〜2006年8月 市民・識者の声(2006年9〜11月) 2006年12月〜


教育基本法「改正」反対講師マニュアル(リンク)


[声明]教育基本法「改正」案の衆議院採択を抗議し,現行教育基本法の精神に則った,今日の教育問題に関する論議を求める

政府・与党は2006年11月16日、衆議院本会議において教育基本法「改正」案を強行採決しました。私たちは、この採決に強く抗議するものです。

政府・与党は,「十分審議した」と主張していますが,特別委員会の審議を通して,なぜいま「改正」しなければならないのか,教育基本法の「改正」によって現在の教育をめぐる問題にどのような改善が図られるのか,合理的な説明はいっさいなされていません。それに加えて,9月2日の八戸市をはじめ全国各地のタウンミーティングでの「やらせ」,さらには発言者に「謝礼」が支払われていたという驚くべき事実が明らかになり,民意を陰で操作する実態に強い懸念をいだきます。こうした国民主権を愚弄する行為によって,子どもたちの未来を左右する教育のあり方を根本的
に改変することは,絶対に許されるものではありません。

現行の教育基本法は,戦前の教育が戦争遂行に奉仕したという事実を反省し,教育の役割を,子どもの人間としての発達とそれに不可欠な生活と学びの権利を保障することに定め,すべての子どもたちが発達の可能性を拡げていく基盤となってきました。それに対して,「改正」案では,国家による統治機能の一環として教育をとらえ,これまで教育の条件整備に抑制されていた教育行政のあり方を大きく変えて,時々の政府・行政官庁による権力的統制を可能にする道を開こうとしています。しかも,本来,一人ひとりが自主的自律的に考え決めていくべき教育の目標や目的を法律によって定め,その達成度の評価とそれによる予算配分を通して,教育内容は厳しく管理されることになります。教師が子どもや保護者に対して直接責任をもち,相互に批判をし合いながら,自律的かつ自由に教育を創造,発展させていく中でこそ,新しい時代を切り開いていく教育実践は生まれるものです。

今日、子どもをめぐるさまざまな否定的な現象が噴出しています。それに対して,私たちは,子どもたちを生活現実における発達主体としてとらえ,保護者,教師・保育者とともに実践的な展望を明らかにするべく研究活動をしています。そうした立場から私たちが危惧するのは,子どもを管理や操作の対象と見なして,十分な検討も経ないまま,管理主義的ないしは競争主義的教育政策が実行されることです。すでに「心のノート」の使用は現場で半ば義務づけられ,心理学の知識や手法を用いて子どもたちの心のありようを,有形無形にコントロールする動向は強まっています。また,愛国心を評価する通知表が一部の学校現場で用いられており、人格を評価する危険性を強く感じます。

私たちは心理学を学び研究する者として,現在の学校教育における問題点が重大なものであり,それらが子どもの発達保障という点で否定的な結果をもたらすと考えています。いじめや不登校をはじめ多くの子どもをめぐる問題は,国家的統制や競争原理導入によって改善されるものではないことは明らかなのです。管理と統制のもとに教師を置いた状態では,合意と納得に基づいた教育を行うのは不可能であり,困難をかかえた子どもたちの心に近づくことはできません。そのことをリアルに分析しないまま,心を管理しようとする手法をより強化していく悪循環に陥ることを深く危惧します。

私たちは,以上のような危険性をはらむ「改正」案は廃案にすべきと考えます。そして,今一度,現行教育基本法の精神と意義を振り返り,自主的自律的な人格形成の営みとして教育をとらえ,子ども自身が自己肯定感を感じられる教育を目指し,保護者や教師が子どもたちの未来に責任をもって子育てや教育に取り組むことを励ます方向で,国会ならびに関係機関には今日の教育問題について真摯な議論をしていただきたいと考えるものです。

2006年11月27日
心理科学研究会運営委員会

このページの先頭へ


日本教育法学会教育基本法研究特別委員会 議員会館内公開研究会

「未履修問題、いじめ問題と教育基本法改正」
■ 日時 2006年11月27日(月)午前11時30分〜午後1時30分
■ 会場 参議院議員会館第4会議室(11時より議員会館の入口階段下にて入館証を配布)

このページの先頭へ


クラーク博士の精神 教育基本法に結実 北大の武士道展で紹介

「大志を抱け」と説いた、札幌農学校(現北大)初代教頭のクラーク博士。その教育理念を継いだ新渡戸稲造らが、弟子に託した「クラーク精神」が実を結んだのが現行の教育基本法だった−。そんなエピソードを、北大総合博物館(藤田正一館長)の「二十一世紀の武士道」展で紹介している。

クラークの説いた、自主自立と不撓(ふとう)不屈の精神、勤労の奨励は「フロンティア精神」といった北大精神の礎となった。その理念は「新渡戸先生の教育者、研究者そして国際人として活躍された生涯に最もよく具現されている」(中村睦男学長)という。

新渡戸は旧制一高校長、東京帝大教授などを歴任。そこで薫陶を受けたのが、教育基本法を起草した教育刷新委員会(一九四六年八月設置)のメンバー、委員長の安倍能成(文部相、学習院長)ら三十八人。当時の文部省学校教育局長、日高第四郎は「三十八人中、新渡戸先生と浅からぬ関係にあったと推定できる方々は、八人を下らない」と書き記している(新渡戸稲造全集)。

クラークは、学生を「若き紳士諸君」と呼び個を尊重。授業に加え勤労を課し、勤労には報酬を与え責任を教えた。それが、基本法一条「人格の完成を目指し、(略)個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた(略)」に結びついた。

また、新渡戸や同期の内村鑑三は、軍を批判したり、教育勅語奉読式で最敬礼を行わなかったことで“国賊”扱いされたことがある。教育や学問が政治に介入された苦い経験は、基本法一〇条「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである」に反映された。

四七年三月に施行された基本法は六十年後のいま、変わろうとしている。藤田館長は「その精神は一度も根付かないまま、改正論が起こってしまった。渦中にいると気づきにくいが、いま歴史が動いている。戦後にようやく花開いた教育思想が再び、国家主義に覆われようとしている」と危惧(きぐ)する。新渡戸や内村は、どう見ているだろうか。



新渡戸の著作「武士道」にちなむ「二十一世紀の武士道−北大に通底する精神の系譜」は二十六日まで(午前十時から午後四時)、北大総合博物館(札幌市北区北一○西八)で。

北海道新聞 2006年11月26日

このページの先頭へ


教育基本法改正に反対する声明

私たちの東京大学史料編纂所は、100年以上前より、明治以前の我が国の歴史を研究し、その成果を史料集としてまとめる仕事をしています。私たちは、我が国の中の様々な地域・集団の伝統文化を次代に伝える重要な国家的使命を帯びていると自負するものです。

そのような立場にある私たちから見て、今回の教育基本法改正案のうち、第2条第5項の言う「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する」態度を養う、という内容は、非常に危険な問題があると考えます。
今から60年前、日本史研究は、狂信的なナショナリズムである一部の「皇国史観」研究者によって、多くの人々を惑わし、傷つけ、そして死に追いやった苦い過去を持っております。そのような過ちに二度と陥らぬためには、様々な見方や考え方を認め、できるだけ客観的な歴史事実を明らかにせねばならない、と私たちは信じています。その歴史事実の中には、当然国家が犯した様々な過ちも含まれます。そして過去の過ちを深く反省することを通してこそ、国際社会から信頼され、また私たち自身誇れるような国が作れるものと考えます。

しかし改正案第2条第5項のように、「国を愛する心」それ自体が優先されるならば、物事の一面のみの、表面的な「美しい」面のみしか国民は学ぶことができなくなるでしょう。やがては、私たちの使命である客観的な歴史事実を追究することもできなくなる恐れがあります。それは、憲法の定める学問の自由や精神の自由を、損ねるものです。また我が国の国際的評価を貶めるものとなりましょう。ついには、だれにもコントロールできない狂信的ナショナリズムを招く危険すらあるのです。
このような問題点がある以上、私たちはこの改正案には反対です。

私たちは、伝統文化を尊重するという理念は今の教育基本法でも十分実現できると思います。教育基本法前文には、「普遍的にしてしかも個性豊かな文化の創造をめざす」とあります。ここで言う「個性豊かな文化」とは、国際社会の中での我が国固有の伝統文化と、また国内諸地域・集団ごとの伝統文化も含まれていると考えます。そのような様々な伝統の尊重なしには、個性的な文化は創造できないからです。いまの基本法前文の精神に基づいて、伝統を尊重した教育を行うことは十分できるのです。

改正案を廃案にし、いまの基本法のもとで、様々な伝統を尊重するとともに、歴史事実を真摯に受け止め、自省する国民を形成することを目指すこと。このことを私たちは、強く求めます。

2006年11月24日

東京大学史料編纂所で働く有志(教員・職員) 51名
横山伊徳・須田牧子・田中博美・藤原重雄・松方冬子・木村由美子・佐藤孝之・保立道久・井上聡・清水亮・黒嶋敏・高松百香・小野将・稲田奈津子・小宮木代良・前川祐一郎・近藤成一・粕谷幸裕・高橋典幸・山口和夫・木村直樹・箱石大・高橋敏子・久留島典子・林譲・西田友広・榎原雅治・高橋慎一朗・松井洋子・菊地大樹・相京眞澄・齋藤愛・千葉真由美・渡辺江美子・鶴田啓・犬飼ほなみ・山家浩樹・遠藤珠紀・佐々田悠・綱川 歩美・田中葉子・若林晴子・荒木裕行・及川亘・遠藤基郎 (他5名)

このページの先頭へ


教育基本法「改正」案に関する緊急研究会のお知らせ―社会教育・生涯学習の視点から―

教育学関連学会担当理事・幹事 長澤・宮盛

この間、日本社会教育学会研究大会(9月8日〜10日、於福島大学)において、教育基本法特別シンポジウムとラウンドテーブル「教育基本法改正問題を考える(4)」を開催してきましたが、臨時国会において継続審議となった改正案についてさらに研究を深めるため、下記要領で研究会を企画しました。ぜひ、ご参加ください。

日時:2006年11月20日(月)午後6時から8時30分まで
場所:明治大学研究棟4階第2会議室

報告1:教育基本法改正案における生涯学習・社会教育関連条項をめぐって
                        千葉大学 長澤成次
報告2:教育基本法改正案における教育観をめぐって
                        明治大学 小林繁

問い合わせ:千葉大学・長澤まで 電話:043-290-2568

このページの先頭へ


教育基本法改正:参院で審議入り 「在日の子はさらに委縮」3世の金光敏さん /大阪

◇愛国心教育強まれば「在日の子はさらに委縮」−−学校飛び回り支援する金光敏さん指摘

教育基本法改正案が17日、参院で審議入りした。教育の機会均等を定めた現行法の下でも、十分な教育を受けられなかった在日コリアンらは複雑な思いを抱いている。

大阪市生野区の在日3世、金光敏(キムクァンミン)さん(35)の亡くなった母呉勝子(オスンジャ)さんは戦後、鉄くずを拾って家計を助ける傍ら、小学校に通ったが、教室で「外人」といじめられ、自然に足が遠のいた。

それでも、国語辞典を引きながら懸命に新聞を読み、子どもたちの学校の書類はたどたどしい字を書いて提出した。「私は、学校に通えんかったから頭が悪い。あんたは高校に行っておくれ」。そう嘆く母がふびんで、恥ずかしかった。狭い長屋の一室で靴作りの内職を続け、金さんが高校生の時、がんのため42歳で亡くなった。

教育基本法制定から59年。在日の人々にとっては、その理念が十分に生かされてきたとは言いがたい。日本在住の外国人が約200万人に達し、学校現場の多国籍化は進む一方だが、在日の子どもたちの多くは本名を隠しながら生きているという。

在日コリアンの教育支援の専門家として、府内の学校を飛び回る金さんは「愛国心教育が強まれば、在日の子はさらに委縮する。改正案を進める人々は、日本の学校には、日本人の子どもしかいないと思い込んでいる」と指摘する。【大場弘行】

毎日新聞 11月18日

このページの先頭へ


「教育基本法改定案に反対する大学人有志の訴え」にご賛同ください

教基法改定を憂慮する大学人が、各自の大学で自発的に声をあげ、ネットワークを形成し、22大学560人を越える有志が集まりました。

また、去る11月14日(火)には「教育基本法改定案に反対する大学人有志の訴え」(呼びかけ人 内海愛子、小林正弥、竹内久顕、千葉眞)として記者会見もおこないました(15日付朝日新聞等で報道)。すでに、学会や研究団体等の多くが、教育基本法改定への反対を表明しておりますが、大学の内部で有志が学問分野を超えて署名を集めたのは初めてだろうと思います。このたびの反対アピールは、各大学の教職員・研究者等の有志が、学問分野の違いを越えて、個々の信念と大学人としての良心に従い、発したものです。現今の状勢に対して、研究と教育に対する責任を有する大学人としての訴えです。

「大学人グループ」の同様の動きで新聞などで取り上げられたものには、北海道地区14大学や、神奈川県下大学人と横浜国立大学(神奈川新聞等で報道)があります。これらの動きの新聞報道を見ると、「大学が動いた」ということが注目されております。

そこで、大学で研究教育に携わっていらっしゃるみなさまにも同様の動きを起こしていただくよう、提案させていただきたいと思います。方法は2つ。

(1)各大学で教育基本法反対のアピール文を作成し、署名をあつめて、このネットワークに参加する(下記【データ】1のケース)。この場合、必要な情報を竹内までお知らせいただくことで、ネットワークに加えさせていただきます。また、既に私どものほうで集約している他大学のアピール文などをお送りいたしますので、双方でネットワークを拡大していきましょう。

(2)アピール文の作成までに至らない場合、「○○大学有志」あるいは「個人名(○○大学)」として、東女大有志アピールへの支持を表明する(下記【データ】2のケース)。「東京女子大学教職員有志のアピールを支持します」いうメッセージをお送り下さい。このネットワークのはじまりが東女大アピールだったので、今のところこういう形にしておりますが、東女大以外の大学との共同アピールを出すべく準備中です。

【連絡先】  
  〒167−8585 東京都杉並区善福寺2−6−1 東京女子大学 竹内久顕研
究室(教育学)
  TEL: 03−5382−6669(大学研究室)
  E−mail:takeuchi-edu@memoad.jp

【データ】
1.22大学565名の有志が、各大学等のアピール文に賛同署名しております(11月13日現在)。
*国際基督教大学(93名)、恵泉女学園大学(63名)、東京女子大学(85名)、敬和学園大学(14名)、千葉大学(15名)、横浜国立大学(31名)、横浜市立大学(14名)、神奈川県下大学人(19名)、京女9条の会(5名)、北海道地区14
大学(220名、北海道大学・北海道教育大学・北星学園大学、北海学園大学等14大学)
2.東京女子大学教職員のアピールに対して、33大学45名から賛同書名をいただいております(11月10日現在)。
*明治学院大学(9名)、共愛学園前橋国際大学(3名)、帝塚山学院大学文学部(3名)。他30大学30名の個人
3.また、私たちの「訴え」に対して、「日本平和学会」会員有志63名からの賛同署名もいただいております(11月11日現在)。

このページの先頭へ


教基法改正案 福島大歴代6学長が反対

福島大の臼井嘉一前学長ら歴代学長6人が1日、国会で審議されている教育基本法改正案に反対する声明を発表した。

声明は「教育基本法の性急な改正を危ぶむ」と題し、政府の改正案を「教育目標に愛国心などの徳目を掲げており、教育に国家や行政が介入できる内容になっている。戦前回帰の教育観も読み取れる」と批判している。

県庁で記者会見した臼井前学長は「最近の教育界のさまざまな問題の責任は、現行基本法の理念を踏みにじり、教育現場に管理主義的な施策などを持ち込んだ政府にもある」と述べ、「これらの問題解決は現行基本法の理念を前提に、国民的な議論にゆだねるべきだ」と主張した。

福島大の歴代学長が連名で声明を出したのは初めて。臼井前学長は「それほど改正案への危機感は強い。政治と教育の分離を定めた現行基本法10条の理念を大事にすべきだ」と語った。

河北新報 2006年11月1日

このページの先頭へ


教基法改定と改憲、廃案・撤回を 京の宗教者ら抗議文

京都の宗教者でつくる「京都宗教者平和協議会」と「世界の平和を求める京都宗教者連絡会」が連名で、教育基本法改定案の廃案と改憲手続き法案の撤回などを求める抗議文を、31日までに政府と各政党に提出した。

抗議文では、教基法の改定案を「戦争遂行のための教育を行い、戦前の『忠君愛国』を復活させる道を開くもの」と批判。宗教者がかつて、軍国教育によって侵略戦争へ青年を駆り立てる道を止められなかった反省などを踏まえ「即時廃案」を要請するとしている。

また改憲手続き法案についても「重要な国是で世界の宝と称される日本国憲法を、有権者の過半数ではなく2割台の賛成で変えられるというもの」と撤回を求め、「平和憲法」を世界に発信する国づくりを訴えている。

京都新聞 2006年11月1日

このページの先頭へ


教育基本法改正案に思う

最近、教育改革論議が盛んである。そこで、議論を主導している政府・自民党が何を考えているのかを確認するために、去る四月二十八日に閣議決定され、国会に提出された教育基本法全面改正案を一読してみた。

まず、説明資料によれば、改正の背景・理由として、子供のモラルや学習意欲の低下と、家庭や地域社会の教育力の低下と、若者の雇用問題の深刻化が挙げられている。

そして、改正案の重点は、公共の精神を備えた人間の育成と、伝統の継承と、愛国心の養正と、教育における家庭の責任の確認と、学校・家庭・地域社会の協力の確立と、教育に対する国による統制の強化である。

加えて、勤労重視・生命尊重・環境保全の態度を養い、生涯学習と障害者教育を支援し、教員の研修も改めて行う。

このような政策が急務であると言われる社会的現実があることには私も同意する。そして、これは、無責任な親たちと大人たち(つまり地域社会)と教員たちに育てられ教育された子供たちの学力と社会性が低い…ということに他ならない。

しかし、そうであるならば、これは、もはや一文部科学省の責任でないばかりか、その権限でどうにかなる問題でもないのではなかろうか。

思えば、第二次世界大戦で完膚なきまで打ちのめされ価値観の変更まで余儀なくされたわが民族の戦後史の結果が現状なのではなかろうか。つまり、志をなくし、食うや食わずの焼け野原の中で戦後復興、朝鮮戦争・ヴェトナム戦争などの「好運」に助けられた高度経済成長、バブル景気の狂奔・崩壊とその後始末…と、余裕なくそれぞれに自己中心的に走り抜けて来た戦後日本の大人たちは、既に四世代にもなる。そして、そのような大人たちに育てられた子供たち、その子供たちが大人になって育てた子供たち…と、まさに因果が巡っているのであろう。

私自身も、いわゆる団塊の世代の一員として、戦後教育で育てられ、大人になり、親になり、そして教育者として、現状を深刻に直視している。

とはいえ、戦前の日本では当たり前であったといわれる、親らしい親、大人らしい大人、教師らしい教師に出会うことで、子供は自然に志を持ち、勤勉であることの価値や学識の有用性を知り、良き社会人としての自覚を身につけながら育っていくのではなかろうか。

(慶大教授、弁護士)

i日本海新聞 2006年10月24日

このページの先頭へ


「美しい国、日本」とは何ですか―教育基本法改正の行き着く先は?―

政府は、先の通常国会に、戦後の教育理念を180度転換させ、教育の国家統制に道をひらく、教育基本法「改正」案を提出、継続審議となりました。

この「改正」の動きに危機感をもつ道内の教育学研究者34名(代表、鈴木秀一・北海道大名誉教授)は、9月13日、声明「私たち北海道の研究者は、教育基本法「改正」に反対します」を発表し、法案の問題点を指摘するとともに、慎重審議を求める意思を表明しました。

私たちは、現在、声明への賛同を募るとともに、教育基本法「改正」の問題を、教育や歴史の観点から深めるために、シンポジウムを企画しました。皆さんのご参加をお待ちしています。

日 時  10月21日(土)13:30 〜 16:00(13:00開場)
会 場  北海道大学文系総合棟 4階410教室
シンポジスト 鈴木 秀一(北海道大学名誉教授)、白木沢 旭児(北海道大学文学部教授・日本近代史)、馬場 雅史(南陵高校教諭)
司 会  姉崎 洋一(北海道大学教授)
主 催  共同声明を挙げた北海道の教育学研究者(代表 鈴木 秀一)+北海道の教育改革をともに考える会

このページの先頭へ


日本教育政策学会/公開研究会 教育政策と教育基本法「改正」案

次の要領にて、公開研究会を開催いたします。公開研究会開催の頃には、「教育国会」における教育基本法改正案の審議が本格化しているものと予想されます。皆様の積極的なご参加をお待ち申し上げます。なお、詳細は近日中に学会HPにも掲載の予定です。

会場:立正大学大崎校舎9号館9B13教室
日時:10月21日(土) 14.00?16.30
場所:立正大学 9B13教室(9号館地下)
    東京都品川区大崎4丁目2番16号
    JR山手線 五反田駅または大崎駅より徒歩7分
報告者:青木茂雄氏(都立高校教諭)、蔵原清人会員、宮盛邦友会員

問い合わせ:日本教育政策学会事務局
〒113-0033 東京都文京区本郷7−3−1 
東京大学大学院教育学研究科 勝野正章研究室気付
TEL/FAX 03-5841-3967
Email: mkatsuno@p.u-tokyo.ac.jp

このページの先頭へ


千葉大学 「教育基本法改正」を考えるシンポジウム―格差と心の支配を問う―

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

日本の教育支出はOECD諸国で最低レベル(特に大学はだんとつ最低!)、さらに予算

を削りながら、小学校から大学まで競争させ、子どもも学校も勝ち組負け組に振り分

けられていく? 「国を愛する・・・態度」をABC評価? 教育の「国民全体に対す
る責任」を削除? 今、国会で審議中の「教育基本法改正」で何がなされようとして

いるのでしょうか? 「戦争できる国民」をつくる教育になるのでは?

●日時:10月20日(金) 18:00−19:45
●場所:千葉大学けやき会館大ホール
http://www.chiba-u.ac.jp/general/about/map/nishichiba.html
(上記のリンクの29番の建物)
※お車でのお越しはご遠慮ください。
●参加費無料
●主催:千葉大学教員・学生有志(小澤弘明、片岡洋子、木村忠彦、小林正弥、佐藤

和夫、長澤成次、三宅晶子、三宅明正 他)


<プログラム>                  
司会: 三宅明正
1 問題提起:教育への「不当な支配」を問う:三宅晶子
2 「少年犯罪の凶悪化」「学力低下」の虚実:片岡洋子
3 新自由主義と教育の支配:小澤弘明
4 ジェンダ−フリー・バッシングを考える:佐藤和夫
5 教育基本法に関する公共性の問題 :小林正弥
6 質疑応答
7 まとめ 

私達は、研究者として、教育者として、自らの研究・教育の場で、学生、教職員、市

民の皆さんと共にこの問題を考え、発信していく場を作りたいと考え、このシンポジ

ウムを行います。教育基本法二条「教育の方針」から削除されようとしている「学問

の自由」を奪い返し、教育という<平和の砦>を築く場として、このシンポジウムに

皆さんの参加を心からお待ちしています。

<問い合わせ先> 千葉大学公共哲学センター
E-mail: cpp1@shd.chiba-u.ac.jp
FAX: 043-290-3028

このページの先頭へ


教育基本法「改正」案の臨時国会での再審議に対する声明

継続審議となった政府提出の教育基本法「改正」案の再審議が今臨時国会において始まろうとしています。大学評価学会は、大学評価が教育・研究のあり方と深い関わりを有し、21世紀の学問の成否・帰趨を決する重要な課題であることから、あるべき大学評価について広く学際的に検討していくことを目的として設立されました。当然のことながら、教育基本法は、「教育の憲法」と言うべきものであり、今後の大学のあり方およびその評価に対して大きな影響を及ぼすことは確実です。本「改正」案に対し大学評価学会は重大な関心を抱くものです。

私たちは、「改正」案に示された条項が国民の教育権と基本的人権にとって極めて深刻な問題を有していると考えます。特に「改正」案の第二条に「教育の目標」を新たに規定し具体的な徳目5項目を上げている点は、評価の観点からも重大な問題を生じさせるおそれがあると考えます。国家主導の特定の伝統・文化観からの評価が実施されるようになれば、国民の教育権、基本的人権、さらに学問の自由を揺るがす事態に発展することが危惧されます。また、「改正」案の第十六条(教育行政)では、国家が「教育に関する施策を総合的に策定し、実施しなければならない」としており、現教育基本法第十条が教育行政の役割を「諸条件の整備確立」と限定づけるとともに教育は「国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである」という内容から大きく逸脱しています。このことは国家による教育統制への道を開くものと言えます。

そして、私たちは、こうした内容に踏み込んで議論することの必要性を指摘する以前に、その大前提として、「教育の憲法」というべき教育基本法を「改正」するにあたっての提案経過に看過できない重大な問題があると考えます。政府提出の教育基本法「改正」案は、部分的な「改正」提案では全くなく、教育の基本的な考え方あるいは理念を根本的に改編する提案と言えます。現教育基本法を廃棄し新教育基本法を制定するという新法提案と言っても過言ではありません。にもかかわらず、7月に終了した通常国会の「改正」案審議は内容的にも時間的に極めて不十分なままでした。何よりも問題なのは、こうした性格を有した「改正」(=新制定)提案にあたって国民各層における広範で十分な議論、また教育関係者における十分な検討が行われていないということです。教育は、政治に翻弄されてはならないし、その手段であってもなりません。本「改正」案をめぐる提案・審議の経過そのものをみると、この「改正」案の提案それ自体が、政治からの教育への「不当な介入」にあたるという疑念を払拭することはできません。

以上の点から、大学評価学会理事は、政府が本「改正」案を速やかに取り下げ、教育基本法改正の必要性の有無や教育の課題について、あらためて国民各層、教育関係者における議論を十分におこなえるよう努めることを強く要請するものです。

2006年10月15日

大学評価学会理事
池内 了(代表理事)
戒能民江(代表理事)
碓井敏正(副代表理事)
井上秀次郎(理事)
植田健男(理事)
海部宣男(理事)
紀 葉子(理事)
熊谷滋子(理事)
蔵原清人(理事)
佐藤卓利(理事)
重本直利(理事)
永岑三千輝(理事)
橋本 勝(理事)
細井克彦(理事)
水谷 勇(理事)
三輪定宣(理事)
村上孝弘(理事)
望月太郎(理事)

このページの先頭へ


教育基本法改正:道内の教育学研究者が反対声明 /北海道

道内の教育学研究者34人(呼びかけ人代表、鈴木秀一・北海道大名誉教授)は13日、政府と民主党が先の国会に提出し、継続審議となった教育基本法改正案に反対する声明を出した。今月末に召集される臨時国会で再び審議される前に、政府と民主党に反対署名を提出し、改正を阻止する運動を盛り上げていく。

声明では、両案が「戦後の教育理念を180度転換させ、教育の国家統制に道をひらく」と指摘し、愛国心教育が強調され、公教育への国家保障責任などを放棄しているなどと批判している。

鈴木教授は「私は戦争への道を歩んだ戦前の教育を受けた者の一人だが、今回の改正の狙いは戦前と同じ教育に戻すことだ」と話している。【千々部一好】

毎日新聞 2006年9月14日

このページの先頭へ


「みんなでじっくり語ろう!『子どもの権利条約』から見た教育基本法・少年法改悪」

◎昨年に引き続き第4回目となる「DCI子どもの権利講座」は弁護士の斎藤義房さんを
講師に迎え、少年法や教育基本法改悪の問題を子どもの権利条約の視点から考えてい
きたいと思います。ふるってご参加ください。申し込みは不要です。
 
日時:2006年9月9日(土) 13時30〜17時
場所:明治大学研究棟4F 第一会議室
    (JR・地下鉄メトロ御茶の水駅より3分)
   明大通りを下り「明治大学リバティータワー」の3Fから
   連絡通路を渡って研究棟4Fへ

参加費:500円
 
【講師】
斎藤義房さん(弁護士)
  「少年法『改正』と子どもの権利条約」
福田雅章さん(DCI日本支部代表・山梨学院大学教授)
  「小泉政権が奪った『子どもの今と未来』」
世取山洋介さん(DCI日本支部事務局長 新潟大学助教授)
  「子どもの権利条約から見た改悪教育基本法案の欠陥」

このページの先頭へ


愛知で「研究者の会」が発足

今までに「教育基本法改悪阻止のための緊急アピール」などを出してきた愛知の研究者が9月8日、「教育基本法の改悪に反対する愛知研究者の会」(代表 森川恭巖・元名古屋自由学院短期大学学長、佐々木享・名古屋大学名誉教授)を設立した。

9月8日に開かれた会合では、教育基本法改悪法案の廃案を目指し、県内の大学関係者、研究者へ幅広く呼びかけ、廃案を求めるアピールへの賛同を募ること、教育基本法改悪問題を検討するシンポジウムを10月29日に開催することを決めた。

このページの先頭へ


教育基本法改正に反対します。

                       日本生活指導学会理事会
                        代表理事 佐々木 光郎
                             高垣 忠一郎
                             竹内  常一

秋の国会がはじまります。

この国会で教育基本法に関する政府と民主党の法案が継続審議に付されますが、私たち日本生活指導学会理事会はこれらの法案の撤回又は廃案を求めます。

これら二つの法案はいずれも、なぜいま教育基本法を改正しなければならないかについての説明責任を果たしていません。それに、これらはいずれも教育基本法を改正するというものではなく、これをまるごと廃棄し、たしかな理由もなく「新教育基本法」を制定しようとするものです。

その意味では、いずれも法案提出の条件を満たしていませんし、国民に法改正の理由を明示するものになっていません。つまり、国民的な討論に耐えるものではないということです。それを単純な政治的多数決によって押し切ろうとするのは、文化・教育に固有の自由と自治を認めている現教育基本法の趣旨に反しています。

そればかりではありません。改正案はいずれも以下に述べるような教育への権利にたいする侵害を含んでいます。

その第一は、いずれの法案も憲法とのつながり、とりわけ、その「非武装・平和主義」とのつながりを断ち切るものとなっていることです。

たとえば政府案は「ここに、我々は、日本国憲法の精神にのっとり、我が国の未来を切り拓く教育の基本を確立し」と述べていますが、ここにいわれている「日本国憲法」は現憲法を指すのか、それとも自民党の「新憲法草案」(2005年10月)を指すのかが明らかでありません。もし後者であるならば、政府改正案はすでに憲法違反の法案だといわざるをえません。

第二は、いずれの改正案も、現教育基本法の第二条「教育の方針」を削除し、それに代えて愛国心をはじめとする具体的な「教育の目標」を定め、これを国民に義務づけるものとなっていることです。

現教育基本法は「教育の目的」を定めながらも、改正案にみられるような「教育の目標」を示していません。現教育基本法は、教育にかかわるすべてのものが第二条の「教育の方針」に示されている「筋道」「方法」にもとづいて自主的に「教育の目的」を達成することを説いています。その筋道とは、「学問の自由の尊重」「実際生活に即すること」「自発的精神を養うこと」「自他の敬愛と協力を広げること」、そして「文化の創造と発展に貢献すること」を要件にして教育の目的を達成していくというものです。だから、それは国家による「教育の目標」の一方的設定を否定しているのです。

ところが、いずれの法案も国民の教育権の行使の仕方を定めている「教育の方針」を削除し、「教育の目標」を具体的に定め、それを国民に義務づけることを通じて国家教育権を確立しようとしています。

第三は、先の国会審議のなかでの愛国心論争において明らかにされたように、「教育の目標」を法的に規定することは、子どもをふくむ国民一人ひとりの思想・信条・良心の自由を侵害することになります。それは、教育関係者の教育実践・教育研究の自由を侵害するだけでなく、子どもの学習の権利、さらには意見表明の自由への権利を侵すものです。

そればかりではありません。いずれの法案も自由権への侵害をつうじて教育を質的に切り下げるだけでなく、教育が教育として存在できないものにする危険性をはらんでいます。ちょうど戦前・戦中の教育が教育の名によって自己破産したように、これらの法案による自由権の侵害は教育をこれまで以上に壊滅的なものにするにちがいありません。

第四は、政府案が義務教育年限を別に定めるとしているところに典型的にみられるように、学校システムの差別的な再編が企てられていることです。その再編は、エリート選抜に焦点化されていると同時に、子どもをはじめとする国民の教育への権利を量・質にわたって切り下げるものとなっています。そればかりか、教育を受ける権利を保障する国家の義務を限定し、教育の市場化を拡張するものとなっています。

その意味では、教育基本法改正を介してすすめられる学校システムの差別的な再編は、新自由主義政策による労働基本権や生存権などの社会的基本権の切り下げとともに、国民の生活と教育を危機におとしいれるにちがいありません。

このように私たち日本生活指導学会理事会は、教育基本法改正に関する政府案ならびに民主党案に以下のような問題があると判断します。

(1)いずれの案も法案提出の条件を満たすものでなく、国民的な討論に開かれているものではないこと。

(2)それらが子どもをはじめとする国民・市民の教育への権利を質的にも量的にも侵害し、切り下げる危険性があること。

(3)それらが平和的生存権、自由権、社会権からなる日本国憲法の基本的人権を侵害する危険性があること。

以上の理由から、私たち日本生活指導学会理事会は政府案並びに民主党案の撤回・廃案を求めます。

2006年9月1日

このページの先頭へ


トップページへ