文部科学省の動き(2007年10〜12月)


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教員の「心の病」急増=精神疾患の休職最多に

うつ病などの精神性疾患で2006年度中に病気休職した公立学校教員が、4675人と過去最多を更新したことが28日、文部科学省の調査で分かった。前年度より497人増え、10年前の約3.4倍に達した。保護者や子どもとの関係で悩みが高じたケースなどが多いとみられる。

同省が毎年度実施している教員の懲戒処分に関する調査のうち、適格性を理由とした「分限処分」を受けたケースをまとめた。

増加は14年連続。特に過去4年間はいずれも、対前年度で1割以上の伸びを示し、病気休職者全体(7655人)に占める割合も初めて6割を超えた。

各教育委員会に原因を聞いたところ、保護者や児童生徒との人間関係の悩み、多忙によるストレスなどが原因との回答が多数を占めた。各教委はメンタルヘルスの研修を充実させたり、復職支援のためのプログラム策定などに取り組んでいるという。

一方、今回の調査では、全国の公立学校教員約91万7000人のうち、懲戒や訓告、諭旨免職などの処分者が4531人となったことも明らかになった。

この中で490人は06年末、全国規模で発覚した高校必修科目の履修漏れが原因。大半は校長、教頭などの管理責任で、最も厳しかったのは減給処分。過去にも履修漏れがあった兵庫、広島両県で12人に上った。

懲戒処分だけをみると、わいせつ、セクハラ行為が170人で、前年度より46人増。交通事故は531人(前年度比85人減)、体罰が169人(同23人増)、成績情報の入ったパソコン紛失などの「個人情報の不適切な取り扱い」が21人(同18人減)だった。(了)

時事通信 2007年12月28日

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「軍の強制」認めよ=教科書検定の訂正で共産

共産党は27日、沖縄戦の集団自決をめぐる教科書検定の訂正に関し「軍の強制」の明記を求める申し入れ書を、渡海紀三朗文部科学相あてに提出した。申し入れ書は、今年3月の検定意見について「侵略戦争を美化する特異な立場とつながる教科書調査官(文科省職員)が原案を作成し、学問上の通説に反して行った政治介入そのものだった」と指摘している。(了)

時事通信 2007年12月27日

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沖縄戦教科書検定に異論=自民議連

自民党の有志でつくる「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」(会長・中山成彬元文部科学相)は27日、党本部で沖縄問題小委員会の会合を開き、沖縄戦の集団自決をめぐる教科書検定問題について意見交換した。

文部科学省が、旧日本軍の関与が自決の主な要因とする記述に訂正した教科書会社の申請を承認したことに関し、「違和感を覚える」「教科書検定の在り方がゆがめられた」といった異論が続出。来年1月に渡海紀三朗文科相に出席を求め、一連の経緯などについてただすことを決めた。(了)

時事通信 2007年12月27日

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訂正申請、教科書会社の判断=渡海文科相

沖縄戦の集団自決をめぐる教科書検定問題で、教科書会社からの訂正申請の承認を決めた渡海紀三朗文部科学相は26日、記者会見し「申請はあくまで教科書会社が出されたということ」と述べ、実質的に文科省が申請を誘導したとの見方を否定した。

渡海文科相は「誘導したとの指摘を受けるが、こちらから出してほしいとか出すべきだということは一切申し上げていない」と強調。制度上、訂正勧告はできるが、「それをやらないというのが検定を守る責任」と説明した。

文科相は、検定をめぐる沖縄県側の反発には「沖縄の方々にとっては、これは違う、歴史がゆがめられたという思いがあったと思う」と述べたが、反省点は「今後の問題としたい」とするにとどめた。

今後の検定の在り方については「透明感を上げることなどを審議会で検討していただき、よりよいものにしたい」とした。(了)

時事通信 2007年12月26日

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集団自決、文科省の結論に一定の評価=沖縄

文部科学省は沖縄戦の集団自決に日本軍の関与を認めるが、「強制」といった表現で単純化するのは望ましくないとした。「軍がいなければ起きなかった」。沖縄県で教育に携わる体験者らからは、一定の評価と懸念の声が聞かれた。

米軍が最初に上陸した慶良間諸島の渡嘉敷島で、渡嘉敷村教委の委員長を務める吉川嘉勝さん(69)は62年余り前、集団自決の場を経験した。

今回の結論について、自決の背景の記述が増えたことを評価したが、強制を否定した検定意見は撤回されず、「総合的には満足できるものではない。(歴史認識をめぐり)今後も同様の問題が起こるかもしれない」と懸念を隠さなかった。

自決の際、住民らは島の雑木林に集められたという。吉川さんら家族8人と親族は、兄らが投げた手りゅう弾で自決を試みたが、爆発しなかった。手りゅう弾は軍が渡したと聞かされた。「生きられるときは生きよう」との母の言葉で逃げ出した。周囲から爆発音とうめき声が聞こえ、「まさに地獄だった」という。

宜野湾市に住む県立高英語教諭の宮城千恵さん(49)は、祖父母を同島の集団自決で亡くした。「生存者は体験を伝えてくれる宝。必死の声に耳を傾けて」と訴えた。

渡嘉敷島の慰霊塔に刻まれた祖父母の名を見て、集団自決のことを意識するようになった。沖縄戦体験者の高齢化に危機感を募らせるが、自らの母親を含め、語りたがらない人も多いという。教科書検定の在り方にも疑問を感じた宮城さんは今年11月、集団自決を伝える日本語と英語を併記した絵本を出版。「悲惨な状況に追い込まれた事実を、未来をつくる生徒たちにしっかり伝え続けたい」と話した。(了)

時事通信 2007年12月26日

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教科書訂正承認に安堵と不満=沖縄議長ら

「一定の評価ができ、80点」「『強制』がなくなったのは不満」。沖縄戦集団自決の教科書記述をめぐる訂正申請承認を受け、超党派の沖縄県議や市民団体でつくる県民大会実行委員会が26日、東京都内で記者会見したが、メンバーの間には安堵(あんど)と不満の言葉が交錯した。

実行委は9月、沖縄で県民大会を開き、検定意見の撤回と記述の復活を求めており、前日から上京していた。

仲里利信県議会議長(70)=自民=は、軍の関与を明記した集団自決の記述が復活したととらえ、「検定意見は自動的に消滅したと考えている」とほっとした様子。「集団自決の背景も付け加えられており、80点」と評価した。

一方、平良長政県議(64)=社民=は「日本軍による強制が弱められた」とややぶぜんとした表情。県民大会の開催に奔走した市民団体代表の玉寄哲永さん(73)も「大臣には(検定意見が)誤りだったと言ってほしかった」と述べ、文部科学相の談話に不満を示した。

実行委は28日、沖縄県で正式な態度表明をする。会見出席者の1人は「満足しているわけではないが、超党派で行動してきただけにここでバラバラになってはいけない」と複雑な胸中をのぞかせた。(了)

時事通信 2007年12月26日

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不合格では売れない=教科書会社苦しい選択

沖縄戦をめぐる教科書検定問題で、訂正申請の過程で表現が後退した背景には、申請側の教科書会社と合否の決定権を持つ文部科学省との力関係がある。大手出版社の担当者は「検定を通らないと売ることができない。表現でもめると苦しい選択を迫られる」と打ち明ける。

承認された記述について、東京書籍の編集責任者は「ある程度、趣旨は通せた」と評価。一方、「沖縄の県民感情の理解不足を含め、今回の対応には問題意識が足りなかった。異例な手続きだったが、反省点をきちんと総括したい」と振り返った。

清水書院の担当者は「どうすればいいか最初から言ってくれという感じだ」と文科省の方針転換を批判。「現行制度の下では記述の後退もやむを得ない」と話した。

検定自体は通っており、教科書の販売は可能だ。しかし、ある関係者は「文科省は申請を取り下げてほしくなかったようだ」と話し、再提出までさせて承認したのは、同省が訂正申請で修正するという形式にこだわったためと指摘する。

一方、実教出版の教科書執筆者の1人である歴史教育者協議会委員長の石山久男氏(71)は「非常に不満。執筆者や沖縄県民の意思が無視された」と悔しさをあらわにする。「訂正申請の主眼は強制の表現の復活だった。『強制的』など日本語としてもおかしな表現になり、やらない方がましともいえる」と憤った。

三省堂の執筆者は「納得できる結果とはいえないが、現状ではこうならざるを得なかった」と語った。(了)

時事通信 2007年12月26日

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「恣意的」―執筆者が批判=文科省は公正強調

教科用図書検定調査審議会の議論は、文部科学省の教科書調査官が作成する意見書がたたき台となる。今年3月に公表された集団自決をめぐる検定意見は意見書がそのまま検定審の結論となり、沖縄県側から「実質審議がない」と反発が起きた。訂正申請の過程でも、調査官が検定審の結論前に「日本軍の強制」の明記を避けるよう教科書会社に表現の調整を要請しており、検定実務への強い影響力がうかがえる。

調査官は、教科ごとに複数置かれた同省の常勤職員。大学准教授クラスで著書や論文もある専門家だ。検定審に先立ち申請図書の内容をチェックし、検定意見は調査官が作成する「調査意見書」を基に決まる。

検定審日本史小委員会委員の波多野澄雄筑波大副学長は「意見書と違う結論になることはほぼない」と明かす。「調査官は文献などを実によく調べており、専門外の委員は反論できない」。ただ集団自決については、「近年の学説状況に沿った評価で違和感はなかった」と話した。

同委員で九州大大学院の有馬学教授は「検定審は受動的存在。ここまで削らなくてもと思っても、内容が正しければOKを出す」と語る。

文部科学省は「中立公正な調査や事務作業軽減のため」とし、制度の必要性を強調。調査官が思想信条を検定に持ち込むことはないとしている。

しかし、ある教科書執筆者の高校教諭は「軍が住民を戦闘に動員するなどさまざまな意味を込めた『強制』を『軍の命令』と恣意(しい)的に読み替え、修正させた」と憤った。

別の出版社の編集者は「合格後の記述を調査官の要請で差し替えたことがある」と話す。約20年前、公民の教科書に商社のリベートを批判的に書いたコラムを掲載した。検定合格後、調査官から業界団体からのクレームを理由に差し替えを要請された。訂正申請をして売上高の推移を示すグラフに変更したという。(了)

時事通信 2007年12月26日

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表現譲歩で両立図る=教科書検定

沖縄戦の記述をめぐる教科書検定問題は、文部科学省が「住民が日本軍によって集団自決に追い込まれた」とする表現を承認し決着した。住民側の視点を強調する形で軍関与を一定程度強め、沖縄県側への譲歩を示す一方、検定意見の根拠である「命令を含む強制は認めない」とする当初の立場を両立させた格好だ。

強制の記述復活はならなかったが、教科用図書検定調査審議会が約15時間の議論を尽くし、審査経過を公表してある程度の説明責任を果たしたことはこれまでなかった対応といえる。

浮かび上がったのは審査経過の透明化の問題。自由な議論と静かな環境を保つためとはいえ、議事録もなく開催日時や場所を事後も非公表とするやり方は早急に改善が迫られる大きな課題だ。

複数の検定審委員が指摘するように、明らかな年号の誤りなども小委員会がいちいちチェックする現行方式では、集団自決のような歴史認識の重大な論点について十分な時間がかけられない。透明化と共に審査方法の見直しも急がれる。

今回の検定問題は、訂正申請で初めて検定審が開かれたほか、執筆者が「密室性に一石を投じる」として内容を事前に公表するなど異例ずくめの経過をたどった。得られた教訓を、将来に生かす姿勢が関係者に求められる。(了)

時事通信 2007年12月26日

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教科書検定審見解の要旨

1、沖縄では、住民を巻き込んで軍官民一体で地上戦が行われた。

1、集団自決は、住民が戦闘に巻き込まれる異常な状況で起き、背景には当時の教育・訓練や感情の植え付けなど複雑なものがある。

1、手りゅう弾の配布や壕(ごう)からの追い出しなど、軍の関与は集団自決が起こった状況をつくり出した主な要因ととらえられる。

1、住民に対する直接的な軍の命令で行われた根拠は確認できないが、住民側から見れば自決せざるを得ない状況に追い込まれたとも考えられる。

1、背景・要因について過度に単純化した表現で教科書に記述することは、集団自決について生徒の理解が十分とならない恐れがある。

1、沖縄の戦時体制や戦争末期の極限状況の中で、複合的な背景・要因によって住民が集団自決に追い込まれたととらえる視点が生徒の理解を深めることに資すると考える。(了)

時事通信 2007年12月26日

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集団自決で教科書6社の訂正申請承認=文科省

太平洋戦争末期の沖縄戦をめぐる高校日本史の教科書検定問題で、文部科学省は26日、住民が日本軍によって集団自決に「追い込まれた」などとする表現で、教科書会社6社8点の訂正申請をすべて承認した。3月に公表した検定意見を踏まえ、軍による「強制」や「強要」などの表現は認めなかったが、軍の関与が自決の主な要因とした。

教科用図書検定調査審議会(杉山武彦会長)の意見を基に決定し、各社に通知した。沖縄県側が求めていた検定意見の撤回と「強制」記述の復活は、いずれも実現しなかった。

渡海紀三朗文部科学相は「歴史の教訓を風化させないよう願う沖縄県民の気持ちを重く受け止め、沖縄戦に関する学習が一層充実するよう努めたい」との談話を発表した。

「追い込まれた」は、検定意見で削除されたり、日本軍という主語が不明確になったりした表現。各社は訂正申請で、本文や側注で軍による手りゅう弾配布や、捕虜になることを禁じる教育があったとする背景説明を加えた。

訂正申請を受け検定審が開かれたのは初めて。日本史小委員会が11月以降、計7回の会合で沖縄戦や軍事史の専門家9人から文書で出された意見などを基に審査を重ねた。

この過程で、集団自決の背景として「複合的な要因」の記述が必要と判断。直接的な軍の命令は確認できないとして、強制などの単純な記述は生徒の理解が不十分になるとする見解を、教科書調査官を通じて教科書会社に伝えた。

この結果、実教出版が申請段階の「殺しあいを強制した」を「強制的な状況のもとで、殺しあいに追い込まれた」に、三省堂が「自決を強要された」を「軍の関与によって自決に追いこまれた」などに変更して訂正を出し直し、再審査で承認された。

側注で最近の見方として取り上げた「強制集団死」の記述も承認。年表などで検定問題自体を取り上げたり、検定意見撤回を求めた沖縄県民大会の開催を盛り込んだりした記載も認めた。

検定では、日本軍による強制で住民が集団自決したとする記述すべてに「実態について誤解するおそれのある表現」との意見が付き、教科書会社が「日本軍により」という部分を削るなど修正した。

沖縄県で反発が広がり、文科省は9月の県民大会を機に記述の修正を容認。各社が11月、訂正申請していた。(了)

時事通信 2007年12月26日

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義務教育国庫負担金が0.8%増=文科省内示

文部科学省の2008年度一般会計予算内示額は、07年度比0.1%減の5兆2669億円となった。「子どもと向き合う時間の拡充」に向け、公立小中学校と特別支援学校で約1200人の教職員定数改善を実施するのが目玉。義務教育費国庫負担金は、0.8%増の1兆6796億円となり02年度以来の増額となった。

定数改善の内訳は、改正学校教育法で新設された「主幹教諭」に1000人、特別支援教育に171人、栄養教諭に24人。教職員定数については行政改革推進法が削減を定めており、今回の予算編成でも同法の扱いが焦点となったが、合理化により用務員や給食調理員らを削減した分を、定数1000人増に充当。残りの195人については、求職や研修中の教職員の分を充てるという考え方で、同法を改正せず定数改善を実施する。

教職員関係では「骨太方針2006」に盛り込まれ、懸案となっている教員給与見直しに08年度から着手する。人材確保法による教員給与の優遇分として2.76%を削減することが決まっているが、08年度はその一部として19億円(国費)を削減。一方で、副校長、主幹、指導教諭の給与上の処遇と手当の拡充で24億円(同)を増やす。

給与見直しの最大のポイントは、残業手当の代替措置として給与月額の4%が一律支給されている「教職調整額」の扱いだった。同省は、教員それぞれの繁忙度合いに応じて支給額に差を付ける方針だったが、法制的な検討の結果「個々の教員の評価に応じて支給額を変えるのは困難」との結論となり、見直しは09年度以降に持ち越された。

定数増の国費負担分は23億円で、給与改善による国費増加分は5億円にとどまる。義務教育費国庫負担金の増加要因の大部分は、07年人事院勧告による国家公務員給与引き上げに伴う教員給与引き上げ分で、100億円強が見込まれる。

初等中等教育関係の新規事業としては、7000人の非常勤講師を配置する「退職教員等外部人材活用事業」(29億円)や学校支援地域本部の設置(1800カ所で50億円)などが盛り込まれた。09年度に導入される教員免許更新制の円滑な実施に向け、更新講習の研究を大学に委託する事業や、免許更新制の情報提供のための事業費用として4億円を確保した。

高等教育関連では、大学運営費交付金が1.9%減の1兆1813億円。骨太方針で規定された1%減に加え、退職手当の調整で0.9%のマイナスが出た。私学助成も骨太方針にのっとり1.0%減の3249億円。

一方、「教育の機会均等の観点」から日本学生支援機構の奨学金事業は大幅に拡充。貸与人員を7万5000人増やす。また財政融資資金を使った有利子貸与について、大学生の場合、現行の貸与月額の最高額は10万円だったが、これを12万円に引き上げ、大学院は13万円から15万円とする。

文化庁予算は前年度並みの1017億円。文化財の保存整備、活用に手厚く配分された。スポーツ関係も1.5%増の190億円を確保。北京オリンピックに向けた選手強化やドーピング防止活動事業を拡充する。

科学技術関係では、「再生医療の実現化プロジェクト」に07年度と同程度の10億円が盛り込まれた。同プロジェクトには、山中伸弥京都大再生医科学研究所教授らが世界で初めて作成し、新世代の万能細胞と期待される「人工多能性幹(iPS)細胞」の研究も含まれている。(了)

時事通信 2007年12月22日

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年収格差、教育費に影響=文科省学習費調査

親の年収が高いほど学業や習い事にかけるお金も多額−。文部科学省が実施した学習費に関する調査で、収入格差が子どもの教育にも影を落としている実態が明らかになった。同じ公立に通わせていても、その差は最大で約5倍に上った。

一方、公立の中学、高校に通う年収400万円未満世帯の中には、塾代や家庭教師代として年収の4分の1以上に当たる100万円以上を費やした世帯もあった。

今回の調査では、初めて年間収入を6段階に分類した。年収400万円未満世帯の年間学習費は小学校で25万円、中学36万8000円、高校43万4000円。これに対し、年収1200万円以上の世帯はそれぞれ59万円、65万9000円、66万8000円だった。

塾や家庭教師などの「補助学習費」だけを見ると格差はさらに拡大。幼稚園段階では年収400万円未満の2万4000円に対し、同1200万円以上は11万5000円と約5倍。小学校でも6万1000円に対し24万7000円と4倍以上だった。

ピアノやスポーツなどの習い事、芸術鑑賞や本代などの費用は、幼稚園から高校までで同1200万円以上世帯が400万円未満世帯の2.7−4.6倍となった。(了)

時事通信 2007年12月20日

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小学生の塾費用10万円=中学生は23万円

公立小学校の児童を持つ家庭で、塾や家庭教師などにかかった「補助学習費」が昨年度、初めて10万円の大台に乗り、公立中と共に調査開始以来、最高額となったことが20日、文部科学省の調査で分かった。「ゆとり教育」による学力低下の不安が続いているとみられる。調査は1994年度から2年ごとに実施。公私立の幼稚園から高校までの計約1100校と、保護者約2万8000人を対象とした。

公立小の児童がいる家庭が塾、家庭教師、参考書などに使った金額は1人当たり年平均10万2178円で、2004年度の前回調査より5500円増加。塾通いの小学生がいる世帯の率も43.3%で最高となった。公立中の補助学習費も23万5941円と最高額を更新した。

公立小の補助学習費は、不況の影響で調査開始から減少を続けたが、学習内容を減らした現行学習指導要領と学校週5日制が完全実施された02年度以降、右肩上がりに増えている。

幼稚園児の補助学習費も公私立で大幅に増え、小学校段階からの公立離れもうかがえる。幼稚園では習い事などの費用も増加しており、文科省は「少子化で幼児教育にお金をかける家庭が増えているのでは」と分析している。

今回、初めて調査した私立小(159校)は、公立ではゼロの授業料が約40万円、通学費が3万7000円。寄付金などの負担も大きく、学習費総額は公立の4倍以上の約137万円だった。

幼稚園(3歳)から高校卒業まで15年間の教育費の総額は、すべて公立の場合が571万円、すべて私立だと1678万円で、差は2.9倍となる。(了)

時事通信 2007年12月20日

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「公教育の再生」に重点=文教予算

「教育再生」を重点課題に掲げた安倍前内閣の下、文部科学省は計約7000人という大幅な教職員定数増を要求。福田政権に代わり、どのように扱われるか注目されたが、「歳出削減の方針は堅持」との姿勢の下、約1200人の定数改善にとどまった。ただ、全体的に見れば、文教関係予算は2007年度比0.3%増で03年度以来の増額。公立小中学校が抱える問題に対応する施策には手厚く配分されており、「公教育の再生」のメッセージは強く打ち出された形だ。

学校現場の改善で定数増とともに期待されるのが、「退職教育等外部人材活用事業」と「学校支援地域本部」(仮称)の創設。人件費抑制の中、正規の教員は思うように増やすことができないため、教員経験者ら外部人材を非常勤講師として活用し、地域のボランティアにも協力してもらおうという「苦肉の策」だが、学校の閉鎖性の打破、活性化につながり得る。

学校に理不尽な要求や抗議をする「モンスターペアレント」と呼ばれる親や、深刻な問題を抱える家庭の増加が、教育現場に影響を与えているとの指摘は多い。こうした問題に専門的に対応するため、新規施策として「スクールソーシャルワーカー活用事業」の創設も打ち出された。

高等教育関係は、国立大学運営費交付金が07年度比1.9%減、私学助成が同1.0%減。人件費など経常的経費は削減するが、「戦略的大学連携支援事業」を創設し30億円を充てるなど、競争原理に基づく改革支援は拡充している。(了)

時事通信 2007年12月20日

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司法試験対策の答案練習に自粛求める=中教審

全国の7割超に当たる法科大学院で、延べ7111件に上る新司法試験対策の答案練習が行われていた問題で、中央教育審議会の法科大学院特別委員会は18日、「受験技術に焦点を合わせた論述訓練は、あるべき教育理念から離反している」として、自粛を求める報告書をまとめた。

報告書は「過度の受験指導は断片的な知識の獲得でよいとする態度を助長し、思考力や議論能力などを養成するという法科大学院教育の理念にもとる」と苦言を呈した。

その上で、受験技術に偏らない指導方法について、各大学院に適切な検討を要請している。

また、答案練習の大半が授業時間外に行われていたことについて「補習で授業内容を離れた受験指導を行うのは不適切」と指摘。学生が主催する形の勉強会に教員がかかわることについても、慎重な配慮を求めた。

文部科学省の調査では、昨年4月から今年6月末まで、全国74のうち54法科大学院で答案練習が行われ、31件は授業中に行われたことが判明。教員467人がかかわり、うち4人が新司法試験で問題作成や採点をする考査委員だった。(了)

時事通信 2007年12月19日

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教員1200人増で合意=財務・総務・文科相

2008年度予算編成の閣僚折衝で、額賀福志郎財務相、増田寛也総務相、渡海紀三朗文部科学相は18日、文科省が要求した約7100人の教職員定数増に対し、約1200人増加することで正式合意した。「行革推進法を改正しない範囲内での措置」ということで小幅増での決着となった。

教育基本法と教育改革関連3法の改正を受け、文科省は3年間で計約2万1000人の定数増を計画。しかし、行革推進法は「児童生徒の減少を上回る定員削減」を求めており、大幅な増員は同法に触れる。同法改正を主張する文科省や文教関係議員と、増員に強く反対する財務省などの間で、ぎりぎりまで調整が続けられた。

09年度以降については、今回決まった定数増や、非常勤講師を配置する効果などを見ながら、引き続き協議する方針を確認した。

折衝ではまた、教員の給料に関しても、一般の公務員より優遇されている分の一部を削減する一方、副校長や主幹教諭の処遇改善や手当の一部を拡充することで合意。ただ、残業手当に当たる「教職調整額」の見直しは、再来年度以降に先送りした。(了)

時事通信 2007年12月19日

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教員増、1200人程度に=08年度政府予算

政府は18日、2008年度予算編成の焦点の一つとなっている公立小中学校の教職員定数について、約1200人増員する方針を固めた。「社会総がかりでの教育再生」の柱として、定数増、非常勤講師の活用、教員給与の改善、地域の人材を活用する「学校支援地域本部」(仮称)の4項目で、おおむね100億円を確保する方向で調整している。

定数増は▽管理職を補佐する「主幹教諭」の配置1000人▽特別支援教育の充実171人▽栄養教諭の配置24人−の計1195人で国負担分は23億円。非常勤講師は、およそ7000人分の29億円とし、少人数指導の充実や社会人の活用に充てる方針。

部活動や学校行事などに地域のボランティアらを活用する学校支援地域本部には40億円を配分。1350市町村に設置する方向だ。

教員給与については、一般の地方公務員より優遇されている分(2.76%)として19億円を削減。一方で、新設される副校長、主幹、指導教諭の給与上の処遇や部活動手当の拡充などで計24億円増額し、差し引き5億円増となる見込みだ。(了)

時事通信 2007年12月18日

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壁は行革推進法=教員定数増は復活折衝か

2008年度予算編成で、課題として残る教職員定数の取り扱い。正式決定は、20日に予定されている内示の後、復活折衝にまで持ち越しそうな状況だ。


教職員を増やすことについては、ある程度容認する雰囲気もあるが、最後まで問題として残ったのが行革推進法。定数増を目指す自民党の文教関係議員らは、教員削減を定める同法五五条三項の凍結を求めるが、同党内で行革を推進する側にとって、「根本になる法律を否定するというのは難しい」という立場は崩せない。

本来なら予算査定の内容も大筋で固まる時期だった先週も、「教員増の分はほかから持ってくるということで、あそこもそこもゼロ査定の状態」(文部科学省幹部)で、他の分野に影響が出ていた。こう着状態に文教関係議員の中からは、「定員に執着し過ぎるんだ」とぼやく声も。別の文教関係議員も「わたしたちだって、法律の改正などしたくないんだ」「そもそも、教員数減を法律に入れさせちゃったのがいけなかったんだよね」とため息。(了)

時事通信 2007年12月17日

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国立大学法人の資金運用に投信解禁へ=文科省

文部科学省は、国立大学法人の資金運用や投資に関し、制限を緩和する方針を固めた。発足から3年以上がたつ同法人は、国からの運営費交付金が毎年1%削減されるなど経営環境は厳しく、資金調達方法を多様化する狙い。当座使わない資金の投資信託での運用や、大学発ベンチャーに対する直接投資などを認める方針で、早ければ2008年の通常国会に国立大学法人法改正案を提出する。

国立大学は、同交付金のほか、授業料や寄付金などの収入で運営されている。収入の中から一定期間は使わない「余裕金」が出た場合、現行でも運用することは可能だが、独立行政法人通則法に基づき国債や地方債のみに対象は制限されている。

同省は、現行のローリスク・ローリターンの運用方式を「中リスク・中リターン程度まで」(国立大学法人支援課)広げる考え。その代表例としてリスクが分散される投資信託での運用を想定している。ただ、現在の市場は、米国の低所得者向け高金利型(サブプライム)住宅ローン問題の余波が続いていることから、慎重に運用先を検討する。

また、同省は投資対象も弾力化する方針。現行の国立大学法人法は投資対象について、国立大学の研究成果を活用・促進する事業であって「政令で定めるものを実施する者に出資すること」と規定。事実上、同省の承認を受けた技術移転機関(TLO)に限られている。

TLOは、大学の技術、アイデアや発明を特許化などし、民間企業に結び付けるいわば「仲介」機関。こうした技術やアイデアを活用して直接起業する場合には、大学が直接出資することができず、大学教員が個人で出資しているケースが多いという。同省は、研究活動のすそ野を広げるためにも、大学が直接ベンチャーに出資することを可能とする方針だ。(了)

時事通信 2007年12月10日

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社会教育法の見直しを提起=中教審分科会

中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)の生涯学習分科会は、答申骨子の素案を作成した。この中では、社会教育行政を生涯学習振興の中核として位置付けた上で、社会教育行政の推進に向け、社会教育法の見直しを課題に挙げた。目指すべき方向性には、学習機会の提供や成果の社会評価の向上などを示している。同分科会は、2007年度中に答申をまとめる予定だ。

06年に改正された教育基本法に生涯学習の理念が盛り込まれたことなどを踏まえ、素案は生涯学習振興の重要性を指摘。社会教育行政を推進する上で目指すべき方向性として、(1)多様な学習機会、再チャレンジが可能な環境の整備(2)学習成果の評価の社会的通用性の向上(3)学校外での学習における「人間力」向上への支援―を示した。

具体的な方策としては、国民の学ぶ意欲を支えるための学習機会の提供と相談体制の充実のほか、地域・家庭も含めた社会全体の教育力向上、人材育成などを挙げている。素案は、同分科会が設置した「制度問題小委員会」の報告を踏まえた。

社会教育法に関連する博物館法と図書館法について、素案では社会教育主事の在り方の検討などを示すにとどまっている。ただ、これら2法は同小委員会で改正を視野に審議されてきており、分科会は今後、法整備の必要性などについて議論する考えだ。(了)

時事通信 2007年12月7日

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集団自決、軍強制断定に疑問=教科書検定審

沖縄戦の集団自決をめぐる高校日本史の教科書検定問題で、日本軍の強制があったとする記述を復活させる教科書会社からの訂正申請について審査している教科用図書検定調査審議会で、強制があったと断定した記述に対し疑問を呈する意見が多く出されていることが6日、関係者の話で分かった。

関係者によると、沖縄県民が精神的な極限状態で集団自決に追い込まれた要因には、日本軍の存在を含めた多様な背景があり、「強制や命令といった一面的な記述は妥当ではない」という意見が審議会で大勢を占めているという。

こうした見解は、文部科学省を通じて教科書会社側にも伝えられ、一部の社には訂正申請の取り下げや、より多面的な要素を盛り込んだ表現での再申請を模索する動きがあるという。

検定をめぐっては、軍強制の記述を削除した教科書会社5社を含む6社が訂正申請。「殺しあいを強制した」や「日本軍によって『集団自決』においこまれた」と直接の強制を示す記述もあった。同審議会の日本史小委員会が内容を審査しており、既に数回の会合が開かれている。

審議会は、複数の沖縄戦の専門家からも意見を聞いており、年内に結論を出す方針。文科省は、審議会の結論を基に承認するかどうか決める。(了)

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公立校全国調査削減へ=事務負担軽減-文科省

子どもと先生が向き合う時間を増やすことを狙いに、学校の事務負担軽減を検討していた文部科学省は7日、全国の公立学校を対象に毎年度実施している調査28件のうち7件を削減する方針を決めた。同省のプロジェクトチーム(PT)が同日まとめた中間報告に盛り込んだ。

同省が毎年度実施している全国調査には、学校基本調査や地方教育費調査などがある。削減は、これまで別々に実施してきた類似の調査を統合するなどして進める。

同省は学校現場の負担を減らすため、2008年度予算で教職員約7000人の増員を要求しており、調査件数の削減は率先して事務の効率化に努める姿勢をアピールした形。しかし、予算編成が大詰めを迎える中、増員に反発する財務省との間で妥協点は見いだせていない。(了)

時事通信 2007年12月7日

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教員免許更新制 現場に戸惑いと不満 「導入ありき」に疑問相次ぐ

国民との対話集会で参加者と教育問題を意見交換する渡海紀三朗文部科学相=18日、横浜市中区 平成21年度に導入される教員免許更新制に、現場の教員の間に疑問や不満が広まっている。10年ごとの更新時講習は、初めに導入ありきで決まっただけに意義が十分伝わってない上、具体的な内容が固まっていないからだ。文部科学省は教育関係団体に説明、意見聴取したところ、注文が相次いだ。「屋上屋を架す」ような講習に多忙感が募っている現場が納得するのかと意見も出てきそうだ。(櫛田寿宏)

■かみあわぬ議論

18日、横浜市内で開かれた渡海紀三朗文科相との「国民との対話集会」には現場の教員ら教育関係者が数多く参加した。

横浜市内の小学校教諭は「教師にとって研修は大事なもので日々参加している。更新講習では最新の知識を学ぶというが、これまでも研修で学んできた。これからは10年に1度の研修を待たないと最新の知識は得られなくなるのか」と疑問の声を上げた。別の教師からは「教師の身分にかかわる研修が行われるとなると、安心できなくなり、子供と向き合う時間が一層減る」と指摘する意見も出た。

更新制度の情報の少なさに対する不満もある。熊本県から来たという県教委職員は「大学でやるというが、それ以外でもいいというし、イメージが全くわかない」と戸惑いを隠さない。

これに対し、渡海文科相は「意味のない研修にはしない」などと答えたが議論はかみ合わなかった。

■あいまいな意義

文科省によると、更新講習は主に大学が担当。教員に関係する最新情報を学ぶ「必修」に12時間、課題に合った能力を高める「選択」に18時間を充てる方針だ。

選択では、例えば子供の気持ちを深く理解するために心理学を通じてカウンセリング技術を学んだり、より深みのある科学の授業を行うために科学思想史を学ぶことが想定される。

文科省では「更新講習は授業の質を高めるだけでなく、参加した教員が大学の教員と接点を持ち、良き相談相手と出会う機会にもしたい」としている。

教育再生会議では当初、更新制度を不適格教員排除の手段として提言していた。だが、中教審の審議の中で、教員の資質向上のために「講習で最新の教育事情を学ぶ」としたため、性格があいまいになってしまった。

都内の副校長は、再生会議や中教審の議論を「教員は勉強していないと思っているのではないか。初任者(1年次)、2、3、5、10年次にそれぞれ研修があり、20年次研修も始まった。教科や領域、校務でも研修があり、わずかな更新講習より勉強になる」と憤る。
教員免許更新制 現場に戸惑いと不満 「導入ありき」に疑問相次ぐ (2/2ページ)
2007.11.28 10:21

■拙速への反発?

文科省は、全国連合小学校長会など教育関係27団体に、これまでにまとまった実施案を提示した。

修了認定には試験を行い、結果を5段階で評価し60点未満は認定しない方針だ。これに対し「合否の2段階での評価とするなど評価基準を検討すべきだ」(中核市教育長連絡会)などと批判が集中。文科省は「公平性を担保するため5段階の基準を示したのであり、修了認定自体を5段階に分けて行う意図はない」と早くも転換している。

講習は都道府県教育委員会などでも開設できる。日本教育大学協会は「教委による講習では、講習成績がそのまま教員の評価として利用されるのではないか」と懸念を示した。文科省は「講習の修了認定と教員評価は別の制度」との見解だ。

教員の間には日々の仕事での多忙感があり、負担が増えるとして全国特殊学校長会は「学校運営に支障なく受講できるような配慮してほしい」と要望するなど、拙速な導入への反発・反動ともいえそうな注文が相次いでいる。

                   ◇

【用語解説】教員免許更新制

教育基本法改正を受けた教育3法の1つ「教員免許法」の改正で21年度から施行される。同年度以降に発行される教員免許は有効期限が10年となる。30時間以上の更新講習を受け、試験などで修了認定された場合のみ更新できるようにした。それ以前の教員免許に有効期限はないが、同様に10年ごとに受講、認定されないと失効する。更新講習は大学のほか、都道府県教委の教育センターや放送大学、インターネットなどでできるように検討されている。

MSN産経ニュース 2007年11月28日 10:21

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来春、教職大学院19校開設

小中高の“即戦力”となる教員の養成を目的に来年4月に開校する教職大学院について、文部科学相の諮問機関「大学設置・学校法人審議会」(会長=永田真三郎・関西大教授)は27日、当初申請のあった21校のうち、審査段階で申請を取り下げた2大学を除く19校の設置を認めるよう渡海文科相に答申した。

指導力の向上図る

設置が決まった19大学すべてに「専従の教官が少ない」といった「留意事項」がつけられるなど、鳴り物入りで始まる新たな教員養成制度も、初年度の今回は課題を残す結果になった。

教職大学院は、指導力不足の教員が増加し、学校現場に対する国民の不信感が高まっていることを受けて設置が決まった。

修学期間はおおむね2年間で、指導方法や学校経営などの実践的な内容を学ぶのが特徴。大学を卒業した学生を対象に即戦力となる新人教員を育成するほか、学校現場でのリーダー的な役割を果たす教員養成のため、現職教員の研修として活用することも想定している。実践的な指導力を身につけさせるため、大学の近隣にある教育委員会と連携し、350時間以上の実習も義務付けている。

今年6月末までに申請があったのは、国立大15校と、私立大6校だが、東京福祉大と聖徳大が審査の途中で申請を断念。設置が認められた19大学も、「近隣の教育委員会のニーズも反映したカリキュラムに工夫すること」(東京学芸大)「専従の教員が少なく、指導が万全か懸念がある」(早稲田大)といった留意事項がつくなど、「設立の理念や育成したい人材像があいまいな大学が目立った」(文科省幹部)という。

教職大学院の創設が決まったのは昨年7月の中央教育審議会答申だったため、大学側からは「申請まで1年で準備期間が短すぎる」という声も出ている。

学校現場では、授業の手法に問題があったり、子供とコミュニケーションがとれなかったりする教員が急増。都道府県教委が認定した指導力不足教員は2003〜06年度は、450〜600人で推移しているが、「氷山の一角」と指摘する声は少なくない。

10大学9大学院 来春開校

大学設置・学校法人審議会の27日の答申では、来春開校の10大学と9大学院の新設なども認められた。ただ、教職大学院のほかにも、7校が設置申請を途中で取り下げ、5校がさらに審査を要する「保留」となっており、同審議会は、永田真三郎会長(関西大教授)名で、「準備不足の傾向が顕著。大学を設置する責任の重みを十分に自覚頂くよう強くお願いしたい」とするコメントを出した。

開校が認められた大学は公立が1校、私立が9校。大学院は公立が1校、私立が8校で、ほかに私立短大1校と、私立大学院大2校の新設も答申された。人気の高い医療系の設置が多かった。

文部科学省は「学生確保のため、安易に短大から大学に衣替えしたりし、高校生に人気が出そうな学部を設置しようと拙速に申請しているのではないか」とみている。

来春の開校が認められた大学などは次の通り。

【公立大】長崎県立(長崎)

【私立大】桐生(群馬)▽植草学園(千葉)▽三育学院(千葉、東京)▽佐久(長野)▽北陸学院(石川)▽修文(愛知)▽神戸常盤(兵庫)▽福岡女学院看護(福岡)▽保健医療経営(福岡)

【私立短大】愛知医療学院(愛知)

【私立大学院大】ハリウッド(東京)▽SBI(神奈川)

【公立大学院】国際教養大(秋田)

【私立大学院】千葉科学大(千葉)▽白梅学園大(東京)▽聖母大(東京)▽東京富士大(東京)▽東洋学園大(東京)▽相模女子大(神奈川)▽愛知工科大(愛知)▽沖縄キリスト教学院大(沖縄)

讀賣新聞 2007年11月27日

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[解説]教育予算 増額要求

教育予算が来年度予算の編成や審議の焦点の一つになりそうだ。教職員の増員などで文部科学省が例年以上の大幅増額を求め、賛否の動きが交錯している。(編集委員 中西茂)

「多忙さ解消」狙い 教職員増員財務省は猛反発

文科省は、これまでも教員の増員を求めてきた。しかし、「教育再生は我が国の最重要課題」「社会総がかりで教育再生」といったスローガンを掲げた今回は、教育重視を前面に押し出した安倍前内閣の置き土産的な予算要求になっている。教育基本法改正を受けた教育3法の改正、教育再生会議の後押しといった追い風を受けた要求だった。

教職員増の要求は7121人(3年間で2万1362人)。2005年度までの5か年の第7次定数改善計画でのペース(年5380人増)を上回る。国の総人件費抑制で改善計画が消滅した06年度からは300人余の増員しか認められておらず、その分も一気に取り戻そうという要求だ。これらは予算上の定数の増員で、実際には少子化による自然減があるが、その規模も以前より小さくなっており、実質的にも3年間で約1万4000人増の要求となる。

ただ増員要求の約半分は、学校教育法改正で新設された「主幹教諭」配置分。学校運営の管理機能を高めるため、校長や副校長・教頭の下に新たに制度化された職だ。教育基本法改正に始まる一連の改革の予算的裏付けという点では、理にかなってはいる。

また、昨年、40年ぶりに実施した教員の勤務実態調査を基に、残業代の代わりに支給されている教職調整額の増額を要求している分も大きい。さらに、小学校高学年で、理科などの専科の非常勤講師を採用する予算や、地域が学校を支える組織作りの予算も盛り込んだ。

こうした要求の背景には、教員の多忙さを解消し、子供と向き合う時間を増やそうという姿勢がある。

しかし、例年にない文科省の強気の要求に対し、財政健全化の観点から、財務省は猛反発し、多忙さや待遇を巡る文科省のデータに次々と反論。今月19日、財政制度等審議会が額賀財務相に出した建議でも、「教員の増員の必要はない」とくぎをさした。予算編成に向けた折衝は「とりつくシマがない状態」(文科省幹部)で、政治決着となるのは必至の情勢となっている。今月14日の経済財政諮問会議でも、増員計画を巡って、閣僚間で激論になった。

自民党文教族は文科省サイドに立つ「頑張る学校」応援団も結成。文科省は、町村官房長官や伊吹・自民党幹事長ら文科相経験者の影響力にも期待をかける。また、財務省サイドから「増員の前に事務の合理化や簡素化を進めるべきだ」と指摘されると、19日に学校現場の負担軽減プロジェクトチームを発足させるなど、様々な動きに出ている。

最大の壁は、閣議決定や法律だ。経済財政運営の指針である「骨太の方針2006」でも、「5年間で1万人程度の純減」をうたっている上、昨年6月施行の行政改革推進法は「児童生徒の減少に見合う数を上回る数の純減を行う」と明記している。増員に踏み切るには法改正まで必要になる。

この点では、民主党が同法の純減規定の削除などを求める改正案提出の準備を進めるという新たな動きが出てきた。参議院で与野党が逆転している現状では、野党の動きも従来と意味が違う。

ただ、そもそも、教員の増員や待遇改善を打ち出した教育再生会議の内部にさえ、「予算増より先にやるべきことがある」という意見が残る。簡単に結論の出るテーマではないが、厳しい財政状況下で、予算のメリハリをどこに付けるのか、最終的にはトップの判断になりそうだ。

雑務に追われる日本の教員に、子供と向き合う時間が少ないのは確か。教員の質向上には、様々な知恵も必要だが、多忙さの解消も、多忙さに見合う給与もないまま、現場の奮起を促せるのか。国会では、この点でも、将来を見据えた実のある議論をしてほしい。

讀賣新聞 2007年11月23日

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文科省が5機関に予算重点配分、世界水準の研究拠点を目指す

文部科学省は、「世界トップレベル研究拠点プログラム」に、東京大と東北大、京都大、大阪大、物質・材料研究機構の5か所を選び、予算を重点配分して、世界最高水準の国際研究拠点を目指す。ただ、思惑通りに行くのか、課題も多い。

英タイムズ紙が今年発表した世界大学ランキングで、国内の大学は東京大の17位が最高と伸び悩む。上位の大学は、世界中から優秀な研究者を集め国際競争力を上げている。

同省の生川浩史戦略官は「『トップレベル』で世界水準の研究拠点をつくり、巻き返したい」と意気込む。各機関には、10年間、毎年十数億円を投入、総額は数百億円に上る。目指すのは、理工系研究に特化した200人規模の研究拠点で、うち3割は外国人。教授・准教授の過半数は、国際賞の受賞歴か世界レベルの論文を書いた実績を持つ人でそろえる。

公募には、22の大学・研究機関が名乗りを上げた。拠点が5か所に限られるため、「『超一流大学』と『一流大学』の分け目になる」と、危機感を持って選考に臨んだ大学も多かった。落選組の名古屋大の平野真一学長は「次の機会に大学を挙げて努力する」と悔しさを隠せない。

ただ、同省が、世界水準の研究拠点づくりと人材育成に取り組むのは初めてではない。2002年度から「21世紀COE(卓越した拠点)」を開始、274拠点に1億3000万円ずつ支援した。「ばらまき」の批判が出て、拠点を半数に絞った後継の「グローバルCOE」も今年度始まったばかりだ。

背景には、COEは旧文部省系の高等教育局、トップレベルは旧科学技術庁系の科学技術・学術政策局が推進するという、省内の縦割り体質がある。高等教育局の担当者は「トップレベルが唐突に出てきて混乱した」と打ち明ける。

世界レベルの研究者を集めることは重要だが、それだけで国際研究拠点ができるのか。大リーグ選手を集めて、国内にヤンキースタジアムを性急に作っても、チームを運営管理する戦略と、下支えする厚い選手層なしに、ハイレベルな野球は実現しない。

足もとの国内の研究環境の格差は広がり、地方からは悲鳴も聞こえる。北陸地方の国立大の研究担当理事は「旧帝大とは設備などで大きな差があり、努力にも限界がある。地方大はもう研究をしなくてよいということか」と嘆く。柳田充弘・京都大教授は「元々水準の高い研究組織に、巨額の予算をつぎ込めば、さらに格差が拡大し、対象から外れる多くの研究者の意欲を逆に下げる」と批判する。

大リーグ級の研究者が本当に活躍できる研究風土を築くためにも、国は、将来を担う若手研究者育成との連携をもっと強めるべきだろう。(安田幸一)

讀賣新聞 2007年11月14日

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教育振興基本計画で意見募集=中教審

中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)の特別部会(部会長・三村明夫新日鉄社長)は8日、都内で会合を開き、今後5年間の政府の教育政策を示す「教育振興基本計画」の策定に向けてパブリックコメントを募集することを決めた。募集期間は12日から12月11日まで。同計画は改正教育基本法により策定が決められ、2007年度内に閣議決定する予定。今後10年の基本的な方向も示す。

同部会が意見募集のたたき台として提示する案は、国を挙げて教育に取り組む「教育立国」などの基本的な考え方や、「社会全体の教育力の向上」といった重点事項を示した幅広い内容。教員定数増や幼児教育の無償化の検討なども盛り込んだ。ただ、具体的な数値目標などは示されておらず、同部会は今後、関係者からのヒアリングや政府の予算編成も踏まえて検討する。(了)

時事通信 2007年11月8日

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教員免許更新制に備え5国立大が講習試行へ

2009年度からの教員免許更新制に向けて広域で連携する方針を固めた鳥取、島根、岡山、広島、山口の国立5大学は1日、松江市内で教育学部長らによる初会合を開いた。この中で、各大学は、国が08年度に計画する更新講習の試行事業に共同で参加する方針を確認した。

連携では、講師となる教員の県境を越えた相互派遣や講習会場の共同利用などが考えられており、実現すれば、中山間地域などで講習が受けやすくなる利点がある。免許更新制に備えた複数大学の連携は全国で初めて。

同日の会合では「良い講習を提供できるよう情報交換したい」(広島大)、「講習日時の調整などで共同歩調をとりたいが、強い連携である必要はない」(岡山大)などの意見が出て、緩やかな連携組織の下で講習プログラム作りのための情報交換や、ホームページの共同管理などから着手する方針を確認。その上で、更新講習の試行事業に5大学で参加する方針を申し合わせた。

講師や施設の数など各県ごとに事情が異なるため、各大学は協力体制を改めて協議する。5大学連携は文部科学省も注目しており、会合に出席した同省幹部は「先駆的で、汎用性が高い取り組み」と評価した。(了)

時事通信 2007年11月1日

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教員免許更新制で5大学が連携に向け初会合

二〇〇九年度に導入される教員免許更新制に向け、広域連携の可能性を探る中国地方国立五大学の教育系学部が一日、松江市殿町のサンラポーむらくもで初会合を開き、更新講習の受け皿として連合組織の発足を推進していくことで一致した。各大学レベルで態度を固めた上で、全国的に講習の試行が始まる来年度から、県境での共同講習など部分的な連携着手を目指す。

会合には、各大学の教育学部長らのほか、文部科学省の担当官が出席。同省初等中等教育局の大木高仁・教職員課長は冒頭、中国五大学の連携の動きに対して「様子見段階の教員養成系学部が多い中、先駆的な動き」と評価し、早期実現を支援していく考えを示した。

各大学は、県内の他大学の動きや受講者数などの事情を考慮しながら、国立五大学が率先して取り組む意義を確認。その上で、三十時間の講習を六時間単位とする案や出張講習を行う施設の確保、更新対象者数の把握と共有化の必要性などを指摘する意見が出た。

今後、連携の方針を各大学に持ち帰り、年内に大学としての考えをまとめる予定。事務機構の設置などを視野に年明けにも二回目の会合を開き、来年度に始まる試行段階で、県境での共同講習をスタートさせ、五大学の連合態勢を整える考え。

教員免許更新制は〇九年度からスタートし、十年を有効期限として、満了前の二年間で計三十時間の講習が義務付けられる。現行の免許状の保有者は三十五、四十五、五十五歳の前二年間で実施。ペーパーティーチャーの受講資格はないが、受講者は全国で年間約十万人、中国地方では約八千人に上る見通しで、講習を受け持つ大学側の負担が懸念されている。

山陰中央新報 2007年11月1日

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教員数で綱引き…文科省「7000人増を」 財務省「まず合理化」

政府の教育再生会議が23日の総会から年末に向けて議論をスタートさせたが、その中では2008年度予算編成に絡み、公立小・中学校の教職員を増やすか、減らすかが焦点の一つとなりそうだ。教職員数の大幅増員と予算獲得を狙う文部科学省に対し、財務省は児童・生徒数に対する教職員数はむしろ増えていると強く反論しているためだ。

公立小・中学校の教職員数は、昨年6月に施行された行政改革推進法で削減が定められた。さらに、政府の「経済財政運営と構造改革に関する基本方針(骨太の方針)2006」でも「今後5年間で1万人程度の純減を確保する」ことが決まっている。

ところが、文科省は、今年6月に成立した改正学校教育法で、新たに教頭と現場の教員をつなぐ「主幹教諭」を置けるようになったことや、「子どもと向き合う時間」を拡充することを理由に大増員を計画。3年間で主幹教諭の配置1万1007人など計2万1362人の増員を求め、初年度の08年度予算の概算要求に7121人の増員と167億円を盛り込んだ。

これに財務省が猛反発。今月12日の財政制度等審議会(財務相の諮問機関)で文科省への反論材料を次々に提出した。

少子化に伴って児童・生徒数が1989年の1488万人から05年には1043万人に減少する一方、国と地方が支出する公教育費は8・6兆〜10兆円の範囲でほぼ横ばい。このため、児童・生徒1人当たりの公教育費は57・8万円から87・1万円に増え、児童・生徒40人当たりの教職員数も2・05人から2・70人に増えていると、財務省は主張する。

さらに、「教職員の勤務時間が、授業よりも会議などの事務的な業務に多く割かれている」(財務省幹部)と説明し、増員の前に事務の合理化や簡素化を進めるべきだと指摘した。

財政審の西室泰三会長は記者会見で「個人的に言えば(文科省の主張は)あっけにとられる。教育が注目されているのを利用した悪乗りだ」と切り捨てた。

ただ、08年度予算の概算要求基準では、予算を重点配分する項目として「教育再生」が掲げられている。与野党からも「教員が忙しすぎる」と増員を求める声が少なくない。政治的な思惑も絡み、どう決着するかは不透明だ。(加藤淳)

讀賣新聞 2007年10月24日

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道徳の教科化、事実上見送り 中教審

中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)の教育課程部会は24日、改訂中の学習指導要領で道徳教育の充実をはかる案を大筋で了承した。道徳をめぐっては、政府の教育再生会議が「徳育を教科」とするよう求めていたが、部会は「引き続き検討する必要がある」にとどめた。部会の実質審議はこの日で終わったため、教科化は事実上見送られることになった。

案では、道徳を教科とした場合、(1)特別の教科として位置づけ、教科書を作ることが必要(2)現在の教育課程上の取り扱いを前提に充実を図ることが適当(3)学校では多様な教材が使用されており、教科書を用いることは困難――などの意見があると指摘、引き続き検討が必要とした。この日の会議では教科化に賛成する意見はなかった。

朝日新聞 2007年10月24日 19:49

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教員免許更新制、運用方針概要固まる=文科省

文部科学省は、2009年度導入の教員免許更新制について、学校や教育委員会、教職員や大学の関係団体から意見聴取する方針を決めた。中央教育審議会(文科相の諮問機関)の部会が、更新講習の在り方など具体的運用方針の大枠を固めたことを受けた。同省は、意見聴取の結果などを踏まえて同部会で内容を詰め、07年度中にも運用に関する省令を決定する考えだ。

07年6月に成立した改正教育職員免許法は、▽教員免許の有効期限を10年間とする▽免許を更新するには講習を受けなければならない―ことのみを規定。講習の具体的な内容や修了認定の方法などは、省令で定めることとなった。

中教審部会のこれまでの審議では、講習の内容は全教員が受講する必修12時間、学校や教科の種類別に選択18時間とすることで合意。また、各講習の最後には筆記または実技による試験を行い、60点未満の場合は認定しない。

講習の開設者は、主に大学とし、そのほか、文科省、都道府県・政令市教委、教員研修センターなどの独立行政法人も開設できるようにする方向。講習の質を確保するため、講習に関する評価も実施し、その結果を公表する仕組みも導入すべきだとしている。

同部会では、講習を受けずに免許を更新できる「免除対象者」についても議論。これまでの検討で(1)優秀教員表彰者(文科相または都道府県・政令市の教委から表彰を受けたことのある者)(2)教員を指導する立場にある者(校長・副校長・教頭・主幹教諭・指導教諭、教育長・指導主事、文科省の調査官・視学官)―が対象に挙がっている。

審議経過に基づくヒアリングは、全国連合小学校長会、全国都道府県教育長協議会、日本教職員組合、社団法人国立大学協会をはじめ約30団体から実施する方針。同部会の審議では、教職員の人事権を持つ教委が講習を開設することの可否や、表彰者の範囲などを含めた免除対象者の在り方、修了認定の公正さをいかに担保するかなどが議論となっている。ヒアリングでは、こうしたことも含め意見を聞くことにしている。(了)

時事通信 2007年10月22日

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