文部科学省の動き(2008年5〜8月)


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<学力テスト>正答率40〜50%台の学校が3割 中3数学

文部科学省は29日、小学6年生と中学3年生を対象に今年4月に実施した全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果を公表した。基礎知識をみる問題の平均正答率は、中学数学で参加校の約2割が70%以上を確保した一方、40〜50%台の学校が約3割もあるなど、学校間格差が鮮明に浮かんだ。知識の活用力をみる問題の正答率は小中とも5〜6割で、43年ぶりに実施した昨年度に引き続き課題が見られた。

全国の小6と中3のほぼ全員にあたる約224万人が参加。国語と算数・数学それぞれについて、基礎を問う「知識」(A)と、応用力をみる「活用」(B)の2分類を出題した。生活習慣や学習環境の調査も実施した。

中学数学Aは平均正答率が63.9%だったが、学校ごとにみると▽70%台1749校(参加校の16.5%)▽60%台4921校(同46.6%)▽50%台2763校(同26.1%)▽40%台501校(同4.7%)−−とばらついた。小学国語A(平均正答率65.6%)でも、正答率70%台の学校が22.4%ある一方、50%台の学校も19.1%で、基礎学力に学校間で大きな格差があることが分かった。

分類別の正答率は、小学算数Aが72.3%で、中学国語Aは74.1%。A問題4分類の正答率は昨年度より8.1〜16.1ポイント下がった。B問題4分類は50.0〜61.5%で、10.5〜12.3ポイント低下。文科省は「過去の調査で課題が見られた内容を多く出題したため、昨年度より難しくなっている。昨年の正答率と単純には比較できない」としている。

平均正答率の都道府県間格差(公立校)は、最大の中学数学Aで22.5ポイントあり、最小の中学国語Aでも10.8ポイント。8分類中5分類で昨年度より差が拡大した。秋田が5分類でトップで、福井、富山も多くの分類で上位。沖縄は全分類最下位で、大阪や北海道、高知などが多くの分類で下位だった。上位層と下位層の顔ぶれは昨年度とほぼ同じだった。

昨年度と同様、就学援助を受ける児童生徒の割合が高い学校は、正答率が低い傾向が見られた。学習環境などの調査では、国数や総合学習を「役に立つと思う」と答えた児童生徒の割合が減った。【加藤隆寛】

毎日新聞 2008年8月29日

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上・下位県が固定化=「習慣、指導に一定傾向」−学力テスト2年目・文科省

文部科学省は29日、小学6年と中学3年を対象として4月に実施した全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果を公表した。都道府県別の平均正答率では、再開1年目の昨年度と同様、秋田、福井が上位だった一方、沖縄、北海道は振るわなかった。

上位下位の自治体について、文科省は「子供の生活習慣、学校の指導などに一定の傾向が見られる」と分析。上位の状況を参考に指導方法を改善するよう、各教育委員会や学校に促す考えだ。

テストには国公立のほぼ全校が参加し、私立小中の参加率はそれぞれ47%、53%。参加人数は小6が約116万人、中3が約108万人だった。

平均正答率は、小6の国語の「知識(A)」が65%、「活用(B)」が50%、算数Aが72%、Bが51%。中3では、国語A74%、国語B61%、数学A63%、数学B50%。同省は「活用する力に課題がある」と評価した。

正答率は各分野で前回より8−16ポイント低下。同省は出題内容を難しくしたことなどを理由に挙げ「学力が低下しているとは言えない」としている。 

時事通信 2008年8月29日

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全国学テで一部教委が“事前対策” 日教組が調査

日教組は27日、今年4月の全国学力テストに関して小中学校の教員を対象に実施したアンケートの結果を公表、一部の県や市町の教育委員会が学校に対し、昨年の問題を子どもに解かせるなど事前対策とも取れる指示を出していたと指摘した。

ほかに「業者から対策プリントを購入し直前に練習した」「校長や教頭から、昨年の問題を解かせたり事前練習をさせるよう言われた」との声も多く寄せられたという。

日教組は「過度な競争が生じる懸念が増している。全員調査から抽出調査に切り替えるべきだ」としている。

アンケートは日教組の各単組を通じ、4−6月に実施。24都道府県から回答があった。

それによると、石川県の教育事務所は管轄する市町の教育長に対し、今年のテスト対象学年の児童生徒に昨年の問題を解かせるよう指示。鹿児島県でも一部市町教委が各学校に対し、事前に昨年の問題を解かせた上で結果報告を求めたという。

共同通信 2008年8月27日

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クローズアップ2008:教員免許更新講習 内容、満足度にばらつき

◇小中高10年に1度、来年度から本格実施−−「義太夫」や洋上研修も
夏休み中の大学で、小中高の先生らが教員免許を更新するための勉強に励んでいる。来年度から始まる教員免許更新制の講習が各地で試行的に実施され、受講すれば必要な受講時間にカウントされるためだ。参加した教員からは「有益と思えない」との声もあり、内容や満足度のばらつきは大きい。教員の質向上が叫ばれて導入された制度だが、10年に1度の30時間の講習で先生たちは変わるのか。【山本紀子】

三味線の伴奏に合わせ、正座した教員たちが「母様(かかさま)かー」と声を振り絞った。日本芸術文化振興会が7月下旬に開いた講習。首都圏のほか北海道や四国から100人の教員が集まった。

プロの指導で義太夫節を語ったほか、歌舞伎鑑賞の時間もあった。「伝統芸能の理解」が目的で、「日本史の授業で役立ちそう」(高校の社会科教諭)「学ぶとは、まねることだとわかった」(高校の国語教諭)と満足度は高かったが、「遊んでいるように見えるかも」と不安の声も上がった。

講習は、全教員が最新の教育政策を学ぶ12時間と、免許の種類に応じ教科指導法などを身につける18時間の計30時間。うち18時間の講習は、文部科学省告示が「幼児、児童または生徒に対する指導上の課題」と定めるだけで、自由なテーマ設定が可能だ。「興味、関心に応じて専門性を高めてもらう」ことが理由で、▽洋上での操舵(そうだ)実習(鹿児島大)▽理科実験の指導力向上(甲南大)▽「老子」を読む(愛知大)−−など内容は多岐にわたる。

問題は、講座の手法にばらつきが大きいことだ。参加者20人で「なぜ人を殺してはいけないのか」を論じ合う講習もあれば、100人規模の教室で座学が続くコースもある。

京都府の大学で、学校を巡る近年の状況などの講習を受けた埼玉県の県立高教員(42)は「講義が多かったが、小グループで事例研究するなど工夫してほしかった。30時間拘束されて何も残らなければ、夏休みに英気も養えず、ますます教育力が落ちる」とこぼす。

文科省は主催元の大学などに参加者アンケートを義務付けている。「学校を超えて話し合えてよかった」との評価の一方、「内容に新しさがなく無益」との酷評もあるという。文科省の宮内健二教員免許企画室長は「意見を生かしレベルアップを図る」と話す。

講習については、教育公務員特例法で全教員に義務付けられた10年研修と、時期や内容が重複することも問題となっている。40日間にわたって教科や生徒指導法を学ぶ10年研修は、拘束時間も負担も大きい。このため岩手県は今回、全国で唯一、更新講習の主催者に加わって地元の大学とカリキュラムを練り、更新講習が10年研修を兼ねられるようにした。文科省は「よく調べ関係を整理したい」と、10年研修の内容軽減も検討している。

◇講座運営元の大学に戸惑い−−毎年10万人規模
今年は118の大学・法人(8月現在)が983種類の講習を開く。しかし、大学によって熱意に差があり、来年以降、毎年約10万人に上る受講者の受け皿を確保することは容易ではない。

教員養成コースをもつ大学はノウハウを生かし、きめ細かい指導講座を開いている。愛知教育大は、外国人児童の国語指導法やICT(情報通信技術)教育などを取り上げた。岩手大は県内の2大学と連携し、全教科対応の講習を開き、学力向上策など関心の高いテーマも盛り込んだ。

一方、「きっちり定員が集まらないと赤字が出る」(青森県の私大)と、講習の開催自体を迷う大学も少なくない。試行の今年の定員は「10万人には遠く及ばない」(文科省)だけに、文科省にとっては受け皿確保は最大の課題で、「必ず実現させる」(文科省教員免許企画室)と懸命に参加を促している。

しかし、実情は厳しい。例えば、今年は県内で1大学しか参加しない大分県は、小学校教員向けのコースしか準備できなかった。県教委は「採算や教員のやりくりで、どこも慎重だ」と来年以降を不安視する。

東京学芸大教員養成カリキュラム開発研究センターの岩田康之准教授は「09年の本格実施を前提に制度設計を急いだため、全体的に準備不足。文科省は、十分な数の講習が準備できない懸念から校長らの受講を免除せざるを得なくなり、質も不問となった。資質向上できるのは一部のラッキーな教員だけだろう」と厳しい。その上で「10年のスパンで自らの実践を省察する一つの機会。大学側は、中長期的な課題を教員自身が考えられるよう、カリキュラムを工夫すべきだ」と指摘している。

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■ことば
◇教員免許更新制
昨年6月の教員免許法改正で導入された。小中高と幼稚園の教員に10年ごとの講習を義務付ける。講習は大学のほか、文科省が指定する法人などが実施でき、教員はどこで受講してもよい。実施機関の試験に合格すれば更新される。初回の対象は11年3月時点で35、45、55歳の教員。試験に落ちた場合は再度受講できるが、2年間の受講期間中に合格しなければ免許は失効する。

毎日新聞 2008年8月16日

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教育再生懇=文科省は強力指導を

政府の教育再生懇談会(座長・安西祐一郎慶応義塾塾長)は11日、大分県での教員採用汚職事件を受け、全国の教育委員会と文部科学省へのアピールを発表。教員の採用や昇任を不正のない制度の下で行うよう、同省に対し教委をより強力に指導するよう求めた。

懇談会は「事件は、子どもや保護者の信頼を裏切る深刻な事件で、教育再生の努力が水泡に帰すことにもなりかねない」と指摘。アピールでは▽試験問題や選考基準の公開など透明性の向上▽教員出身者以外の職員を教委幹部に置くなど閉鎖性の改善▽首長による教委改革への積極支援−などを盛り込んだ。(了)

時事通信 2008年8月11日

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教員情報、電子化1千万件 合言葉は「社保庁になるな」

都道府県の教育委員会に保管されている教員免許状の原簿のデータを電子情報化する作業がこの夏本格化している。来年度から始まる教員免許更新制の運営のため、データを一元管理する必要があるからだ。対象となる免許状は推計1千万を超え、「第二の社会保険庁になるな」が作業の合言葉になっている。

原簿には、免許番号、授与日、本籍、生年月日などが記載されている。免許更新制では55歳で最後の講習を受ける必要があるため、文部科学省は73年以降に授与された1千万件(推計値)を電子化の対象としている。このうち紙のままが500万件、更新制の導入が決まる以前に電子化された分が500万件ある。

9万7千件全部が紙のままの青森県は、業者に委託し7月から入力を始めた。入力ミスがないよう契約で業者に点検を厳しく課しており、さらに県教委も点検する。担当者は「個人情報の漏洩(ろうえい)がないことも含めて、決めた期限までに完全品をつくる契約を履行してもらう」という。

紙が51万件を超える愛知県は、6月から業者が約110人を動員して打ち込みを開始。同じ原簿を2人で打ったうえで、データが合っているか突き合わせる。紙が26万5千件にのぼる北海道の場合、業者の打ち込み・突き合わせ作業の後、道教委が別に進めている現職教員調査の名簿と照合する。「10月いっぱい、遅くとも年内に終わらせたい」という。

電子化してデータを一元化するのは、免許状を授与した都道府県(免許授与権者)と、教員として採用した都道府県(管理者)が異なるケースが少なくないからだ。

たとえば、東京都内の大学で学んで免許を取得し、愛媛県で採用された場合、免許更新は勤務地の愛媛県教委に届け出るが、原簿は授与した東京都教委にある。このほか、大卒時に中学校の免許、その後、社会人になって大学の所在地とは別の都道府県で小学校の免許も取得した場合や、都道府県が異なる複数の学校で勤務した場合もある。各教委は対象者がどんな免許状を持っているのか、一元管理システムを使って調べ、手続きを進めることになる。

社会保険庁のように原簿そのものの情報や入力の誤りで、更新の際に検索しても名寄せができなくなることはないのか。文科省は一定の比率でありうると想定する。

対象者から免許更新の申請を受けても、名前が誤っていたり、結婚前の旧姓のままだったりしてシステム上、見あたらない場合、生年月日や授与番号などで確かめる。それでも見つからなければ、本人の経歴を手がかりに時間をかけて紙の原簿をめくっていく。担当者は「社保庁のことは念頭にある。制度が始まってから混乱しないようにしたい」という。(編集委員・山上浩二郎、志田修二)

朝日新聞 2008年8月7日

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教育費、数値目標見送り…文科省「完敗」 教員定数増も

政府は27日、今後5年間の教育政策の財政目標を定める「教育振興基本計画」について、文部科学省の原案にあった10年後の教育投資額や教職員定数の具体的な数値目標の明記を見送ることを決めた。7月1日の閣議決定を目指す。

数値目標を盛り込んだ文科省原案に対しては、財源をめぐって財務省などが反発し綱引きが続いていたが、文科省の「完敗」で決着しそうだ。自民党文教族議員の再反発は必至だ。

文科省原案では、10年後の教育投資額について、「国内総生産(GDP)比で、現在の3・5%からOECD(経済協力開発機構)諸国の平均5・0%を上回る水準」としていたが、この数値目標は政府内の理解を得られなかった。このため、文科省は「OECD諸国など、諸外国の公財政支出などの教育投資の状況を参考の一つとする」と修正する方向だ。

また、教職員定数については、原案に2011年度から始まる小学校英語の専門教師などの要員として2万5000人を盛り込んだが、「新学習指導要領の円滑な実施を図るため、教職員定数のあり方など教育を支える条件整備について検討する」と修正する方針だ。

讀賣新聞 2008年6月28日

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教育の数値目標は明記せず 財務省反対で 教育基本計画、1日決定へ

政府が初めて策定する教育振興基本計画最終案の大枠が27日、明らかになった。文部科学省が求めた「国内総生産(GDP)に占める教育投資の割合を5・0%超に拡充する」など焦点の数値目標の設定は、財務省などの反対で文科省が盛り込みを断念した。

計画策定を契機に教育予算の大幅増を狙った文科省の狙いは大きく後退した。政府内の調整は27日に終了、30日に与党の了承を得て7月1日の閣議決定を目指す。

最終案では、教育投資については「経済協力開発機構(OECD)諸国など諸外国の状況を参考に、必要な予算の財源を措置し、教育投資を確保する」との表現にとどめ、数値の明記は避けた。

さらに小中学校の教職員定数を約2万5000人増やすよう文科省が求めていた点についても人数は示さず、改定学習指導要領の円滑な実施に向けて「定数の在り方を検討する」との文言に修正することで合意した。

最終案について渡海紀三朗文科相は27日午後、「満足できる記述ではないが、毎年の予算要求で頑張っていこうと決断した」と記者団に説明した。

文科省は5月23日、GDPに占める教育投資の割合を現在の3・5%から「OECD諸国平均の5・0%を上回る水準」に拡充するなどの数値目標を盛り込んだ計画原案を発表した。

これに対し財務省や総務省は、政府の歳出削減や地方公務員の削減方針に反するとして反対。折衝は暗礁に乗り上げていたが、重要政策の基本方針である「骨太の方針2008」を27日に閣議決定したことから、町村信孝官房長官が渡海文科相ら関係閣僚に早期決着を指示、数値目標の取り下げで合意した。

共同通信 2008年6月27日

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教育振興基本計画、数値目標は盛らず 4閣僚が合意

初めて策定される政府の教育振興基本計画について、渡海文部科学相、額賀財務相、増田総務相、町村官房長官の4閣僚が27日、交渉し、文科省が求めていた数値目標を盛り込まないことで合意した。与党内の手続きを経て、来週中にも閣議決定される予定。

文科省は、(1)教育に対する公的支出の割合を今後10年間で現在の国内総生産(GDP)の3.5%から5.0%に引き上げる(2)今後5年間で小中学校の教職員を2万5千人程度増やす――ことなどの明記を求めていた。しかし、歳出増につながるとして財務省などが反対していた。

最終的に4閣僚の直接交渉に持ち込まれ、教育投資は「諸外国の状況を参考に」、定数は「あり方について検討」と数値に触れない表現となった。渡海氏は交渉後、「満足とは言えないが、同じ議論を繰り返しても仕方がない。毎年度の予算編成の中で必要な主張をしていく」と話した。(中井大助)

朝日新聞 2008年6月27日

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高等教育の強化明記 「骨太08」の最終案固まる

政府が27日に閣議決定する経済財政運営の基本方針「骨太方針2008」の最終案が固まった。調整が残っていた教育の項目では、高等教育の教育研究の強化や学校のICT(情報通信技術)化の推進など10以上の個別施策を新たに掲げたうえで、「新たな時代に対応した教育上の諸施策に積極的に取り組む」と明記した。

教員の増員や財政支出の数値目標を巡り閣議決定が遅れている教育振興基本計画の扱いについては、原案通り「計画に基づき、我が国の未来を切り拓(ひら)く教育を推進する」との表現を残した。ただ教員数や財源に関する数値は盛りこまなかった。(

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骨太の方針:最終案 教育予算「玉虫色」 文科・財務省の両論併記

政府が27日に閣議決定する「骨太の方針08」の最終案が26日、明らかになった。文部科学省と財務省の対立で調整が難航していた教育分野について、最終案は文科省の要望を入れ、ゆとり教育からの転換に向けた「新学習指導要領の円滑な実施」や「教員一人一人が子どもに向き合う環境づくり」に取り組む方針を明記する一方、財務省が主張する少子化に対応した公立小中学校の統廃合を念頭に「学校の適正配置」の必要性も明記。両論を併記する「玉虫色」の内容となった。

教員増も含め教育予算の大幅増の布石にしたい文科省と、大幅な歳出増につながる表現を避けたい財務省の対立で、23日の骨太原案の段階では調整がついていなかった。骨太最終案は、少子化が進む中、教育の充実に予算の大幅増が必要なのかどうかについて方向性を示さず、今後の予算編成に先送りした。

骨太最終案はこのほか、福田康夫首相の「無駄ゼロの徹底」方針を受けて、「政府機能の見直し」の項目を充実。約350の公益法人について、随意契約の実質的な全廃、役員数削減などによる人件費削減などを含めた国の支出抑制策を予算に反映させる方針を盛り込んだ。【清水憲司】

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骨太の方針:原案策定 細る「骨太」懸案先送り 諮問会議が「穏健化」

政府の経済財政諮問会議が23日に示した「骨太の方針08」の原案は、消費税、道路特定財源、教育予算など、自民党とあつれきを生みかねない懸案をおおむね先送りする内容となった。「骨太」の「先細り」と受け取れる状況は、小泉純一郎元首相が官邸主導の「改革のエンジン」として利用した諮問会議の変質ぶりを反映している。

「小泉政権では自民党から反発されて大変だったが、小泉さんが強引に突っ走った」

政府筋は23日、諮問会議の「穏健化」を逆説的にこう表現した。

「聖域なき構造改革」を掲げた小泉氏は、民間出身の竹中平蔵氏を経済財政担当相として重用。骨太の方針で「不良債権を2〜3年内に処理」「公共事業費の3%削減」などを打ち出した。自民党族議員は「素人集団には従えない」と竹中氏を批判したが、小泉氏の決断という形で落ち着くのが通例だった。

ただ、小泉政権最後の06年度には与党との妥協姿勢が目立ち、安倍晋三前首相による「骨太の方針07」は、直後に参院選を控えていたこともあり、与党の歳出圧力に配慮して公共事業の数値目標の明記を見送った。

今回はこうした流れの延長線上にある。翌年度の予算編成を縛る骨太方針の重みが低下している以上、最後は首相の判断が問われることになる。【坂口裕彦】

毎日新聞 2008年6月24日

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「骨太08」調整大詰め、教育・ODA懸案先送り

経済財政運営の基本方針(骨太方針2008)の策定を巡る政府内の調整が大詰めを迎えている。社会保障費の伸び抑制や公共事業費の削減幅が焦点となるなか、歳出増要求が強い教育や政府開発援助(ODA)、地方交付税などの分野は経済財政諮問会議でもほとんど議論されないままだ。骨太方針は歳出について「最大限の削減」をうたうが、各分野の具体的な課題は年末の予算編成に先送りした格好だ。

骨太方針08は23日の経済財政諮問会議や、与党内の論議を経て27日に閣議決定する予定となっている。(22日 10:55)

日本経済新聞 2008年6月22日 10:55

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骨太の方針:幼児教育の無料化「検討」…原案判明

政府の経済財政諮問会議(議長・福田康夫首相)が今月下旬に決定する経済財政運営の基本方針「骨太の方針08」の原案の全容が20日、明らかになった。素案でほぼ空白だった教育分野で、将来の幼児教育無料化について「歳入改革に合わせて財源、制度等の問題を総合的に検討する」と明記。09年度予算編成の方向については、素案にあった「最大限の削減を行う」との表現を残している。

23日の諮問会議で大田弘子経済財政担当相が提示したうえで、27日に閣議決定される。

幼児教育の無料化は、与党が少子化対策の目玉として早期実現を求めているが、実施には約7000億円が必要。政府の社会保障国民会議の中間報告でもこの点が指摘されており、原案では増税を含む歳入改革と一体で実現を目指す考えを示した。当面の施策としては「就学前教育の保護者負担の軽減策を充実する」とした。

地球温暖化問題では、サマータイム制度の導入を目指すことを明記。原油や食料の価格高騰問題では、総論で「国民生活への不安が広がっている」と指摘したうえで、原油高騰の影響を受けた中小企業の資金調達の支援などを盛り込んだ。東京・秋葉原の17人殺傷事件や岩手・宮城内陸地震を受け「良好な治安と災害に強い社会の実現」も盛り込んだ。

09年度予算編成では「ムダ・ゼロに向けた見直し」を強調。特別会計について「必要性・透明性の観点から総点検し、政策の棚卸しを行う」とし、行政機関の無駄な歳出の削減に取り組む姿勢を強調した。【須佐美玲子、坂口裕彦】

毎日新聞 2008年6月21日

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歳出削減は「努力目標」へと後退 骨太の方針素案

政府が今月末決定する「骨太の方針08」の素案の概要が明らかになった。社会保障や公共事業に関する歳出削減目標は維持するものの、与党からの歳出増圧力を受け「最大限の削減努力を行う」と努力目標に後退。福田首相は削減路線の堅持を表明しているが、年末の予算編成に向け大きな火種を残す可能性がある。

素案は政府内での最終調整を経て、17日の経済財政諮問会議で公表。その後の諮問会議での議論や与党との調整も経て成案になる。

政府は小泉政権では最後の「骨太06」で、「基礎的財政収支を11年度に黒字化する」という財政再建目標を設定。社会保障費の伸びを5年間で1.1兆円抑え、公共事業費を毎年1〜3%ずつ削るといった分野ごとの歳出削減目標を決めた。

安倍政権による「骨太07」も「骨太06にのっとり最大限の削減を行う」と路線踏襲を明記。07、08年度予算では、社会保障費は1.1兆円を5等分した2200億円ずつ抑え、公共事業費は各年度で3%超の削減が続いた。

その後、産科医の不足や救急医療体制の弱体化などが表面化。世論の反発を受けた後期高齢者医療制度の見直しにも費用が必要なため、特に社会保障について与党から「毎年の機械的な削減は限界」との声が強まっている。教育や途上国援助などでも歳出削減路線見直しの要求が続出。09年度予算の方向性を決める骨太08で「削減努力」という表現にとどまれば、予算編成の過程で歳出増圧力が勢いを増しそうだ。

一方、歳入確保策については、「骨太07」は消費税を含む税制抜本改革に「07年度をめどに取り組む」としたが、骨太08の素案では「早期に実現をはかる」と目標時期が消えた。民主党が消費税率引き上げに反対で、実現のめどが立たないことが背景にある。

首相が重視する地球温暖化対策として「環境税の取り扱いを含め、低炭素化促進の観点から税制全般を見直す」と記述。産業界に反対が根強い環境税に言及した。(庄司将晃)

朝日新聞 2008年6月14日

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五洋建設を指名停止=汚職事件で文科省

 文部科学省は13日、国立大学の施設整備をめぐる汚職事件に関連し、五洋建設を同日から8月12日まで2カ月間の指名停止処分にすると発表した。
 事件では、同社子会社顧問から現金を受け取ったとして、同省の前文教施設企画部長が収賄罪で起訴されている。(了)

時事通信 2008年6月13日

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支援怠れば「教育亡国」 高等教育投資拡大求め声明

高等教育への支援を怠れば、日本は「教育亡国」の道を歩むことになる−。慶応大の安西祐一郎塾長ら中教審委員の4人が12日の会合で、教育振興基本計画の策定を進める政府に、大学や大学院など高等教育への財政支出拡大を訴える緊急声明を発表した。渡海紀三朗文部科学相にも要望書を提出した。

基本計画をめぐっては、現行の国内総生産(GDP)比3・5%の教育予算を、今後10年間で経済協力開発機構(OECD)諸国平均の同5・0%に拡大するとした文部科学省原案に対し、歳出拡大につながる数値目標の設定に財務省が反発。2007年度中を予定していた閣議決定が大幅に遅れている。

声明は「高等教育のグローバル化で人材の獲得競争が激化している」と指摘。世界最高水準の教育研究環境を整備して優秀な学生を引きつけ、教育の成果や質を向上させるためには、政府による教育投資の数値目標設定や財政支出の強化は重要と主張している。

共同通信 2008年6月12日

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教育予算:「高等教育予算、やっぱり少ない」 財務省の主張に文科省が再反論

国が初めて策定する教育振興基本計画に関し、教育予算増などの数値目標明記を目指す文部科学省をけん制するため財務省が公表した反論書に対抗し、文科省は再反論書をまとめた。「生徒1人当たりの教育予算は主要先進国とそん色ない」と主張する財務省の分析を批判し、「高等教育などの1人当たり予算は、経済協力開発機構(OECD)平均を下回っている」と反論した。

財務省の主張の根拠は、生徒1人当たりの教育予算を国民1人当たりの国内総生産(GDP)で割った値で、文科省は「単純な解釈ができない」と疑問を提示。ドル換算で、日本は就学前1973ドル、高等教育5024ドルだが、OECD平均はそれぞれ3793ドルと8403ドルだとした。さらに「初等中等教育段階は先進国と同程度だが、教員の年齢上昇による人件費増などが要因」とした。

「教育予算が多ければ学力が高いわけではない」との財務省の見解には、「OECDの学習到達度調査(PISA)の結果では、1人当たり教育予算と学力に明らかな関係性がある」とのOECDの分析を紹介した。

財務省が「学力向上など教育成果こそ数値目標を」とした点は、基本計画案に「世界トップの学力水準を目指し、国際調査などで学力の高い層の割合を増やす」などの目標を盛り込んだと反論した。【加藤隆寛】

毎日新聞 2008年6月3日

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<財政審>建議概要が判明 教育予算増「容認できない」

財政制度等審議会(財務相の諮問機関)が09年度予算編成に向けて6月3日に額賀福志郎財務相に提出する建議(意見書)の概要が30日わかった。教育予算の大幅拡充を求める文部科学省の主張に強く反論したほか、社会保障費についても5年間(07〜11年度)で1兆1000億円を抑制する政府の方針を堅持するよう求める。

今年の建議が、教育予算に焦点を当てたのは、文部科学省が国内総生産(GDP)を基準に教育予算を大幅に引き上げる方針を示しているため。建議は教育予算のあり方について「額だけが目標化され、教育充実の成果が不明確であってはならない」と強調。多額の財源の手当てが困難なことや、政府の財政健全化方針に逆行する点も指摘し、「容認できない」との姿勢を打ち出す。

文科省は、政府が6月に閣議決定する「教育振興基本計画」に教育予算をOECD(経済協力開発機構)加盟国平均である対GDP比5%以上に引き上げることを明記し、教育予算を歳出改革の対象から事実上外す「聖域化」を狙っている。建議はこれに真っ向から反論した形で、経済財政諮問会議が6月下旬にまとめる「骨太の方針08」に向けた調整は難航しそうだ。

建議は、社会保障費に関しては、「少子高齢化に伴い、中長期的に増大する社会保障給付のためには、安定的な財源の確保が必要」と指摘。09年度に財源の手当てがないまま、基礎年金の国庫負担を2分の1に引き上げることに懸念を示す。

そのうえで「消費税を含む抜本的な税制改革の実現が必要」と訴える。【清水憲司】

毎日新聞 2008年6月1日

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教育予算:「GDP5%」で攻防 文科省増額方針、財務省は反発

09年度予算編成をにらんだ財務省と文部科学省の攻防が激化している。文科省や自民党文教族は近く閣議決定する「教育振興基本計画」に国と地方の教育支出額を「国内総生産(GDP)比5%」まで引き上げる方針を盛り込み、予算の大幅増額に布石を打つ考え。これに対し、財務省は「増額を認められる財政状況ではない」と反発。予算増額を伴わない独自の教育充実策を提言するなど、対決姿勢を強めている。

教育予算のGDP比は現在3・5%だが、文科省は同計画で「教育立国実現には欧米並み5・0%の水準が不可欠」と打ち出す方針。「ゆとり教育」の転換を名目に小中学校教職員定数を5年間で2万5000人増員することも計画する。

しかし、国の教育支出を5%に上げるには7兆4000億円もの財源が必要だ。財務省は「消費税3%分もの予算を教育だけに充てることに、国民の理解が得られるとは思えない」と反発している。少子化が進む日本の教育予算は、児童・生徒1人当たりで見ると欧米先進国にそん色がない水準にあることをデータで提示。教職員増員計画に対しても、教師1人が受け持つ授業時間数が欧米に比べて短いことなどを示して、反対の論陣を張る。

さらに、文科省が注力する国立大学の研究支援でも財務省独自の改革試案を公表した。

国立大の学費を私大並みに引き上げるなど措置を講じれば、国が現在国立大に配分している運営費交付金(08年度予算で計1・2兆円)の中から最大5200億円の財源が工面でき、世界的な研究支援などに振り向けられるとするアイデアを打ち上げた。【清水憲司】

毎日新聞 2008年5月29日

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教育予算7兆増なら幼稚園無料・私大生に30万…文科省検討

「幼稚園、保育所は無償」「私立大学生200万人に30万円支給」――。政府の「教育振興基本計画」で、教育投資の総額が対国内総生産(GDP)比で、現在の3・5%から5%になった場合、文部科学省が検討している増額分1・5%(約7兆円)の使途が29日、明らかになった。

低所得者世帯の大学生の授業料免除や私立の高校・大学生などへの授業料減額などに約2・2兆円をつぎ込むなど大盤振る舞いが目立つ。財務省は反発を強めており、振興計画の閣議決定は6月中旬以降にずれ込みそうだ。

「教育振興基本計画」は、今年度から5年間の教育政策の財政目標を定めるもの。4月の中央教育審議会の答申は、国の財政事情に配慮し、投資額の目標は示さなかった。だが、自民党の文教族議員から「教育にかけるお金をきちんと書き込むべきだ」など“激励”の声があがり、文科省は計画原案で数値目標を織り込んだ。

一方、財務省は「財源や使途が不明」と反発。このため、文科省は増額分約7兆円の使途を急きょまとめた。

年収200万円未満の家庭の大学・短大生の授業料は免除、500万円未満は半額免除する。すべての学校施設の耐震化に約1兆円、3〜5歳児までの幼稚園と保育所の無償化費用として計約7700億円を盛り込んだ。また、文科省は同計画に教職員定数の2万5000人増員を盛り込んでおり、この人件費を1750億円と試算している。

讀賣新聞 2008年5月29日

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教員増なら一般公務員にしわ寄せ 総務省事務次官が慎重姿勢

総務省の滝野欣弥事務次官は26日の記者会見で、文部科学省が教育振興基本計画の原案に2万5000人の教員増を盛り込んだことについて「地方の一般公務員をさらに削減する必要が生じてしまう」と述べた。現在、地方自治体は2010年4月1日までの5年間で6.2%の人員削減を進めている。滝野次官は教員定数だけを増やすことに慎重な姿勢を示した。

日本経済新聞 2008年5月26日

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新教育の森:教育振興基本計画 予算増の数値目標、明記したい文科省

◇財務省は反論書出し対抗
今後5〜10年の教育政策の方向性を示す政府の教育振興基本計画。教育投資などの数値目標が盛り込まれるかが焦点となっており、閣議決定を前に文部科学省と財務省の攻防が激化している。【加藤隆寛】

◆GDP比低い日本

「ずいぶん挑発的な副題じゃないか。我々の政策がウソに基づいているとでも言うのか」。文科省幹部が一通のリポートのページを繰りながら顔をしかめた。副題は「事実に基づいた教育政策のために」。財務省主計局が今月12日、「日本の教育予算は諸外国より劣る」と主張する文科省へ対抗するために公表した「反論書」だ。

文科省は基本計画に「今後10年で、教育予算の対国内総生産(GDP)比を現在の3・5%から5・0%を上回る水準に引き上げる」「5年間で教職員定数を2万5000人増やす」と記載することを目指している。

日本はGDP492兆円に対し、教育支出は17・2兆円(04年)で、GDP比3・5%。経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均は5%で遠く及ばない。渡海紀三朗文科相はGDP比の目標を掲げる理由について、「国力であるGDPを国家としてどんな政策選択に向けていくかを示す値だ」と説明する。

◆閣議決定で優遇期待

この目標の実現には、約7兆4000億円の財源が必要になる。緊縮財政の下では、予算獲得は容易ではない。しかし、基本計画は閣議で決定される。閣議決定された数値目標には一定の重みがあり、財務省との予算折衝で文科省が優位に立つことが可能となるとの思いがある。

例えば、06年3月に閣議決定された科学技術基本計画は研究開発投資目標を「5年間で25兆円」と明記した。文科省幹部は「閣議決定された基本計画があることで、科学技術関係の予算が一部優遇されているのは事実だ」と話す。

◆互いに主張譲らず

文科省の思惑にくぎを刺すように、財務省の反論書は自作のデータを示し、「日本も他国並みに教育に金をかけている」「金をかければ教育が改善するわけではない。教育は質が重要だ」などと主張した。基本計画について「投資目標ではなく、学力水準や規範意識をどの程度向上させるのかなどの『成果指標』を掲げるべきだ」と突き放した。

日本で国と地方が支出する予算の合計はGDP比37・2%で、OECD平均の42・1%に比べて少ない。少子化も進んでいる。反論書はこうした条件の違いを示した上で、「生徒1人当たりの教育支出を国民1人当たりのGDPで割ると、日本は20・9%で、主要先進国(21・4%)とそん色ない」と主張する。

ただ、この指摘には、からくりもありそうだ。「主要先進国」とは米国、イギリス、ドイツ、フランスに日本を加えた5カ国を指す。このうち、GDP比でみた全教育支出がOECD平均を上回るのは米仏だけ。アイスランドやデンマーク、スウェーデンなど、GDP比でみた支出が上位の国は除かれている。データ不足の4カ国を除く26カ国のOECD平均値は22・1%だ。

生徒1人当たりの教育支出を国民1人当たりのGDPで割るという計算法について、財務省は「為替レートの影響を排除するためだ。単純に全教育支出を生徒数で割った1人当たりの額で比較しても、為替レートの影響を排除できず、正確に比較できない」と説明する。これに対し、文科省の担当者は「あまり意味のある数値と思えない」と疑問を示す。

両省の議論について、渡海文科相は20日の会見で「お互いが自分の主張をしているだけで、まともにぶつかってないんじゃないかという気がする」と話した。

福田康夫首相は4月30日の会見で、道路特定財源の一般財源化後の使途の一つに「高等教育の充実」を挙げた。新たな財源の獲得を巡る各省や族議員の思惑も交錯する。今後は文科省の原案をたたき台に、財務省や総務省との折衝が本格化する。基本計画は本来なら昨年度中に閣議決定される予定だったが、決定まではまだ時間がかかりそうだ。

◇中教審答申には記載なく 新指導要領実施迫り、焦りも
今月15日の自民党文教制度調査会合同会議。12日に財務省が公表した反論書に明確に反論できなかった文科省幹部に、議員から怒声が飛んだ。「学力だって体力だって現に落ちているじゃないか。『これだけ上げます。そのために予算が必要です』となぜ書けない」

基本計画はそもそも、中央教育審議会で1年2カ月にわたって審議された。委員からも具体的な数値目標を盛り込むことを求める意見が出されたが、答申前の折衝で、「(予算増は)行革推進法などとの整合性が取れない」とする財務省側に文科省側が押し切られ、数値目標明記を断念した。その後、文教族議員らが数値目標のない答申を批判して官邸などに要請行動。渡海文科相が文相・文科相OBとの会合で、数値目標を入れた省としての原案を作る方針を示したという経緯がある。

文科省はなぜ、「現状で不足している予算を検証・積算し、必要な金額を導く」という手法を取らなかったのか。ある文科省幹部は「例えば、『どれだけ定数を増やせば、どれだけ教師の手が空くか』などの効果を定量的に示したデータはない。中教審でも十分な議論がなされていないことを文科省として書き込むのは難しい」と事情を打ち明ける。少人数教育と学力向上の関係もきちんと実証されておらず、「投資の効果は投資してみなければ分からない」という現状から抜け出せずにいるという。

しかし、教育現場からは、「人と金」の不足に苦しむ悲鳴が上がっている。学習内容を増やす新学習指導要領の完全実施は小学校が11年度、中学校が12年度に迫った。来年度からは理数科目を中心に前倒し実施も始まる。別の文科省幹部は「指導要領をこれだけ変えておいて『定数は増やせません』なんて通らない。それでは現場は怒る」と顔に焦りの色を浮かべる。こうした危機感から、文科省原案に教職員定数の目標値も書き込んだ。

◇財政縮減が響き、政府方針も後退
文科省が基本計画で数値目標を掲げるようになった原点は、政府の教育改革国民会議による「17の提案」(00年12月)だった。基本計画の必要性を訴え、「投資を惜しんで教育改革は実行できない。財政支出の指標の設定も考えるべきだ」と提言した。

教育基本法改正(06年12月)を巡る議論では、「改正法で基本計画策定を義務づけ数値目標を掲げる」とされた。文科省には、改正議論で注目された愛国心など保守色の上乗せだけでなく、予算面での実効性が見込める法改正との印象が強まった。

だが、財政縮減の流れで、「教育も聖域ではない」との考え方が一般化する。皮肉なことに、改正教育基本法が成立した06年、風向きが完全に変わった。骨太の方針06や行政改革推進法で文教予算の削減方針が打ち出され、教職員定数は「07年度から5年間で1万人純減させる」などと定められた。

政府の教育再生会議の報告(07年6月)では、「(予算に)メリハリをつける」「内容の充実を」などと記述が後退。文科省幹部は「『ハシゴを外された』と思った」と振り返る。

毎日新聞 2008年5月26日 東京版

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教職員2万5000人増、「小学英語」要員など…文科省原案

改正教育基本法に基づき、戦後初めて策定される「教育振興基本計画」の文部科学省原案に、教職員定数の2万5000人増員が盛り込まれることが22日、明らかになった。

2011年度から始まる小学校英語の専門教師に約2400人、理数系を中心とした少人数指導の要員に約8800人をあてるなどとしている。

来月早々の同計画の閣議決定を目指している文科省は、この原案をもとに省庁間の調整に入るが、具体的な増員数を掲げることに財務省が強く反対しており、今後の展開が注目される。

同計画は今年度から5年間の政府の教育施策の目標を定めたもの。中央教育審議会の先月の答申では、国の財政事情に配慮して財政上の数値目標を盛り込まなかったことから自民党文教族議員らを中心に反発が広がり、文科省は、原案に国の教育支出額の目標として「国内総生産(GDP)の5%」を掲げることに加え、新たに教職員の増員数も明記することを決めた。

現在の教職員数は約70万人。行革推進法が10年度まで「児童生徒の減少を上回る割合での教職員の純減」を定めていることを受け、新学習指導要領が小学校で実施される11年度以降の2年間で実現することを目指す。内訳は、小学校英語の専門教師や少人数指導の要員のほか、新指導要領で授業時間が増えることに対応するため、小学校で11年度に約1万人、中学では12年度に約3300人を増やす。

国の教育支出額は現在、GDPの3・5%の約17・2兆円。5%とした際の増額分約7兆円について、文科省は、教職員の増員など小中高校教育に約2・8兆円、大学教育に約3・5兆円を振り分けたい考え。

讀賣新聞 2008年5月23日

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教員5年で2万5000人増 新指導要領 文科省原案 授業時間増に対応

政府が初めて策定する教育振興基本計画の文部科学省原案が二十二日、明らかになった。授業時間を増やす新学習指導要領の実施に伴い、今後五年間で小中学校の教職員を二万五千人程度増員することなどが柱となっている。今後十年間で教育への公財政支出を現在の対国内総生産(GDP)比3・5%から、経済協力開発機構(OECD)諸国平均の5・0%を上回る水準を目指す。

教育予算増額に否定的な財務など各省と二十三日にも折衝に入る。

新学習指導要領は小学校で二〇一一年度、中学校では一二年度から全面実施される。文科省は一〇年度までで教職員の純減を定めた行政改革推進法の期限は切れるとして、改正教育基本法で策定が義務づけられた教育振興基本計画で増員を盛り込むのは可能と判断した。

これとは別に、教員が子ども一人一人に向き合う時間の確保のため、主幹教諭の配置や特別支援教育、食育の充実などに教職員の増員が必要とした。計画には明記しないものの、文科省はこれに一万人が必要と判断している。

中央教育審議会の計画に関する四月の答申は、財務省の了承が得られず、教員増員や教育投資の数値目標が盛り込まれなかったことから、審議会委員や与党内部からも批判があった。

一方、財務省は「計画は成果指標で目標設定すべきで投入量では目標たりえない」などの反論文書を“先手”を打つ形で公表している。

教育現場からは、新指導要領の導入で、教員増員などの条件整備を求める声が強い。

東京新聞 2008年5月23日

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教育関連予算:教育費増額要求に反論 財務省「欧米とそん色ない」

渡海紀三朗文部科学相や自民党の文教族議員が、教育関連予算の対国内総生産(GDP)比を大幅に引き上げるよう政府に働きかけていることに対して、財務省は12日、欧米各国などの詳細なデータを盛り込んだ反論書を公表した。この中で、財務省は「少子化が進む日本とそうでない他の国のGDP比を単純に比べても意味は無い」と主張。その上で「生徒1人当たりの教育費で見ると、日本は主要先進国とそん色なく、数値目標を掲げるなら、予算の投入量ではなく、教育による成果にこそ適用すべきだ」と、「教育予算のバラまき」を強くけん制した。

教育予算の拡充は、政府が今後5〜10年の方策を示す「教育振興基本計画」作りの焦点。文教族は財政再建がハードルとなり、計画に予算拡充の数値目標が盛り込まれずにいることから、4月下旬以降、巻き返しを開始。渡海文科相も9日、「現在GDP比3・5%の教育費を今後10年間で経済協力開発機構(OECD)諸国平均の5・0%へ引き上げるべきだ」とぶち上げた。

これに対し、財務省は反論書で「1人当たり教育費」を算出すれば、先進国中で米国に次いで2番目の公的教育支出国になると指摘。「欧米のように、教育でどんな子どもを育てるのか、学力向上や規範意識など成果にこそ数値目標を設けるべきだ」と訴えた。

5・0%目標に必要な財源7兆4000億円の手当ても「全く考えられていない」と批判した。【清水憲司】

毎日新聞 2008年5月13日 東京朝刊

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教育費:10年間でGDP5% 文科相が要求へ

渡海紀三朗文部科学相は9日午前、東京都内で開かれた文相・文科相経験者との会合で、教育関連予算を対国内総生産(GDP)比で現在の3・5%から、10年間で5・0%への引き上げを求めていく方針を表明した。今後5年間の政府の教育方針を示す「教育振興基本計画」に数値目標を盛り込む。

同計画は改正教育基本法で策定を義務づけられ、中央教育審議会が4月18日に答申を提出したが、渡海文科相は「もう1回書き直して、各省と折衝したい」と見直しを指示する考えを明らかにした。

会合は自民党政調の文部科学部会が主催。森喜朗元首相は「(同計画は)教育予算を取るためのものだが、そうなっていない」と批判し、数値目標の明記を求めた。渡海文科相が表明した方針は、教育支出を経済協力開発機構(OECD)諸国平均の対GDP比5・0%並みに引き上げるというもの。同計画は5月中旬に閣議決定する予定だったが、見直し指示を受けてずれこみそうだ。【仙石恭】

毎日新聞 2008年5月9日 東京夕刊

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教育への支出、GDPの5%以上に 文科省原案

政府が初めて策定する教育振興基本計画に向けて、文部科学省は教育への公的支出を国内総生産(GDP)の5.0%を上回る水準に今後10年間で引き上げるという原案をまとめた。9日に都内で開かれた、自民党の歴代文科相・文相の会合で、渡海文科相が伝えた。

5.0%は経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均に相当する。日本が現在の3.5%(04年)から5.0%に引き上げるには単純計算で7兆4千億円の増額が必要。会合では計画案により具体的な項目を書き込むべきだという意見が複数出された。文科省はこれらを踏まえて改めて案を作成し、各省と協議に入るが、財務省を中心に反発が予想される。

文科省原案は教育投資について「教育への公財政支出が個人、社会の発展の礎となる未来への投資であることを踏まえ、5.0%を上回る水準を目指すべきだ」としている。

また、中央教育審議会(文科相の諮問機関)の答申にあった「欧米主要国と比べて遜色(そんしょく)のない教育水準」を「上回る教育水準」という表現に、「教育投資の充実」も「公財政支出の拡充」と、より踏み込んだ。一方、教職員定数は「主幹教諭による学校マネジメント機能の強化、特別支援教育及び食育の充実などのため、必要な定数の改善を行う」としたものの、数値は盛り込んでいない。

朝日新聞 2008年5月9日

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教育計画答申に不満相次ぐ=歴代文相

森喜朗元首相ら文相・文科相経験者が東京都内のホテルで9日開いた会合で、中央教育審議会(文科相の諮問機関)が先月まとめた「教育振興基本計画」の答申に対し、不満の声が相次いだ。教職員定数や教育投資の数値目標が盛り込まれていない上、「教育の基本理念が示されていない」ことが不満の根底にある。

出席者は森氏のほか、伊吹文明、海部俊樹、河村建夫、大島理森の各氏らで、渡海紀三朗文科相や同省幹部らが説明役に回った。出席者からは「必要な予算を取るためのものになっていない」「財務省が教員を増やせないと言うのならOBの活用を」などの意見が出た。

これに対し同省は現行、年間で国内総生産(GDP)比3.5%の教育投資を5%(約24兆円)に引き上げることを計画に明記する考えを示した。しかし、具体的な教育政策、理念が不十分との厳しい注文が付き、同省は計画案の修正を検討することになった。(了)

時事通信 2008年5月9日

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