西村委員は、政府案第4条、第9条、第10条、第16条の各条文について、それぞれ意味内容を質問した。

【第4条】
○西村委員 第2項で障害のある者を特別に抜き出しているのはなぜか。「能力に応ずる能力」と「能力に応じた教育」ではニュアンスが違うのではないか。
○田中政府参考人 第1項では障碍の有無による差別も許されないと介している。第2項は地方公共団体が積極的な支援を講ずるべき旨を規定している。
「能力に応じた教育」としたのは近年の立法例にならったためであり、現行法の規定と意味は同じである。その教育を受けるに必要な能力を有しているという意味である。
○西村委員 「その障害に応じ」とはどういう意味か。この文言をとって、単に「障害のある者が十分な教育を受けられるよう」でもよいのではないか。
○田中政府参考人 障碍の状況に応じて特別な支援が必要であるかどうかは異なる。それぞれきめ細かな配慮をするという意味で、この言葉を使った。

【第9条】
○西村委員 現行法第6条の「全体の奉仕者であって」というフレーズを私は愛している。憲法にも「全体の奉仕者としての公務員」という規定がある。政府案第9条では削除されている。憲法との関係はどうなっているのか。私学の教員にも適用されるのか。
○田中政府参考人 教員の規定には公務員を想起させる文言は削除しているが、学校教員の職務は変わるものではない。
○西村委員 第2項の「養成」と「研修」は今回新たに加わった。教特法で決められているものをなぜわざわざ追加したのか。
○田中政府参考人 教特法は公立学校の教育にのみ適用している。私立学校の教員にも適用できるようにした。
○西村委員 現行法で何が達成されてきたかがきちんと検証されないままに、いろいろなものが盛り込まれようとしている。「崇高な」は何を意味するのか。
○田中政府参考人 教員に対する国民の期待をふまえて規定した。
○西村委員 現行法の第6条には社会の要請が反映されていないということか。
○田中政府参考人 強調させてもらった。
○西村委員 いわゆる修飾語であるというという答弁か。修飾語でいくらきれいなことを言っても、それが達成に向かっていく環境を整えていかなければ意味がない。多くの教員は自己の崇高な使命を自覚していると思う。だから早くから来て授業の準備をし、子どもの対応に走り回っている。政府案の第9条はそういう教員の皆さんにとって大変厳しいものになるのではないかと懸念している。いま燃え尽きそうになっている方々に対してどういう影響を与えることになるのか。
○田中政府参考人 多忙観や疾病を持っている教員には対応しなければならない。それと同時に、思いが伝わらない教員にも研修の機会が与えられなければならない。
○伊吹文科大臣 教員にもいろいろある。全員が「崇高な使命」を自覚しているなら、なぜ9万人近くの未履修の生徒を排出させるのか。立派な先生が書いてもらった下で仕事をしているという誇りがいっそう大きくなると思う。過労になるならそこは考えないといけない。憲法に崇高なことが書いてあるからと言って、そのようにしている日本人が少ないからいまのようなことが起こるのではないか。
○西村委員 過労にならない条件を整えるのは国の重要な責務である。いまの答弁は大変驚いた。

【第10条】
○西村委員 現行法第7条の「その他社会において行われる教育は国、地方公共団体その他によって奨励されなければならない」とは何がどう異なるのか。
○田中政府参考人 少子化により家庭教育の重要性が言われる中、独立した条項とした。
奨励するだけでなく、家庭教育を支援するために積極的な施策を講ずることにした。
○西村委員 現行法ではなぜいけないのか。「第一義的責任を有する」の意味するところは何か。
○田中政府参考人 家庭は教育の原点であって、マナー、倫理観、自立的精神を養うなどすべての教育の出発点である。
○西村委員 子どもの権利条約にも規定がある。第5条には、国が親の指導する権利を大切にしなければならないと書かれている。
それでは、「家庭教育の自主性を尊重しつつ」とはどの範囲までカバーするのか。親の教育する権利を保障することの意味は、宗教観や世界観にかかわる価値のほか、学校教育にも参加していけることを含まなければならないと考えるがどうか。
○田中政府参考人 国や地方公共団体は支援事業をしなければならないことを定めている。家庭教育の内容を定めたものではない。
○西村委員 第1項、かりに少年非行やニートが発生したときに、親の責任に帰することになるのか。
○田中政府参考人 家庭の責務でもある。
○西村委員 親の第一義的責任の履行を可能にするような経済的その他の援助義務があることを国の責務だと規定すべきではないか。
○伊吹文科大臣 施策の範囲がどこまでかは教育基本法に書くことではない。施策として予算措置としてどこまでやるか、たとえば労働基準法などをどうするか、成立後に文科大臣としてつとめることがらである。
○西村委員 親の第一義的責任が規定されているから聞いている。

【第16条】
○西村委員 第16条第1項、「他の法律」とはどの法律を指すのか。かりに強行採決などによって成立した法律であってもその「法律の定めるところにより」教育を行うことになるのか。
○田中政府参考人 「他の法律」とは、学校教育法、私立学校法、文科省設置法、社会教育法、図書館法、生涯学習振興整備法などがある。
○伊吹文科大臣 強行採決とは何か定義しなければならない。国会は国会法、議事規則、慣例により動いている。
○西村委員 定義して再質問したい。

※法案の逐条審議は委員会が本来行うべき審議内容であり、質問時間をフルに用いてこのような質問を行った西村委員の姿勢は評価できる。

一連の質疑を通じて、政府案第4条における「能力に応じて」という文言は現行法の「能力に応じる」と何ら意味が変わらないこと、現行法第6条の「全体の奉仕者」という文言が削除されたことは、私立学校の教員にも「養成」と「研修」を課すことを意図したものであること、など重要な政府見解を引き出した。

政府案は、教員、学習者、家庭にさまざまな責務を課す一方、それを実現することができるような条件整備についての条項は教育基本法には一切盛り込まず、すべて他の法律により規定するという「立法政策上の判断」を行うという答弁に終始した。政府案が成立しても何ら教育現実が改善される保証はなく、政府にはさじ加減を行う権限だけが与えられるという法案の問題は明確である。

第9条に関する質疑中、伊吹文科大臣が「憲法に崇高なことが書いてあるからと言って、そのようにしている日本人が少ないからいまのようなことが起こるのではないか」と発言したことは、憲法は国民の側から公権力に縛りをかけるものであるという立憲主義のイロハをわきまえない問題発言である。

与党が、議会における多数をたのみに十分な審議をせずとも成立させた法律であっても「法律の定めるところ」であれば「不当な支配」にあたらないのか。西村委員が強行採決の定義をした上で再質問したいと述べたことに期待したい。
11月6日(午後)(1)
衆議院教特法特別委員会

野田佳彦(民主)
武正公一(民主)
西村智奈美(民主)
石井郁子(共産)
重野正安(社民)
(教育基本法「改正」情報センター)

改正法案に関して野田委員が提示した論点は二つ

一つ目は、子どものいじめ自殺や「未履修」問題など教育における重大な問題の実態把握や原因の分析を経てからでなければ、それらについての処方の根本方針となる教育基本法改正論議はできないのではないか、という点。

これに対して、伊吹文科大臣は、いま起こっていることはある程度制度にかかっていることだが、多くはその任に当たる人の規範意識にかかっている。教育基本法が通れば、別途法律によってやる問題である、と答弁した。

野田委員の示した論点のもう一つは、11月1日の土井委員の質問中、「憲法が定まってから教育基本法ができた」と発言したことに対して、伊吹文科大臣が施行日を基準にして「逆だ」と答えたことの撤回を求めたいというもの。

これに対して、伊吹委員は、法理論としては法律の施行により国民との関係において権利義務が発生するのだから、施行日を基準に「生まれた日」を論じることはおかしくないという自説に固執した。その理由は、野党委員から、憲法ができていないのに教育基本法の審議をするのはおかしいという質問が次々出てくるからだ、ということが野田委員との意見の応酬の中で明らかにされた。

武正委員の質問には改正法案に関するものは含まれていなかった。
武正委員は、全国のいじめによる自殺件数がゼロという報告が上がってきていることについて、これがおかしいと思うのであれば、地方自治法第245条の4第1項を行使して地方自治体に勧告・助言すべきだとの意見を述べた。この質問のねらいは、教育委員会の任意設置につながるような答弁を文科大臣から引き出すだはないかと思われた。これに対して、伊吹文科大臣は同規定による勧告が発動された例は一度もなく、運用はきわめて慎重でなければならないと述べた。

武正委員はまた、スクールカウンセラーやキャリアコンサルタントの養成・配置に関する施策についての質問をしながら、民主党案やかつて提案したガイダンス・カウンセラー法案の優位性をアピールした。

※民主党委員は質問時間が十分あるのだから、改正法案の意味内容についてもっと質問してもらいたい(少なくとも質問時間の半分以上)。

石井議員は、「未履修」問題について、島根県を例に、教育委員会だけでなく政府の責任を追及した。分校を入れて公立高校43校中19校が「必修逃れ」をしている島根県では、県教委高校教育課長のポストが文科省の出向ポストとして固定している。文科省も事態を黙認してきたのではないか。

これに対して、伊吹文科大臣は、「私は騙されていたふりをしたのかも知れないと述べた。県によって事情が違う。文科省から行った人間は現場の経験がないから学校で何が起きているのかわからない。だが、把握していたのかもわかりません。率直に言って。しかし、把握していなかったかもしれない。それは県によってさまざまだと思う」と述べ、「未履修」問題で文部省が教育委員会とグルだった可能性があることを示唆した。このことについて、石井委員は、特別委員会に事実関係の報告を求めた。

石井委員はまた、山谷首相補佐官がブレア政権同様の子育て法の必要を説いていること、下村補佐官が「母親は働かずに子育てを」と発言したことなど、いずれも問題だとした。また、文科省「教育基本法改正推進本部幹事会」が教育基本法改正案の成立後のスケジュールを立てていることについて質問したが、伊吹文科大臣は文書の出所が不明だと言い逃れて答弁を拒否した。

重野委員は、文科省のバウチャー制度導入に関する研究会の結論はいつ出るのか質問した。伊吹文科大臣は導入には法改正が必要であり、来年3月までに決着がつくとは全く考えていない、と答えた。重野委員はまた、バウチャー制度は再生会議でも検討課題とされているが、内閣府と文科省の結論が違ったらどうするのかと尋ねた。塩崎官房長官は、かりにバウチャーについて違った提言が出ても、文科省において検討してもらう、と述べた。

このほか、重野委員は学校統廃合により平成17年度だけでも小中合わせて385校、在籍していた子ども22541人が影響を受けたことを挙げ、影響が非常に大きいこと、統廃合による通学距離の伸びについても、バスや車で1時間かけて通う例があるなど過大であると指摘した。これに対して伊吹文科大臣は、通学時間は短い方がよいが、小規模校の設置にどこまで税金を支出すべきか、受任の範囲はどこまでかということを考量しながら決めるべきだと答えた。
11月6日(午前)
衆議院教特法特別委員会

質問者
井脇ノブ子(自民)
坂口 力(公明)
古本伸一郎(民主)

答弁者
笠浩 史(民主)
藤村 修(民主)
伊吹文明(文部科学大臣)
高市早苗( 少子化・男女共同参画担当大臣)
(教育基本法「改正」情報センター)

【井脇ノブ子(自由民主党)−いつもピンクのブレザーで質問者の後ろに写っている人−質疑】

1.民主党案批判に終始。時間の浪費の感。

2.政府案第6条には、「法律に定める学校は、公の性質を有するものであって、国、地方公共団体及び法律に定める法人のみが、これを設置することができる。」とあるのに対し民主党案には学校設置主体の規定がないことを批判。民主党提案者は、民主党案第9条にあるように「多様な教育の機会の確保及び整備」=「多様な選択肢」「健全なを競争原理」の実現を目指し学校設置主体の限定規定を設けていないとした。

3.民主党案は外国籍の子どもも「学ぶ権利」の主体としながら(第2〜4条)、「教育を受けさせる義務」は「国民」にしか課していない(7条1項)、どういうことか?

4.民主党案17条2項は、「すべての児童及び生徒は、文化的素養を醸成し、他者との対話、交流及び協働を促進する基礎となる国語力を身につけるための適切かつ最善な教育の機会を得られるよう奨励されるものとする」としているが、「奨励」で良いのか?「国語力」は「徹底」されるべきではないか?

5.民主党は、「憲法を改正してから教育基本法を改正すべき」というが、自ら教育基本法改正案を提案しており、主張に矛盾がある。

6.教員免許更新制は10年ではなく、3年一括りで6年とすべき。

【坂口力(公明党)質疑】

1.これまた、「●●時間審議しました!」という“消化試合”的な質疑。19分の質疑時間であったにも拘わらず、最後は、高市早苗・少子化・男女共同参画担当大臣に、「何か一言、何でも結構ですから」と“質問(?)”する始末。

2.ただ、「戦後教育の果たした役割には、評価すべき点もある。足らざるを足すために基本法改正が必要なのだ」という点に、与党・公明党の独自色を出そうとした感じであった。

【古本伸一郎(民主党・無所属クラブ)質疑】

1.質疑内容:「いじめ」→「道徳」「規範意識」を「学習指導要領」「指導要録」に入れ→評価・卒業時にチェックすべきという主張のようでした。4.の伊吹文明・文部科学大臣答弁も、政府案の「根底にあるもの」(安倍内閣の極右的性格)を露見させたものと思いました。

2.「いじめ」の文言を「学習指導要領」「指導要録」(「道徳」ないし「行動の記録」欄の評価)に入れ、評価も含め、卒業も含め、チェックすべきではないか?

⇒伊吹文明・文部科学大臣:我が意を得たりと、「よくぞ聞いて下さいました」、「阿部首相が所信表明で述べた『全ての子どもに基礎学力と“規範意識”を持たせる』ためには、“基準”と“検証”が必要なのだ!」、それを国に持たせるべきか、首長に持たせるべきかになるが、イズムを持つ首長に持たせるのに反対だ。

3.教育行組織の在り方(民主案:国の責任+首長(←監査委員会的なもの)+学校理事会⇔与党案)をめぐり議論。

4.古本伸一郎(民主党・無所属クラブ)は、「年長者を敬う」「教師を敬う」など「道徳」を観点とした学習指導要領および指導要録の見直しを主張。

⇒伊吹文明・文部科学大臣:「規範意識」「道徳」には、@一人一人の人生観・価値観で異なるもの、A各国共通のもの(現行・教育基本法で書かれている)、B改正案に色濃く書かれている日本独自のもの(「ビンテージのような文化の結晶」)がある。法案が通ったら、Bを盛り込むよう学習指導要領を書き直さなければならない。

5.委員長に「中央公聴会」開催を要求し、「理事会で検討」とされました。
11月2日
衆議院教基法特別委員会

松本剛明(民主)
岩國哲人(民主)
(教育基本法「改正」情報センター)

11月2日(木)の教育基本法特別委員会は、10時から12時10分まで開かれた。質問者は、松本剛明(民主)および岩國哲人(民主)の2名。

かなりの時間を「履修漏れ」の問題に費やした。「50時間」の根拠は70時間のおよそ3分の2で、通常病気などで欠席したとしてもこれくらい出席していれば単位認定される、ということと説明されたが、「50時間の3分の2でいいことになるのか?」との質問には、70時間が基本であって校長の裁量で判断されるべきもの、と明確な回答は避けていた。

現行教育基本法と憲法との制定順序については、松本委員の質問に答えて、伊吹文科相は、憲法より教育基本法が先に作られたとの認識をあらためて繰り返し、国民に向かっては施行されて初めて効力を持つからと説明をしていた。質問の趣旨は、現行法と現行教基法との関係ではなく、改正案と現行憲法、改正案と「新憲法」との関係であるから、全く回答になっていない。それどころか、「憲法も教育基本法も占領下で作られた」と押しつけ論まで飛び出し、その下で教基法がつくられたのであるから、「明治憲法と教基法との関係」が改正案と新憲法の関係でも成り立つという論理で説明された。しかし、制定過程を見ていけば、この論理が成り立たないのは明らかであり、明治憲法と教基法との間に法的整合性があったのか否かから出発するのであるならばともかく、現行憲法との関係ではなく、新憲法との関係を問うこの立憲主義の無理解がより一層明確になったと言って良い。

岩國委員は、地方分権型民主党案とはややスタンスを異にし、直ちに教育を地方に、ということには、とくに地域格差、財政問題を前提にすると賛成できないとの立場であった。民主党案についての党内での綻びが現れた形となった。また民主党案について「日本」を「にほん」と呼ぶのか「にっぽん」と呼ぶのかについて後者であるとの回答が議案提案者からあった。

最後に、6日に審議を行うこと、8日に地方公聴会(宮城、栃木、三重、愛知)を行うため委員を派遣すること等について承認された。

現在進行形の諸問題をこの委員会で取り上げ、その結果、それに時間が費やされ、審議が伸びればいいのだが、逆に、法案についての具体的、逐条的審議の回避になっていくのではないかと懸念される。
11月1日(午後
衆議院教基法特別委員会

福田昭夫(民主)
土肥隆一(民主)
末松隆一(民主)
糸川正晃(国民)
菅野哲雄(社民)
石井郁子(共産)
(教育基本法「改正」情報センター)O・M

T審議の主な論点
1、教基法改正の必要性について
2、憲法改正があれば教基法改正もあるのか?について
3、宗教教育について
4、教育の最終的な決定権の所在について
5、「能力に応じて」を「能力に応じた」に改正する理由について
6、タウンミーティングの世論誘導を内閣府がやった疑惑について
7、学力テストと学校選択制とが結びついた場合想定される事態について(足立区を例に)

U審議の中で結論的に主張された点

1、「家庭教育」や「社会教育」条項の必要性について。いじめ問題に関わらせながら、その「早期発見」のため学校の役割が期待されている、そのために改正案に「家庭教育」や「社会教育」条項を入れたとの説明が伊吹文科相からなされた。

2、自民党と民主党には理念を同じくすることが多いとの発言が、今日も伊吹から聞かれた。

3、「将来憲法改正があれば教基法も改正されるのか?」との疑問に対して、伊吹から「改正された憲法と今回提案している理念法としての教基法の内容がたがうことがあれば当然変えなくてはならない。ただ、(両者が)たがうことは多分ないと私は思う。」との発言があった。

4、宗教と教育について、伊吹から、文化的行事や客観的事実の伝授は問題ないが、信者を増やそうとする行為・自己の信仰を信じさせようという行為は問題であるとの見解が示された。

5、教育の最終的責任の所在について、伊吹から「日本国にある、だから国と地方で適切な役割分担をすると法案で書いている」との見解が示された。

6、現行法3条「能力に応じて」が改正案4条で「能力に応じた」になっている点について、文部官僚から両者の意味はいっしょであること、伊吹からは「責任者である私が教育の機会均等と差別を記述したものではないということを明言いたします」との発言があった。

7、タウンミーティングでの参加者意見について、内閣府が質問要項を作成して関係者に事前配布していた問題について。その文書の作成を、内閣府官僚が認めた。またこの案件の調査を実施することを、塩崎内閣官房長官は明言した。

8、学力テストと学校選択制とが結びついた場合想定される事態について、教育の機会均等に重大な影響を及ぼしかねないことを伊吹は認めた。

U各論者ごとの議論の主旨

■福田昭夫(民主党・無所属クラブ)
<教育改革が必要なわけ>
伊吹文科相:経済成長をもたらした効果がある。ただし社会が大きく変化した。なによりも冷戦がなくなり、富が飛躍的に増え、家族でしてきたことがお金を出せば、税を出せばできるようになっていること。価値観の多様化で家族のあり方が代わってきたこと、世界の中で日本が果たす役割が、日本人としてのアイデンティティを持ってしっかりと行動しなければならないほど日本は大きい国となり、欠くべからざるほど大きくなったこと。これを踏まえると今までの教基法では、やや閉塞感がある。民主党も同じ現状認識で対案を出したのではないか。

塩崎官房長官:安倍首相の教育改革の必要性認識は、伊吹大臣と認識は変わらない。日本社会でうまくいってない状況を踏まえ、「美しい国」を構成する日本人をつくるため、教育を重視し、狭い意味での教育を超えた問題を審議するため教育再生会議をつくった、と安倍首相は考えていると思う。

<教育の諸問題に対応するため、教基法改正の必要はあるのか?>
伊吹:教基法を必ずしも変えなくてはならないわけではない。現行法でも規範意識を持ってしっかり行動すればいい。ただ、総理も私も、現行教基法を変えて、基本適法性を変えて(家庭教育・社会教育を入れ、規範意識を確認ていくことを入れて)、国会で認めて行く必要。教基法を変えていかないと統一的に政策運営がしづらいと思う。

福田:ではなぜ教育再生会議を設置したのか?

塩崎:これは教基法改正を念頭に入れながら、教育について知恵を出していただいて、教基法の理念をもとに具体的な政策提言・総理へのアドバイスをしてもらう会議である

<教基法を見直す理由は?>
塩崎:国際社会の中で日本の役割が変わってきている(防衛「省」構想など)。社会の規範力の低下もある。そのために教基法改正が必要である。

福田:文科省は「教育改革」のために教育振興基本計画を策定することに主軸があったのでは? 教基法改正は傍論であったのでは? 文科省調査によると、教基法を知っている人は少ないし、教基法改正の状況ををよく知っている人も少ない。教基法の改正は慎重に、という世論がある(これは近年増えている)。PR不足があるのではないか? 市川昭午によって教基法見直し論は(1)押し付け論、(2)法定不備・規定不備論、(3)規範欠落論(教育勅語にあった道徳)、(4)時代対応論、(5)憲法改正を前提にした歴史的見直し論の五つある。文科省の改正理由はなにか?

伊吹:国会議員が国会法を、憲法を逐一知らないように、教育法が逐一知られていないのはある意味当然。教基法について世論がいきわたってないというのは仕方ないし、そういう人に教基法を変えたらいいかどうかと質問するのは、知らない以上、このような質問はどうかと思う。私は「現状対応論」。これからの子どもとこの国とのための教基法をつくりたい。

<教育の本質とは?>
伊吹:教育とは人間にさまざま働きかけをして、能力(知的・品性と言うか、正確的なものを)社会的に高めることである

塩崎:(安倍の教育観は?に応えて)安倍に聞くのがいちばんである。子ども達のいい点を引き出して大きくして社会に羽ばたいてもらうというのが教育の原点になると私は考えている。

福田:わたしは、教育の本質は自己教育=セルフ・エデュケーション。その能力をつけさせるための教育再生が必要ではと考えている。そういった意味での教育再生が必要では。

<国づくりについて>
福田:地方分権・自己責任・自己決定が求められる社会ではどういった教育が求められるのか?

塩崎:安倍は「規律・規範力」と総裁選の公約でいっていた。これに基づいた社会での責任を果たせる人を育てるのが大切ではないか。

<自己責任型の国つくりと個人像について>
福田:市場・社会制度が自己責任型に代わっている(社会福祉ででも)。こういう意味が地方分権に込められた場合、これに堪えられる個人をつくらなきゃならない。かつ相互扶助型の個人をつくらなくてはならない、さもないと国が持たないと思うが、どうか?

福田:(二宮尊徳を引きながら)自立と協力は不易・真理の価値観だ。文科省も参考にしてほしい。

伊吹:これには賛成。ただし、「もたれあい」になってはいけない。そのための自助努力・自己責任、その上でお互い支えあっていく共生なのだ。この感覚が衰えていっているのが日本社会の最大の問題では?

<「ゆとり」教育について>
福田:これは大失敗だったのではないか? 授業時間を減らしたため、現場ではゆとりがなくなった(学校行事等にしわ寄せが行っている)。これを認めて教育再生の対策が必要なのではないか?

伊吹:必ずしもそうはいえない。現場で「ゆとり」でどういうことが行なわれているのか。ゆとり教育の「やり方」を考えていかなくてはならない。

福田:総時間数削減については?

伊吹:最低限の基礎学力と規範意識が身についてなければ意味がない。来年「全国統一学テ」で「ゆとり」教育がどういうことになっているのか評定するので、それを見て考えるべき。

福田:夏休み等の長期休暇を減らせば、授業日数の問題が打開できるのでは? こういったことをできるようにするためには学校の主体性を保障すべき。学力は塾にいっている子が多いので落ちてないと思う。基礎学力の確保対策は?

伊吹:グローバル化した中での読み書き能力や規範力がそれになると思う。

福田:市民としての力=社会の基礎知識、科学の基礎記式を教えるような教科書をつくるべきだ

<いじめ対策と心の教育→「改正」案の「家庭教育」・「社会教育」条項の必要性>
福田:今後どうやっていくのか?

伊吹:実社会でも政界でもいじめはある(議場、少々笑)。いじめをできるだけ早く見つける必要がある。家族(父母や祖父母)が話しやすい関係ではなくなり、地域社会で子どもをくるむ意味で十分ではないため、学校にこの責任が掛かっている。いじめの兆候を見つけることに尽きると思う。家庭教育・社会教育が改正案に設けられているのは、この趣旨だ。

<「教員の質の向上」について>
福田:現在の教員の質の向上はさることながら、幼児教育や義務教育教員の養成は専門教育が求められると思う。

伊吹:総論は賛成。民主党は(教育問題について)いろんな意見があるようだから、党内調整をして、一緒に提案していこうではないか。

<幼保育一元化・幼児教育の無償化いついて>
福田:幼稚園も保育園も管轄庁の文科相への一本化が必要では?(認定子ども園ではそのばしのぎでは?)

<まとめに>
教育改革は、教基法を変えなきゃならないのか? 拙速に教基法を決めるのはよくないのでは?


■土肥隆一(民主党・無所属クラブ)

<勉強をする意味「なぜ人を殺してはいけないのか」の意味は?>
土肥:勉強をする意味を子どもが喪失している。「なぜ人を殺してはいけないのか」についても抽象的。「ポストモダン」の認識状況がありながら、一義的なことがいえない状況がいま社会にある。生活実態・子ども達の生活意識も子どもに密着した理解=子どものことを考えなくては通じない社会になったったのが、私のポストモダン理論である。またポストモダンは「コピー」が増え、なにが本物かを問わない社会で、権力の構造が変わった社会である。これは統制が意味をなさず、人間の内面を必要としない社会で、強制的に人間を管理すべきという利便性のみを追求する社会になる。多様な生を保証するする社会
この状況を踏まえると、教員免許更新性や教員の専門教育をするなど、普通のやり方では教育の状況は再生しないだろう。多様な生の保証はなく、動物化した支配が現在行なわれている。このような状況を踏まえて質問をする。

伊吹:価値観の多様化によりコントロールの聞かない社会になっているという前提にたって、「なにやっても仕方ない」というのであれば、先生(=土肥)の代議士に選ばれている意味はなくなる。ポストモダンはひとつの認識として、私たちは日本なら日本の文化の中で、私たちが祖先の営みの中から大切に作り上げてきたものので「ポストモダン」を食い止めたいから私たちは議論をしているのだ、政治があるのだ。

土肥:文化や伝統は法定できるのか? 法に入れたとしても意味をなさないのでは? 最低限の踏み外してはならないところをまとめるのが教基法になるのではないか? 民主案も政府案も内相をもっと詰めるべきではないか?

伊吹:私たちはポストモダン理論は取ってないので、見解が違うという以外ない。

土肥:悩みも情報も子どもの中にあるのだから、その視線に立った対策が必要なのであって、トップダウンで臨むべきではない。核保有国が増え「終末」的状況を想起する中での教育を考えてしまう。

土肥:どんな法も憲法に逆らってはならない。憲法を変えようとしている中で教基法を変えようという理由は?

伊吹:教基法は憲法以前にできている。事実認識が問題である。憲法議論がなければ教基法改正が出来ないというのであれば、それは民主党も同じであろう。

土肥:将来憲法改正があれば、教基法改正もあるのか?

伊吹:どの政権がどう野党と協議したかによって変わっていくが、改正された憲法と今回提案している理念法としての教基法の内容がたがうことがあれば当然変えなくてはならない。ただ、(両者が)たがうことは多分ないと私は思う。(改正教基法は)基本的普遍的事実を記述する、理念を記述するのだから、政府案・民主党案は違ってくることはないと思う。

■末松義規(民主党・無所属クラブ)

<宗教教育について>
末松:特定の宗教教育をしていけないと現行法は言っている。ただし特定宗教を学ぶ権利を過大に狭めると、宗教について語れない人材が育つのでは?

伊吹:宗教の学習はすべきものの、各々の心のあり方について、特定宗教を布教する活動は国公立は憲法の規定によって禁止されている。

末松:「布教」の入らない中で宗教の問題を扱うことは可能か?

伊吹:宗教は人生にどういう役割を果たすか、歴史的にどういう役割を果たしてきたのか。日本の歴史の中でどう仏教は関わったのか…はなんら問題はないと思う。2条で一般論と規定している情操の中には宗教は入らないと私は思う。

末松:学校が死生観を扱うことについて。

伊吹:教師が自分の人生観や心のあり方として「自殺」について語ることは問題ない。ただし、自分は神道の教えでこう思っているから君も従ったほうがいいよ、というのはおかしいといっている。布教活動はいけないといっている。

末松:宗教の布教活動と宗教に関する客観的な説明との差は? 小坂前文科相は「教義を教えることは、慎重になされるべき」といっていたが

伊吹:キリスト教の教義はこうだということは構わないが、価値観や主観が入ってきたりするると問題があるから、小坂はそのときの状況によるべきといったのだろう。

末松:靖国神社はどういう意味を持ち、どういう教義を持っているのかと問われたとき、教師は生徒にどう応えるべきなのか。

伊吹:靖国の教義は浅学にして分からないが、これが招魂社という一種の組織であり、戦後、宗教法人になった、祭られている人はこういう人たちだ、などと話すことはなんら束縛は受けないと思う。

末松:「先生はなに今日を信じていますか?」と問われたとき「神社神道だ」と答え、その教義を話すことは問題なのか?

伊吹:信じている宗教を話すのは問題ないし、信仰の内容を答えてくださいといわれたときは、児童の心に自分の心を強制させる・入り込まないで教義を述べるのはいいことだと私は思う。

末松:学校の修学旅行で伊勢神宮等などに行く、神楽を体験するとなった場合、これは特定宗教に踏み込みすぎだと問題が指摘される可能性はありうる。これについてどう考えるか

伊吹:客観的に神道の中に神楽がある、それを見せることはいいと思うが強制はしてはいけないと思う。

末松:「宗教の行事に踏み入ってやることはダメだ」と以前聞いたが、これについて。

伊吹:宗教的行為・宗教の一部で神楽を見ることはいけないといっているが、(授業であっても)文化行事の中に位置づけて見るのは問題ないのでは。応える側の心の問題が焦点化されるべきで、状況に応じて慎重に判断すべき。

末松:布教と教義の説明の差を話してほしい。

伊吹:言葉で表現が難しいから、むしろ教えてほしい。(難しいから)慎重にやるべきといっている。(再度の質問に対して)布教は、自分の信教を他人に信じさせようとしていることである。自分の宗教を他人に信じさせようとしているかどうかの教師の心は、他人には見えない(から慎重にすべき)と申し上げている。

■糸川正晃(国民新党・無所属の会)

糸川:子どものころから憲法教育をする必要は?

伊吹:それは当然のことだ

糸川:「豊かな」社会に変化して、心が貧しくなった。そのため子が親を殺し、親が子を殺す状況が生まれた。こういう状況が教基法改正で改善するわけではないが、改正によってどのような人間育成をしようとしてかんがえているのか?

伊吹:豊かさの隙間を埋める人を作りたい。日本人としての品性持った人を育てたい。それをつねに育てていく日本人を育てたい。

糸川:教育の最終責任者は国にあると考えているのか?

伊吹:日本国にある、だから国と地方で適切な役割分担をすると法案で書いているのだ。

■菅野哲雄(社会民主党・市民連合)

菅野:未履修問題の責任に所在と、対処の方法について。

伊吹:学習指導要領どおり行われていないことには文科相に責任がある。被害者は全ての児童であるとの気持ちを大事に、文科相の権限の範囲で可能な都道府県の教育委員会、私学を管理している知事に意見求めたい

菅野:高校が「予備校化」しているもんだいについて。高校間競争が激しくなっていることと学習指導要領の関係のズレが根本の解決の道と思うが?

伊吹:しっかり授業を行なっている学校=正直者がバカを見ないような施策が必要である。しかし学生には何の責任もない。この二つのバランスを取って、現実的には未履修の人にはある程度の授業をとってもらって、それによって卒業の資格を与えないと現場を混乱する。しかし未履修の人に大幅な配慮をすると「俺達は何でこんなひどいな目にあうのだ?」という感情も起きる。

菅野:「日本の教育を考える10人委員会」によると、回答者の3分の2が学力格差が二極化しているとこたえている。そしてそれは親の収入から影響を受けているとこたえている。親の収入が進路や将来の収入を決めている状況について、大臣はどう考えているか?

伊吹:その状況が見られることは否定しない。しかしOECD調査によると、親の収入が子どもの進路に影響をいちばん及ぼしているとされるのはドイツである。同調査から、日本は比較的影響は小さいと出ている。これを踏まえて、上記状況は拳拳服膺していきたい。

菅野:現行法の「能力の応ずる」が、政府案第4条「その能力に応じた」と改正する意図、理由は?

田中生涯学習局長:近時の立法例に倣った。ので、両者はまったく同じ意味である。現在第3条は「与えられならないものであって」を改正案では「与えられなければならず」としているのも、現在の3条2項「就学困難なもの」「奨学の方法」の表記も、改正案の方では「就学が困難」「奨学の措置」と、最近の表記法にならっている。

菅野:何も代わらないのなら、「応ずる」でいいではないか? この修文は問題がある。憲法も「応じた」と過去形になっていない。なぜ「応ずる」ではダメなのか?はっきりさせてほしい。

田中:現在でも「能力に応ずる」というのは「公安法」(昭和25年)には書いてあるが、近年の平成17年の「独立行政法人住宅金融支援機構法」や昭和60年「労働者派遣事業の適正な運営確保及び派遣労働者の就業条件の整備等の法律」には「能力に応じた」と書いてある。近年「能力に応じた」という用語を使っている。意味は、現行法と改正案で同じである。

菅野:こう質問するのは政府が「格差教育」を推進しているように見えるからである。教育再生会議で学校選択制、教師免許更新制、教育バウチャーの発行が扱われている。また2007年からの全国学力テストの実施。これらは学校のランクに見合った予算措置、教員への能力給など、教育へ市場原理、競争原理を導入する手段と考えられている。この流れは「能力に応じた」と過去形にしたこととどう捉えているのか?

伊吹:参考人の説明の通り。深く考える必要はない。最近の立法例に倣っているわけでして、責任者である私が教育の機会均等と差別を記述したものではないということを明言いたしますからご理解ください。

■石井郁子(日本共産党)

石井:(昨日の高橋議員提出の文書について)。9/2、内閣府主催の「教育改革タウンミーティング八戸」で、現場に対して、教基法改正賛成の趣旨を答弁するよう発言依頼があった。その中の「タウンミーティングの質問のお願い」によると(校長宛に)「教基法は時代に対応すべく見直すべきだ」との意見、「教育の原点は家庭教育である…先ほどの大臣のご説明にあったとおり」と、わざわざ、大臣の説明は聞いてないにも拘らず「新しい教基法に新しく家庭教育の規定が追加されたことは、本当に大事なことであると思います」と書いてある。また、青森県の教育課から校長宛に「タウンミーティングに関わる依頼発言について」との文書で、別紙のようにご協力くださいとある。内閣府と文科省がこのような発言依頼を行なっていたことについて。これは「やらせ」ではないか。

内閣府土肥原官房政策審議官:タウンミーティングでの活発な意見を促すという目的で、地元や関係者の意見を踏まえて参加者の発言の参考となるような資料を作成すると、そういうような場合もある。地元の関係者にそういうような資料を提供する場合もある。結果としては幅広い自由な議論ができたと理解している。

石井:発言依頼をしたことを認めるのか、はっきりさせてほしい。このペーパーは、事実としてあるということを確認したということでよいのか?

内閣府土肥原官房政策審議官:FAX送信票もあり、すべてが内閣府が関与しているわけではない。参考資料を作成したのは内閣である。

石井:昨日の新聞報道だと改革が「心外だ、こういうことがないように」といっていたようだが、修正されたと私は受け止める。これは大変なもので、最後のページには発言に関しての注意事項まである。「セリフの棒読みは避けてください」とか、「お願いされてとか依頼されてとか言わないで下さい」とか「自分の意見を言っていると書いてください」とかある。(これは)大変な手のこんだ「やらせ」である。こういうタウンミーティングを平成15年から7回やっている。他のところでもこんなことがあったのではないか? また、「やらせ」行為は民主主義を否定することを政府がしていることになる。こういう世論誘導を教育基本法に関連してやっていることは重大な問題だ。徹底した調査を求め、報告を官房長官に求める。

塩崎:調査をして報告する。

石井:安倍首相が教育再生を掲げている。それと教基法案について関係を聞きたい。安倍首相は全国一斉の学力テスト、その結果の公表、学校選択制の全国的な拡大、また国家による学校評価のための監査官の配置、学校予算の傾斜配分がいわれている。その中で、全国一斉の学力テスト、その結果の公表、それが学校選択制への拡大とつながることによる公教育への影響について。通学区域制度は、現行教基法3条「教育の機会均等」によるものと理解していいか?

伊吹:通学の便などを考えて決められている。「安倍首相の…」との発言があったが、安倍が首相になる前に著したものをもとに述べていると思うが、総理になった以上、中から選んできっちりとやっていく必要がある。安倍総理が総理になる前に著した書物の中にあることを総理と倣えてすべてやるという前提は必ずしもご心配なることはないと思う。

石井:結果の公表と学校選択制がリンクされたとき、東京足立区に既に実例があるが、点数の格差による特定学校への応募人数の増加から、中学校入学で倍率が出ている。5年前から学校選択制を取り入れている足立区は、2004年から区独自の学力テストを実施して結果は公表、クラスの順位も公表されている。選択性が導入されて、学力テストの高い学校は募集が集中し、低い学校には募集が来ない状況がある。これは義務教育の段階で「勝ち組・負け組」が出てきているという実態ではないか。選別による序列が固定化していくのは容認できることか?

伊吹:義務教育段階で選別を行い学校に格差ができてくることは、安倍首相の言う「全ての児童に最低限の規範意識と学力を保障する」点から必ずしも適当ではない。しかし同時に、必ずしも適当ではないというマイナス面を受忍してでも、なおかつこういうことをやらねばならない現状があり、私は何度もいっているように、多くの納税者の負託にこたえられてない教育現場の状況を改善していければ、格差・差別化は行なわれない方がいいと私は思います。

石井:ここの区によると、テストの点数競争をすることにより過去問をやるなどで対策しているため、平均点はあがるが、子どもの個々の学力には必ずしも結びついていない。これが現場の実感である。これこそ深刻である。テストの結果で「がんばり具合」を4段階で分けると足立区は言っている。これは予算配分のためのようだ。学校間格差を、予算つけてやるわけだから更に進ませる。義務教育段階で、これでいいのか。

伊吹:基本的に、小学校の設置権者、人事権者、予算権者は文科省ではない、地方自治体の権限であるから(この足立区などの件について)口出しするのはいかががと思うが、来年度実施の全国学力テストは、学校に数値的な差をつけるためにやるわけではない。これは児童の学力御状況を全国的に調査して今後の学習指導要領を考えるためにやるのだ。文科省としては点数の公表を指導するつもりはない。義務教育に競争原理を入れる必要はないと思うが、入れざるを得ない学校の荒廃の現状も認識して、こういうことが(なにを指示しての発言か不明)どんどん進まないようにみんなで取り組む必要がある。

石井:官房長官に聞きたい。「教育再生会議」の議論とこの教基法改正案はどう関連づいているのか?

塩崎:教基法改正案と教育再生会議の関係は繰り返し述べたとおりで、教基法は大きな理念を60年ぶりに改めること、一方でまったなしの案件への対応について教育再生会議を設けている。

石井:質問趣旨は、政府の教育政策の中身(外部評価制度導入や学校選択制度など)がこの法案とどう関係するのか? そのためにこの法案は必要なほうあんなのかどうかを、私は聞きたい。次回聞きたい。
11月1日(午前)
衆議院教基法特別委員会

保利耕輔(無所属)
田島一成(民主)
(教育基本法「改正」情報センター)

【保利質問】
 午前はまず無所属の保利耕輔委員が質問に立った。先の国会では特別委員会の事実上最終日に質問を行っている。そのときは継続審議が決めっていたのでかなり本音の発言があったが、今回は慎重な発言が目立った。
(出だしはお礼から)
 保利委員はまず、(無所属でありながら)1時間の質問時間をもらったことへのお礼から入る。続いて伊吹文科相の説明が明瞭でわかりやすい、びっくりした、心から敬意を表すとエールを送る。
(美しい日本語を)
 最初の質問は、「美しい国」と日本語の乱れの問題。今の日本語は崩れかかっているのではないか、英語だけではなく日本民族として美しい日本語、国語を大事にしてほしいと発言。日本語に日本の歴史、伝統、文化を象徴させようとする意図からと思われる。
(与党協議の内容)
 つづいて、与党教基法改正検討会の座長を務めた立場から与党協議会の論議の様子を発言。
 検討会ではまず4つの原則をきめた。(これは2006年4月13日の与党協議会最終報告にある次の4点)
@教育基本法の改正法案は、議員立法ではなく、政府提出法案であること
A改正方式については、一部改正ではなく、全部改正によること
B教育基本法は、教育の基本的な理念を示すものであって、具体的な内容については他の法令に委ねること
C簡潔明瞭で、格調高い法律を目指すこと

 @については、政府が責任を持って内容をチェックするためである。
 Aは、現行法には、大学、生涯教育、私学の規定などがない。大きな骨格をなすことを入れるためには一部改正ではできない。また現行法では、「朕は、帝国議会・・・枢密院・・・」という昭和天皇の「公布文」がついている。この文は古い、おもしろくないという意見が出た。全部改正にすれば新たな「公布文」に改めることができる。
 B関連法律は33本ある。改正に伴い33本の法律を改正する必要がでてくる。理念法だから骨格だけ示すことにした。
 そのほか、「国」の概念から統治機構をはずしたこと、「宗教的情操」は盛り込まないことにしたこと、「不当な支配」については検討の結果残したこと、などを紹介。マスコミは愛国心についてのみ報道し、他のことは報道しないと批判。
→以上の発言は、与党協議の内容が明らかではない、議事録を公開せよなどとの批判に対応し、一応の「情報公開」を行ったものである。注目すべき新たな論点はない。アリバイづくりの発言であった。

(改正案は子どもを戦場に送るものか)
 次に改正案は、子どもを戦場に送るものである、戦争をする国にするものだという批判に対し、文科相の見解を求めた。伊吹文科相は、「国を愛する・・・」の「国」は伝統的な文化、規範、日本人に特有なものといった「国民のいとなみ」であると答弁、改正案は慎重な配慮をしている、児童の資質を高めるものであり、戦争促進法などではないと答弁。
→今日の議論ではだれも「戦争促進法」などと発言していないのに文科相はこのように発言。子どもを戦場に送る法か、と問われてハイと応える人はいない。憲法改正、学習指導要領の記述、つくる会の授業などをみれば「戦争促進法」であることは否定できないであろう。

(現行学習指導要領との関係)
 保利委員は、改正案が成立すると改正教基法と学習指導要領が矛盾する点が出てくるかと質問。
 文科省の銭谷氏が、「今の改正案と学習指導要領は軌を一にするもので矛盾はない」「提案されている法案と全く一致する」と答弁。
 保利委員は、愛国心教育などの具体的な指導例を学習指導要領で示せとも発言。伊吹文科相も具体例を示すと答弁。
→以上の質疑で、今の学習指導要領が現行教育基本法の趣旨にあわないものであることが明確になった。教基法を改正しても指導要領を変えないのであれば、それは学校教育には何の影響も与えないことになる。文科省役人が変える必要がないと答弁し、保利委員もそれに異議を唱えなかった。それでは何のために改正するのか。また現行法と改正案では内容に大きな違いがある。改正案の内容を先取りしているのであれば指導要領は現行教基法の趣旨、精神をないがしろにしていることになる。文科省が教基法の精神を大事にしてこなかったことの証拠である。
 また学習指導要領に具体的な指導例を示せということは指導要領の性格からしても問題である。

(義務教育について)
 保利委員は、義務教育9年の規定をはずしたのは義務教育弾力化のためだと力説。9年を6と3にわけるのは非効率だとする。保利委員は義務教育学校=9年制の学校を提唱。そして昔の旧制中学校は良かったと述べ、5年制の高等専門学校がよいと発言。
→保利委員は、先の国会では、中等教育という概念自体を否定しようとしていた。今日はそのような発言はせず、概念自体は尊重しつつ、それが中学校と高校に分かれている問題を指摘。先の国会では、大学進学者用の高校と職業教育を行う5年制の学校に分離させる提案を行っていたが、今回はその持論を封印。高専をほめることに限定した。

【田島質問】
(高校未履修問題)
 民主党の田島一成委員は高校の未履修問題から質問。
 伊吹文科相は調査結果を発表。
 国立高校 15校  未履修なし
 公立  4045校  314校
 私立  1348校(うち2校は未回答) 226校
  以上540校
 3年生
 国立 2826人   なし
 公立 812767  50827
 私立 346332(うち2校は未回答) 32916
  合計 83743人

 未履修単位数
 70単位以内  61352
 70−140 17837
 140以上  4554

(教育改革のあり方・・東大基礎学力研調査結果)
 田島委員は小中学校の校長のアンケート結果をもとに現場の声をどう受け止めるか質問。
 伊吹文科相は、世論調査は質問によって異なる結果になる、校長は高校未履修問題の責任者、他の一般の人を対象とした調査では8割の人が義務教育改革は必要と応えていると答弁。さらに校長は、現行法のもとでの改革について行けないと回答しているのではないかとも答弁。「現場の声も大切だが、納税者の声に応えるのが大切」と力説。
→世論調査については都合の悪い結果には目を閉じ、さらに責任を教育基本法に押しつけるという暴論を述べている。「現場」と「世論」を対立させようとする考えも明確に。

(家庭教育のあり方)
 田島委員は家庭教育を重視する発言。伊吹文科相も家庭の復権、地域社会の復権が大切だが、もとに戻すのに100年かかると発言。
 田島委員は、高校には道徳の時間がない。親の自覚を促す指導が必要。家庭教育の学習指導要領をつくることが考えられないかと質問。これに対して、伊吹文科相は、家庭は法律で縛るものではないと答弁。
→この部分では田島委員の問題発言が目につく。家庭教育に法律および行政を関与させようとする発想で、これは文科相にたしなめられた結果に。文科相の「家庭は法律で縛るべきではない」という発言は重要。第2条の目標は家庭教育を縛ることが出来ないことになる。

 田島委員は最後に教育委員会のあり方を質問して終わった。
→田島委員の発言は勉強不足が目立つ。思いつきで国会質問をしてはいけない。文科相の方が2枚も3枚も役者が上だった。
10月31日(午後)
衆議院教基法特別委員会

西村智奈美(民主)
松本大輔(民主)
横山北斗(民主)
高橋千鶴子(共産)
保坂展人(社民)
(教育基本法「改正」情報センター)

1 31日の午後は、この緩急に浮上した必修科目未履修問題、教育予算の確保問題、格差問題を教基法改正と絡めて、果たして政府法案と民主党案のいずれが、これらの問題の解決に貢献するのか、ということが争点となったほか、法案の文言の意味を具体的に明らかにしようとする質問(7条の大学条項、8条の私学条項、9条の教員条項)、そして、イギリスをモデルとすることが適切なのかどうかを質す質問がなされていた。

2 政府の答弁は“新自由主義”的

政府答弁、特に伊吹文科大臣の答弁についての特徴を指摘するならば、それが実に「新自由主義的」だということである。

新自由主義は、人間を競争に追い込めば何かが良くなる、というまったく論証されていない前提に基づいていること、そして、実際に良くならなければ「競争のさせ方が十分ではない」と主張し続けることに特徴がある。裏を返して言えば、新自由主義推進者は、自分たちが依拠している前提を自己批判的に検証することなく、うまく行かないことの理由をすべて他人に転嫁するところにその最大の特徴がある。

伊吹文科大臣は、「目標を作って、競争して切磋琢磨しなければ、効率化とか努力とかは人間社会では生じない」(高橋委員への答弁)と述べていた。未履修問題の原因が、03年以降の学校5日制の導入、授業時数の減少、高校間競争の行政による組織にあるのではないかと野党に追及されると、「それだけが問題ではない」「問題の原因を明らかにすることは難しい」と答弁しておきながら、自らの主張する「規範意識の欠落」(政府が押し付けたルールを守らない教委、校長、教師はモラルが欠落しているということ)については、それが原因であると断言していた(銭谷政府委員も同じことを言っていた)。

これでは、文科省が次から次へと繰り出す、無秩序な「指導」「学習指導要領の改訂」「特色ある学校づくり」などに振り回されてきた、地方教育行政関係者も、学校管理職も、そして、子どもに直に接し、矛盾を一番感じざるを得ない教師もたまったものではない。「私たちの規範意識が欠落しているということ?じゃあ、あなたたちはまともなルールを作ってきたの?作らなくても良いルールを作って押し付けたのは一体誰なの?」。そんな声が聞こえてきそうである。かつて富士通の社長が、成果主義給与を導入してもなお、業績が上がるどころか悪化して行ったのを、「社員が悪い」といった趣旨の発言をして、ますます社員の士気を失わせた光景を思い出すのは私だけではないだろう。

また、伊吹文科大臣は、野党が提示するデータについては「もっと細かく分析したい」と言い、あるいは、OECDデータの引用を「松本大輔事務所作成って書いてある」(松本議員に対して)と頓珍漢な応答をしていた。野党に対しては、説明の不十分さを論拠なく指摘しておきながら、文科省による緻密なデータ解釈に基づく緻密な議論を展開することはしない。政府の説明責任をどう考えているのだろうか?

3 未履修問題

西村委員の質問は、“未履修問題の原因がきちんと把握できなければ、何をどう改革すれば良いのかわかるわけがない。文教科学委員会でまずは集中審議をすべきだ”、という実にまともな内容であった。政府案では未履修問題がどのように解決されるのかとの質問に対して、「改正後、法改正をして、政令を作って、学習指導要領を改正して」対応すると伊吹文科大臣は答弁していた。政府案のどの条項が教育行政の何をどのように変え、教育に対してどのようなインパクトを与えるのか、このことを説明しなければ議論は始まらない。

4 教育財政確保問題

また、西村委員は、政府法案のどこに格差是正に必要な教育財政を確保する規定があるのか、という趣旨の質問をしていた。伊吹文科大臣の答弁は「教育の機会均等が保障されているかどうかは最終的には司法が判断すること。」との回答をしていた。積極的に社会権を実現する義務が国にはあり、立法府はそのために立法活動をしなければならない、という日本国憲法の要請を無視したこの発言には驚かされた。この点、西村議員が「立法府としての意思を示すべきだ」と述べたのは適切であった。
 さらに、西村委員は、「昨日文科省のレクを受けて、計画の中身はまったく白紙ということだった」との発言をした上で、政府法案には、科学技術基本法にある財政確保条項に匹敵する規定が無いことを指摘していた。伊吹文科大臣は、この指摘に対して、予算は政府が作り、国会で審議してもらうと回答するに留まっていた。政府法案には、教育予算確保条項が不在であることがはっきりした。
 松本委員は、NPOのあしなが募金からの要望書を取り上げ、奨学金母子世帯の直面する教育費を巡る困難をデータに基づいて取り上げ、あわせて、高等教育の無償化問題も取り上げていた。伊吹文科大臣は、高等教育費の公私負担割合に関して家庭負担割合が日本では60%にのぼるというOECDデータを見せられても、何のデータかわからず、「松本大輔事務所作成って書いてあるでしょ。よほどしっかり根拠を示していただかないと…えらい誤解を生んでしまいますよ!」と声を荒げていた。この有名なデータを知らずに文科大臣をやっていることの方が「えらい」ことだ。
 
5 7、8、9条の逐条的、逐語的ツメ

前国会では、国民新党の糸川委員がしていた逐条的な質問を、民主党が始めた。横山委員が、7条、8条、9条についてそれを行った。

政府案大学条項にある“社会貢献”を取り上げて、社会貢献に研究教育を収斂させ、あるいは、学問の自由を制限することになるのではないか、との趣旨の質問をしていた。息吹文科大臣は、“教育研究の結果として社会に貢献する”という現行学校教育法の趣旨と同じだ、と答弁していた。そうであれば、改正案にこのような文言を入れる必要はない。学校教育方の大学の目的規定も改正しないと明言すべきであった。興味深かったのは、伊吹文科大臣自身は、基礎研究がおろそかになるとのおそれから国立大学の独法化に反対していたと答弁していたことであった。そして独法化の目的を「非効率的な運営」の是正に求めていたことであった。無駄遣いをしないのは当たり前のことなのだが、それだけのために独法化をしたのだとすれば、目的と手段との釣り合いがあまりに取れない。

また、8条に私学振興に政府が努める義務が規定されていることの意味についても、私学振興をするといった答弁しか帰ってこなかった。

さらに、免許更新制度が、9条のどこから導かれるのか、との質問には、9条2項を読み上げるだけで法案中の根拠となる文言を指摘できず、結局、「納税者の負担に対する効果をあらわさなければならない」ことを根拠として示していた。免許更新制度も、改正法案からは直接導き出せないことがはっきりしてしまった。

6 タウンミーティング問題

今日の質疑で最も緊張感があったのは、政府の開催した教育改革タウンミーティングに関連して、青森県の教育委員会が、校長にある特定の質問をするように依頼し、しかも、内閣府から「棒読みにならないように」との指示を受けたと記してある文書を、高橋委員が提出したときであった。ここで審議がストップし、結局、事前に資料が提出されていなかったことを根拠に、質問はストップし、資料の扱いを理事会で協議することになった。今後の展開が期待される。

7 イギリスをモデルとすることの適否

保坂委員は、イギリスをモデルとすることの是非に質問を集中させていた。安倍総理の著書『美しい国へ』において、問題のある子どもの家庭を24時間監視すると言うイギリスの施策を紹介していることを取り上げ、同種の施策が政府法案13条(地域における関係者の協力義務)によって正当化されるのではないか、と質していた。塩崎官房長官は「そこまでやるつもりはない」と答弁していた。問題は、やるつもりがあるかないかではなく、改正法案においてそこまでやることが許されているのか、禁止されているのかどうかである。それを正当化する条項を持ちながら、政府の裁量でやることもやらないこともあるとの回答では、“法案”審議にはならない。

8 まとめにかえて

今日の審議を見ていて、法案審議の入り口に野党が政府を引き入れようとしているのに対して、政府は、伊吹文科大臣を先頭に、あれやこれや言を弄するものの、結局は、“いやだ、いやだ”と駄々をこねているように見えた。

未履修問題は、政府法案の立法事実、すなわち、何を目的とし、そのためにいかなる手段を用意し、目的がどれほど実現することになるのか、という問題を検証する上での、格好の素材となっている。この素材を生かしきるためには、学習指導要領が実施された03年度以降の、未履修の拡大についてのデータが不可欠であるし、それを集中的に検討することも不可欠である。

また、条項ごとの立法者意思の確定も、ようやく始まったに過ぎない。前国会での糸川議員の質問に対する政府の応答は、各条の趣旨、あるいは、それに関連する近年の施策を略述したに過ぎず、各文言がそれぞれ何を意味し、政府にどのような権限を与え、その限界がどこにあるのかの説明も不可欠である。

政府は、いつまでも駄々をこねていないで、早く法案審議の入り口に立ち、徹底審議に応じるべきである。そうしなければ、国民の政府の文教政策全体に対する信頼が損なわれるだけだと、実感した。
10月31日(午前)
衆議院教基法特別委員会

質問者
稲田朋美(自民)
斉藤鉄夫(公明)
北神圭朗(民主)
(教育基本法「改正」情報センター)T・S

T審議の主な論点

1.教育内容の最終的な決定権の所在(政府案16条、民主党案18条)

2.生涯学習(政府案3条、民主党案12条)と社会教育(政府案7条、民主党案12条)の概念上の違いと法案上の条項の関係

3.教育改革の意思決定のあり方(教育基本法改正法案の審議と教育再生会議)

4.教育財政のあり方(民主党案19条、20条)

U審議の中で結論的に主張された点

1.稲田朋美委員(自民)は、占領期の日本弱体化政策のひとつとして教基法が制定されたと指摘し、教育基本法の正当性を疑問視した。また、現行法10条の「不当な支配」が、一部の教員勢力によりゆがんで解釈された結果、戦後教育行政の混乱を招いたという。政府案16条では、「この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきもの」との文言が挿入されており、国民の代表機関である国会の制定する法に基づく教育が、政治的に中立であり、「不当な支配」は排されることになると主張した。

2.与党の委員(稲田朋美委員(自民)、斉藤鉄夫委員(公明))は、政府案・民主党案の共通点(@日本の伝統・文化の尊重、規範・道徳の必要性、A教育内容に関する最終責任は国にある(学習指導要領の法的拘束性)、B生涯学習は、社会教育、学校教育、家庭教育を包含する概念である事)を指摘し、法案の早期成立を主張した。

3.民主党委員(北神圭朗委員(民主))は政府案と民主党案の相違点(@教育委員会の廃止、A財政条項の規定)や、教育再生会議が法案と同内容のテーマを議論している点を指摘し、慎重な審議(教育再生会議の結論を待つ)の必要性を主張した。

U各論点における議論の主旨

1.教育内容の最終的な決定権の所在

<稲田委員>
教育基本法は、戦後占領期の日本弱体化政策の中で生まれた。戦後レジームから脱却し、日本らしさをとりもどす必要がある。
現行法10条の「不当な支配」の制定理由は、教育の普遍性、政治的中立性の確保にある。ところが、その「不当な支配」が、一部教員に歪曲され現場が混乱している。学習指導要領の法的拘束性を考えれば、東京都教育委員会が、国旗掲揚・国歌斉唱の通達を出すのは当然。教員が、それに従うのは職務上の義務ではないのか?

<井吹文科大臣>・<藤村委員(民主)>
学習指導要領は、学校教育法に根拠を持つ法の一部であり、これに従うのが当然。

<稲田委員>
政府案16条により、国会で制定された法律に基づく教育には正当性があると言える。教員は教委の命令に従うことになり、現場の混乱は解消する。
民主党案は、前文に公共の精神、伝統、文化の尊重について書かれている。基本的に政府案と同じ方向性の法案。
民主党案(特に2条と7条の関係から)では、誰に教育内容の最終的な責任があるのか?また、首長のイデオロギーに地方の教育が左右されるのでは?

<藤村委員>
学校理事会が教育内容を決定し、首長も責任を持ち、最終的な責任は国がもつ。学習指導要領には、法的拘束性がある。教育監査委員会を設置して首長を牽制する。

2.生涯学習(政府案3条、民主党案12条)と社会教育(政府案7条、民主党案12条)の概念上の違いと法案上の条項の関係

<斉藤委員>
政府案では、教育の基本的な理念として3条で生涯学習について規定している。7条の社会教育は、学校教育、家庭教育等と同様に、生涯学習の中のひとつであるという関係。民主党案では、12条で生涯学習と社会教育の概念が混同されているのでは?

<高井委員(民主)>
生涯学習は、社会教育を包摂する。民主党案では2条でそれを示している。

<斉藤委員>
政府案と民主党は基本理念で一致しており、法案の早期成立が望ましい。

3.教育改革の意思決定のあり方(教育基本法改正法案の審議と教育再生会議)

<北神委員>
中教審と教育再生会議の関係は?

<井吹文科大臣>
中教審は、国家行政組織法に基づいており、教育再生会議は首相の諮問機関。つまり、再生会議はアドバイザリーボード。

<北神委員>
教育再生会議と教育基本法案審議では、同内容のことが議論されている。再生会議の結論を待つべきでは?

<井吹文科大臣><塩崎官房長官>
教育基本法は基本理念を審議。再生会議では、待った無しの問題について議論をする必要がある。仮に、再生会議で改正後の教育基本法にそぐわない結論が出ても、それはあくまでアドバイザリーボードの意見で、賢明な首相はそれを採用することはない。

4.教育財政のあり方(民主党案19条、20条)

<北神委員>
教育財政支出に関して。格差の問題、機会均等の保障をどう考えるか?

<伊吹文科大臣>
義務教育については、平等であるべき。高等教育については、中卒、高卒で働いている労働者もおり、国民的合意形成の点で引き続き検討が必要。

<北神委員>
教育機関に対する公金支出の額を他国に倣って対GDP費で算出しては?また、「骨太の方針2006」で文教予算の削減が明記されているが、その点についてどう考えるか?

<伊吹文科大臣>
文科大臣としては、文教予算を増額したいが、国務大臣としては、負担と給付のバランスも考える。

<塩崎官房長官>
メリハリ、効果的な予算措置が必要。

<北神委員>
歳出・歳入改革だけでは、財政再建は無理で経済成長が必要。そのためにも、将来への投資として教育予算の増額(私学助成、奨学金、教員給与)が必要。民主党案に財政条項が、規定されている。地方分権の推進、特別会計の削減等、さまざまな方法で教育予算の増額は実現できる。時の政権に教育財政を振り回されないように、教育基本法へ財政条項を規定すべき。
10月30日
参議院行政監視委員会

質問者
櫻井 充(民主)
(教育基本法「改正」情報センター)F・K

10月30日開催の参議院行政監視委員会で,民主党の櫻井充議員が質問しました.

経済財政諮問委員会と教育再生会議の違いは?
 前者は内閣府設置法で設置が決まっており,後者は閣議決定
 緊急性と幅広い人材を集めるという点から閣議決定で設置した.
 前者の議長は首相であり,後者は首相は構成メンバーではあるが,座長は野依氏(補佐官は事務局長)
 前者は諮問に対して答申するが,後者はそのような役割はない.

中教審と教育再生会議との関係は
 教育再生会議で扱う問題で文科省の所掌する問題について,
 より具体的な施策を審議する必要があれば中教審で審議する.

教育再生会議の担当補佐官と文部科学大臣の関係は?
 補佐官の職務は,首相の命を受けて首相に意見を具申したりすること

(従来重要な案件については,特命大臣をおいていたが,今回の教育再生担当の補佐官には,特命大臣のような行政的な責務は負っていないと解釈できる?逆に言うと,櫻井氏は,教育再生会議の決定事項には,法的な拘束力はないことを確認したと述べた.)

教育再生会議は,従来の内閣府の重要政策会議とはかなり性格が異なるようです.櫻井氏は,この点について,性格の異なる会議をいくつも設置することは行政の性格をゆがめると批判していました.
10月30日(午後)
衆議院教基法特別委員会(2)

質問者
志位和夫(共産)
保坂展人(社民)
糸川正晃(国民)
(教育基本法「改正」情報センター)M・S

志位委員(共産)は、文科省作成が「学校におけるいじめ問題に関する基本的認識のポイント」において、いじめはどの子にも起こりうることと認識すべき、いじめが多いか少ないかではなく、学校の対応@早期発見、A教師集団が協力し合って対処すべき、といっていることを引きながら、こうした正しい方針も、いじめの件数を数値目標化する学校・教員評価によってできなくなるのではないか、と政府の姿勢の誤りを追求した。これに対して、伊吹文科大臣は、教師が規範意識をもっていないから隠蔽しているという面もある。仕事は目標を立ててやっていかないといけない。目標を立てていじめを減らすことまで否定するのは本末転倒だと、反論した。

志位委員はまた、いじめが起きるのは子どもたちが強いストレスにさらされているためではないかと述べ、日本の小中学生は諸外国に比べて2倍程度と抑うつ傾向が高いという調査結果があることを示した。ストレスといじめの関係について問われた安倍首相は、ストレスとの関係については専門的議論を待つしかない、と答弁した。監視者は、教育再生会議にそうした専門家がいるのか疑問である。また、ゆとり教育の問題を指摘する識者もいる、高い学力と規範意識を身につけさせたい、などと問題をすりかえる答弁を行った。

保坂委員(社民)は、いじめ問題のほか、外国人の未就学児童問題をとりあげ、特に日系ブラジル人の未就学が多いことを指摘、ブラジル人学校が各種学校にも認められていない状況に起因するのではないか、と質問した。これに対して伊吹文科大臣は、実態は把握しているが、未就学の問題は経済的な問題なのか、語学力の問題なのかわからないと責任逃れをした。

保坂委員はまた、「愛国心条項」(政府案第2条)は教育のすべてにかかわるのか、と質問した。安倍首相は、義務教育だけにかかるものではないと答えた。保坂委員が、すべて包括しているのであれば、家庭や生涯学習に愛国心条項もかかることになるが、それでよいのか、とたたみかけると、伊吹文科大臣は、学校教育以外の領域でも、我が国の自然・文化を尊ぶ気持ちを養うために事実関係を適確に教えるということだと述べた。

糸川委員(国民)の質問に対する答弁のなかで、伊吹文科大臣は、法律を越える規範の意識をもつ教育をすすめたい。現行法はどこへもっていっても恥ずかしくない。だが、日本には日本特有の規範があることを日本社会に生きていく人には教えないといけない、と立法事実が存在しないことを認め、立憲主義を否定する見解をくりかえした。安倍首相は、高校の未履修問題について、学校が事実をきちんと報告しなかった、隠蔽の体質という問題だと、現場に責任を転嫁した。
10月30日(午後)
衆議院教基法特別委員会(1)

質問者
鳩山由紀夫(民主)
野田佳彦(民主)
笠 浩史(民主)
牧 義夫(民主)

(教育基本法「改正」情報センター)M・S

午後、民主党から質問に立った4人の委員は、大きく、(1)審議・改正の手続き、(2)この間の教育問題への対応の不手際、(3)政府案の問題点に関する質問を行い、政府答弁に対して何度か民主案の優位性を強調した(テレビ中継の日だったためもあろう)。

(1)審議・改正の手続きについては、鳩山委員は、伊吹文科大臣が就任直後、記者に対して「90時間あれば十分」と発言したことに触れ、大臣の発言として不適切であるとして謝罪を求めた。これに対して、伊吹文科大臣は、この程度のボリュームの法案であればという一般論を述べたつもりだったが、教育基本法の審議時間についての発言だという印象をもたれたとすればまことに遺憾なこと、と苦しい答弁をした。

鳩山委員はまた、前国会で小泉前首相が教育基本法改正案について数十年もつものである必要があると述べたが、小坂文科大臣は憲法が改正されたらまた改正すればよいと述べ、見解の不一致があったことを指摘した。これに対して安倍総理は、自民党の憲法草案と教基法改正案とは矛盾しないと答えた。伊吹文科大臣は、政府案にも憲法の精神に則りとある。民主党も法案を出している。憲法改正まで待てないという意識は共有されているのではないか、と答弁した。これらに対して、鳩山委員は、民主案は、前文の「新たな精神」の部分で憲法改正をにらんでいると述べた。

笠委員は、民主案は時間稼ぎとか、反対のための対案ではない。もっとよいものを作っていこうというのであれば、一度両案をとりさげて、あらためて国会の調査会など開かれた場で議論することはどうか、ともちかけた。安倍首相は、与党で相当時間をかけて議論しており、自信をもって提出している。もとより委員会は国民の目の前で開かれた議論をしてきている、と答えた。伊吹文科大臣も、両案はそれぞれ最良と思うものを出しているので取り下げるべきではない、と述べた。

牧委員は、特別委員会に山谷首相補佐官・教育再生会議事務局長が出席しないことに抗議した。塩崎補佐官は、首相補佐官は政府の立場を説明するものではないので、出る必要はないというのが政府の認識だと答弁し、出席を拒否した。

(2)この間の教育問題への対応の不手際については、鳩山委員がいじめ問題についての調査時の対応、野田委員がいわゆる「履修漏れ」への対応の問題を指摘した。笠委員も含めた三人の委員は、こうした不手際と責任のなすり合いが続くことを防止するために、民主案にある学校への権限の委譲と国の最終責任の明記、教育委員会廃止と行政権を首長に一元化することなどが有効だと売り込んだ。

伊吹文科大臣は、民主案のようなやり方は政党政治の論理による教育支配が行われる危険があると指摘、教育委員会廃止論には反対だと答弁した。笠委員が総務大臣に見解を求めると、管総務大臣は、28次地方制度調査会において設置の選択制を導入すべきと答申されており、『骨太方針2006』においても特区の設置を早急に結論すべきとしている、と答えた。

野田委員は、いつから「履修漏れ」があったか調べ上げて報告するよう、文科大臣に求めた。

(3)政府案の問題点に関する質問としては、与党合意の結果の中途半端さを指摘し、本音では民主案に賛成する自民党議員が多いのではないかという質問が目立った。

牧委員は、『美しい国へ』の内容と政府案と合致しているのか疑問だと述べ、教育基本法を政府案のようにすれば『美しい国』が実現するというのはどこなのかと尋ねた。安倍首相は、現行法では『美しい国』が実現しないとまではいわないが、『美しい国』の骨格をなす概念と政府案は密接に関連していると答えた。伊吹文科大臣は、一国一文化という法に書かれざる伝統的規範のようなものを大切にしようとしていこうというのが『美しい国』の根本であることを理解してもらいたいと述べた。この答弁の直後に委員会室には拍手が鳴り響いた。

牧委員は、いじめや未履修の問題は教育基本法案についての本来的な議論ではないと述べたが、伊吹文科大臣は、関連させて質問する委員もいるので、意見は差し控えたいと答えるにとどまった。
10月30日(午前)
衆議院教基法特別委員会

質問者
大島理森(自民)55分
鈴木恒夫(自民)25分
西博義(公明)40分
答弁
安倍晋三(内閣総理大臣)
伊吹文明(文部科学大臣)
民主党案に対する質問への答弁
鳩山由紀夫(民主)
笠 浩史(民主)
武正公一(民主)

(教育基本法「改正」情報センター)H・K

0.【特に気になった点】

1.民主党の強い抵抗を封じ込めることが企図されていたと感じた
・鳩山由紀夫(民主党幹事長)の以下の発言をどう評価すべきか?
@「議論を徹底して行う必要はあるが、引き延ばしはしない」
A「公党間の『協議』ではなく、衆参両院に『調査会』設置を」
B「民主党案に賛成いただけるならば今国会(明日)に成立させても結構」

2.公明党の考え(V.【西博義(公明党)質疑】参照)と、自民党(与党案)は、相当に乖離しているのではないか?

3.「国を愛する」:「国」=「統治機構」ではないとしながら、「日本の伝統・文化」「脈々と引き継がれてきた法律を越える規範」等に含み込ませようとしているもの―「自尊心」「他者尊重」「共感」「思いやり」「いたわり合い」「責任の分かち持ち合い(シェアリング)」等は、ユネスコ「平和・人権・民主主義のための教育」、国連子どもの権利委員会「教育の目的に関する一般コメント」等にみられるように、日本固有のものではなく“グローバル・スタンダード”となっているにも拘わらず―の「復古性」・「偏狭なナショナリズム」・「日本会議・つくる会教科書に通ずる禍々(まがまが)しさ」が伏在していることを強く感じた。

4.いじめ・自殺(学校の隠蔽体質)、高校での単位未履修問題は、基本的には文科省の“指導”下で生じた問題であるにも拘わらず、「責任は学校・教育委員会にある」⇒「“正義の味方”“国民(生徒・父母)の味方”である文科省のチェックが必要不可欠」⇒「文科省チェックを十分に機能させるためには教育基本法の改正が必要である」、という「世論」操作(国鉄民営化の時に全く同様のマスコミ操作があった)、マッチ・ポンプ性を強く感じた。

T.【大島理森(自民党)質疑】

〔大島理森(自民党)〕
@いじめ自殺問題=「生命の尊さ」「生きることの意味」に関わる深刻な問題
A高校必修単位未履修問題=「未修者生徒も既修生徒も被害者」
文科省はどのように捉え、どのように対応するのか?

〔伊吹文明(文部科学大臣)〕
@家族・地域に救える者が少なくなっている。子どもを守ってやるべき教師や教育委員会が、主導(?)したり隠したりする傾向があることはゆゆしいことである。隠すことなく子どもを救ってやれるようにしなければならない。
A今日午後に審議における野党のご意見も伺い、また、内閣法制局ともつめて、(a)「正直者(履修者)が損をする」こと無いよう、(b)既に行われている推薦入試合格者の扱い、(c)〔当面の措置を行った後〕未履修で卒業した者の扱い等を、今週中を目途に、当面の措置を決めたい。

〔大島理森(自民党)〕
なぜ、いま、教育基本法を改正する必要があるのか?
@60年間における国民の思い、国の状況の変化
・人口、平均寿命、出生率、一世帯人数、高校進学率、GDP、
・「生きること」⇒「外部化」(家庭教育も「心」も「外部化」)
Aいま起こっている様々な問題→教育の根本を見直す必要性
・アメリカ・トルコより低い:「父親を尊敬しているか」「国を愛しているか」
B教育基本法制定当時、戦前の反省を強くもっていた反面、欠けていた点
・「自立」、「社会の形成者」=「公民」の育成の欠如
・基本法制定当時の文相・田中耕太郎:2つの原則
(a)「人格の完成」=「神に近づけること」
(b)「教育権の独立」
◎しかしその後(昭和35年頃、『教育基本法の理論』S36初版のことか?)が、「個人の尊重」を偏重し、「個人の社会化」=「公民の育成」、「家庭教育」の位置づけが弱かったと、認めている。

〔安倍晋三(内閣総理大臣)〕
@に関し:60年間の変化―モラル・学ぶ意欲・家庭の教育力・公の精神・地域のつながり、等の低下
⇒「品格ある日本」「志ある日本人」を育成するために21世紀にふさわしい教育基本法が必要

〔伊吹文明(文部科学大臣)〕
・「外部化」⇔制度や気持ちの変化とつながっている:同感である。
・教育基本法を改訂後、関連する法律・制令・通達・学習指導要領を改定し、「脈々と引き継がれてきた法律を越える規範」を取り戻したい。

〔鳩山由紀夫(民主党・無所属クラブ)〕
・今日的課題に応えるためには、「現場主義」を基本におかなければならない。
・物が豊かに→「教育の意義」・「親の権威」・「教師の権威」薄れ、「外部まかせ」になり、「心」の部分に危うい点が生じている。
・教育の原点は、家庭である。

〔大島理森(自民党)〕
・与党案と民主党案は基本認識が一致している。
・民主党が「より良いものを作っていこう」という姿勢であるなら、町村理事・中井理事等は、「協議」を行うべき。
・民主党は、「協議」を受けて立つつもりがあるのか否か?

〔鳩山由紀夫(民主党・無所属クラブ)〕
・「引き延ばし」は全く考えていない。
・より良いものにすることには、当然、協力。
・「教育の根本法」であるから、国民の理解を得ながら進める必要、時間をかけて進める必要がある。
・そのためには、公党間の協議よりも、衆参両院に「調査会」を作って進めるべき。

〔大島理森(自民党)〕
・本委員会を通じ、民主党案を含め国民の前で議論している。その議論を通じてシッカリした結論を出すことが立法府の国民に対する責任ではないか?

〔鳩山由紀夫(民主党・無所属クラブ)〕
・民主党案ならば、「いじめ」・未履修問題への対応可能である。民主党案に賛成いただけるならば今国会(明日)に成立させても結構。

〔大島理森(自民党)〕
・民主党案が最善と考えるのであれば、(直ちに)採決すべきだ。
・そうでない(直ちに採決すべきではない)ならば、(与党案への民主党案の)組み込みを行うべき。

U.【鈴木恒夫(自民党)質疑】

〔鈴木恒夫(自民党)〕
・自公で2時間×70回検討した(最後は「大島〔理森?〕塾」であったが)メンバーであるが、その時から「日本の美風」の欠如が「いじめ」・親殺し・子殺し・未履修問題等を生じさせていると考えるが。

〔安倍晋三(内閣総理大臣)〕

・「公共の精神」・「自立の精神」を回復し、また、「格差是正」のためにも、教育基本法を変えることこそ重要である。

〔鈴木恒夫(自民党)〕
・民主党は、「時間をかける必要がある」と言いつつ、「引き延ばしはしない」と言うが?

〔鳩山由紀夫(民主党・無所属クラブ)〕
 ・議論を徹底して行う必要はあるが、引き延ばしはしない。

〔鈴木恒夫(自民党)〕
・民主党案は、「前文」で「日本を愛する心を涵養し」としているが、民主党の支持母体である日教組(30万組合員)は、前文であろうが条文であろうが「愛国心教育は内心の自由を侵害する」ものであるとし、「教育基本法改悪阻止」の非常事態宣言を行っている。

〔鳩山由紀夫(民主党・無所属クラブ)〕
・民主党は民主党として、日教組は日教組として、それぞれの意見を持つのは当然のことである。

〔鈴木恒夫(自民党)〕
・日教組は、民主党案は、「政府案を潰すためのもの」と言っているが。

〔笠浩史(民主党・無所属クラブ)〕
・民主党案は、開かれた議論を経て作られたものである。

〔鈴木恒夫(自民党)〕
・民主党案では、「国は、普通教育の機会を保障し、その最終的な責任を有する」(7条)としながら、「地方公共団体が行う教育行政は、…その長が行わなければならない」(18条)としているが。

〔武正公一(民主党・無所属クラブ)〕
・民主党案は、国がやるべきことは国の責任で、地方自治体のことは地方自治体(=首長)の責任で、学校のことは学校(学校理事会)の責任で行われるべき、という考えだ。

〔鈴木恒夫(自民党)〕
・「人にやさしく、自分に強く」→「自己規律」「公共心」を育てるために、教育基本法の改正を。

〔安倍晋三(内閣総理大臣)〕
・「教育改革のために教育基本法改正が必要である」という認識は、民主党も共有している。
速やかに成立を!

V.【西博義(公明党)質疑】

〔西博義(公明党)〕
・一日も早く改正案の成立を!
・履修漏れ問題:責任の所在と対応策

〔伊吹文明(文部科学大臣)〕
・文科省も学習指導要領の公示主体として「結果責任の一端」を負っている。
・まず「火を消すこと」(@未履修の生徒が卒業できるようにすること、A「正直者が馬鹿をみる」ことが無いようにする)を行う。「火が消えた後に」、原因の検証を行う。

〔西博義(公明党)〕
・@卒業できないことがないよう、A補習等が過度の負担にならないよう、B校長等の責任は、それらの後で。

〔伊吹文明(文部科学大臣)〕
・@全生徒が被害者である、A補習は必要だが、加重負担にならないようする、B履修済生徒(“深掘り”していない生徒)が不利になる(「正直者が損をする」)ことのないようする、という点を踏まえ、内閣法制局と協議する。

〔西博義(公明党)〕
・受験至上主義は、子どもを馬鹿にし、子どもに歪みが出て当然、市町村教委の形骸化、現場の創意工夫を不可能にもしている、と言われる。
・公明党は、@「国家のための教育」ではなく「人間のための教育」、A現場を重視した教育、B社会に開かれた教育、の実現を目指している。

〔伊吹文明(文部科学大臣)〕
・受験万能、「受験マシーン」育成であってはならない。「人格の完成」⇒「自由」と「規律」、「権利」と「責任」の意識を育成する教育でなければならない。
・「現場重視」に関しては、異論無い・

〔西博義(公明党)〕
・トゥィンビーは、「学ぶということは人間性を高めること」といい、アウグスト・クスは、「子どもを知識の貯蔵庫」にしてはならず、音楽が流れる教室、机の並べ方、教師自身が自分の悩みなどを話せる(教室の雰囲気)などが大切であるといっている。

〔安倍晋三(内閣総理大臣)〕
・人格形成のためには、教室(どういう先生にであうか)・家庭・地域など現場の在り方が大切であると思う。人格をぶつけることも必要。そのためにも、教育基本法改正を急ぎ実現したい。

〔西博義(公明党)〕
・「国を愛する」の「国」には、統治機構は含まないこと、愛国心を通知票に記載しないことを再確認したい。

〔安倍晋三(内閣総理大臣)〕
・「統治機構を愛せ」とすることは、自由と民主主義の理念に反する。
・学校での評価は、生徒の内面に入り込むものではない。
・ただし、日本の伝統や文化を学習する態度は、評価する。

〔西博義(公明党)〕
・(学齢児童生徒の「居場所」として)「学校」以外の選択肢がない。外国籍の子・障害を持つ子などの居場所を保障するために学校教育法・地教行法などを見直す必要がある。

〔安倍晋三(内閣総理大臣)〕
・戦後60年の間に新たに生じた重要な課題と考える。「教育再生会議」でも検討して欲しい。

〔伊吹文明(文部科学大臣)〕
・学校現場、教育委員会においても対応をしているし、今後もして欲しい。

〔西博義(公明党)〕
・尾木直樹氏の本によれば、各種調査結果は実態と乖離しているとされるが。
・様々な問題に対応して行くには、教育委員会を残し充実・抜本的強化を図るべきと考えるが。

〔伊吹文明(文部科学大臣)〕
・(民主党案は教育委員会を無くしその権限を「首長」に移そうとしているが)、「首長」は「イズム」を持って選出される。教育が「イズム」で歪められる可能性がある。地方分権化法で教育長の承認制、文科省の是正要求権が無くなっているが、教育委員会の責任の明確化・強化が図られるべき。
10月26日
参議院文教科学委員会

佐藤泰介(民主)
蓮舫(民主)
山本かなえ(公明)
鰐淵洋子(公明)
井上哲(共産)
(教育基本法「改正」情報センター)

午後は参議院で文教科学委員会が開催されました。

佐藤泰介(民主)はいじめ問題や教員評価問題、国立大学運営交付金問題について、蓮舫(民主)・山本かなえ(公明)はいずれもいじめ問題を中心的に取り上げた。佐藤議員は日教組出身にふさわしく、教員免許更新制度への反対、バウチャー制度・学力テスト問題への危惧などを訴えていた。また、佐藤議員は自分の出身大学である愛知教育大学が、運営交付金の削減のために教育・研究が非常に困難になっている、と指摘した。山本議員は、その他に奨学金の充実を訴え、答弁にたった池坊文科副大臣とともにいつものように自党の宣伝に終始した。鰐淵洋子(公明)は読書推進を訴えたが、見るべきものはなし。

井上哲(共産)は、来年4月に実施される学力テストの結果の公表の仕方について質問し、梅宮初等中等教育局長は「個別学校ごとの公表は、過度な競争・序列化を助長しかねないので控えるよう自治体に要請している」と答弁した。さらに伊吹文科大臣は、「すべての学校がうまくいっているという前提であればいいが、そうでない場合には(学力テストや評価、学校選択制度の導入などの)痛い手術も必要」と強弁した。
10月26日
参議院文教科学委員会

中川義雄(自民)
大仁田厚(自民)
伊吹文明文科相

(教育基本法「改正」情報センター)

26日午前は、参議院文教委員会が行われた。質問者は中川義雄(自民)および大仁田厚(自民)の二人で、滝川市で発生したいじめ自殺の調査についての質問が行われた。調査の方法および信頼性をめぐっての質疑に終始し、市教育委員会の隠蔽が行われたのであって、その後の文科省が行った調査のありようを問題とした。

その答弁の中で、伊吹文科相は、どこに調査権があるのかについて、選挙で選ばれた者(国会議員、首長、地方議員)は、一定の政治的信念を持って活動をしており、そのようなものが教育に介入することは好ましいことではないし、地教行法が教育委員会の権限を定め、文科省の役割もそこで限定されているのであって、法治国家の日本ではそれに従って調査を行っているとの発言があった。この確認は重要であるが、他方、法律が変われば国や政治による介入の余地があるとも受け取れなくもない(すこし穿ちすぎかもしれない)。

他方、大仁田議員は、学校、教育委員会の調査については信用できないと強調し(過ぎて他の議員から落ち着くように諭される場面も)、国による介入権を広げることを求めている、あるいは教育委員会の廃止を求めているとも言えるような発言をエキサイティングに繰り返していた。

いすれにせよ、これらの問題で教基法との関係は全く現れてこなかった。
10月25日
衆議院教育基本法特別委員会


伊吹文明文科相
高井美穂(民主)
(教育基本法「改正」情報センター)

・10時開会まず理事の選任が行われる。

・続いて、政府提出の「教育基本法案」及び民主党提出の「日本国教育基本法案」を一括して審議することとし、両案の趣旨説明が行われた。

・伊吹文科相の趣旨説明は5月16日に当時の小坂文科相が行った趣旨説明と同じもの。言い回しが若干違っているだけ。

以下、相違点。「教育基本法の全部」が「教育の基本法の全部」とか「法律案」が「法案」に、「この法律」が「この法案」に、「創造性を培い」が「創造性を養い」など。

相違点は、小坂前文科相および伊吹文科相の読み間違いによるもので内容上の変更は全くなかった。

・民主党案は高井美穂議員が説明。5月24日に笠議員が行った説明と基本的に同じ。主な変更点は、出だしで「先の通常国会で憲法に準ずる法案として」日本国教育基本法案を提出した、と「憲法に準ずる法案」という言葉が入ったこと、つぎに、教育現場の問題を具体的に改善するための第一歩として、「基本的な考え方を示す」、「現行法を廃止して、新しい法案として」・・・という内容が入ったことである。

・趣旨説明が終わったところで、次回の日程が示され、11分で委員会は終了。
10月23日
参議院本会議

塩崎恭久国務大臣(北朝鮮による拉致問題担当)
福島啓史郎(自民)
犬塚直史(民主)
阿部晋三首相ほか
(教育基本法「改正」情報センター)

テロ特措法の一部改正(現行法の期限を1年間延長)について、塩崎国務大臣から趣旨説明があった後、福島啓史郎議員、犬塚直史議員がそれぞれ質疑をした。犬塚氏に対する答弁の中で、安倍首相は、憲法制定の過程の問題について触れ、占領軍の影響下にあったことは事実であり、自主憲法制定の必要があるとの持論をくりかえしました。

教育基本法「改正」に関連する質疑、答弁はありませんでした。
10月20日
衆議院文部科学委員会

鈴木恒夫(自民)
遠藤乙彦(公明)
藤村修(民主)
伊吹文明文科相
池坊保子副大臣
(教育基本法「改正」情報センター)

自民党鈴木恒夫と公明党遠藤乙彦と民主党藤村修が質問。伊吹文相がほとんど答弁。1回だけ池坊副大臣が答弁。いじめ関連の質問・答弁が多かった。これに関わって、大臣は、報告、連絡、相談、確認の4つを徹底するとし、国、教委、学校との関係では、現在、省が学校に直接調査に入れず、教委と一緒でなければできないことについて検討するとしている。

教育再生会議、中教審、文科省との関係については、免許更新制など中教審で結論が出ているものについては、再生会議を待たずに進めていくべきだというようなことを言っていた。再生会議は、労働、福祉、社会など、総合的に議論が必要なものに力を発揮するようなことを期待しているとしていた。

教育や福祉、医療などは、競争はいいが、市場原理を持ち込むべきではないと述べていた。ただし、効率化が怠られてきており、効率的運営が行われているかを学も含めて検討する必要がある。特に義務教育は、日本人として生きていくための最低限の学力と、ルール、規範意識を育成するために国が関与する。

民主党とのやり取りは、文相就任時に、大臣がこの程度のボリュームの法案では、70から80時間で十分だと言ったことについてが中心。大臣は、行政改革法案に比べて、関連する分野が少なく、ボリュームが少ないこと、これまでの50時間の議事録では、同じ質問が何度も繰り返されていることを理由として挙げていた。藤村議員は憲法との対比、国旗国歌法との対比で、十分な審議がもっと必要であることを主張。藤村議員から、大臣が考える教育の目的は何かと問われて、現行教基法の、人格の完成と、国家社会の形成者と挙げていた。

大臣の公務の都合があったらしく、早めに休憩に入った。
10月19日
衆議院青少年問題特別委員会

高市国務大臣
福岡資磨(自民)
井脇ノブ子(自民)太田和美(民主)高井美穂(民主)伊藤渉(公明)
石井郁子(共産)保坂展人(社民)
(教育基本法「改正」情報センター)

午前は、衆議院青少年問題特別委員会が開催されました。

今国会初会合であるため、冒頭、高市国務大臣ほかのあいさつがあり、引き続き、福岡資磨、井脇ノブ子(自民)、太田和美、高井美穂(民主)、伊藤渉(公明)、石井郁子(共産)、保坂展人(社民)による総括質問が行われました。自・公・民の各委員は、滝川と福岡のいじめ自殺の問題を中心に取り上げ、それに引きつけ、特に井脇委員は、自らが学校経営していることをふまえ、「いじめ」の対応の現役教員のまずさから、教員の資質向上の観点から、教育実習の6週間への拡大、海外協力隊などでのインターンシップ、免許更新制を主張していました。また、「不適格教員を辞めさせるのは難しい」との発言まで登場しています。

その他、犯罪特にネット犯罪から子どもを守る施策について(高井委員)、社会全体の教育力(伊藤委員)、若年無業者の問題(石井委員)、児童養護施設での問題(保坂委員)などについて質疑がなされました。

現在の青少年の諸問題についての質問に対して、文科相初等中等局長等が出席して応答し、さまざまな施策を講じるとは述べるものの、教育基本法にまで言及するものはなく、改めて教基法と教育現場での問題とは結びつかないことを自ら示している。

午後の本会議では教育基本法「改正」に関する議事、発言はありませんでした。
10月18日
国家基本政策委員会合同審査会(党首討論)


安倍晋三首相
小沢一郎(民主)
(教育基本法「改正」情報センター)

小沢民主党党首と安倍総理大臣との党首討論

民主党党首の小沢氏は、最初に「憲法改正の問題、時間があれば教育の問題、北朝鮮問題での総理の認識をお尋ねしたい」と述べて、討論を始めている。しかし、時間切れのため、小沢氏は用意した「教育の問題」での質問をまったく行っていない。そのため党首討論は、「憲法改正」問題と「北朝鮮問題(周辺事態)」が主要な内容となった。

「教育基本法改正」問題と関係しているのは、安倍首相の憲法改正論である。安倍首相は、小沢氏からの「なぜ、憲法を改正するのか」という質問に答え、持論の「憲法改正の3つの理由」を述べている(安倍氏は、教育基本法改正の理由についても著作の中で、まったく同じ3つの理由をあげている)。「首相として憲法擁護尊重義務があるが、私は従来から、憲法の改正を主張してきた」と語った安倍首相は、「@憲法の制定過程の問題、占領軍の影響を受けて制定された問題。A半世紀以上たっており、時代にそぐわない条文があるし、新しい時代にふさわしいものにしていくべき、B国の形や理想を、自らの力で書き上げていくべき」と答弁。この答弁に対し、「@点以外については、他の法律の場合にも当てはまるのではないか」と指摘した小沢氏は、「@の点が最大の改憲理由ではないか」と指摘。歴史の転換点における歴史認識や他国の事例との比較を問うている(ドイツやフランスの憲法制定過程。ハーグ陸戦法規など、占領下の改憲問題)。このやりとりは、簡単にまとめることができないような煩雑なものなので割愛する。ただし、小沢氏の質問は、「安倍さんの理屈は、『占領下の憲法制定は無効』としたほうがいいのではないか」というもの。しかし、安倍首相は、「占領下の憲法制定は無効と考えていない」と答弁。保守系の論客の多くは、ハーグ陸戦法規に基づき「占領下の憲法制定は無効」を力説しながら改憲論を主張しているが、小沢氏は、その問題点を突いたと言える。

衆議院文教科学委員会について

10月18日、衆議院・文教科学委員会が開催された。伊吹文部科学大臣の所信表明演説のような、教育政策全般に関わる演説があった。そののち、副大臣(池坊保子、遠藤利明)と政務官(小渕優子、水落敏栄)が短い挨拶を行った。伊吹文科省の演説内容は、「教育基本法に関する特別委員会」における質疑においても繰り返されるフレーズで充ちていると思われる。伊吹文科省は、「心豊かでたくましく、創造性に充ちた優位な人材の育成」という万国共通の、普遍的な教育理念だけではなく、「日本が伝統的に大切にしてきた規範を大事にすべき」と強調、「教育基本法改正案の早期成立についての協力」を訴えた。伊吹文科省は「制定以来半世紀が過ぎ、冷戦構造の終結、長寿社会の到来、共生社会や地球環境の保全(の必要性)など、我が国をめぐる状況が大きく変化するなかで、道徳心や自律心、公共の精神、国際社会への寄与などをより一層重視することが求められており、教育の根本を定めた教育基本法を改正し、新しい時代に求められる教育理念を明確にしつつ、教育改革を進めていくことが必要」と強調、「その上で、安倍内閣が進める公教育の再生に取り組んでいく」と述べた。伊吹文科省は、安倍首相と少し異なり、「基礎的な学力と日本人としての規範意識」といういい方をし、道徳教育や奉仕活動についても言及。また、全国学テの実施、第3者評価の導入、優秀教員への表彰やメリハリのある教員給与体系の導入などなど、教育施策全般について言及した。
10月16日
衆議院テロ防止・イラク支援特別委員会
教育基本法改正に関する審議はなし。
10月13日
参議院予算委員会

魚住裕一郎(公明)
山本保(公明)
市田忠義(共産)
福島みずほ(社民)

(教育基本法「改正」情報センター)

山本議員の子育てをしている女性の社会参加、そのための子育て支援に関する質問があり、伊吹文科大臣は、「子育てする女性が社会参加することは大事な権利。学校・教育を受ける権利も保障されている。そのためのメニューとしては通信教育があるが、学んでいる女性のために子育て施設を充実しなければならない」、池坊文科副大臣は、「奨学金は公明党の尽力によって拡大している」「再チャレンジのためには教育が大事」と答弁し、公明党の政策宣伝に終始した。

市田議員は、ワーキング・プア問題、派遣・請負問題で追求した。教育問題・教育基本法問題には触れなかった。

福島議員は、「愛は強制できるものか?」「教育基本法改正で国を愛することを強制するものになるのでしょうか?国を愛する態度を評価し、強制することになるのでしょうか?」と質問した。伊吹文科省は「国の愛し方は一人ひとり異なっているので、これを国が押し付けることはしない」と答弁し、安倍首相は「愛は強制できない」「小泉前首相が述べたように、学校で通知表を用いて評価することはしない」と答えた。さらに福島議員は「一人一人異なるものを教育できるのか?」「愛国心を強制することは、戦争に反対する自由を奪うこと。これは歴史が示していることではないか」と迫り、これに対して、首相は「私たちの教育基本法改正案とは関係のないこと。国や郷土を愛することと、時の内閣・政府を愛することは違う」と答弁した。福島議員は最後に、「それではなぜ、教育基本法にわざわざ書き込むのか、改正の理由がない」と指摘した。
10月12日
参議院予算委員会

吉村剛太郎(自民)
金田勝年(自民)
愛知治郎(自民)
山下英利(自民)

安倍晋三首相

(教育基本法「改正」情報センター)

10月12日午後、参議院予算委員会では、吉村剛太郎(自民)、金田勝年(自民)、愛知治郎(自民)、山下英利(自民)が質問に立った。北朝鮮の核実験問題の質疑の応答の中では、国連の安保理常任入りをめざすことが強調された。教育問題については、愛知議員が「“子どもは大人社会を映し出す鏡”だと考えるが、どう思うか」と質問。安倍首相は「歴史に謙虚に学び、私たちの歩んできた歴史に誇りを持つことが大事」と答弁した。さらに愛知議員は、環境問題について質問し、安倍首相は「美しい国。自然との調和を求めてきた我が国の伝統文化がある」と答弁した。愛知議員はこの問題の最後に、社会全体で子育ての環境を整えるために、里親制度の充実を訴えた。
10月12日
参議院予算委員会

高橋千秋(民主)
浅尾慶一郎(民主)
吉村剛太郎(自民)

(教育基本法「改正」情報センター)

10月12日午前に開かれた参議院予算委員会では、高橋千秋(民主)、浅尾慶一郎(民主)、吉村剛太郎(自民)が質問者であった。

民主の二人は、定率減税の廃止、郵政民営化などを中心とした質疑であった。定率減税の廃止は、「増税ではなく元に戻しただけ」と受け取れる認識を財務相は示した。

吉村委員は、新憲法によって初めて自主独立が達成できるとする「押し付け憲法論」と、安保条約について、総理の祖父である岸信介を取り上げながらその積極的意義を述べていた。

教育については、話題とならなかった。
10月11日
参議院予算委員会

西岡武夫(民主)
広野ただし(民主)
福島みずほ(社民)

安倍晋三首相
伊吹文明文科相

T・K(教育基本法「改正」情報センター)

前半の審議は、外交問題をテーマにした集中審議であったため、教育基本法問題に少しふれたのは、社民党の福島議員のみ。同議員は、質問のまとめの中で「愛国心を入れた教育基本法に改悪して、国のために命を投げ出すことを美しいとした、戦前のような教育にすることは許せない」と訴えた。

後半の審議において、民主党の西岡武夫議員と広野ただし議員が、「教育再生」問題に関する重要な論点で、安倍総理や伊吹文科相とやりとりをおこなった。西岡議員は、持ち時間切れで用意していた教育問題での質問を十分できず、「それは別の機会
に回す」としながらも、以下の論点で安倍総理を追及。

@「教育再生会議」の位置づけ問題。教育再生会議で全て決めるのか。官邸機能の強化ということには賛成であり、有識者委員には敬愛申し上げている方もいて質問しづらい面はあるが、この会議は、最終的に誰が責任を負っている会議なのか。教育問題では与党の文教部会があり、文科省もある。教育再生会議とそれらとの関係や調整問題はどうなるのか。

A「教育行政の責任」問題。学校教育行政の最終責任はどこにあるのか。

安倍総理は、@の質問に対して「再生会議で全てを決めるのではなくこの会議は英知を結集する場」と答弁。責任問題では「私の教育再生策を実行するための会議であり、当然、私が責任者。与党も責任をもってまとめていく」と答弁。伊吹文科相は「教育の関係省庁は文科省だけではないし、文科省だけで教育を再生することはできない。再生会議で総合的に検討してもらうという趣旨だ」と答弁。Aに関する質問に対して、安倍総理は「最終責任は、私と文科大臣にある」と答弁。安倍氏が「地方の場合は、その自治体の長に責任がある」等と答弁したため、西岡氏は「総理は教育行政の現状や仕組みについて余りご存知ない。文科相に聞く等、教育行政の実態を自ら調べてほしい」と要望した。

広野ただし議員(民主党)は、いじめ、不登校、中退などの実態について数字をあげつつ、「安倍首相はどのように教育再生していくのか」と質問。安倍総理が「子ども達に規範意識を身につけさせる」等と答弁したため、広野議員は「規範意識だけでいいのか」と再質問。安倍総理は、「個別的な対応(カウンセラーの配置)や地域が一体となった総合的な取組みが必要」と答弁した。

「少し気になった点」=民主党の広野議員が「英語教育」問題を質問した際、伊吹文科相が、日本語教育を重視する視点から「英語教育への慎重」論を力説したのに対し、安倍総理は、文科相の答弁に配慮しつつも「その問題は専門家によって検討してもらい、学習指導要領をつくっていく」と答弁。総理大臣と文部科学大臣がニュアンスの異なる答弁をおこなった点。
10月11日
参議院予算委員会

舛添要一(自民)
柳田稔(民主)
森ゆうこ(民主)
(教育基本法「改正」情報センター)

今日は外交問題特別審議のため教育問題は論議されませんでした。

以下、印象に残った発言。
舛添委員は集団的自衛権を行使できるように求め、久間防衛庁長官が、個別的自衛権と集団的自衛権を峻別することが問題だとし、その中間の部分が大事だと発言。

舛添委員は個別的、集団的自衛権を峻別する意味はなくなっていると主張。新しい時代に新しい憲法をと発言。

安倍首相も、21世紀にふさわしい国づくりをするために憲法を私たち自身の手でつくることが必要、自民党総裁として政治スケジュールにのせたいと発言。

北朝鮮のミサイル問題を憲法改正の必要に結びつけようとする意図が明確に示されていた。

松田稔委員は、北朝鮮が核実験を行ったときに久間防衛庁長官が衆院補欠選挙の応援のため大阪にいっており、核実験時に連絡が取れなかったことを問題に。内閣の危機管理体制の不備を追求。

新潟出身の森委員は拉致問題を取り上げた。
10月10日
衆議院予算委員会

杉浦正健(自民)
東順治(公明)
前原誠司(民主)
中川正春(民主)
笠井亮(共産)
保坂展人(社民)
糸川正晃(国民)


安倍晋三首相
K・H(教育基本法「改正」情報センター)

@ほとんど、核実験問題、中・韓訪問問題に終始。
A杉浦正健(自由民主党)質問に対する阿部首相答弁において、日韓の共通基盤として、これまで指摘されていたように“法の支配”ではなく“「法律」の支配”の語が使われていた。
B前原誠司(民主党・無所属クラブ)質問:歴史認識に関わって、首相になってから「村山談話」を「受け入れる」、「河野談話」(従軍慰安婦問題)を「継承する」としたことは、前に言っていたことと異なる。説明すべき。
 ⇒阿部首相答弁:「大局的に判断」「ご批判は甘んじて受ける。」
C前原誠司(民主党・無所属クラブ)質問:「靖国神社参拝しないと明言すべき。」
 ⇒阿部首相答弁:「政治問題化・外交問題化を避けるために、行く行かないは、言及すべきではない。敢えて宣言しない。」
D笠井亮(日本共産党)質問:「年内に有識者の歴史共同研究を立ち上げる」とされているが、何を目的に、どのように進めるのか?
 ⇒阿部首相答弁:「双方の歴史家がアカデミックな議論を重ねることを期待する。枠組み・課題も、専門家に検討してもらう。」
10月10日
衆議院予算委員会

保坂展人(社民)

Z・Z(教育基本法「改正」情報センター)

衆議院予算委員会は外交問題が中心で、教育問題は保坂議員が取り上げたのみ。その内容は概略以下の通り。

児童養護施設の子どもの大学進学率、生活保護世帯の子どもの大学進学率を問いた だす。厚生労働大臣は、前者について、平成16年度19,1%)、後者について(新規高卒者の10.3%)と解答。保坂議員は、この数字が専門学校を含む高等教育進学率であることを指摘し、大学進学率は前者については、1231人中97人、8%に満たないと指摘。安倍は格差の再生産を行なってはならないといっているが、高等教育無償化条項(A規約)の留保の撤回をしない理由を伊吹文科大臣に聞く。伊吹文科大臣は、「日本の場合は、最小限の学力と日本人としての規範を身につける義務教育は中学校まで。中学校卒業後、働いている人との公平観を考えて、無償化しない」と解答。
10月5日
衆議院予算委員会

中川昭一(自民)
斉藤斗志二(自民)
森英介(自民)
(教育基本法「改正」情報センター)

中川委員は全般的な質問のため、教育に関連する事項についてはほとんど質問できなかったが、日本人としての誇りを持つために必要なものはambition, brand, educationあわせてABEと言って、「美しい国」は中身を伴うためには人間づくりが必要でABEをもった「心の美しさ」を求めているんだとまとめていました。

教育問題については斉藤委員が質問をしましたが、「学力、体力、社会規範の低下」「ゆとりがゆるみを生み」「自主性が責任放棄となり」「個性尊重が放任になった」これらの教育課題を解決するために教育改革が必要である。それに対して伊吹文科相は、「諸々の教育不信、不安」を除去し、「活力ある経済」を目指した教育が必要であり、「戦後60年たって、生活様式が変わったので教育理念が上手く機能しているのかという反省」が必要といって、やはり教育基本法の何が問題なのかは、一切触れることがなかった。また、免許の更新制について、教基法の審議の結果を受けて来春には議論したい、と述べ、今臨時国会で教基法、次期通常国会で学校教育法などの法改正を行う意思を明らかにした。
10月5日
衆議院予算委員会

石原伸晃(自民)
赤松正雄(公明)
菅直人(民主)
(教育基本法「改正」情報センター)

印象に残った点
(1)教育改革については、斉藤鉄夫議員(公明党)の質問の中で、やや具体的なやり取りがありました。「政治からの中立性や継続性・安定性の観点から教育委員会は大事」と答弁していました。教育基本法改正は、今国会で成立させるよう全力を尽くす、と語っていたことも印象的でした。
(2)教育再生会議がどういう問題について議論をするのかは、さっぱりわからない答弁でした。
(3)菅直人議員(民主党)の質問は、中心的には「安倍首相の歴史認識について」がテーマでしたが、歴史教科書問題にも若干触れられていました。とにかく「外交問題になるので、歴史評価は控えたい」の一点張りでした。

-------以下、主な質問のやり取りです-------------

石原伸晃(自民党)
・年金問題について、安倍首相「年金制度は信頼が大事」、石原議員「改革を進めてなおお金が必要であれば歳入を増やすこと(消費税UP?)も国民は納得するだろう」・外交問題について、麻生外務大臣「いちばん危険なのは日本」・教育改革について、伊吹文科大臣「安部首相が言うような、この国の形、『規律を守り、凛とした、心やさしい』国をつくるための教育をやりたい」・石原議員「最後に若者たちへのメッセージを」にこたえて、安倍首相「この国の未来を信じ、自ら動いていってほしい」

北側一雄(公明党)
・日韓関係、日中関係について、北側「いっそうの交流促進を。「ビジット・ジャパン」を継続して、中国・韓国からの観光客を1000万人に」
斉藤鉄夫(公明党)
・教育改革について、斎藤議員「教育の党、公明党」と宣伝して、「現行教育基本法はたいへんすぐれているが、家庭教育や生涯学習の理念が触れられていない。自然を大事にすること、郷土を愛する心を書き込むなど、偏狭なナショナリズムではない、すばらしい改正案になっている。ぜひ今国会で成立させたい」。「教育再生会議は何をめざすのか」。
・安倍首相「教育基本法改正案を成立させるよう、全力を尽くしたい」。「公教育が今のままでいいと考えている人は一人もいないだろう。だから英知を結集させて改革に取り組むために、教育再生会議を設置した。教育現場の創意工夫を支援するために、できるだけ教育現場の意見を踏まえたい」・斎藤議員「教育行政について伺いたい。規制改革会議が教育行政の廃止を言っているが、教育行政の独立性は必要だ。教育委員会が問題をたくさん抱えているのは事実だが、」
・安倍首相「『政治的な中立性』は大事な問題。教育委員会は中立性や継続性、安定性、さらに多様な民意を反映させているシステム。ただ、実験的な取り組みは行ってみよう、ということになった。」
・斎藤議員「格差があってはならないと考えるが、義務教育費、さらには幼児教育の無償化をめざしたい。高等教育費は奨学金の拡充で」・安倍首相「奨学金については努力をしたい」
・斎藤議員「公立学校の再生を」
・安倍首相「誰でもいけるのが公教育。公教育が不十分になれば私立や塾に流れてしまう。公教育の再生が大事」
・伊吹文科省「核家族化、共働き化がすすんでいる。両親が勤めている場合、放課後子どもの行き場がない。この問題については138億円の概算要求をしている。安心して両親が働けるようにすることが、少子化対策にもなる」
・斎藤議員「文化予算が世界と比較しても低い水準に止まっている」
・安倍首相「我が国の優れた伝統文化の継承発展のために、文化振興に取り組みたい。豊かな人間性を育むことにもつながる」・斎藤議員「構造改革で格差社会になった、という指摘がある。構造改革は必要な改
革だったが、この指摘を謙虚に受け止めなければならない」
・安倍首相「構造改革で長い停滞から脱却してきた。社会的弱者に光をあてていくことも政治の役割。がんばる地方を応援するフォーラムを開催していきたい」
・斎藤議員「団塊ジュニアの世代に、90年代から後半の時期、『就職氷河期』の時期があった。個人の努力の問題ではなく、正規雇用の道を開く努力をすべきで、政治のリーダーシップが必要」
・安倍首相「就職の機会を逸して、年長のフリーターが増えているのは確か。中途採用の機会を増やすことが大事なので、企業側に要請した。企業側も眠っている人材を掘り起こすというメリットがある」
・斎藤議員「フリーターの増加の問題の裏側で、正社員の長時間労働、メンタルな病気も増えている。ワークバランス、ワークシェアリングのインフラ整備を。」
・安倍首相「仕事と生活の調和に関する立法をつめていきたい」

赤松正雄(公明党)
・赤松議員「ガン対策について」
・赤松議員「憲法について。昨日の代表質問で、全面改正を答弁した。憲法調査会では、憲法の点検を行っただけ。全面改正は必ずしも多数ではなかった。」
・安倍首相「現行憲法が占領時代に作られたものであることは事実。我々の手で憲法を書き上げることが大事。今後、与野党の間で議論が深められていくことになる」

菅直人(民主党)
・菅議員「危うい時代に入っている。社会全体が何か不安。国家主義・国粋主義的な主張が耳に入りやすくなっている。従軍慰安婦問題についての河野官房長官(当時)談話について」
・安倍首相「これは現在の政府としても受け継いでいる。私自身が内閣総理大臣として、当然受け継いでいる。」
・菅議員「考え方を変えたのか。総理大臣になれば、考え方が変わるのか」
・安倍首相「強制性に関するさまざまな議論があった。河野談話は閣議決定されたものなので、政府としても個人としても当然引き継ぐものであり、新たな談話を発表する考えもない。村山談話も認識は同じ」
・菅議員「かつて植民地支配があったことを認めるのですね」
・菅議員「岸元総理が日中会戦に署名をしたことについて、どう考えるか」
・安倍首相「会戦の結果として、多くの命を奪ったことについては、当時の為政者たちの責任がある。だから安保条約にも署名した」「歴史認識について政治家は謙虚であるべきで、歴史家に任せるべきだ」
・菅議員「歴所教科書について熱心だったのに、おかしいではないか」
・菅議員「靖国神社に参拝したか?」
・安倍首相「外交問題に関わるので、それは言わない。そのことも含めて国民の判断を仰ぎたい」
10月4日
参議院本会議

浜四津敏子(公明)
安倍晋三首相
(教育基本法「改正」情報センター)

☆浜四津敏子議員(公明党)
 冒頭、国立医療センターなどの医療機関が独立法人化で予算が削減され深刻な問題が起きていると指摘。それは法案審議のときにわかっていたことではないのかと思った。公明党は法人化に反対したのか。質問では憲法改正問題については触れず。安倍内閣の2大公約の一つを質問しないことが大きな問題。
 教育問題では公明党の「実績」を色々と指摘。これからの教育のありかたについて述べたが、そこからいきなり教育基本法の改正に飛躍。浜四津氏がのべた教育のあり方からは教育基本法を改正する理由は導かれない。むしろ政府の改正案の内容を批判する質問。
 安倍答弁では「規律ある人間」という言葉が乱発された。安倍答弁でも教育基本法を改正する理由は示されなかった。教育の目的を述べたが、「人格の完成と同時に志ある国民を育て、ひいては品格ある国家、社会をつくること。」と国家に奉仕する人間をつくることが教育の目的であると明言。これが改正の真のねらいの一つであろう。
 「現場からの教育改革」と「教育改革への決意」についての質問への答弁はほとんど同じことを述べていた。

 以下、その詳細。
☆浜四津質問
 不登校、校内暴力、学級崩壊、切れる子どもなど子どもの心をめぐる問題が指摘されている。公明党は子どもたちの心を豊かに、生きる力を育むための政策を数多く提案し実現してきた。
 具体的には、
1.子どもの読書活動
2.自然体験、職業体験、ボランティア体験などの体験学習
3.舞台芸術、伝統・文化を学ぶ機会の提供
4.食育の推進
 教育改革で大事な視点は、学校、地域、家庭という教育の最前線で教員、保護者、子どもなどが実際に抱えている悩みを直視し、それらの問題解決に具体的な有効な手をきめ細かく行うこと。すなわち現場からの教育改革が必要である。
 国、社会のその質を決めるのは構成員一人一人の人間にほかならない。豊かな心や人への思いやりをもち、生きるたくましさを培い、他の人々や社会に貢献する子どもたちを育てる真の人間教育を実現することにより、その結果として日本を真の平和国家、人道国家として実現出来ることは間違いないと確信する。
 私たちの世代は未来への世代への責任としてよい教育を実現していく義務がある。かつての日本の教育はまず国ありきであり、その視点から行われたと言っても過言ではない。
 戦前は軍国主義教育、戦後は経済大国に資する人材を育成する教育だった。
 しかし本来、教育は国にとって都合のよい人材を育成するためにあるわけではない。
 子どもたちが一人の人間として人間性豊かに、力強く、幸福な人生を送り、人々や社会にも貢献できる真の人間力を育むことが教育の目的だ。
 3年間の議論の末まとめた与党の教育基本法改正案もそうした理念、目的に立っている。
 子どものための教育という視点にたって教育の再構築に国を挙げて取り組む必要がある。

☆安倍答弁
 私のめざす「美しい国、日本。」を実現するために次代を背負う子どもや若者の育成が不可欠である。教育再生を国政上の最重要課題の一つとして位置づけ取り組む。
 まずは今国会における教育基本法案の早期成立を期すとともにすべての子どもに高い学力と規範意識を身につける機会を保障するために公教育を再生する。
 学校、家庭、地域社会の教育現場の目線に立ち、学校運営協議会の設置の推進、やる気と能力のある教員が教育に専念できる環境の整備など、教育現場の創意工夫が十分に生かされる環境を整えたい。
 教育の目的について、教育の本質は、教えるものと学ぶものとの人格的ふれあいの中で一人一人の能力を最大限伸ばし、その可能性を開花させ、自立した個人として人格の完成と同時に志ある国民を育て、ひいては品格ある国家、社会をつくることにある。豊かな人間性と創造力をそなえた規律ある人間の育成に向け教育の再生を図る。
 「美しい国、日本。」を実現するためには次代を背負って立つ子ども・若者の育成が不可欠である。教育力の低下が指摘されている。規律ある人間の育成に向けて教育再生を国政の最重要課題として位置づけ、まずは教育基本法案の成立に向けてしっかりと取り組み、公教育の再生のために内閣に教育再生会議を早急に発足させる。

☆平田健二議員(民主党)
 教育問題に言及なし。
10月4日
参議院本会議

有村治子(自民・前文科大臣政務官)
安倍晋三首相
伊吹文明文科相
T・K(教育基本法「改正」情報センター)

教育問題にふれた有村氏は、「総理は、教育基本法改正を今国会の最大の課題としているが、教育基本法改正は、一刻の猶予のない課題」と力説。

次に、国旗・国旗問題にふれた有村氏は、「日の丸を背に国際舞台で活躍するスポーツ選手(荒川静香選手、イチロー、松井選手)に日本人が感動する気持ちを大事にすべき」と指摘。その上で、「子ども達が、日本の国柄を、ごく自然な環境の中で、日本に対する誇りを育んでいけるよう、『気がつけば国旗がはためいていた』と感じられるようにすべき」と強調し、「総理は、どのような施策で子ども達に日本への誇りを持たせるべきと考えているのか、お聞きしたい」と質問。また、有村氏は、教科書無償制度の意義を徹底してこなかった問題にふれ、この間、教科書会社各社への働きかけで、来年度以降、「この教科書は、これからの日本を担う皆さんへの期待をこめ、税金でつくられています。大切に使いましょう」と全教科書に記載されることになったと語った。

〔安倍首相の答弁/伊吹文科相の答弁〕
(安倍)「国を愛する教育についての質問があった」と前置きした安倍総理は、「我が国には、美しい自然があり、長い時間をかけて紡いできた歴史や文化、伝統があり、それらへの理解を深め、尊重し、我が国を愛すると共に、他国を尊重する教育を推進してまいりたい」と答弁。(伊吹)「昭和38年の教科書無償制については、憲法の『教育を受ける権利』を守る立場から継続していきたい。教育は、国民の税金で支えられているが、その教育を受けるものが、将来、年金・医療・介護の世代を支える人間になってほしいと考えている」と答弁。

〔質疑の中で気になった点〕
有村氏は、冒頭から、「連綿と受け継がれるいのちと国柄」という言葉を使うなど、「国柄」という言葉を繰り返し、「家族の絆」とともに「国家の尊厳」を「かけがえのない価値」と明言。「安倍総理が、めざすべき国家理念として『美しい国』論を語りはじめたことは意義深い第一歩」とし、「美しい国づくり内閣」を絶賛。かなり保守色の強い質問であった。
鈴木憲(民主)
安倍晋三首相
伊吹文明文科相
T・K(教育基本法「改正」情報センター)

鈴木寛議員は、民主党のネクスト文部科学大臣として、「日本国教育基本法案」(民主党案)を対置させながら、代表質問をおこなった。

@「民主党案は『美しいものを美しいと感ずる心を育み』等と明記しており、安倍総理の『美しい国づくり』は結構だが、矛盾と欺瞞だらけ」と批判。

A「安倍総理は『基礎学力と規範意識を身につける機会の保障』を重視しているが、3年前から増えている、校内暴力、子どもの生命にかかわる犯罪の問題こそ深刻な問題。命の大切さの教育こそが重要であり、民主党案は『生命及び宗教に関する教育』の条文を入れているが、政府案は中教審答申からも後退している」と指摘。「インターネット教育もそうだ」と付け加えた。

B「安倍総理の教育改革論の最大の欠陥は教育予算について語っていないことだ」と批判。「教育予算を削減する自民党か、未来への投資として重視する民主党かが問われている」と強調。

C「安倍総理の教育改革の手法は、教育現場への圧力強化と、教師への『ひょうりょう攻め』のやり方だ。今、教師は疲れきり、疾患も多くなっている」とし、「金子郁容教授と私が7年前に提案した『コミュニティー・スクール』構想こそ、本来の教育改革論だ」と力説。

D「教育格差の解消が急務であり、再チャレンジを言う前に、人生の第一回目のチャレンジの機会を保障することが重要」と述べ、「それぞれの人が、それぞれに相応しい教育を受けられるようにすることが政治家の責務」と力説。

E「経済的格差の下におかれた子どもの底上げこそ重要であり、教育削減を法定化している行政改革推進法をかえなければならない」とし、「民主党案には、『高等教育については、無償教育の漸進的な導入』とあるが、奨学金制度を充実すべきだ」と強調。

F「外部評価による数字による評価では、数字によらない価値を現場が軽視することになってしまう」と指摘。「国の監察官による評価は信憑性がなく、『コミュニティーの評価』を普及すべき」であり、民主党案は「地域立学校化の全面的な推進を制度的に保障している」と言及。

G「教員免許を新制導入は慎重に」とした上で、「更新制を導入しても管理職の仕事が膨大になり増えるだけ」と批判。「京都市の指導力教員対策のようなものをひろげるべき」と指摘。

〔安倍首相の答弁〕
@「いのちを大切の教育については、一度失われたものは元にもどらないことをはじめ、自他の生命尊重を道徳教育の中で重視していく」「危険を察知し、自らの命を自分で守れるようにするための安全教育も推進していく」

A「政府提出の教育基本法案には、生命を尊ぶ態度や宗教に関する一般的教養について新たに盛り込んでいるが、基本的な理念や原則を定める性格の基本法案なので、インターネット問題など個別具体的なものは規定していない」

B「民主党案についての論評は控えさせていただくが、活発な議論は期待する」

C「教育予算は未来への先行投資であり、教育再生にとっても重要だが、一方厳しい国家財政の中、歳出歳入一体改革にとりくんでおり、効率化を徹底しつつ、必要な財政措置を講じていく」

D「教師の問題は、教育再生にとっても重要課題であり、教師が意欲をもち続け、その態度を高めつつ、最大限の力を発揮してもらうことが大切。そのためにも、体系的な研修の充実、優秀な成果をあげた教師に対する優秀教員表彰の実施、能力・実績に見合った教員給与体系の検討など、教員の資質向上のための取組を、積極的に講じていく」

E「経済的に余裕のない家庭の子どもに対する教育充実問題では、習熟度別少人数指導や授業時間数の確保などにより、基礎基本の定着を図るとともに、教育免許更新制や外部評価の導入を図る等、『公教育の再生』に取り組む」

F「簡素で筋肉質の国づくりのためには、教員も含めた行政改革(総人件費削減)の推進は必要。その際、公立学校の教員の質の低下をもたらさないために、習熟度などに必要な定員を確保するなどの措置をとる」

G「教育の機会均等のために奨学金制度は重要である」

H「学校の外部評価問題だが、学校が教育目標を設定し、評価を行い、改善を図る学校教育評価システムの導入は重要。この第三者評価は、客観性をもつた評価であり、地域住民の評価(『コミュニティーの評価』)にも役立つものであり、学校教育の質の向上のために必要」

I「教員免許更新制の導入は、教員の意欲や質を向上させるために寄与するもの。内閣に『教育再生会議』を発足させ、推進していく」

[伊吹文科相の答弁]
「放課後支援について、核家族化、共働き、かぎっ子現象。学力、人格にとっても重要。受け皿少ない状態。放課後支援は、少子化対策としても必要」。

[問題点として感じた点]
@安部総理の答弁は、結局、「教育の再生」論を強調するものだが、安倍構想が「第三者評価」論であることが明確になった。A鈴木議員は、迫力ある質疑をしているものの、「コミュニティー・スクール」構想等の対置に終わっている。
市田忠義(共産)
安倍晋三首相
T・K(教育基本法「改正」情報センター)

「学校選択制を全国に広げようとしている、安倍総理の教育論」を問うた市田氏は、「東京では、すでに23区中19区で選択制が導入され、その結果、入学者がゼロの小中学校まで生まれている」と指摘。また、「国が監察官を全国に配置して、学校、教師、子ども達を監視して、評価し、問題校は民間に移行させ、国家が問題だと判断した教師は辞めさせる。さらに学校を序列化した上で、国がいい学校と判断した学校には予算を配分し、悪い学校はつぶす。それでは、そこに通っていた子どもはどこにいったらよいのか」と、安倍氏の教育論の問題点を指摘。市田氏は「地域から学校をなくして、どうして義務教育が成り立つのか」と述べ、「国がやるべきことは、一つひとつの地域の学校の教育条件の充実であり、公立学校を競争させ、成果主義で淘汰する。これが、人として生きる基礎を身につける義務教育なのか」と追及。安倍氏の教育改革論は、「いまでも多くの弊害を生んでいる、管理と競争の教育に、一層の拍車をかけるものであり、教育内容に対する国家の無制限の介入を図るものだ」と批判した。

〔安倍首相の答弁〕
@「義務教育改革については、全国どこでも一定水準の教育を受けられるようにするため、その成果を把握、検証する仕組みが重要。全ての子どもに高い学力や規範意識を身につける機会を保障できるようにするため、教員の質の向上のための施策を行うと共に、学校同士が切磋琢磨して、質の高い教育を実現できるよう、外部評価を導入することが必要。その上で、問題のある教員や学校については、その再生を図ることが重要で、ご批判は当たらない」

A「教育に対する政治的責任の問題だが、近年、子どものモラルや学ぶ意欲が低下し、子どもをとりまく家庭や地域の教育力の低下も指摘されており、家族、地域、国、そして命を大切にする豊かな人間性と創造性を備えた、規律ある人間の育成に向け、公教育の再生に取り組む」

[問題点として感じた点]
安倍総理の答弁は、「義務教育の構造改革は全く正しい方向」という考え方のもの。質問者との間で、教育の根本的な把握で、大きな相違がある。
福島みずほ(社民) T・K(教育基本法「改正」情報センター)

教育について福島氏は、「安部総理はイギリスのサッチャー元首相による教育改革を絶賛しているが、今、イギリスの教育改革は見直されている。底辺校が廃校においやられる等、多くの子どもの心が傷ついている。そのことを総理はご存知か」と質問。福島氏は「安倍氏の教育改革論は、子ども達は切り捨てるものであり、公教育の破壊にほかならない」と批判。また、福島氏は「国家のために命を投げ出すことが美しいとされた戦前教育の反省から生まれたのが、教育基本法である」とし、「教育基本法は改憲すべきでない」と力説した。また、福島氏は、「日の丸・君が代予防裁判についての画期的な判決」についても、安倍首相の姿勢を問いただし、「戦後否定、憲法否定の安倍内閣と全面対決する姿勢」を強調した。
10月3日
参議院本会議

太田昭宏(公明)
志位和夫(共産)
日森文尋(社民)
安倍晋三首相
Z・Z(教育基本法「改正」センター)

今日、10月3日、衆議院本会議における代表質問をインターネットで傍聴した。

安倍新首相の答弁は、自説の復唱に留まり、質疑を通して、自己の施策を批判的に検討し、あるいは、その内容を対抗原理と調整して、より穏当なものにする、という
姿勢をまったく欠落させていた。

教育には直接関連しないが、集団的自衛権行使の研究を開始するとの方針に対する批判に、「憲法改正の目的が海外で戦争をできる国づくりとの批判はまったくあたらない。」と答弁されては、"居直り"としか言いようがない。

今日の質疑では、公明の太田昭宏氏、共産の志位和夫氏、社民の日森文尋氏が質問に立った。野党の安倍首相に対する教育に関わる質問は、新自由主義教育改革で強化される公教育の競争主義的性格、それによって生まれる格差の拡大に対する批判、東京地裁9・21判決を受け止めて、愛国心教育を見直すべきではないかとの追求、安倍がモデルとしているサッチャー教育改革がすでに失敗しているのではないかとの追求、
さらには、特攻攻撃に出撃した青年の苦悩を理解しているのかとの追及がなされていた。しかし安倍首相は、それらすべての質問に対して、"聞く耳持たず"との姿勢を示した。

東京都の日の丸・君が代強制については、学習指導要領の関連部分を読み上げて、東京都は「適切に判断し、対処していると考えている」と答弁し、それに続けて、国旗国歌に関する指導が「全国の学校において」行われるようしっかり指導すると断言していた。また、悉皆方式の学テ、学校選択、監査官による監査、懲罰的予算配分という自らの構想についても、すべての子どもにより高い学力と規範意識を身に付けさせるためには「学校同士の切磋琢磨」「外部評価」が必要という自説を強調していた。さらに、成績の低い学校に対する懲罰については、「教員、学校の再生を図るのでご指摘は当らない」とも答えていた。しかし、教員の再生は、教員の配置換えを、学校の再生は校長の首のすげ替えを意味しているのであり、これでは答えにならない。

安倍首相にとっては、内心の自由や、子どもの人間としての成長発達といったことは、考慮に値しないことなのだろう。

そして、焦点の教基法改正については、「今国会における早期の成立を図る」と、遂にはっきりと答弁したのである。

なお、太田氏への応答のなかで安倍首相は、教員給与制度の改革、すなわち、「優秀な教員の表彰」、「メリハリをつけた教員給与」制度の導入を指摘していた。また伊吹新文科省は、教育の目的が「日本人として生きていく基礎学力」「日本社会で生きて行くのに必要な社会規範」を身に付けさせると答弁していた。"良き国民形成""学テ体制""教員管理"という筋が示されていた。

議論の府である国会での論戦を、自己のプランの建設的な見直しにつなげない、という姿勢を首相が示して良いのだろうか?憲法的価値をまったく考慮しないという姿勢を首相が示して良いものなのだろうか?日本国憲法に規定された国会の国権の最高機関性と基本的人権の危機をひしひしと感じた。

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