再生会議議論したのか 総スカン『教育長任命に国関与』
意図見えぬまま改正法骨子案に議事録形跡なし
政府が今通常国会に改正法案を提出するとしている教育関連三法のうち、教育行政における国の権限強化を盛り込んだ地方教育行政法の改正骨子案が、地方自治体などから「地方分権に逆行する」と強い反発を浴びている。とくに、教育長任命の際、国が関与するとしていることには、文部科学相の諮問機関・中央教育審議会、与党も賛同者が見あたらない。同省内でも人事への関与は困難、という見方が強まっている。そもそもの提唱者の政府の教育再生会議は、何を意図してこの一項を入れたのか。議事録や議事要旨を見る限り、きちんと議論された形跡はない。
二月五日に教育再生会議が公表した教委改革の方向性に「なお、文部科学大臣が都道府県・政令指定都市教育長の任命に関与することなど、国の責任を明確化する必要があるとの考えも示された」との一項目が盛り込まれた。会議後の記者会見では人事への関与について「少数意見だったが、取り立てて反対はなかった」と、小野元之委員(日本学術振興会理事長)らは説明している。
教育再生会議が教委改革について集中審議をしたのは一月十五日と二月五日の二回。一月十五日の議事録によると、改革素案を示した小野委員は「(地方分権一括法で削除された、国の)教育長の任命・承認についての規定を元に戻すべきではないかという強い意見がある」とする一方、「本当にそういう形がいいのかどうか、議論していく必要がある」と述べている。
しかし、この後は、国の監督権の必要性などについては複数の委員が指摘しているものの、人事権についての言及はない。方向性をまとめた二月五日の会議は、議事録はまだ公開されていないが、議事要旨では議論が深まった様子はない。「再生会議の意図がどの辺にあるか分からない」(幹部)まま、同省の骨子案にも入れられたものの、中教審では地方自治体の委員ばかりでなく「(地方分権が)後戻りするという印象が強い」(三村明夫・新日本製鉄社長)など経済界からの反対意見も。自民党内も「人事の同意はダメ。そんな時代じゃない」(片山虎之助参院幹事長)と、総スカンの状態だ。
伊吹文明文科相は「人事権は法令を守らせるための間接的なけん制になる」との立場だが、任命承認とは違う形の「人事的担保」の妙案は今のところ浮かんでいない。
三月中旬の改正法案提出を目指し、異例の夜間や土日を使っての中教審開催など突貫作業が続く中、近く国の関与についての考え方も、最終調整が行われる見通しだ。
■関係団体からのヒアリング開始
教育関連三法改正についての、中央教育審議会教育制度分科会・初等中等教育分科会は二十八日午前、関係団体からのヒアリングを始めた。同日夕方までに、学校関係者や教委などがつくっている三十の関係団体が意見を述べる予定。
全国高等学校長協会の島宮道男会長は、学校教育法の副校長の新設について「形骸(けいがい)化防止のために、権限と責任を明確にすることが必要」と指摘した。
<メモ>教育関連三法改正 学校教育法改正では、校長を補佐する副校長などの職を新たに置くこと、教員免許法改正では、10年ごとの更新を義務づける免許更新制を導入することなどが、それぞれ中央教育審議会で大筋了承されている。焦点の地方教育行政法改正は(1)著しく不適正な事務をした教委に対し、国が是正・勧告できるようにする(2)教育長任命に国が一定の関与を行う(3)首長の私立学校に関する事務を、首長の求めに応じ教委が指導、助言できるようにする−などの骨子案について、中教審で意見が分かれている。
東京新聞 2006年2月28日
教育3法案 中教審10日答申へ 今国会へ提出、異例の「突貫審議」
安倍晋三首相が今国会提出を指示した教育関連三法案を検討している中央教育審議会(中教審)は二十八日、東京都内で会議を開いたが、委員の出席が過半数に満たず、改正骨子案を了承できなかった。諮問から答申までわずか一カ月という異例の日程のほころびが露呈した。文部科学相への答申は十日へと一週間ずれ込む見通し。国会への法案提出期限は十三日で、審議は、ぎりぎりの綱渡りを強いられている。
中教審は通例、諮問から答申までに「数カ月から一年かかる」(文科省幹部)とされる。今回、教員免許法改正骨子案に盛られた教員免許更新制は、二年近くの議論を経て答申していた。
「突貫審議」となったのは、教育再生会議の一次報告を法案に反映させるため。委員の日程調整が難しく、土日や夜間に長時間、会議を開く事態になった。
中教審元会長の清水司・東京家政大理事長も、この日のヒアリング出席後に「少し慌て過ぎている。もうちょっと議論を深める必要がある」と苦言を呈した。
現在、教育関連三法のうち、学校教育法と教員免許法の改正骨子案は大筋で合意。教育委員会改革にかかわる地方教育行政法は対立が続く。
当の中教審委員からも、地方分権に逆行する地方教育行政法改正は、もっと時間をかけて審議するべきだという意見が出る。
議事を進める梶田叡一分科会長(兵庫教育大学長)は「大臣が要請している以上、三法を同時に答申する。すべての委員が納得するのは難しく、両論併記もありえる」と胸の内を明かした。
北海道新聞 2007年2月28日
教員免許更新・副校長新設の改正案、中教審が了承
中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)は25日、文部科学省から示された教育改革関連3法改正案骨子のうち、教員免許更新制を新設する教員免許法改正案、副校長などを新設する学校教育法改正案を了承した。
国の教育委員会への関与の在り方を定めた地方教育行政法改正案に関しては、内容の一部に異論が出たため改めて協議する。文科省は中教審から3月初旬に答申を受けた後、3法改正案を国会に提出する。
学校教育法改正案では、昨年末に成立した改正教育基本法に基づき、義務教育の目標に「我が国と郷土を愛する態度を養う」などが盛り込まれた。学校運営の体制強化のため、幼稚園や小中高などで、従来の「校長―教頭」に加え副校長・主幹・指導教諭を設置できることなどを規定する。
教員免許法改正案では、現在、有効期間がない教員免許に更新制を導入し、10年ごと30時間の講習を義務づける。優秀教員や校長、教頭などの管理職は「必要がない」と判断されれば、講習は免除される。
地方教育行政法改正案には、教委の体制強化や責任体制の明確化などに加えて、〈1〉教委に法令違反などがあり、指導をしても改善されない場合、文部科学相が是正勧告・指示が出来る〈2〉文科相が都道府県教委の教育長の任命に関与する――ことなどを盛り込んでいる。
昨年相次いだいじめや必修逃れの際、不適切な教委の対応が目立ったことを受けたもので、現在、指導・助言などに限られる文科相の権限を強めるものだ。
緊急措置として国が発動する勧告や指示に関しては、「国が果たすべき責任を担保するため、権限はあってもいい」などと容認する意見が大勢を占めたが、結論は持ち越した。
一方、都道府県教育長の任命への文科相の関与については、「地方分権に逆行する」などとして法案に盛り込むことへの疑問の声が相次ぎ、改めて協議することになった。
中教審は28日に関係団体からのヒアリングを行った上で、地方教育行政法改正案について最終調整を行う予定だ。
讀賣新聞 2007年2月25日 22:11
教委見直しで公開討論を要求=規制改革会議
政府の規制改革会議の草刈隆郎議長(日本郵船会長)は23日午前の会合後の記者会見で、教育委員会制度改革をめぐって文部科学省に公開討論を申し入れたことを明らかにした。同省は「多忙」を理由に消極的だという。
同会議は、政府の教育再生会議がまとめた国の権限強化を柱とする教委制度改革案に反対を表明。草刈氏は会見で「一方的にああいう(教育再生会議の)意見だけ(検討したの)では、非常に浅い議論に終わる」と指摘した。
公開討論で草刈氏は、いじめなどを理由にした転校は容認すると閣議決定されているにもかかわらず各地の教委が対応していない問題も取り上げる方針。また、教育改革関連法案の国会提出に向けて議論している中央教育審議会のメンバーとの意見交換も求める考えだ。
一方、同日の会合では5月の答申提出に向け、(1)育児休業取得の円滑化(2)医療のIT(情報技術)化の促進(3)港湾・航空・物流インフラに関する制度・運用の改革−など7項目に重点的に取り組むことを決めた。(了)
時事通信 2007年2月23日
文科省 国の権限強化盛る 地方教育行政法の改正案
文部科学省は21日、著しく不適正な事務処理をした教育委員への国の是正勧告・指示権や、都道府県の教育長を任命する際の国の関与を明記する地方教育行政法改正案の方向性を取りまとめ、中央教育審議会に示した。国の権限強化をめぐっては「地方分権の流れに逆行する」として中教審内部でも意見は分かれている。同省では一般の意見を募ったうえで改正法案を作り、今通常国会に提出する予定。
2000年施行の地方分権一括法で、国から教委への是正要求権や、教育長の任命承認権は削除された経緯がある。
いじめ問題での一部の教委の対応のまずさや、必修科目の未履修問題から、国会では国の責任を明記するよう求める声が出ていた。政府の教育再生会議も国の是正勧告権を提唱している。また、現在、首長部局会が所管する私立学校に対し、首長の求めに応じて教委が指導できるようにすることも新たに盛り込んだ。
このほか学校教育法改正では、教育基本法改正に伴い「我が国と郷土を愛する態度」などを養うことを小中学校の目標に盛り込むなどとした骨子案を示した。10年ごとの更新を柱とする教員免許法改正案の骨子案では、勤務実積が優秀と認められた場合などは、更新の際の講習を免除することなども盛り込んだ。
文科省は学校教育法改正案と教員免許法改正案の骨子案と併せ、国民に意見を募る。
東京新聞 2007年2月22日
教員免許更新、管理職は講習免除 教育2法案ほぼ固まる
文部科学省は21日、文科相の諮問機関の中央教育審議会(中教審)に、政府が今国会への提出を目指している教育関連3法の改正案の概要を示した。教員免許更新制では校長ら管理職の講習免除を盛り込んだ。この更新制や義務教育の目標、副校長や主幹の新設には大きな異論が出ず、2法案の内容がほぼ固まった。一方、教育委員会のあり方をめぐっては意見が対立したままだ。
文科省は同日、3法案について意見募集を実施すると発表した。通常の「パブリックコメント」は30日間で締め切るが、今回は22日から1週間のみ。突貫ぶりが改めて浮き彫りとなった。
教員免許の更新制導入は教員免許法の改正案に盛り込まれる。免許の有効期間を10年とし、更新には講習を受けなければならないとする内容で、06年の中教審答申とほぼ同じになった。講習は30時間を想定し、校長や教頭など勤務実績を考慮して「必要性がない」と判断された場合は、講習の必要がないとした。指導力不足教員対策として、同時に教育公務員特例法も改正し、認定された場合は研修を受けなければならず、研修中は免許更新の対象にしない。
学校教育法の改正では、これまで学校種別に設けていた教育の目標のほかに「義務教育の目標」を新たに設定。教育基本法の改正で入った「公共の精神」や「我が国と郷土を愛する態度」などを盛り込む。また、これまでの中教審の議論を踏まえ、学校の自己評価とその公表の義務化や、副校長や主幹、指導教諭の新設も提案している。
この二つには、21日の会議で大きな異論は出ず、このまま法案となる可能性が高い。しかし、地方教育行政法の改正では、政府の教育再生会議が提案した、教育委員会への国の是正勧告・指示権を盛り込むことを中心に21日も反対意見が出ている。
朝日新聞 2007年2月22日
指導力不足の研修中は更新停止=文科省
文部科学省は21日、教員免許更新制に関する教育職員免許法改正案の原案を、教育関連3法の改正を議論している中央教育審議会(文科相の諮問機関)の分科会に示し、大筋で了承を得た。
原案は、政府の教育再生会議で異論も出た免許の有効期限を「10年間」と明記。勤務実績などに応じて更新講習を免除する一方、指導力不足の認定を受け研修中の教員に対しては更新を停止することも盛り込まれた。
同日の分科会では、学校教育法改正案の原案も大筋で了承された。原案は、校長、教頭らを補佐する「副校長」や「主幹」、教育指導に関する指導・助言を行う「指導教諭」の新設のほか、教育基本法改正に伴う各学校の目標などを規定。義務教育の目標には、「我が国と郷土を愛する態度」の文言で「愛国心」が盛り込まれた。
教育委員会制度に関する地方教育行政法に関しては、同省が改正の方向性として(1)市町村教委に指導主事設置を義務付ける(2)首長の求めに応じて教委が私立学校に対し、指導・助言・援助をできるようにする―ことなどを新たに提示。焦点の教委に対する国の権限に関しては、「現行制度で対応できる」などと反発があり、意見が分かれた。(了)
時事通信 2007年2月22日
教育再生会議2次報告、大胆な具体案を=首相
政府の教育再生会議(野依良治座長)は22日午前、安倍晋三首相も出席して首相官邸で合同分科会を開き、5月末にまとめる予定の第2次報告に向けた議論に
着手した。首相は「次の報告に向け、(教育の)再生にふさわしい枠組みを示してもらいたい。今までできなかった具体策を示していくことで、全面的な大きな
変化も可能になってくる」と述べ、教育改革の実現へ大胆な具体案をまとめるよう求めた。
会合では、ゆとり教育見直しの具体策や乳幼児教育の充実、大学・大学院教育システムの改革などを、今後の重点テーマとして検討していくことを決めた。また、自由な学校選択を可能にする教育バウチャー制度や大学の9月入学についても、議論の対象とすることを確認した。
一方、現在は非公開の再生会議の論議を公開するかに関しても議論。委員の間からは慎重論も出たため、野依座長に対応を一任した。(了)
時事通信 2007年02月22日
教育振興計画の答申は7月以降・中教審部会が初会合
教育の政策目標を定める「教育振興基本計画」について審議する中教審特別部会の初会合が21日開かれ、今年5―6月に中間報告をまとめ、7月以降に答申するスケジュールを決めた。
答申後、文部科学省は今後5年間の具体的な目標を盛り込んだ基本計画を策定。2007年度中の閣議決定を目指す。
昨年成立した改正教育基本法は、政府に基本計画の策定と公表を義務付け、地方自治体も地域の実情に応じた計画策定に努めるよう求めている。
この日の会合では、委員から「国の教育予算があまりに少ない」と財政措置の充実を求める意見が相次いだほか、家庭、地域との連携や政策評価の必要性などについて指摘があった。
共同通信 2007年2月22日
教委見直し国関与案、はや暗雲 中教審から異論噴出 教育委員会と国の権限をめぐる発言・提言
文部科学相の諮問機関の中央教育審議会は16日夜、都内で会議を開き、教育関連3法案の審議を本格的に始めた。伊吹文科相は「3月早々にも」まとめるよう求めているが、教育委員会のあり方を定める地方教育行政法をめぐっては意見が対立。政府の会議や与党内の意見もまとまっておらず、方向性さえ定まっていない。最終的には安倍首相自ら判断する必要に迫られそうだ。
3法案を審議するための中教審の会議は今後2週間に4回ある。とりわけ25日の日曜日は朝から夜まで予定され、結城章夫・文科事務次官も「極めて異例」と認める「突貫審議」となる。
だが、教育委員会改革での意見集約は容易ではない。政府の教育再生会議が5日に案をまとめた直後から、文科相が教委に是正の勧告や指示ができるよう国の権限を強めるべきだとした点に批判が集中したからだ。
翌6日には全国知事会、市長会、町村会の会長が「地方分権の観点から問題がある」と抗議。
16日の会議では、北脇保之・静岡県浜松市長が「地方分権の議論を蒸し返す必要はない」、中村正彦・東京都教育長が「案からは教育委員会制度への不信感を感じるが、なぜこういうことが出るのか」と批判が相次いだ。
一方、15日には政府の規制改革会議が「地方分権の流れに逆行する」と反対する見解を発表。同会議には、再生会議で教委改革案をまとめた白石真澄・東洋大教授が入っており、文科省からも「不一致ではないのか」と疑問の声が上がる。
「義務教育費は国の一部負担。『金は出すが口は出さない』では責任は全うされない」「規制改革会議の横やりは不快だ。是正命令も出せない状況は解決しなければ」
16日の自民党教育再生特命委員会では、教育行政に国の関与を求める意見が相次いだ。背景には「教育委員会が日教組支配でゆがめられている」(中山成彬委員長)との思いがある。
自民党が昨年まとめた教育改革案でも「問題がある教委には国の是正措置が確実に実行される法令改正」などを提言しており、方向は再生会議と一致している。ただ、政調幹部が悩むのは、地方分権とのバランスと公明党との調整だ。
是正命令の復活は、地方分権の流れに逆行しかねない。総務相を経験した片山虎之助参院幹事長は元文科相の河村建夫政調会長代理に「配慮して欲しい」と求めている。
公明党は戦前、支持母体の創価学会が宗教統制による弾圧を受けた経験から国の介入を嫌う傾向が強い。再生会議の案を一読した党幹部は「教育は政治権力から独立したものでなくてはならないのが立党の精神。国の指示が行き渡らないから見直すという考え方は、絶対に相いれない」と反発した。
とはいえ、安倍首相と足並みをそろえ、統一地方選や参院選に向け改革をアピールしたい思いもある。「国の管理を強めるかどうかというイデオロギー対立には持ち込みたくない」(公明党幹部)というのが本音だ。
中教審や与党の議論を経て、最終的にどのような法案になるのか。
自らも教育再生会議の一員である塩崎官房長官は15日の会見で「再生会議の意見と言われているものは分科会での意見にとどまっている。規制改革会議の意見などを含めて幅広い国民の意見を聞きながら法案化する」と慎重姿勢をとった。
一方、渡辺・規制改革担当相は16日の会見で「分権改革というのも安倍政権の一大課題。相反するかのように見える要請をいかに同時に満たしていくか、ということが政治家のわざじゃないんでしょうか」と述べた。
安倍首相は15日夜、記者団に「いろんな意見があるなかで議論をしながら最後は私が判断をしたい」と語った。
朝日新聞 2007年2月17日
教育再生会議案に規制改革会議から異論 「分権に逆行」
政府の規制改革会議(首相の諮問機関、議長・草刈隆郎日本郵船会長)は14日、教育再生会議の教育委員会改革案について、文部科学省の権限が拡大しないよう求める意見書をまとめた。15日にも公表する。文科相の教委に対する「是正の指示」や教委の第三者評価機関の設置に関し、再生会議案では地方分権に逆行しかねないと強い懸念を示している。安倍首相が重視する教育改革をめぐって足もとで意見が割れている状況で、首相が今国会への早期提出を目指す教育関連3法案の作成作業にも影響を与えそうだ。
教育再生会議が5日公表した教委改革案は教委の事務処理が法令に違反したり、教育本来の目的達成を阻害していると認められたりした場合、文科相が「是正のための勧告」や「是正の指示」をできるよう法改正を提言した。これに対し、規制改革会議の意見書は「文科省による裁量行政的な上意下達システムの弊害を助長することがあっては断じてならない」と指摘、文科省の権限拡大に強い懸念を示した。
また再生会議案が、都道府県教委や政令指定都市教委を「第三者評価」する仕組みとして「国の独立行政法人を活用することなどを含め、引き続き検討する」としたことについて、意見書は「所管省庁の関連組織への委託は第三者評価たりえない」と指摘した。
文科省は、再生会議の第1次報告や教委改革案を受け、文科相の諮問機関の中央教育審議会への諮問・答申を経て、地方教育行政法改正案など教育関連3法案の作成に入る方針だ。安倍首相は今国会に同法案を提出する意向を示しており、伊吹文科相は中教審に対し、2月中か3月上旬までの約1カ月の集中審議で答申するよう要請した。
ただ、再生会議の教委改革案については全国知事会など地方団体からも「国の教委に対する統制を強化し、地方分権一括法改正前の教育行政に後戻りさせかねないもので、受け入れられない」とする申入書が政府に提出された。規制改革会議が文科省の権限拡大を強く牽制(けんせい)したことで、法案の軌道修正を余儀なくされる可能性もある。
もともと規制改革会議は、前身の規制改革・民間開放推進会議でも教委改革に取り組み、小泉政権下だった昨年7月末、教委の権限を首長に移すために設置義務の撤廃を主張するなど、「分権色」の強い中間答申をまとめていた。
だが、安倍政権となった昨年末の最終答申の取りまとめでは、文科省側が難色を示したことなどから「(教委制度の抜本改革を行うと明記した)『骨太の方針』や教育再生会議の意見も踏まえて法改正を行う」との表現に落ち着いた経緯がある。
朝日新聞 2007年2月15日
いじめでの転校認める「学校選択制」、従わぬ教委公表へ
いじめを受けた場合などに通学する学校を替えることができる「学校選択制」や、保護者らによる「教員評価制度」を巡り、政府の規制改革会議(議長・草刈隆郎日本郵船会長)は、両制度の導入促進を決めた閣議決定に従わない教育委員会の実名を近く公表する方針を固めた。いじめ問題への対応を急ぐため、実名公表で教委に導入を促す必要があると判断した。
両制度の導入促進は、同会議の前身の規制改革・民間開放推進会議がまとめた政府の3カ年計画に盛り込まれ、昨年3月に閣議決定された。実名公表は制度の導入に消極的な教委の姿勢を改め、保護者らへの周知を進めるのが狙い。だが、教委側の反発も予想され、導入促進につながるか不透明な部分もある。
内閣府が昨年秋に、全国802市・特別区の教委を対象に実施したアンケートでは、在学中の児童・生徒の保護者からいじめなどを理由に学校変更の申し立てがあっても「拒否する場合がある」と答えた教委が391市区にのぼった。規制改革会議は「省庁の抵抗を押し切って閣議決定に持ち込んでも、現場レベルで骨抜きにされている」(関係者)と危機感を強めている。学校を変更できる要件や手続きの明確化を定めた学校教育法施行規則に従っていない103市区の教委名なども公表する方針だ。
アンケートでは、391市区の中には「いじめは指導により100%解決すべきもの」(埼玉県加須市)と学校での指導に自信を見せる回答があったほか、「保護者らから何の根拠も示されないで申請される場合も想定される」(群馬県伊勢崎市)、「一個人のわがままとしか解釈できない場合(は拒否する)」(岐阜県郡上市)など、乱用を懸念する回答もあった。同じ時期に保護者2300人余りが回答したアンケートでは、7割近くが学校選択制に賛成だった。
一方、児童・生徒や保護者による教員や学校の評価制度については、市町村教委に対して制度導入を「促していない」と回答した宮城、神奈川、岐阜、愛知、和歌山、大分の県教委名を公表する方針。
朝日新聞 2007年02月11日 08:01
指導力不足教員の認定や研修を義務づけ 全国基準作成へ
文部科学省は、これまで各都道府県・政令指定都市の教育委員会がそれぞれ仕組みを定めていた「指導力不足教員」の認定や研修について、国としての基準を定める。9日あった自民党の教育再生特命委員会で、今国会に提出予定の教育公務員特例法の改正案の骨子を示し、了承された。
授業を成立させられないなど指導力に欠ける教員については、人事権がある都道府県と指定市の教委すべてで認定や研修を行っている。05年度は全国で506人が「指導力不足」と認定され、このうち342人が研修を受けている。
しかし、認定の基準については、「児童または生徒の心を理解する能力や意欲に欠ける」(宮城県)といった6項目の基準を定めている教委もあれば、「児童生徒を適切に指導できない」(愛知県)と抽象的な表現にとどめる教委もある。また、認定後の研修の内容も、研修期間の上限が「1年」(京都府)だったり、「上限なし」(佐賀県)だったりと、ばらばらの状態だ。
文科省はこれまで、指導力不足対策について「任命権者である教委が決めること」という姿勢だった。しかし、政府の教育再生会議が対応の厳格化を求めたこともあり、全国統一の基準が必要と判断した。具体的な基準は、法改正を教委に通知する際に明記するなどして示すという。
骨子では、このほか、教員免許更新制が導入された際には、(1)指導力不足で研修中の教員は、研修終了まで免許を更新しない(2)研修でも改善が見られない場合は、分限処分などによって学校現場から排除する――などの方針も示している。
朝日新聞 2007年02月10日 06:07
<伊吹文科相>山谷補佐官の「中教審改革」発言を批判
伊吹文科相は9日の記者会見で、政府の教育再生会議で文科省の中央教育審議会の改革を検討するとした山谷首相補佐官の発言を批判し「最後にどうするかは安倍首相なり内閣が決めることだ。首相はそういうことはしないと言っている」と述べ、中教審の見直しを否定した。
毎日新聞 2007年2月9日 12:55
(中教審は)再生会議よりオープン=文科相
伊吹文明文部科学相は9日の閣議後会見で、山谷えり子首相補佐官が中央教育審議会(文科相の諮問機関)の在り方を政府の教育再生会議で見直すと発言したことに関連し、「別に中教審について意見を言っても構わないが、どうするかは総理なり内閣が決めること」と話し、「審議会そのものは公開しているわけで、再生会議よりはオープンだと思う」とけん制した。
さらに同相は、「いろいろ再生会議だとか総理の私的諮問機関だとかあるが、ここが何か言ったから行政をやるということではない」と、「官邸主導」の各種会議の在り方にクギを刺した。(了)
時事通信内外教育版 2007年2月9日
是正勧告、教育長承認で綱引きへ−文科省
文部科学省は、教育委員会制度の見直しに向け、教育行政法(地教行法)の改正案を3月中旬をめどに国会提出する方針を決めた。安倍晋三首相の強い意向を踏まえたもので、中央教育審議会(文科相の諮問機関)は今後約1カ月間、分科会で集中審議を行う。同省としては、教委に対する是正勧告、教育長の任命承認に関する権限を盛り込みたい考えで、1カ月という短い時間内に自治体側と折り合うことができるかどうかが焦点となる。
「骨太方針2006」は教育諸制度の見直しについて、「十分機能を果たしていないなどの指摘を踏まえ、教育の政治的中立性の担保に留意しつつ、教育行政の仕組み、教委制度について、抜本的な改革を行うこととし、早急に結論を得る」と言及。その後、高校必修科目の履修漏れやいじめ自殺といった問題が続き、教育基本法改正の国会審議などで「教育行政の責任の所在」を問う声が相次いだ。
骨太方針などを受け、文科省は当初、(1)教職員人事権の中核市への委譲(2)教育委員の人数の弾力化(3)所管事務の一部の首長部局への移管―などを軸に地教行法改正案を今国会に提出する方針だった。しかし、昨年後半に相次いだ問題を踏まえ、同省はさらに踏み込んだ抜本的な見直しが必要と判断。今国会提出は見送り、議論を深める方向だった。
これに対し、内閣の最重要課題に掲げる「教育再生」で実績づくりを狙う官邸サイドが、地教行法に加え、学校教育、教育職員免許の教育関連3法の今国会提出を強く要望。安倍首相の指示を受け、伊吹文明文科相は「宿題としては気が重い」としながらも、法案提出期限の3月13日をめどに改正案を提出する方針を表明した。
教委制度改革をめぐっては、現行では都道府県にある教職員の人事権の市町村への委譲など、自治体間で賛否が分かれる問題もあるが、最大の焦点となるのは国の権限強化。国と教委の関係では、2000年の地方分権一括法施行により、文科相の都道府県教育長の任命承認権、教委への是正要求権が撤廃された経緯がある。いずれも国の関与を避けるのが目的だった。
しかし、伊吹文科相は06年9月に就任して以来、国が教委に対し権限を持たないことについて、「靴の上から足をかくよう」などともどかしさを繰り返し訴え、国が一定の権限を強化する考えを示唆してきた。国会審議や政府の教育再生会議を通じ、流れは権限強化の方向だ。
政府の教育再生会議が先ごろまとめた教委改革の提言案には、文科相の是正勧告・是正指示権に加え、「文科相が都道府県・政令指定都市教育長の任命に関与する」の文言が盛り込まれている。是正勧告・是正指示については、文科省以外でも必要性を指摘する声は多いが、教育長の任命承認に関しては、論じられることは少ない。一方で、伊吹文科相は任命承認権の必要性を強く主張しており、再生会議側がこうした意向もくみ、提言案に盛り込んだものとみられる。
国の権限強化の動きに対し、自治体側からは「地方分権の精神に逆行する」などと、既に反発の声が出ている。中教審でも、自治体や教委代表の委員が反対の姿勢を示した。
ただ文科省、文科相側のスタンスは、教育行政への関与を強めることではなく、「国の責任の明確化」。必修科目の履修漏れのように、明らかな違反が全国的に問題になったようなケースで、「国には権限がない」として直接指揮できなかった状況を改善するのが目的であり、こうした点が自治体側に理解されるかどうかが焦点になりそうだ。(了)
時事通信内外教育版 2007年2月9日
<山谷補佐官>「中教審改革」発言、首相の否定に一転撤回
安倍晋三首相は8日、山谷えり子首相補佐官(教育再生担当)が政府の教育再生会議で中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)改革を検討する考えを示したことについて、「中教審は教育のあるべき姿について議論している」と述べ、否定した。首相官邸で記者団に答えた。
塩崎恭久官房長官も同日の記者会見で「再生会議で(中教審改革を)議論する話はまったく聞いていない」と否定。その後、山谷氏は毎日新聞の取材に「(中教審を改革すべきだとは)言っていない」と発言を撤回した。
政府は教育関連3法案の今国会提出を目指しているが、諮問先の中教審内に「拙速だ」との声がある。首相官邸にはこれへの不満があり、山谷補佐官の発言は行き過ぎたけん制だったようだ。
山谷氏は7日の講演で、中教審について「大ざっぱなことを延々と議論している。再生会議でメスを入れていきたい」と発言していた。【平元英治】
毎日新聞 2007年2月8日 19:26
山谷補佐官の発言を否定=中教審の見直しに慎重−安倍首相
安倍晋三首相は8日昼、首相官邸で記者団に対し、中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)の在り方を政府の教育再生会議で見直すとした山谷えり子首相補佐官の発言について、「それはありません。あくまでも教育再生会議では、教育再生について熱心に議論してほしい」と述べ、明確に否定した。
時事通信 2007年2月8日
民主、教員免許法改正案に対案 養成課程6年制を柱
民主党は7日、教育基本問題調査会(会長・鳩山由紀夫幹事長)を開き、政府が今国会に提出予定の教育関連3法案のうち、教員免許更新制を導入する教員免許法改正案の対案を策定することを決めた。教員養成課程を6年制とすることを柱に検討する。
政府の教員免許法改正案は、中央教育審議会が昨年答申した「10年ごとに30時間の講習実施」がベースになるとみられる。この点について民主党では、手続きや費用、効果の点でむだが多いとの意見が出ている。
教員免許は現行では4年制大学で教職課程を選択し、必要な単位を取得すれば取れる。民主党案では、教員養成段階から教員の資質を向上させることに主眼を置くことになる。
朝日新聞 2007年2月8日
中教審、3月答申目指す 伊吹文科相が集中審議要求
文部科学相の諮問機関の中央教育審議会(中教審)は6日夜、第4期の委員が就任して初の総会を都内で開いた。安倍首相が通常国会に提出する意向を示している教育関連3法案をめぐり、伊吹文科相は「2月中か3月上旬にはまとめていただきたい」と述べ、約1カ月の集中審議で答申するよう求めた。
一方、委員の石井正弘・岡山県知事は審議の対象となる教育委員会制度をめぐり、政府の教育再生会議の案について「地方分権の観点から大きな問題がある」と発言。審議は初回から波乱含みの展開となった。
再生会議は5日、教育委員会の事務が「著しく適正を欠く」場合には、文科相が是正の勧告や指示ができるとする改革案をまとめた。これに対し、石井知事は総会で「地方分権一括法で国と地方の関係を対等としたのに、逆戻りさせる内容だ」と反発。宮城篤実・沖縄県嘉手納町長も「石井知事らと、地方の苦悩について発言していきたい」と語った。
朝日新聞 2007年02月06日 23:05
文科相が教委に是正勧告 いじめ不対応などの場合
政府の教育再生会議は5日、都内で第1分科会(学校再生)を開き、教育委員会の抜本改革について集中的に議論を行った。法令違反や著しく適正を欠く対応を取った教委に対し、文部科学相が是正勧告や是正指示を行えるよう求めた素案を了承した。
近く開く総会で素案を決定し、今国会に提出される予定の地方教育行政法改正案に盛り込むことを安倍首相に求める方針だ。
素案では、国と教委の関係について、学校現場や教委に権限を移譲する「地方分権の考え方が基本」としながらも、現在、指導・助言・援助などに限られている文科相の教委に対する権限について、是正勧告や是正指示の権限を付与するよう求めている。
分科会後、記者会見した小野元之委員は「(是正勧告権は)伝家の宝刀としては必要」と強調した。また、白石真澄委員は是正勧告・指示を行う例として、「教委がいじめへの対応を取っていないとか、いじめに関する調査を怠っていること、教えるべき内容を教えていないこと」などのケースを挙げた。
教委制度では、2000年施行の地方分権一括法によって、文科相による都道府県教育長の任命承認権や、教委への是正要求権が撤廃された経緯がある。しかし、昨年全国で相次いだ必修逃れや、いじめによる自殺に対する教委の不適切な対応など、「本当の有事の際に、国が見守るしかないのが現状だ」(義家弘介・再生会議担当室長)などの意見が相次ぎ、国の権限を強化する方向での見直しの機運が高まっていた。
讀賣新聞 2007年2月6日
<教育再生会議>教委改革案を大筋了承 是正命令権論議に
政府の教育再生会議第1分科会は5日、教育委員会改革に関する提言の最終案を大筋で了承した。国が「教育の目的達成を阻害している」と認定すれば、教委に是正勧告や是正指示を行えるよう権限を与える制度を提唱したが、99年の地方分権一括法で廃止された是正命令権を事実上復活させるもので、議論を呼びそうだ。
毎日新聞 2007年2月5日 22:36
<安倍首相>教育関連3法の改正案提出改めて指示
安倍首相は5日、首相官邸に伊吹文部科学相を呼び、教育関連3法の今国会改正を改めて指示した。3法は学校教育法、教員免許更新制を新たに導入する教員免許法、教育委員会制度を定めた地方教育行政法。伊吹文科相は「統一地方選を前にスピードアップしなければならない」と3月中旬までに改正案を提出する考えを伝えた。
毎日新聞 2007年2月5日 19:38
「ゆとり見直し」先行 第4期中教審
中央教育審議会(中教審、文部科学相の諮問機関)が今月、新たなメンバーで審議を始める。省庁再編で文科省が発足してから「第4期」にあたる今後2年間は、山積する課題の中で、第3期から持ち越しとなった学習指導要領の改訂が焦点の一つだ。安倍首相肝いりの教育再生会議は「ゆとり教育」の見直しを打ち出したが、具体像ははっきりしない。中教審のこれまでの審議を振り返り、今後の課題を探った。
指導要領の見直しを担当するのは、中教審の教育課程部会。これまでの議論で、国語力や理数教育を充実させることが必要だ、などの点でおおむね合意している。
ただ、ある教科の授業内容を増やすには、総授業時間数を増やさない限り、別の教科で減らす必要がある。全体の授業時間をどうするかはまとまっていないうえ、「これを減らすべきだ」という意見の一致もない。1月26日の会議では深谷孟延・愛知県東海市教育長が「指導要領に何かを盛り込む話はあっても、では何を減らせばいいのかという話がほとんどない」と指摘した。「削減」がこの先の大きな焦点になりそうだ。
その対象としてあがるのが「総合的な学習の時間」(総合学習)だ。しかし、なくしてしまうと、「自ら考える力を育む」という現行指導要領の理念の否定にもなりかねない。第4期委員への「引き継ぎ事項」が検討された1月23日の教育課程部会の会議では、角田元良・聖徳大付属小学校長が「(総合学習は)きちんと残していくんだということは議論もされ、根底に流れていることだったが、(資料での)この書きぶりだと、なくなることを含めて見直しとなる。残すものは残すべきだ」と苦言を呈した。
第3期中に指導要領の見直しが終わらなかったのは、昨年秋以降の国会で教育基本法改正の論戦が続き、中教審がストップしたため。今後の審議では、成立した改正法が打ち出した理念をどう現場に反映させていくかが課題となる。
中教審が教育再生会議とどう向き合っていくのかも焦点だ。
再生会議は1月末にまとめた第1次報告で、指導要領に関連する項目として「ゆとり教育の見直し」や「授業時間数の10%増」を打ち出した。安倍政権の目玉だけに注目が集まっているが、中教審では以前から指導要領改訂の作業を進めてきたこともあり、委員の反応は冷ややかだった。
第3期の最後の総会となった1月30日、鳥居泰彦会長=1月末で退任=は「(再生会議と中教審は)どちらが主導権を持っているのかと聞かれるが、中教審は中教審としての責務を淡々と果たす」と発言。1月23日の会議では田村哲夫・渋谷教育学園理事長も「たくさん知識を与えたいというのはみんな思っているが、ゆとりは、現場が『もう持たない』というところから出てきた。それを無視し、ただ増やせばいいということだけは避けてほしい」とくぎを刺した。
◇
学習指導要領改訂をめぐる状況
《第3期中教審(07年1月までの2年間)の合意事項》
○「生きる力」を育む現行指導要領の狙いは重要だが、実現への具体的な手だてが必要
○基本的な知識や技能の育成と、自ら学び考える力の育成は二者択一ではなく、総合的にとらえるべきだ
○国語力や理数教育の充実が必要
《これからの検討課題》
○具体的な授業時間数の増減、土曜日や長期休暇の活用方法
○各学校段階にあわせた「到達目標」をどう設定するか
○小学校段階での英語教育のあり方
○探究型の学習を発展させるための指導方法の工夫と改善
○高校段階の必修科目の履修漏れ問題を受けた検討
◇
キーワード 〈学習指導要領〉 学校で教える内容を決めたもので、中教審の答申に基づいて文科相が告示する。学校の完全週休2日制が始まった02年4月からの現行要領は「総合的な学習の時間」の実施、教科内容の削減などを盛り込み、「ゆとり教育」を前面に出した。しかし、学力低下が社会問題となって施行前から批判が集中。03年には指導要領が「最低基準」と位置づけられ、それを超えた「発展的な学習」を認める一部改訂が行われた。
第3期中教審がスタートした05年2月、中山成彬文科相(当時)が指導要領の全面的な見直しを中教審に要請。教育課程部会が39回、それぞれの教科などを検討する専門部会が計135回開かれたが、07年1月までの任期中に答申には至らなかった。
朝日新聞 2007年02月05日 11:40
文科省、体罰の範囲を通知へ 居残り・起立は許容も
伊吹文部科学相は2日、学校での体罰の範囲や出席停止の適用などについて、来週にも、全国の教育委員会などに通知を出すことを明らかにした。旧文部省時代を通じて、文科省が体罰の解釈について通知を出すのは初めて。ただ、体罰の政府の解釈そのものは変わらない。
政府の教育再生会議が第1次報告で、終戦直後に出された通知を見直すよう求めたことを受けた。
今回の通知では、学校教育法が禁じている体罰の解釈は変えない。ただし、(1)生徒を放課後居残りさせたり、授業中に起立させたりするなどの行為は「肉体的苦痛が伴わない限り、体罰でない」(2)授業を妨害した生徒の携帯電話を預かることは許される(3)教師が生徒の頭を数回軽くたたいたことが「体罰ではない」と認められた裁判例がある――など具体例を明記する。
出席停止については、「懲戒ではなく、学校の秩序を維持し、他の子の学習権を保障する制度」と強調し、実施する際には▽停止を受ける子どもの指導計画を作成する▽教師を孤立させず、教育委員会なども支援する――ことが必要と念を押すという。
朝日新聞 2007年2月4日
地域間格差 所得格差「小泉政権下で拡大」実証 本社集計
99〜04年の全国の市区町村の納税者1人あたりの平均所得に関し、格差の度合いを示す「ジニ係数」を年ごとに割り出したところ、02年を境に上昇したことが3日分かった。ジニ係数は毎日新聞が東京大大学院の神野直彦教授(財政学)の協力を得て割り出した。平均所得の最高値と最低値の差は3.40倍から4.49倍に拡大、小泉純一郎前政権の間に地域間格差が開いたことを示した。神野教授は「感覚的に論じられてきたものを初めて定量的に示せた」と指摘しており、地域間格差は4月の統一地方選の主要争点になりそうだ。
ジニ係数は所得の不平等度を0〜1の間で表す数値。「0」は完全な横並びで、数値が高いほど格差が開き、「1」は1人(1カ所)だけに所得が集中する状態となる。
毎日新聞は、総務省が毎年まとめる「市町村税課税状況等の調(しらべ)」に基づき、年ごとに市区町村別の総所得金額をその自治体内の納税者数で割って平均所得を確定。これをジニ係数を求める公式に当てはめた。
その結果、99〜01年はほぼ横ばいだった数値が02年の0.070を境に上昇に転じ、04年には0.079になった。国内の個人所得のジニ係数が99〜04年で0.007ポイント上昇というデータがあることが「格差論争」の根拠の一つとされており、市区町村別が2年間で0.009ポイント上昇したことは大きな数字だという。
平均所得の上位はほとんどが大都市部。04年には東京23特別区のうち9区が上位20自治体に入った。これに対し、下位は軒並み高齢化の著しい町村部。最高値と最低値はそれぞれ、99年は東京都港区の751万円、秋田県東成瀬村の221万円で、04年が港区の947万円、北海道上砂川町の211万円だった。
神野教授とともに作業にあたった慶応大大学院経済学研究科の宮崎雅人氏は「小さい所を大きな所が吸収するケースを考えれば、平成の大合併はジニ係数を下げる方向に働いたはずだ。実際の格差拡大は今回の結果より大きいのではないか」と分析している。【統一地方選取材班】
◇ジニ係数 所得の不平等感を0〜1の間で示す数値。「0」は完全な横並びで、数値が高いほど格差が開き、「1」は1人だけに所得が集中する状態となる。イタリアの統計学者、C・ジニが考案した。日本の個人所得のジニ係数は80年前後から上昇。どの統計を使うかで数字は異なり、0.2台〜0.4台と幅広い結果が出ている。今回は各自治体の平均所得を使ったが、個人所得の差よりも平均所得の差の開きは少ないため、0.07台という低い水準で推移することになった。
毎日新聞 2007年2月4日 16:56
<教育再生会議>教委評価の第三者機関、月内に具体案提示
政府の教育再生会議は2日、東京都内で運営委員会を開き、今月中旬にまとめる教育委員会改革に関する提言で、教委が行う学校運営や教員人事が適切かどうかをチェックする国の第三者機関のあり方を提示することを確認した。国が不適切と判断した場合の勧告権の是非も含め、5日の会合でさらに検討する。
毎日新聞 2月3日 01:51