2006年7月20日 <愛国心>通知表で表記削除の動き広がる 誤解招くと
2006年7月7日 道徳教育見直し検討 中教審部会提言
2006年7月2日 教育勅語幼稚園で暗唱 戸惑う保護者も
2006年6月28日 小中高、法教育を拡充…裁判員制に備え体系学習
2006年6月28日 道徳新教材名称「明日へのとびら」 京都府教委 作成検討委決定
2006年6月23日 東京都「日の丸・君が代」強制 「内心の自由」説明で“処分”
2006年6月16日 通知表に「愛国心」項目 東広島
2006年6月14日 「愛国心」の項目35校が通知表に
2006年6月10日 「愛国心」盛り込んだ通知表、全国190小学校に
2006年6月9日 77校に「愛国心」項目 中部の公立小学校通知表
2006年5月31日 道徳の教科化可能か検討 衆院特別委で文科相
2006年5月30日 都立高の元教諭に罰金「懲役刑は不相当」
2005年5月29日 「愛国心」評価、学習指導要領が“布石”? 現場教養じわり /岩手
2006年5月25日 「国や日本愛する心情」の項目、通知表記載45校――県調査 /埼玉
2006年5月19日 文部科学大臣記者会見(文科省サイト)
2006年5月19日 「愛国心」指導の実態把握へ
<愛国心>通知表で表記削除の動き広がる 誤解招くと
「国を大切にする」などの「愛国心」表記を盛り込んだ小学校の通知表で、「保護者らの誤解を招きかねない」として、表記を削除する動きが広がっている。
市内6校が「愛国心」表記を盛り込んでいたさいたま市は、6校すべてが今学期の通知表から表記を削除。同市教育委員会は「もともと内心を評価していたわけではないが、そう誤解されるといけない」と説明する。このほか、埼玉県鴻巣市(16校)、同深谷市(6校)、茨城県常陸大宮市(16校)などの小学校が「愛国心」表記を削除した。
一方、「愛国心」表記を継続する小学校もある。埼玉県行田市は05年度と同じ市内16校中14校が今年度も表記を盛り込んだ通知表を使用。今学期も1校が表記を盛り込んでいる茨城県阿見町教育委員会は「愛国心(内心)を評価するものではない」と説明した。
4月末に教育基本法改正案が国会に提出されたこともあり、通知表の「愛国心」表記が論議を呼んだ。小泉純一郎首相は審議で「愛国心があるかどうか、そんな評価は必要ない」と答弁している。【高山純二】
毎日新聞 2006年7月20日
道徳教育見直し検討 中教審部会提言
≪小学校、教科担任制導入なども≫
次の学習指導要領策定に向け、中央教育審議会の教育課程部会は6日、教育内容の課題について報告を受けた。今後の検討課題として、(1)小学校高学年での教科担任制の導入(2)道徳教育の名称変更を含めた見直し(3)国語力向上のため、小学校低学年段階からの古典の暗唱−などが提言された。
これまでの議論では、中学の道徳の授業では、道徳の副教材として発行された読み物の読解指導に終始したり、別の時間に充てられ、機能していない問題点が報告された。小学校の道徳も「六年間で最終的に『こういう子供を育てたい』『各学年でここまで育てたい』といった系統性や見通し」に欠けた実態があり、こうした点を示す必要があると求める意見が課題として出されていた。
規範意識や道徳的判断力を養ううえで、最低限のルールとして法があることを教育する「法教育」を充実させ、さらに質の高い生き方を求めるために道徳教育の内容、形式を見直すことが重要と提言。道徳教育の名称変更も検討することが必要とした。
また小学校と中学校の連携を円滑にする観点から小学校の高学年からの教科担任制の導入が検討課題にされた。すべての教育活動を通じて国語力の充実のために、特に小学校低学年の段階から積極的な漢字の読み書きや古典の暗唱などに取り組む大切さが盛り込まれたほか、中学での選択科目の増加で必修科目が減り、これが学習内容の低レベル化を招いているとして選択教科のあり方の改善も検討するよう求めた。
◇
≪主な検討課題≫
・小学校低学年からの積極的な漢字の読み書き、古典の暗唱
・小学校高学年からの教科担任制
・道徳教育の見直し
・中学の数学で少人数指導
・中学の選択教科の在り方の改善
・総合的学習で身につけるべき力の明確化と評価の明確化
・小学校の国語、理科、算数の授業時数の量的拡大
産経新聞 2006年7月7日
教育勅語幼稚園で暗唱 戸惑う保護者も
大阪市の私立塚本幼稚園(淀川区、約二百三十人)と私立南港さくら幼稚園(住之江区、約百八十人)が、年長組の園児約百二十人に、教育勅語を暗唱させていることが一日、分かった。
園側は「幼児期から愛国心、公共心、道徳心をはぐくむためにも教育勅語の精神が必要と確信している」と説明しているが、文部科学省幼児教育課は「教育勅語を教えるのは適当ではない。教育要領でも園児に勅語を暗唱させることは想定していない」としている。
両幼稚園の園長を務める籠池靖憲氏によると、幼児期から古典に親しむため、一昨年から月一回、年長組の園児を対象に論語の勉強を始めたが、「教育の神髄を短い言葉で伝えているのが教育勅語」と考え、昨年十月ごろから教育勅語を教えているという。
年長組の園児は毎日、一時間目の授業の初めに担任の指導で教育勅語を暗唱。保護者にも口語の訳文に「今こそ教育勅語の精神が必要」という園長の所感を添えて配布したという。
ある保護者は「こういう教育をするとは知らずに入園させた」と戸惑いをみせるが、園側は「保護者の不満の声は聞いていない」としている。
籠池園長は「戦争にいざなった負の側面を際立たせ、正しい側面から目をそむけさせることには疑問を感じる。親を敬い、自分を高めるという精神を体現すれば、無軌道な方向には行かない」と話している。
大阪市内の私立幼稚園で一日、園児に教育勅語を暗唱させていることが分かった。通常国会では教育基本法改正をめぐり焦点となった「愛国心」との関連で教育勅語が議論になった。小泉純一郎首相は「教育勅語の復活を意図するものではない」と答弁したが、自民党内などには教育勅語に盛り込まれた道徳の理念を復活させるべきだとの声も根強い。
首相当時「日本は天皇を中心にした神の国」と発言した自民党の森喜朗氏は、教育基本法について「国の歴史、文化に全く触れていない。個人が強く出て、公が欠けている」と批判。「戦前は教育勅語の中に哲学、思想が入っていた」と評価した。河村建夫元文部科学相も在任当時「教育勅語には道徳的観念があったが、排除決議がされた。大事なことは隅にやられ、教育の根本理念から外された」と話した。
政府の教育基本法改正案は「我が国と郷土を愛する態度」との表現で愛国心を盛り込んだが、小泉首相は「教育上の目標で、児童や生徒の内心に立ち入って強制するのではない」と説明した。
■現代にはそぐわず
沖田行司同志社大学大学院教授(教育史)の話 意味を理解する前に暗記させる教育方法はあるが、題材に教育勅語を選ぶのはいかがなものか。個々の道徳項目に問題はないといっても、教育勅語は天皇主権をうたっており、国民主権の現代にはそぐわない。幼稚園児には宗教、学問の自由を侵す結果となった教育勅語の歴史的経緯を理解できず、無理がある。
教育勅語 正式には「教育ニ関スル勅語」という。明治天皇の名で国民道徳の根源や教育の基本理念を明示、1890年に発布された。臣民の忠孝を「国体の精華」とたたえ、父母への孝行、夫婦の和、博愛、義勇奉公など12の道徳項目を記した。学校への配布や礼拝、奉読が進むにつれ「御真影」(天皇、皇后両陛下の写真)とともに奉安殿に保管されるなど神聖化され、昭和期の軍国主義教育と結び付いた。衆参両院は1948年、排除や失効を決議した。
東京新聞 2006年7月2日
文部科学相の諮問機関・中央教育審議会の教育課程部会(部会長=木村孟・大学評価・学位授与機構長)は27日、学校で法制度の基本概念を教える「法教育」を拡充する方針を固めた。
2009年の裁判員制度導入に向けて、児童・生徒に「公正」「権利」「義務」などの概念や、順法精神などを体系的に教えることが必要と判断した。今年度中にも行う学習指導要領の見直しに反映し、08年度に教育現場に取り入れられる。
具体的には、社会、生活、道徳科や総合学習の時間などを活用し、法律や裁判の基礎知識や意義などを教育する。学級活動や生徒会活動でも、〈1〉小学校では、身の回りのルールの作り方〈2〉中学校では、作ったルールの再評価〈3〉高校では、法律や社会のルールの評価――などと、体系化した教育内容を学習指導要領に盛り込む考えだ。
現行の学習指導要領では、中学校の社会科などで憲法の基本原則や裁判制度の概要などを教えているが、知識重視型が中心で、専門家から「法の本質的な理解が進んでいない」との指摘が出ている。
讀賣新聞 2006年6月28日
道徳新教材名称「明日へのとびら」 京都府教委 作成検討委決定
京都府教委が配布する小中学生向け道徳教材「心のノート(仮称)」の作成検討委員会は27日、教材の正式名称を「京の子ども 明日へのとびら」とすることを決めた。教材には、学識経験者の寄稿文のほか、児童生徒の作文や府民のメッセージも盛り込んでいくことも確認した。
この日、山折哲雄座長ら委員7人が参加して第4回会議を京都市内で開催。2007年春の配布に向け、府独自教材の構成を固めた。
教材名は、子どもたちが未来を肯定的にとらえ、志を持って歩む姿などをイメージしたという。児童生徒の発達に応じた学習資料にするため、教材は小学校の低、中、高学年編、中学校編の計4冊を作成する。
各編には、「人としてあるべき姿」「かけがえのない命、生と死の重さ」「郷土や国の発展を願う心」など6つのテーマ別に各25の文章を収録。執筆するのは、上田正昭・京都大名誉教授や作家の瀬戸内寂聴さん、哲学者の梅原猛さんら学識経験・文化人が中心だが、児童生徒の感性が生きる作文や、府民から公募するマナー・ルールなどに関する標語なども盛り込「府民の思いや願いも反映させる」(学校教育課)という。
京都新聞 2006年6月28日
東京都「日の丸・君が代」強制 「内心の自由」説明で“処分”
「『君が代』を歌いたい人は歌い、歌いたくない人は自分の思想・信条に従って判断して結構です」。今春の卒業式前日の予行演習で、東京都立農芸高校定時制課程の社会科教師が生徒に「内心の自由」について説明しました。この発言が「不適切な指導」だとして、都教育委員会は9日、この教師を「厳重注意」という事実上の処分にしました(他に6人が「厳重注意」)。「思想・良心の自由」「内心の自由」を保障する憲法のもとで、こんなことが許されるのでしょうか―。(山田芳進)
生徒は自主的に立たず
同校では卒業式当日、卒業生十四人中十一人が「君が代」斉唱時に起立しませんでした。
この教師は「生徒の不起立は、私の呼びかけが原因なのではない」と語ります。「生徒たちは自分で考えた結果、不起立を選択したのです。ある卒業生は、『日の丸・君が代』を教師に強制する都教委の『10・23通達』が出て以来、式ではずっと座ってきたと言います。不起立で処分された先生を知っているからです。『石原知事と都教委のやり方に抗議するため』と言う生徒もいました」
また、自身の行動について「卒業式など特別活動の目標は、『自主的、実践的な態度を育てるとともに、人間としての在り方生き方についての自覚を深め、自己を生かす能力を養う』と学習指導要領にあります。私の説明は、これにも基づいたものです」と語ります。
この教師は「厳重注意」を受ける際に、都教委から「今後繰り返すな」と言われましたが、「いえ、続けます」と断りました。
以前は説明するよう指導
二〇〇四年春に退職した元都立高校校長はこう語ります。「都教委は、卒業式などに際し、生徒や父母に『内心の自由』について、『日の丸・君が代』の歴史的背景なども含め、説明するように指導していました。だから、私は一九九九年に校長に就任して以来、先生に説明するよう指導し、私も予行演習の時に生徒たちに説明してきました。それが『10・23通達』を契機に百八十度変わったのです」
実際、都教委は、二〇〇三年に「10・23通達」を出して以降、式前に「内心の自由」などについて説明した教職員に対し、「厳重注意」「注意」など、事実上の処分を下すようになりました(〇四年春六十七人、〇五年春五人)。
さらに都教委は今年、全校長にたいし、農芸高校での生徒多数の不起立を理由に、生徒が「君が代」斉唱時に起立するよう教職員に「指導」の徹底を命じる通達を出しました。
この通達は、昨年十二月の都議会で、自民党の古賀俊昭議員が「改めて生徒への適正指導を通達として出すべき」という質問に、中村正彦教育長が「生徒を適正に指導する旨の通達を速やかに発出する」と答えて出されたものです。
都教委の強制は違憲・違法
六月の都議会でこの問題を取り上げた日本共産党の大山とも子議員は、「今年の卒業式を前に、ある定時制高校卒業生は、三回にわたって副校長から起立斉唱を指導され、私は自分で考えて立たないといっているのに、何度も言われて怖くなったと語っている」「生徒は、自分が立たなければ先生が処分されるということで、起立斉唱を強制されている」と告発しました。
そして、国旗・国歌法案の審議の際、野中広務官房長官(当時)が「起立する自由もあれば、また起立しない自由もあろうと思う。斉唱する自由もあれば斉唱しない自由もあろうかと思う」と述べた答弁(一九九九年七月二十一日の衆院内閣委・文教委連合審査会)を挙げ、都教委のやり方は「国旗・国歌法の立法趣旨にも反し、違憲、違法」と批判しました。
石原慎太郎都知事は「学習指導要領の中に、国旗は日の丸とする、国歌は君が代とするというきちっとした規定がある」とでたらめな答弁をしたうえ、「国旗・国歌の指導は違憲、違法なものでないとする都教育委員会の判断は至極妥当」と開き直りました。
都教委は「日の丸・君が代」の強制について「学習指導要領に基づく」と繰り返しています。しかし、都の教職員が採用の際に提出する宣誓書には、「私は、ここに、主権が国民に存することを認める日本国憲法を尊重し、且つ、擁護することを固く誓います」とあります。「生徒への『内心の自由』の説明」は、憲法に立脚した教育公務員としての使命なのです。
教育基本法改悪に警鐘
「日の丸・君が代」強制に従わないことを理由に処分された教職員でつくる「日の丸・君が代不当処分撤回を求める被処分者の会」の近藤徹事務局長は言います。
「私たちは憲法を順守して処分されました。憲法、教育基本法のもとでも、これだけの強制が行われているのが東京の教育の実態です。教育基本法が改悪されれば、それが合法化され、全国に広がることになります」
前出の元校長も「政府の教育基本法改悪案は、『徳目』で国を愛する『態度』を養い、その外部的行為を評価しようとしています。これは“内心はどうでもいい。とにかく立って、『君が代』を歌え”というものです。それが東京では、実際に行われているのです」と警鐘を鳴らします。
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「10・23通達」 都立学校の入学式、卒業式などで、「国旗は、式典会場の舞台壇上正面に掲揚する」「式典会場において、教職員は、会場の指定された席で国旗に向かって起立し、国歌を斉唱する」などの細かい実施指針を定めた都教委の通達。この通達に基づく職務命令に違反したとして、これまでのべ三百四十五人の教職員が処分されています。
しんぶん赤旗 2006年6月26日
通知表に「愛国心」項目 東広島
東広島市の市立小学校一校で、六年生の通知表に児童の愛国心を評価する項目があり、本年度から表現を改めることになった。荒谷信子教育長は十五日の市議会本会議で、「内心に立ち入って強制すると受け取られる懸念があるという点で、配慮を欠いた」と述べた。
市教委によると、同校は昨年度、学習指導要領が定める教諭の指導上の目標「国を愛する心情を育てるようにする」を参考に、通知表で社会科の「関心・意欲・態度」を評価する項目の記述の中に「国を愛する心情をもつ」の言葉を入れた。
昨年度は前期と後期に担任が三段階で評価したが、「国を愛する心情を推し量るのは難しい」として愛国心を試すような授業はしなかったという。
愛国心の理念を盛り込んだ教育基本法改正案が論議を呼ぶ中、市教委が五月末に三十七小学校と十三中学校の通知表を調査して判明した。
愛国心の表現を改める理由について、同校は「評価していない内容を盛り込むのは、紛らわしいため」と説明している。(治徳貴子)
中国新聞 2006年6月16日
「愛国心」の項目35校が通知表に
高松市立の54小学校(休校、分校除く)のうち少なくとも35校が、今年度の通知表に「国を愛する心情」を評価項目に盛り込むことがわかった。「愛国心」をめぐっては、「我が国と郷土を愛する態度を養う」との条文が盛り込まれた教育基本法改正案が国会で審議され、内面の問題を評価することは愛国心の強制につながりかねないと議論になっている。(向井大輔)
どのような通知表で子どもたちを評価するかは原則として各小学校の校長が決めるが、高松市小学校長会などによると、高松市の場合、学習指導要領などの改定があるたびに、校長会と各教科の研究会などが話し合って通知表の「モデル案」を作成。これを各小学校に提示して、モデル案をそのまま採用したいと希望する学校を募り、まとめて印刷を発注しているという。
校長会によると、6年生の社会科の通知表のモデル案に「愛国心」に関する言葉が盛り込まれたのは、02年度に改定された新学習指導要領の目標に「国を愛する心情を育てるようにする」という言葉が入って以降。昨年度のモデル案には、四つの観点の一つに「我が国の歴史や伝統に関心をもち、意欲的に歴史学習に取り組むとともに、国を愛する心情をもとうとする」という項目が盛り込まれ、今年度、同じ文言の通知表を採用する学校が35校あるという。
以前からモデル案を採用している小学校の校長は「愛国心だけをとらえて評価しているわけではない」と話す。「項目の前半部分の取り組みを重視して評価すれば、結果的に国を愛する心情につながると思っている」。愛国心の法制化は、「みんなが納得できる内容になるよう、議論を尽くしてほしい」とする。
独自の通知表をつくっている別の小学校は、「我が国の歴史と政治及び国際社会における我が国の役割に関心をもち、それらを調べることに意欲的である」という言葉を使っている。校長は「愛国心を軽視しているわけではないが、とりたてて書くことではない。小学生の愛国心の評価は難しい」。法制化については、「愛国心は自分や家族、地域を大事にしていく延長で身につくものではないか。いきなり愛国心だけ取り出して指導と言われても現場は混乱する」と心配する。
朝日新聞の調べでは、「国を愛する心情」を通知表の評価項目に盛り込んでいる公立小学校が、高松市のほかに少なくとも全国の39市区町村で190校あり、かつて盛り込んでいたが削除した学校も、少なくとも122校あることがわかっている。削除した学校の多くが、児童の内面を評価する難しさを理由にあげている。
朝日新聞 2006年06月14日
「愛国心」盛り込んだ通知表、全国190小学校に
「国を愛する心情」を通知表の評価項目に盛り込んでいる公立小学校が、少なくとも13都府県39市区町村に190校あることが、朝日新聞の調べでわかった。かつて盛り込んでいたが削除したという学校は、少なくとも122校あり、その多くが児童の内面を評価することの難しさを理由に挙げている。
教育基本法改正案が国会に提出される中、5月下旬から6月上旬にかけて、各都道府県や市区町村の教育委員会などに取材し、昨年度の通知表に「愛国心」の項目があることが判明した学校数を集計した。通知表は各校が独自に作る原則で、教委などがつかんでいない例が他にもある可能性がある。
「愛国心」を通知表に盛り込んでいる学校数は3年前の調査では172校だった。今回は、前回の調査で把握できなかった学校が新たに判明する一方、3年の間に「愛国心」の項目を削除した学校もあり、差し引きで全体では若干の増加となった。
この190校の中にも「今年度からの削除を決めた」(京都府宇治田原町、2校)、「見直しも視野に入れている」(東京都港区、1校)などの例や「今年度については検討中」という自治体がある。このため、この190校が今学期末に配る今年度の通知表に「愛国心」の項目が必ずしもあるとは限らない。
「愛国心」は、大半が小6もしくは小5の社会科の「関心・意欲・態度」についての評価項目に盛り込まれ、A〜Cなどの3段階評価だ。
典型は「我が国の歴史や政治、国際社会における役割に関心をもち、意欲的に調べることを通して、国を愛する心情や世界の人々と生きていくことが大切であるということの自覚を持とうとする」(茨城県龍ケ崎市)。
多くは「調べ学習を通じて」の前提付き。「現実には前半の『調べ学習』部分で評価を決めている」と複数の自治体が話す。国際理解や世界平和も観点に併記されている。
徳島市の2校は小5の社会科で「国土に対する愛情を持とうとする」との表現になっている。千葉県鴨川市、南房総市の3校も同様の表現だ。
この190校以外にも、兵庫県たつの市、太子町の計22小学校と岩手県釜石市の小・中計3校は、教科学習ではなく「生活のようす」「行動のようす」の項目で、規則の尊重や公徳心と並べて「郷土や我が国の文化や伝統を大切に」することを評価対象にしている。
以前は項目があったが削除した学校には、外部からの抗議や意見を受けた福岡市のような事例もあるが、多くは内面評価の難しさを実感して自主的に削除したものだ。
たとえば、愛知県清須市教委の担当者は「実際に通知表を使った校長から、『子どもの内面を評価することが難しかった』と聞いた」と説明する。基本法改正論議が始まった今も「いちど難しさを実感したから、またすぐ戻そうとはならないだろう」と言う。
朝日新聞 2006年06月09日
77校に「愛国心」項目 中部の公立小通知表
「愛国心」が焦点となった教育基本法改正案の審議は衆院で継続審議が決まっているが、中部6県では、愛知県尾張地方を中心に少なくとも77校の公立小学校で、昨年度の通知表に愛国心に絡む評価項目を採用していたことが中日新聞の調べで分かった。小泉純一郎首相が先月下旬、評価項目とするのに否定的な答弁をしたことなどを受け、項目の見直しを始めた学校も出ている。
愛知県は尾張地方で73校、うち海部津島地域だけで46校が採用していた。同地域では、2002年度施行の新学習指導要領で学習目標に「国を愛する心情」が入ったのを受け、校長会が中心となり評価項目化を検討。6年生の社会科の評価に「わが国の歴史・政治・国際社会に関心をもち、意欲的に調べることを通して国を愛する心情をもつ」との項目を設けた。3−5年生では「国土に対し愛情をもつ」などの表現とした。このうち愛西市の校長会が8日、本年度から削除する方針を決めたほか、地域全体で見直しの動きが出ている。
同県一宮市でも、合併した旧尾西市内の7小学校の通知表に愛国心に関する項目があり、同市教委は「見直しを含め検討している」と話す。同県美浜町では1小学校の5年生の社会科の評価に「国土の様子に関心を持って積極的に調べ、国土に対する愛情を持とうとする」があり、同町教委は「愛国心をめぐる国のやりとりから、学校が自発的にこの文言をやめるのでは」と言う。
岐阜県内では、岐阜市内の小学校2校が「国土に対する愛情をもとうとする」との項目を設け、5年生の通知表に採用。市教委は、新指導要領の施行に伴い、意欲や関心の度合いをみるために設けたもので「愛国心の有無を評価するものではない」と説明する。
滋賀県も2校。彦根市の稲枝北小は、02年の施行を受け、6年生社会科に「我が国の歴史や伝統を大切にし、国を愛する信条を持とうとする」との項目を設けた。1995年の開校時から「国を愛する」という項目がある同県湖南市の菩提寺北小は「地域に親しみを持ってもらうための取り組みに力を入れている。愛国心を評価しているわけではない」と話す。
福井県では03年度に勝山市内の小学校9校など計11校に項目があったが、その後削除され、県教委調べでは現在はないという。
中日新聞 2006年6月9日
道徳の教科化可能か検討 衆院特別委で文科相
小坂憲次文部科学相は31日午後の衆院教育基本法特別委員会で、小中学校で「道徳」の授業を正規の教科とすることについて「道徳の在り方は学習指導要領の改定論議の中で、重要な課題として検討を進めていきたい」と述べ、教科化が可能か今後検討する考えを示した。
現在、「道徳」は教科扱いされておらず、成績評価の対象になっていない。
文科相は「道徳」を評価することについては「道徳性は児童、生徒の人格全体にかかわるので評価にあたっては慎重な対応が求められる」と述べた。
(共同通信) - 5月31日20時0分更新
<君が代判決>都立高の元教諭に罰金「懲役刑は不相当」
04年の東京都立板橋高校の卒業式で、君が代斉唱時の起立に反対して式の進行を妨害したとして、威力業務妨害罪に問われた元同校教諭、藤田勝久被告(65)に対し、東京地裁は30日、罰金20万円(求刑・懲役8月)を言い渡した。村瀬均裁判長は「実際に式の遂行が一時停滞し非難は免れないが、妨害は短時間で、懲役刑は相当でない」と述べた。藤田被告は即日控訴した。
被告側は「罰するほどの違法性はない」などと公訴棄却か無罪を主張。判決は「退場要求に従わずに大声を出したのは威力業務妨害罪の『威力』に当たり、開式が約2分遅れるなど『業務妨害』の結果が生じた。起訴は公訴権の乱用に当たらない」と退けた。
判決によると、藤田被告は04年3月11日、同校体育館での卒業式の前、「異常な卒業式で、君が代斉唱時に教職員が立って歌わないと処分されます」などと父母らに斉唱時の着席を大声で呼び掛けた。校長らが退場を求めると「なんで追い出すんだよ」と大声を上げ、式の開始を遅らせた。
藤田被告は式の2年前まで同校に勤務し、式の来賓だった。式の後、校長と都教委から異例の被害届が出され、在宅起訴された。03年10月の都教委の通達後、君が代斉唱時の不起立などで懲戒処分を受けた教職員は延べ345人に上る。
判決後、藤田被告は会見し「懲役求刑に対し罰金判決は実質的に無罪と受け止めている」と語った。弁護団は「式での卒業生の不起立の責任を藤田さんに負わせようとしてでっち上げた事件」とする声明を読み上げた。【佐藤敬一】
▽都教育庁の話 判決文は見ていないが、当該行為の違法性が認められたことは一定の評価をしている。
(毎日新聞) - 5月30日12時55分更新
教育基本法改正:「愛国心」評価、学習指導要領が“布石”? 現場強要じわり /岩手
◇大船渡と釜石に記述の学校
教育基本法改正案の審議が進む中、毎日新聞は「国を大切にする」などの「愛国心」を通知表の評価項目に入れている公立小中学校の有無について全国調査を行った(26日社会面掲載)。埼玉県などと共に、県内でも2市で記述があった。だが「愛国心」という言葉の扱いには学校現場でも混乱があるようだ。【念佛明奈】
県内35市町村教委への電話調査によると、通知表に「愛国心」を評価する項目があるのは大船渡、釜石の両市。15市町村が「ない」と回答した。このほか13市町村が「把握していない」と答え、「担当者が不在」(矢巾町)や「電話では回答できない」(山田町)などの返答もあった。
大船渡市では1小学校が「国を愛する心情を持つ」と盛り込んでいる。同市教委は「この小学校からは、今年度は『地域に誇りを持って自尊心を持とう』に変える方向だと聞いている。こちらから何かすることは考えていない」と言い、学校側が文言を変える理由については「特に聞いていない」と答えた。
また釜石市には「郷土や我が国の文化伝統を大切にし、学校や人々の役に立つことを進んで行う」などの評価項目が3小中学校でみられた。同市教委の佐藤功指導監は「言い換えれば『国を愛する』ととらえられるが、『愛国心』という言葉からは戦前(の軍国主義)を想起する人がいるのでは」と、一くくりにされることを心配する。
戦前教育への反省から個人の尊厳を重視したのが現行の基本法。これに対し“改正”論のレールを敷いたのは、教育勅語を再評価する森喜朗首相(当時)のもとでのこと。やはり「愛国心」の本音がちらつく。
戦前の教科書を研究する岩手大学教育学部の土屋直人助教授は、現行学習指導要領の影響を指摘する。小6歴史教育の目標「我が国の歴史や伝統を大切にし、国を愛する心情を育てるようにする」との記述から、すでに愛国心評価がジワリ広がっているのだ。
「本来は指標であるべき要領が、現場の先生たちから『順守しなければいけないもの』と意識されている」と土屋助教授は言う。ある教諭も「国が定義する愛国心が生徒に強要される」と懸念する。土屋助教授は「先生が通知表の評価項目に入れることを不適切だと思っても、入れざるを得ないような状況に置かれているのでは」と話している。
毎日新聞岩手 2005年5月29日
教育基本法改正:「国や日本愛する心情」の項目、通知表記載45校――県調査 /埼玉
6年生の社会科の評価に、国や日本を愛する心情を含む項目を設け通知表に記載する小学校が、鴻巣市など県内3市2町で計45校あることが、県教育局のまとめで分かった。教育基本法改正案をめぐる「愛国心」論議の高まりを受け、同局が調査した。
調査によると、何らかの表現で国を愛する心情を盛り込んでいたのは、鴻巣市が19校。他の市町は行田市16▽深谷市2▽騎西町5▽寄居町3。
通知表の書式は各小学校が定めている。行田市のある小学校では「我が国の歴史と政治及び国際社会での日本の役割に関心を持って意欲的に調べ、自国を愛し、世界の平和を願う自覚をもとうとする」という観点項目を3段階評価していた。
国を愛する心情の育成は、02年度から始まった新学習指導要領で社会科の目標に明記されており、同局義務教育指導課は「(愛国心の明記は)目標の具現化ということだろうが、原則的には各校の判断」としている。
県の調査の対象外だったさいたま市は「各校に一任しており、把握していない」(市教委指導1課)としている。【高本耕太、和田憲二】
2006年5月25日 毎日新聞
「愛国心」指導の実態把握へ 文科相
小坂文部科学相は19日午前の会見で、教育基本法改正で盛り込まれる「国を愛する態度」について「適切な指導が行われているか把握する何らかの方法はとっていく」と述べ、実態把握を通じて指導不足や行き過ぎの是正を図る考えを示した。
小坂氏は「(児童生徒の)愛する心を測ることはなかなか難しい」と述べ、指導による「効果」は調べないことを示唆。「指導が児童生徒の内心に立ち入って強制されるようなものではないということをしっかり現場に理解いただく」とした。
さらに、法規範性を持つ学習指導要領に以前から「愛国心」が規定されていることから、「今回基本法に同趣旨が述べられたからといって(指導のあり方が)変化するものではない」と話した。
asahi.com 2006年05月19日11時02分