教育基本法闘争 確信に 全国革新懇が代表世話人会
全国革新懇は二十五日、都内で代表世話人会を開き、教育基本法改悪反対の国民的なたたかいに確信を持ち、政治革新をめざす革新懇運動をさらに発展させることなどを討論しました。
教基法改悪反対のたたかいでは、全国革新懇の賛同団体が草の根からたたかいを広げ、教育関係者が大きな力を発揮するなかで、二十五都道府県で全教と日教組の共同の集会が実現したこと、教育関係の学会が改悪反対の運動の前面に出て市民に開かれた活動を繰り広げたこと、大阪では三回にわたって府下全駅頭規模の宣伝行動を実施したことなどが報告されました。
改悪法の強行後も、新日本婦人の会では、埼玉県で十二月に二千回の宣伝行動を呼びかけ、札幌市の東支部ではすでに百九十三回の宣伝を実施するなど、具体化を許さない運動に取り組んでいることが報告されました。
国会論戦と草の根の運動の関係では、「愛国心通知表」やタウンミーティングの「やらせ」質問などの重要な情報が地域から寄せられ、論戦の力になるなど、国会内外のたたかいがしっかりかみあったことも報告されました。
今後の運動については、来年度予算案で大企業減税・庶民大増税の悪政が国民に襲いかかろうとしているなか、「ワーキングプア」に象徴される貧困の打破で国民的なたたかいをすすめる重要性が指摘されました。
関連して、靖国問題や「偽装請負」問題、サラ金規制問題をはじめ、石原都知事の豪華外遊問題などで、日本共産党の値打ちが光る状況が紹介され、みずから風を起こし、マスメディアや世論を動かし、政治を動かす情勢が生まれてきていることも強調されました。
会議では、革新懇主催のまちづくりシンポジウムが各地で盛況であることや、地域・職場革新懇の結成、再開が近年になくすすめられていることも報告され、来年五月十二日に全国総会(東京)、十一月十七、十八両日に地域・職場・青年革新懇全国交流会を開催することを確認しました。
主張 改悪教基法成立 憲法に依拠し子どもを守ろう
「どんな悪法も、よりよい教育と子どもたちの健やかな成長を願う父母と教職員の共同を断ち切ることはできない」。日本共産党の志位和夫委員長が力を込めて訴えると、「そうだ」と共感の声があがりました。
教育基本法改悪が自民党、公明党によって強行成立させられた十五日夕方、抗議の国会要請行動に集まった人々の心に刻み込まれた、今後のたたかいへの決意です。
教育現場での矛盾広げる
教育基本法改悪の強行には、ひとかけらの大義も道理もありません。与党による採決強行は、「慎重で徹底的な審議を」と願う国民の声を無視し、議会制民主主義を壊す無法なやり方です。改悪の根拠も示せず、「憲法の保障する内心の自由、教育の自由を侵すのではないか」という改悪法の根幹にかかわる重大問題にもまともに答えることをしないまま、与党は数の暴力で押し切りました。タウンミーティングで世論誘導をやっていながら、責任の所在も明らかにしないような政府・文部科学省に、教育への無制限の介入の権限を与えることになったら、子どもと教育の未来を閉ざすことになります。
今後、改悪教育基本法の具体化が進められることになりますが、それが教育現場での矛盾を深めることは間違いありません。予定されている「教育振興基本計画」の策定は、政府が教育内容を事細かに指図し介入するためのものです。学習指導要領の改定もすすめられます。教育現場に押し付けられるのは、全国一斉学力テストの実施と結果の公表、習熟度別指導、公立での中高一貫校の設置の推進、教員評価システムの導入などです。子どもにも教職員にも、歯止めのない、競争とふるいわけの教育を押し付けようとしています。これは、いじめ問題の解決など国民の教育への願いと両立しないどころか、事態をさらに深刻にします。
国会論戦では、改悪法が憲法に二重に背反することが明らかになりました。国家による子どもへの「愛国心」の強制は思想・良心・内心の自由を保障した憲法に違反する、国家権力による教育内容への無制限の介入に道を開くことは憲法の諸条項が保障した教育の自由と自主性を侵す、という二つの点です。改悪法と憲法とは明らかに矛盾します。
教育基本法を改悪しても、政府は憲法の制約から逃れられません。
内心の自由について、政府は、「子どもの愛国心を評価することは適切ではない」と答弁せざるをえませんでした。「日の丸・君が代」強制について、政府は「批判する子どもの思想・良心の自由も保障しなければならない」と答えました。
教育の自由にかんしては、政府は、一九七六年の最高裁判決が憲法から直接導き出した「国家権力による教育内容への介入はできるだけ抑制的でなければならない」という論理を認めざるをえませんでした。
新たなたたかいを
教育基本法が改悪されたいま、改悪教育基本法の具体化に反対し教育現場への押し付けを許さない「たたかいの立脚点は、日本国憲法そのものにある」(志位委員長)のです。
国が悪法をつくり、教育の現場を統制・支配しようとしても、子どもと教職員の思想・信条を縛り、国民との共同を断ち切ることはできません。教育基本法改悪反対のたたかいでつちかわれたたたかいのエネルギーはこれからも発揮されつづけるでしょう。憲法に依拠して、改悪教育基本法から子どもを守る新たなたたかいを広げていきましょう。
しんぶん赤旗 2006年12月17日
教育基本法改悪強行許すな中央決起集会での 志位委員長のあいさつ (大要)
日本共産党の志位和夫委員長が七日、東京・日比谷野外音楽堂で開かれた、教育基本法改悪法案の強行を許すな12・7中央決起集会で行ったあいさつの大要は次の通りです。
みなさん、こんばんは。連日のように、全国各地から数百、数千というみなさんが、「教育基本法を守れ」と、熱い思いをこめて国会要請をしてくださっていることに、私たちも励まされています。私は、日本共産党を代表し、最後までともにたたかいぬく決意をこめて、心からの連帯のあいさつをおくります。(拍手)
地方公聴会でも、世論調査でも、「慎重に審議をつくせ」が圧倒的多数
国会の現状ですが、いま参議院の特別委員会では、与党――自民・公明が、締めくくり総括質疑をおこなうことを提起するなど、何がなんでも今国会で法案の強行をはかるという構えをみせています。こんなことは絶対に認められるものではありません。
与党は、「審議はつくされた」といいます。しかし、参議院段階で、この間、全国六カ所でおこなわれた地方公聴会ではどういう声がよせられたでしょうか。地方公聴会では、二十四人の公述人が発言していますが、そのうち十三人は与党提出の教育基本法改悪法案にたいして反対、ないし慎重な審議をもとめています。公述人のなかで、今国会での法案成立をもとめたのはたったの一人にすぎませんでした。それならば、地方公聴会の声をうけて、慎重で徹底的な審議をつくすのが、国会のつとめではありませんか。
どの世論調査でも、国民の圧倒的多数は、「子どもたちの未来にかかわることだから、慎重に審議をつくしてほしい」という声をあげています。
みなさん。今国会での法案の強行などというのは、国会がみずからおこなった地方公聴会の声を無視し、国民の声を無視するものであり、絶対に許すわけにはいかない。まず、このことを訴えたいのであります。(拍手)
教育基本法改悪法案の根拠はことごとくくずれた
みなさん。私たちは、前国会と今国会の質疑のなかで、教育基本法改定のどこが問題かを、何よりも子どもの立場、国民の立場にたって追及してきました。私は、これまでの衆参での質疑をつうじて、政府提出の法案の根拠はことごとくくずれたと思います。
第一に、そもそも「なぜ改定が必要か」について、政府は今日にいたるまで、何一つまともな説明をしていません。政府が、「国民の理解を得ている」といって、その「根拠」として唯一もちだしたのはタウンミーティングでした。しかしこれは、「やらせ」と「さくら」でした。この事実は、政府に教育を語る資格がないことをしめすだけではありません。「なぜ改定が必要か」にひとかけらの根拠もないことを、自ら証明するものではないでしょうか。(拍手)
第二に、政府提出の改定案の憲法に反する問題点――子どもたちの内心の自由をふみにじって「愛国心」を強制する、国家権力による教育内容への無制限の介入に道を開き、教育の自由と自主性をふみにじる――この二つの問題点について、政府は、まったく説明不能におちいっています。
とりわけ最大の焦点は、教育基本法第一〇条――「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである」――教育基本法の「命」ともいうべき条文を壊すことが、憲法上許されるのかということです。戦前の戦争教育の反省のうえにたってつくられたこの条文は、戦後、全国一斉学力テストのおしつけ、学習指導要領のおしつけ、不当な教科書検定、「日の丸・君が代」の強制など、国家権力の不当な介入から教育の自由をまもる国民のたたかいのよりどころとなってきました。
「教育内容にたいする国家的介入はできるだけ抑制的でなければならない」――この大原則が、日本国憲法の要請から生まれたものだということは、一九七六年の最高裁判決でも明確にのべていることです。それならば、「国家的介入を抑制」するよりどころになっている第一〇条を削除することは、憲法に反するではありませんか(拍手)。私たちのこの批判に、政府はいまにいたるまで何の説明もできないでいます。
第三は、教育基本法改悪が、いま国民が心を痛めている現実の教育の問題の解決に逆行するという問題です。いじめ問題でも、なぜいじめが起こるのか。その根源の一つは、過度の競争教育によって、子どもたちが耐えがたいストレスにさらされ、心が傷つけられていることにあります。ところが教育基本法改定でまっさきにやろうとしていることは、全国一斉学力テスト、学校選択制など、競争教育を歯止めなくひどくすることばかりです。これが教育の荒廃をいっそうひどくすることは、火を見るより明らかではありませんか。
政府は、いじめ問題一つとっても、それをどう克服するかについて何の見識も方策もしめせていません。首相直属の「教育再生会議」は、「緊急提言」なるものを出しましたが、子どもと教師を「懲戒」するという中身で、これでは教育現場はますます追い詰められてしまうでしょう。現に国民が心を痛めている問題への見識も方策もなく、事態を悪化させる基本法改悪をすすめるなど、絶対に許せるものではありません。(拍手)
国民運動を最後の最後まで広げ、廃案に追い込もう
国会会期末まで残り一週間。実質的に審議ができるのはわずか五日しか残されておりません。その根拠がことごとく崩れた教育基本法改悪法案は、廃案にするしかありません。(拍手)
私ごとを一つ述べることをお許しください。私は、父を昨年病気で亡くしました。メーデーの前日の四月三十日でありますが、たいへんつらい出来事でした。私の父は、戦後二十六年半、現場の小学校の教師を勤めておりました。その父が亡くなる数年前に私の家を訪れて、「ちょっと教育基本法のことを話したいんだ」、こう言って三日間ほど私に“講義”をしてくれたことがあります。教育基本法のこと、教育とは何かについて、いろいろと父から思いを聞きました。「教育基本法改悪がいつか出てくるかもしれないから、息子に伝えておかなければ」という思いで託してくれたのだと思います。
教育基本法への熱い思いを抱いている教育関係者の方々、これを支えに戦後がんばってきた方々が、全国にたくさんいらっしゃると思います。そういう先輩のみなさんの思い、若いみなさんの思い、すべての国民の良心を一つに合流して、何としてもこの悪法を廃案に追い込みたい。(拍手)
いま全国津々浦々で国民運動が大きく広がりつつあります。国民運動との共同で、廃案のために最後の最後までたたかう決意を表明し、連帯のあいさつとします。(拍手)
しんぶん赤旗 2006年12月8日
教基法参院審議 世論ひろげ成立を阻止しよう
教育基本法改悪案が参院特別委員会で審議入りしました。衆院では審議がつくされないまま、自民党、公明党が数の力で与党単独採決を強行しました。世論調査をみても多くの国民が今国会での成立を望んでいません。じっくりと慎重に審議し、国民の前で問題点を明らかにしてほしいというのが、国民多数の声です。
「人格の完成」削るのか
「やらせ質問」など政府・文部科学省の法案提出者としての資格にかかわる問題をほおかむりしたままでの強行採決に、マスメディアも「なぜそんなに急ぐのか」と疑問を出しています。
いじめ自殺や未履修の問題をはじめ、教育現場の“荒れ”やゆがみに正面から向き合い、それを解決することこそ真っ先にやるべきことなのに、それへの方策が、政府・与党にはありません。国民が心を痛めている問題に政府が打開策を示せないもとで、教育の根本法である教育基本法に手をつけるなど、絶対にあってはならないことです。
重大なのは、教育基本法が改悪されたら、いじめ自殺や未履修の問題は解決するどころか、さらに深刻な事態を招く危険があることです。
日本共産党の井上哲士議員が安倍首相に質問したのは、義務教育段階での未履修問題と教育基本法改悪とのかかわりです。
教育基本法改悪後に、政府が進めるのは全国一斉学力テストと学校選択制の全国的展開による競争とふるいわけです。
実際、一斉学力テストと学校選択制がセットで行われている東京都のある区の中学校では、学校間競争のため、子どもの成長に重要な行事・特別活動が廃止・削減されています。
こんな事態が広がることが「人格の完成」にとって好ましいことなのかとの井上議員の質問に、安倍首相は、遠足など大切な教育の機会が「学力テストの補習のためになくなることはいいことではない」と答えました。
教育基本法を改悪し、競争をあおることは、「人格の完成」をめざすという教育の目的をゆがめ、子どもたちと学校に深刻な事態をもたらすことが明らかになりました。
中学校でも未履修が発覚し、関係者は“入試対策のため”だと説明しています。競争教育をあおると、義務教育段階の未履修が拡大する危険は否めません。
衆院の審議では、教育基本法改悪案がもつ二重の憲法上の大問題が明らかになっています。国家が「愛国心」を強制することは、憲法一九条に保障された思想・良心・内心の自由に反することと、国家が教育内容に無制限に介入することは憲法の諸条項が定めた教育の自由と自主性に反するという点です。東京都での「日の丸・君が代」の無法な強制が、憲法一九条と教育基本法一〇条に反するという、東京地裁の判決を踏まえた論議を、国会としてもつくす必要があります。
徹底審議のうえ廃案に
審議はまったくつくされていません。衆院での与党単独の強行採決という暴挙は、政府・与党が追い詰められた結果です。“教育基本法を守れ”の声は、日増しに高まっています。
「(現行法を)何度、読み返しても改正の必要性はあるまい」(神奈川新聞社説二十一日付)というのが、良識ある国民の思いです。
全国津々浦々から、教育基本法改悪許すなのたたかいを発展させ、この悪法の成立を阻止するためにがんばりましょう。
しんぶん赤旗 2006年11月23日
法案は徹底審議し、強行採決しないこと 国会正常化へ市田書記局長
日本共産党の市田忠義書記局長は二十日、国会内で記者会見し、与党側が教育基本法改悪法案を強行採決したことで混乱した国会の正常化へ向けた動きについて記者団に問われ、「与党側から申し出があった与野党国対委員長会談には応じる。与党側は、一方で正常化へ向けた話し合いをしながら、一方で参院では与党単独で教育基本法改悪法案の審議をすすめるというやり方はすべきでない」とのべました。
市田氏は、国会正常化へ向け、日本共産党として与党側に対し、改悪法案の審議について、(1)国民の声をしっかり聞き、それをふまえて審議する(2)十分な時間をとって徹底審議を行う(3)与党単独で強行採決はしない―の三点をもとめていくとのべました。
その上で市田氏は、「改悪法案の憲法に反する問題点とともに、いじめ自殺問題や必修科目の未履修問題など、現実に直面している問題と改悪法案との関係についても、徹底審議すべきだ」と強調しました。
しんぶん赤旗 2006年11月21日
教育基本法改悪法案 国会のルールも無視した数の暴力で子どもたちの未来を奪うことは許されない
志位委員長が会見
日本共産党の志位和夫委員長は十六日、国会内で記者会見し、自民、公明両党が教育基本法改悪法案を衆院本会議で与党単独で採決したことについて、次のようにのべました。
教育基本法改悪法案の衆院本会議での与党単独での強行採決にあたって、わが党の立場をのべたいと思います。
昨日、自民・公明は、衆院教育基本法特別委員会で、与党単独で、教育基本法改悪法案の採決を強行しました。野党は一致して特別委員会への差し戻しを強く要求しました。しかし、昨日につづき、本日の本会議でも、自民・公明は、“毒を食らわば皿まで”と、与党単独での採決を強行しました。私たちは、この無法と暴走にたいして、心からの憤りをもって抗議するものです。
国会のルールを無視した数の横暴は許せない
まず、与党の暴挙は、国会の最低限のルールをやぶる無法行為だといわなければなりません。
昨日の特別委員会では、公聴会を開く前に、与党が数の力で採決日程を決めました。公聴会とは、国民の声を聞き、審議に反映させる大事な場です。公聴会を開く前に採決日程を決めるというのは、公聴会という重要な制度を形がい化させ、国民の声に聞く耳をもたないというものにほかなりません。公述人からも「これでは公聴会の意味がない」と怒りの声が出されたのは当然です。
一九九九年十一月に与党が年金大改悪法案をゴリ押ししようとしたときに、衆院厚生委員会(当時)で公聴会をおこなう前に採決日程を決めてしまったことがあります。この際は、野党が、これは国会ルールを無視した暴挙だということで強く抗議するなかで、衆院議長の裁定で委員会に法案が差し戻され、審議を継続したことがあります。これが当たり前のルールなのです。
国会のルールも無視した数の横暴で、子どもたちの未来を奪う悪法を強行することは、絶対に認めるわけにはいきません。
審議は全くつくされていない――三つの大問題で徹底審議を
与党は、「審議がつくされた」といいますが、私たちは、審議はまったくつくされていないということを強調したいと思います。三つの大問題での徹底審議がもとめられているし、私たちはそれを要求してきました。
第一は、法案提出者の資格にかかわる大問題です。すなわち「やらせ質問」、未履修問題、いじめ自殺の三つの問題で、わが党は、政府・文部科学省にたいして、その関与と責任にかかわる資料を提出すること、そのうえで徹底審議をおこなうことをもとめてきました。しかし、すべてについてほおかむりしたままの強行採決となりました。首相は口を開けば「規範意識」といいますが、「やらせ質問」問題にほおかむりして、どうして「道徳」を子どもたちに語れるかということがまさに問われています。
第二は、現に直面している教育の切実な問題――いじめ自殺問題、未履修問題などが噴き出し、これをどう解決していくのか、教育基本法改定とのかかわりはどうか。これも審議が始まったという段階でした。
わが党は、いじめ問題にしても、未履修問題にしても、その重大な温床の一つに、過度の競争主義、序列主義があるのではないか。それが子どもたちの心を傷つけ、さまざまな教育の「ゆがみ」や「荒れ」をつくりだしているのではないか。教育基本法改悪は、事態をいっそう悪化させるのではないかと、問題の根源を提起しましたが、この問題も審議は始まったばかりという段階でした。 政府は、わが党の提起にたいして、何の見識もなければ、打開策をしめすこともできないでいます。現に直面している切実な問題にたいして、打開の方策もしめせないまま、教育の根本法たる教育基本法に手をつけるなど、絶対に許されるものではありません。
第三は、法案そのものの問題点です。
わが党は前国会の論戦で、政府の改悪案が、憲法に反する二つの問題をもつことを明らかにしてきました。国家が「愛国心」を強制することは、憲法一九条に保障された思想・良心・内心の自由に反する。国家が教育内容に無制限に介入することは、憲法の諸条項が定めた教育の自由と自主性に反する。二重の憲法上の大問題を明らかにしてきました。
そのことが九月二十一日の東京地裁の判決で裏付けられました。東京都での「日の丸・君が代」の無法な強制が、憲法一九条、教育基本法一〇条に反するという画期的判決がくだされました。この司法の判決も踏まえた論議を、立法府・国会としてつくすべきであることは論をまちません。しかし、その審議もこれからという段階でした。
つくすべき審議を断ち切った責任はあげて与党にある
この三つの問題で、審議はまったくつくされていないというのが現状です。だから世論調査をみても、国民も圧倒的多数がこの国会での成立など望んでいません。「じっくりと慎重に審議し、国民の前で問題点を明らかにしてほしい」というのが多数の声です。各紙の社説でも「なぜそんなに急ぐのか」という社説が次々出ているのは、そういう世論を反映していると思います。
自民・公明は、あたかも野党が審議拒否をしているかのようにいいます。しかし、国民の前でつくすべき審議を数の暴力で断ち切ったのは与党の側です。その責任はあげて与党にあるということを強く批判しなければなりません。この不正常な事態を打開する責任も、あげて与党の側にあるということを強調したいと思います。
憲法に準ずる法案――与党単独の強行など許されない
いま問われている法案は、憲法に準ずる重みをもった法案です。教育の根本法という子どもたちの未来にかかわる法案です。与党単独などという形で、強行するなどということは、絶対に許されない性質の法案です。
自民・公明にいいたい。あなたがたは、国会のルールを無視した数の暴力をほしいままにして、民主主義とは何かを子どもたちに教えることができるか。「やらせ」問題の責任をうやむやのままで、子どもたちに「規範」や「道徳」を語れるか。いじめに苦しむ子どもたちの悲痛な声に正面から向き合うこともせずに、教育を語る資格があるか。異常な競争主義によって「勝ち組」「負け組」に子どもをふるいわけすることが、どんなに子どもの心を傷つけているかがわからないのか。
政府・与党のこの横暴は、子どもの未来への思いのひとかけらもない、もっとも反教育的な暴挙だということを強く糾弾するものです。
暴挙は追いつめられた結果――院内外のたたかい発展させ成立阻止を
たたかいはこれからが正念場です。与党がこういう暴挙に出たのは、彼らが追いつめられてきた結果です。いま、国民のたたかいが大きく広がっています。国民世論も政府・与党への批判が日に日に強まっています。国会論戦でも、教育基本法改悪法案は、いまやボロボロになっています。追いつめられている中での暴挙です。
私たちは、さらに院内外でのたたかいを大きく発展させ、日本列島津々浦々からの教育基本法改悪許すなのたたかいを大きく発展させ、この悪法の強行成立を、なんとしても阻止するために、最後まで力をつくすものです。ありとあらゆる知恵と力をつくして、廃案に追い込む決意を新たにしているところです。日本共産党は、そのためにひきつづき奮闘するものです。
しんぶん赤旗 2006年11月17日
4野党共同街頭で訴え
(写真)街頭から訴える(左から)国民新党・亀井久興幹事長、共産党・穀田恵二国対委員長、市田忠義書記局長、社民党・重野安正国対委員長、民主党・鳩山由紀夫幹事長=16日、東京・千代田区有楽町
野党四党の書記局長・幹事長・国対委員長は十六日、東京・有楽町マリオン前で教育基本法改悪法案の衆院通過に抗議する共同の街頭演説を行いました。
日本共産党の市田忠義書記局長は「審議を一方的に打ち切り国民の声を無視したのは自民、公明の与党だということをよく覚えておいていただきたい」と呼びかけ、法案提出者の資格が問われるタウンミーティングでのやらせ質問問題で政府・与党が真相も責任の所在も明らかにせず強行したことを批判。「成立を阻止するため野党がスクラムを組んで頑張りぬく」と表明しました。
「野党は一度も審議拒否せず徹底審議を求めた」(国民新党・亀井久興幹事長)、「六十年先を見通す法案をわずか百七時間の審議で終了していいのか」(社民・重野安正国対委員長)、「政府はあとを断たないいじめの現実をどう考えているのか」(民主・鳩山由紀夫幹事長)と各党が与党の暴挙を糾弾しました。
大分県から上京した中学教諭の男性(35)は「教育基本法を変えていろいろな問題が解決するとは思わない。やっと国民みんなが教育に関心を持ち始めた矢先に議論を打ち切ってしまうやり方は問題だ」と話していました。
しんぶん赤旗 2006年11月16日
強行採決 教育とは相いれない暴挙
自民党や公明党は、「やらせ」で世論を誘導し、国民の反対の声に耳を貸さずに、国会では与党だけで審議をすすめ、採決を強行することを、正しい民主主義だと子どもたちに教えるのでしょうか。
自民・公明両党が衆院教育基本法特別委員会で強行した教育基本法改悪案の採決は、そのやり方はもちろん、教育の基本にかかわる法案の審議という点からも、絶対に許すことができない暴挙です。採決は認められません。採決を撤回して審議をやり直し、徹底審議のうえで改悪案を廃案にすべきです。
審議すべきことは山積
自民党の二階俊博国対委員長は採決に先立ち、「審議は百時間を超した。(採決の)機は熟した」といいましたが、とんでもないことです。
教育基本法改悪案は、なぜいま「改正」が必要なのかという根本的な疑問を残したうえ、「愛国心」の強制や教育内容への国家の介入など法案の内容そのものの審議がまだまだ不足しています。そればかりか、いじめ問題や高校の未履修問題、さらには文部科学省の「やらせ」問題などが噴出しています。何時間かけても政府が誠実に対応しないなら審議をつくしたことにならないのは明白です。
とりわけ、教育基本法について、「国民の忌憚(きたん)のない」意見を募るとして行われた「タウンミーティング」などで、政府が教育基本法改悪賛成の立場にそった「やらせ」発言を組織していた問題は、法案提出の前提にかかわるものであり、誰が指示してやらせたのかなど責任の所在を含め、あいまいにすますことは絶対にできない問題です。
実際、伊吹文明文部科学相も採決前日の特別委員会で、文部科学省の「教育改革広報・広聴プロジェクトチーム」のなかの「誰がそうしろといったのか。しっかり調べて答弁しないといけない」と、調査を指示したことを明らかにしています。調査し、答弁することを約束しながら、それもしないうちに審議を打ち切り強行採決するというのは、国会の審議権をも著しく侵害するものといわなければなりません。
「やらせ」問題をめぐっては、小泉内閣時代に百七十四回行われた政府主催のタウンミーティングで、発言を依頼した相手に一人あたり五千円の謝礼金が支払われていたという驚くべき事実も明らかになりました。政府の政策に賛成の立場での発言の組織が目的なら、税金を使った世論操作ではないのか。徹底究明が不可欠です。
そうした審議のさなかに教育基本法改悪案の採決を強行するというのは、文字通り疑惑にふたをするためであり、急速に広がっている反対の声を封殺するためといわれても仕方がありません。採決を撤回し、「やらせ」問題などに徹底してメスを入れることこそ、喫緊の大問題です。
採決は撤回し、廃案に
教育基本法の改悪は、「戦後レジーム(体制)」からの脱却を目指す安倍首相が、改憲と並んで最優先の課題としてきたものです。相次ぐいじめや未履修の問題が浮き彫りにしたように、それは直面する教育問題に無力なだけでなく、教育の競争と統制を強め、解決に逆行します。
そうした改悪案を、国民の反対が広がってきたからといって、議会の民主的な手続きも押しつぶして進めるところに、安倍政治の危険があります。強行採決を国民の力で撤回させ、改悪案を廃案に追い込むために、たたかいをさらに広げようではありませんか。
しんぶん赤旗「主張」 2006年11月16日
教育基本法改悪案 土台が崩れた。撤回しかない
政府の教育基本法改悪案をめぐって、国会が緊迫しています。政府・与党は、今週半ばの衆院での採決・通過をねらっていますが、もってのほかです。
提出者の資格問われる
教育基本法改悪案は、これまでの一人ひとりの子どもの「人格の完成」をめざす教育から、「国策に従う人間」をつくる教育へと、目的を百八十度転換させるものです。九日の衆院特別委員会で参考人が示したように公立小中学校校長の66%が改定に反対しています。いじめや未履修など、教育の困難を解決するどころか、教育の自由と自主性を奪い過度の競争で現場を荒廃させる改悪案は徹底審議のうえ、廃案にすべきです。
しかも、政府主催のタウンミーティングでの「やらせ質問」など、調査や徹底究明が必要な問題が次々と起こっています。
安倍首相は、「教育基本法と、タウンミーティングの問題は別だ」として改悪案の成立を急ぐとしていますが、いま起こっているのは、教育の根本法の改定法案提出者としての最低限の資格が問われる問題です。
「やらせ質問」は、政府が、教育基本法改定の世論を誘導していた問題です。教育改革をテーマにした八カ所のうち五カ所で、やらせ質問が行われています。うち、青森県八戸市開催の場合、文部科学省の主導ぶりが、日本共産党の笠井亮衆院議員の質問で明らかになりました。開催依頼は文部科学省生涯学習政策局で決めて、大臣官房総務課広報室を通じて内閣府に依頼し、やらせ質問の項目案を同広報室が作成し、室長も承認していました。
政府は国会審議でも、なぜいま教育基本法改定なのか、まともな説明ができないでいます。そのなかで、国民の理解を得ている“根拠”として、タウンミーティングでの世論をあげてきました。その世論形成に、不正があったのです。政府が、「タウンミーティングで民意の広がりがあるというのは適当でなかった」(伊吹文部科学相)というなら、教育基本法改悪の根拠が土台から崩れたことを自ら認めたものです。
教育基本法改悪案が目指す教育には、もともと未来がありません。
たとえば、政府の改悪案は、新たに教育の目標をつくり、そこに「国を愛する態度」など二十の徳目を列挙し、その目標の達成を国民全体に義務づけています。しかし、前国会の審議で、政府は、日本共産党の質問に、愛国心を「評価するのは難しい」と答弁せざるをえなくなり、これをうけて、教育現場で、“愛国心通知表”の撤回が相次ぎました。
教育基本法を改悪して、真っ先に実施するという全国一斉学力テストも、競争とふるいわけを目的にし、矛盾を広げます。東京都足立区が打ち出した、学力テストの結果で学校をランク分けし、予算に格差をつける方針は、住民の批判を受けて、区は見直しを表明せざるをえませんでした。
現行法生かした教育を
相次ぐ子どものいじめ自殺は、子どもと教育をめぐって、深刻な事態が起こっていることを改めて感じざるをえません。教育基本法改悪案では、いじめ自殺を防ぐことはできません。改めて、子ども一人ひとりの「人格の完成」をめざす、現行法を生かした教育を土台にいじめ自殺問題を論議する必要があります。
政府・文部科学省に、法案提出者としての資格が問われており、土台から根拠が崩れているいま、改悪案は撤回しかありません。
しんぶん赤旗 2006年11月14日
教育基本法改悪阻止11・2中央大集会での志位委員長のあいさつ(大要)
東京・日比谷野外音楽堂で二日夜開かれた「教育基本法改悪阻止11・2中央大集会」で、日本共産党の志位和夫委員長がおこなった情勢報告をかねたあいさつ(大要)は次の通りです。
お集まりのみなさん、こんばんは。日本共産党の志位和夫です。(「こんばんは」の声、拍手)
連日のように国会に数百、数千という多くのみなさんが、教育基本法改悪ストップの思いを持ってきておられることに、私たちは本当に勇気づけられています。(拍手)
私たちは、前国会いらい、教育基本法改悪と正面からきり結ぶ論戦にとりくんできましたが、最後まで、みなさんとともに廃案に追い込むため頑張りぬく決意をまず申し上げたいと思います。(拍手)
現実を直視した議論こそ必要
いまの教育基本法改悪とのたたかいの焦点をもうしますと、教育基本法を改悪したらどんなにひどいことになるか、このことが教育現場の深い矛盾によって明らかになりつつある。これがいまの特徴だと私は思います。(拍手)
昨日、東京新聞は、「教育基本法 この現実を見て議論を」と題する社説を掲げました。
「いじめ自殺や高校必修漏れなど現実に起きている問題の深刻さは教育の根幹にかかわる。法改正を急ぐ前に現実を直視した議論こそ必要だ」(拍手)
「基本法を変える採決を急ぐときではないだろう。目の前の問題に真正面から向き合い、国民とともに本質をとことん議論して“根本治療”につながる処方せんを示すべきだ」(拍手)
私もこの通りだと思います。(「そうだ」の声、拍手)
いじめへの対応を困難にする
私は、十月三十日の衆院特別委員会の質疑で、いじめ克服とのかかわりで教育基本法の改悪の問題点をただしました。
あいつぐいじめ自殺という事態に、心を痛めていない国民はいらっしゃらないと思います。
私は二つの角度から問題をただしました。
第一は、いじめへの対応という問題です。文科省はあの福岡の事件が起こった直後に、全国の担当者を集めてこういって意思統一しました。「いじめの件数の多い少ない以上に、早期に発見し、教師集団が一致協力して解決にあたることが大切だ」。これはその通りの正論であります。
しかし、教育の現場はどうなっているか。私たちがお話をうかがいますと、実態は、いじめの件数が多いか少ないかで教師が評価されている。自分のクラスにいじめがあると報告すればそれで評価が下がるという実態があります。
いま先生も「S」「A」「B」「C」「D」の五段階の評価をされています。評価は下がり、下手をすれば「ダメ先生」とレッテルをはられ、給料だって下がる。こういう状況に置かれているという声が、私たちにたくさん寄せられました。
こうやって評価されたら、自分のクラスにいじめが発生しても、報告ができなくなります。教師が一人で抱え込んで、教師集団として問題を解決することができなくなります。ここに一番の問題がある。
それでは、教育基本法を改悪したらどうなるか。二〇〇三年に中央教育審議会が、教育基本法を改悪したときにつくる「教育振興基本計画」のひな型をつくりました。そこには、ずらーっと数値目標が並んでいるのです。教育を何でもかんでも数字にしてしまうというのが「教育振興基本計画」です。世界のトップレベルの学力水準にするといった式のいろいろな数値目標が書いてある。いじめについても「五年間で半減」という数値目標が書いてあります。ところが、本当に数値目標にしなければならない三十人学級は書いてないんです。(「そうだ」の声、拍手)
これは逆立ちしていますね。教育の中身は数値にすべき問題ではありません。それを数値目標にして押しつければ、実態が隠れて、みんなで力をあわせていじめを克服する最大の障害になるではありませんか(「そうだ」の声、拍手)。教育基本法改悪はこの点でも絶対に許すわけにいかない。このことを私は訴えたいのであります。(「そうだ」の声、拍手)
競争とストレスがいじめの温床に
もう一つの角度があります。なぜ、いじめが起こるか。その温床の問題です。いじめの温床というのは、子どもたちの道徳心の問題だけで説明できるものではありません。
子どもたちが耐え難いストレスにさらされている。ここにいじめの根本的な温床があるんじゃないでしょうか。そこからそのはけ口をほかの子どもに向けてしまう。
これは、国会で使ったパネルですが、北海道大学の伝田助教授のグループが三千人以上の小中学生を対象にした「抑うつ群」――うつ病になるリスクをもっている子どもの率のグラフです。
見てください。小中学生の平均で13%です。中学生は22・8%です。中学三年生は30%です。これだけの子どもたちが「抑うつ状態」に置かれている。「何をしても楽しくない」「とても悲しい気がする」「泣きたいような気がする」「生きていても仕方がない」――こういう本当に耐え難いストレスに置かれているのが実態です。
どうしてこんなひどいストレスに子どもたちがさらされているのか。もちろん、いろいろな原因がある。しかし、学校教育のなかでは、競争教育こそストレスの一番の原因ではないでしょうか。(「そうだ」の声、拍手)
競争によってふるいわけをする、序列をつける。私は、本来は、学校というのは子どもにストレスがあっても、そのストレスを解放して、のびのびと成長する場でなければならないのに、学校がストレスの場になる。こういう状況をつくっているのは、まさに競争教育であります。
教育基本法を改悪して競争主義を徹底したらどうなるか。全国一斉学力テストをやる。それを公開する。学校選択制を全国に拡大する。こんなことをやれば、ますますストレスは激しくなり、いじめや学校の荒廃ということも深刻になると思います。
私は一言で言って、日本の教育のどこがいちばん悪いか。競争主義と序列主義こそ日本の教育をむしばむ一番の元凶だということを訴えたいのであります。(拍手)
競争のなかからは本当に学力は育ちません。わかる喜び、探求心は育っていきません。人をけ落とす競争ではなく、子どもが互いに学びあう、助けあう人間関係をつくる、探求心を育てあう、そのなかでこそ本当の学力が培われるのではないでしょうか(「そうだ」の声)。その指針になるのが教育基本法ではないでしょうか。(「そうだ」の声、拍手)
私は、安倍首相とずいぶん議論しましたけれども、こういういじめの問題ひとつとっても、何の認識も見識もありません。結局、首相の考えは、「いじめを隠す教師が悪い」「いじめをする子どもが悪い」「規範意識を身につけさせることが大切だ」「規範意識を教師と子どもにたたき込めば、いじめがなくなる」という。しかし、そんなことにはなりません。
「やらせ質問」での世論誘導は許せない
「規範意識」というんだったら、これは何だ。昨日、私たちの議員団が突きつけた問題があります。それは青森でやられたタウンミーティングで、なんと政府が「やらせ質問」をやらせていた。これが明らかになりました。「やらせ質問」の原稿がここにあります。教育基本法を改定したらどんないい教育になるか、これを「やらせ質問」でいわせるんですね。
「依頼発言についての注意事項について」という文言もあります。「できるだけ趣旨をふまえて自分の言葉で」(笑い)。「やらせ質問」を「自分の言葉」で語るのは大変です(笑い)。「せりふの棒読みは避けてください」(笑い)。「『お願いされて…』とか『依頼されて…』とかいうのは言わないでください。あくまで自分の意見をいっている、という感じで」(笑い)。これでやってるんですよ(「許せない」の声)。
みなさん、「規範意識」というのだったら、いちばん規範意識がないのは政府であり文科省じゃありませんか(拍手、「そうだ」の声)。
こんなやらせをやって世論誘導をやっているとしたら、それだけでも教育を語る資格なし、こうはっきりいわなければなりません(大きな拍手)。
廃案めざし、共同を広げに広げよう
みなさんいま共同が広がっております。全教系の労働組合も日教組系の労働組合もともに手を携えたたたかいがすすんでいます。先日、連合北海道が日本共産党北海道委員会に教育基本法改悪反対でいっしょにがんばりましょうと要請にきました(拍手)。廃案のために力を合わせようというエールの交換となりました。
教育基本法の改悪許すな、この声が日々、列島に広がりつつあります。これを広げに広げて、みんなの力で廃案に追い込むまでがんばりぬこうじゃありませんか。私もがんばります。ともにがんばりましょう。(「がんばろう」の声、大きな拍手)
しんぶん赤旗 2006年11月3日
教育基本法改悪案 一から議論のやり直しを いじめ自殺で考えるべき二つの問題 志位委員長会見
日本共産党の志位和夫委員長は十九日の記者会見で、継続審議となっている政府の教育基本法改悪法案の対応を問われ、「継続審議だからといってずるずると再開するやり方ではなく、(先の通常国会から)新しい首相と文部科学大臣になったわけだから、一からの議論のやり直しが必要だ」と述べ、徹底審議のすえ廃案に追い込む立場を表明しました。
志位氏は、安倍首相が掲げる「教育再生プラン」が、子どもたちを過度な競争に追いたて、小中学校の段階から「勝ち組・負け組」に振り分けるものだと批判。日本の過度な競争システムには国連からも厳しい勧告が寄せられていることを指摘し、「(安倍プランは)教育の再生ではなく、教育の破壊になる。そういう角度から(改悪法案を含め問題を)ただしていきたい」とのべました。
また志位氏は、いじめやいじめを苦にした自殺が相次いでいる問題を記者団に問われ、「学校側が関与し、一緒になってそういう事態をつくりだしたことは厳しく批判されないといけないと思う。同時に、いじめによる自殺という絶対に学校であってはならない事態がひきおこされている根っこを私たちはよくみる必要があると思う」と指摘し、「学校教育にかかわっては二つの問題があると思う」とのべました。
一つは、上からの管理と統制でしめつけるやり方です。政府は教育現場に「いじめ半減五カ年プラン」という数値目標を押しつけています。
志位氏は「これでは数値目標達成のために実態が奥に隠れてしまうという問題が指摘されている」とのべ、数値目標を上から押しつけるやり方では、いじめの実態はみえないところにいってしまい、子どもからのサインも受けとめられなくなり、教員も子どもの命に目を向けるのではなく、教育委員会など上の方に目を向けるようにさせられていく問題をあげました。
もう一つは、競争主義によって子どもが「勝ち組・負け組」に振り分けられる学校の制度が、子どもたちの心を深く傷つけているという問題です。
志位氏は「安倍首相の『教育再生プラン』のやり方は、いまのいじめ問題の解決にも逆行する、よりそれをひどくする事態をつくる」と指摘しました。
教育基本法改悪案 憲法と世界の流れに反する
自民党総裁選候補の安倍晋三官房長官や麻生太郎外相が、総裁選後の臨時国会での、教育基本法改悪案の成立に執念を燃やしています。とくに、安倍氏は、教育基本法改悪を憲法改悪と一体でねらっています。
改悪案は、「慎重に」という国民世論を反映して、国会で継続審議となっているものです。
国民主権の原理
先の通常国会では、政府の改悪案には、憲法に背反する二つの大問題があることが、日本共産党の質問で浮き彫りになりました。
一つは、政府の改悪案が、憲法第一九条が保障した思想・良心・内心の自由をふみにじるという点です。改悪案は、「教育の目標」として、「国を愛する態度」など二十もの「徳目」を法律で決め、その「目標の達成」を義務づけ、子どもたちに強制しようとしています。
質問をきっかけに、いま各地で「愛国心通知表」を見直す動きが広がっています。「評価するのは難しい」(小泉首相)というなら、法案の道理そのものが成り立ちません。
もう一つは、憲法が教育の自主性、自律性、自由を強く求めていることとの関係です。教育基本法の一〇条はのべています。「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである」。政府の改悪案は、この「国民全体に対し直接に責任を負つて」という文言を削って「この法律及び他の法律の定めるところにより」に置き換えています。
国会の論戦で、この一〇条の改悪のねらいが、政府・文部科学省の裁量行政による教育内容への国家的介入を無制限に拡大し、合法化することにあると、明らかになりました。
安倍氏らは、「教育改革」といって、教育基本法改悪を強行しようとしています。しかし、マスメディアの総裁選をめぐるモニター調査でも、「教育改革」の課題として、「教育基本法改正案の早期成立」をあげた国民は、わずかで十二項目中十一位です。「全国学力調査の実施」をあげた人も少なく、下から三番目の十位です。
教育基本法には憲法の国民主権の原理が流れています。教育は一人ひとりの子どもの主権者としての「人格の完成」をめざしておこなわれるべきで、未来の社会のあり方は、そのような教育によって成長した未来の世代の判断にゆだねようというのが教育基本法の考えです。国策に従う人間づくりをねらう改悪案とはまったく正反対です。国民が求めるのは憲法と教育基本法を生かした教育改革です。
「人格の完成」という考え方は、世界人権宣言(四八年)に盛り込まれ、人類共通の原理として豊かに発展しています。子どもの権利条約(八九年)はのべています。「児童の人格、才能並びに精神的及び身体的な能力をその可能な最大限度まで発達させること」。こうした目からみて、国連・子どもの権利委員会は、日本の「競争教育」にたいして、政府に二度にわたる警告を発しています。競争に拍車をかける全国一斉学力テストは国際社会からの勧告にも、人類共通の原理にも反します。
国民の力で廃案に
日本の教育基本法を手本にして「学力世界一」になったという、フィンランドでは、競争主義を教育から一掃しています。学校と教師の自由と自主性を尊重し、「二十人」学級が当たり前になっています。
この秋、子どもたちの成長を願う国民の力で、教育基本法改悪を許さないたたかいを盛り上げましょう。
しんぶん赤旗 2006年8月30日
今週の国会
医療改悪 会期末にらみ攻防 14日成立狙う与党 野党は廃案めざす
国会は十八日に会期末を迎えます。政府・与党が会期を延長しないとしていることから、事実上、今週で閉じることになります。日本共産党は、参院でぎりぎりの攻防が続いている医療改悪法案をはじめ、教育基本法改悪法案、改憲手続き法案、「共謀罪」法案の廃案を強く求めています。
命にかかわる
政府・与党は、医療改悪法案の成立に万全を期すとし、十三日に参院厚生労働委員会で採決、十四日には本会議で成立をはかる構えです。
日本共産党は、改悪法案の審議を通じて浮き彫りになった問題点について、政府がなんら納得のいく説明をしていないことからも、ひきつづき徹底審議を求めています。
同案は衆院段階で、与党の強行採決で質疑が打ち切られており、参院での徹底審議は不可欠です。高齢者を中心とする負担増が及ぼす影響、後期高齢者医療制度の問題点、「混合診療」の拡大への懸念、療養病床が削減されることの影響など、国民のいのちに直結する問題で、まだまだ掘り下げる課題が山積しています。
十二日には、同案をめぐって北海道千歳市で地方公聴会を行います。
日本共産党、民主党、社民党、国民新党の四党は、書記局長・幹事長会談で、教育基本法改悪法案、「共謀罪」法案とともに医療改悪法案も廃案をめざすことで一致しています。会期末をにらんで、文字通り最終盤のたたかいとなります。
教基法改悪案
教育基本法改悪法案は、衆院教育基本法特別委員会の今国会での審議は終わりました。しかし与党側は秋の臨時国会を視野に入れ、閉会中に地方公聴会を実施するよう求めるなど、法案を継続審議にした上で、閉会中も審議を積み重ねようとしています。十四日に理事懇談会を開き、今後の日程について協議します。
衆院憲法調査特別委員会は十三日に理事懇談会を開き、与党と民主党がそれぞれ提出している改憲手続き法案の扱いについて協議します。与党側は十五日に趣旨説明と質疑を行うよう求めています。民主党は、NHKが中継するなら容認するとしています。日本共産党は、与党案、民主党案の内容とともに、国会終盤に提出し、会期末にドタバタと審議をすすめようとする姿勢を強く批判し、両案の撤回を求めています。
「共謀罪」法案を審議している衆院法務委員会は、同案の審議を中断し、他の法案の審議が続いています。与党側は継続審議にする構えですが、野党四党は廃案を求めることで一致しています。
衆院拉致問題特別委員会は、北朝鮮人権法案をめぐり、与党と民主党が進めていた「修正協議」が合意に達したとして、十二日の委員会で、与党案、民主党案を一本化し「委員長提案」の形で提出し、審議抜きで採決する構えです。
衆院倫理選挙特別委員会は、十二日の理事懇談会で、自民党が提出している外資系企業からの献金規制を撤廃する政治資金規正法改悪案の扱いについて協議します。
衆院厚生労働委員会は十六日、社会保険庁による年金保険料の不正免除問題で集中審議をおこなう見通しです。
しんぶん赤旗 2006年6月11日
教育基本法改定のどこが問題か
国民的な反対運動を急速に広げよう
日本共産党演説会 志位委員長が講演
日本共産党は六日夜、東京都内の党本部ビル大会議場で教育基本法改悪反対の演説会を開きました。志位和夫委員長が「教育基本法改定のどこが問題か」と題して一時間半にわたって講演。日本の進路にかかわり、会期末を迎えた今国会の焦点の法案とあって、第二会場を含め約八百人が参加しました。
演説会の模様はCS通信やインターネットでも中継され、全国各地の特設会場でも多くの人が視聴しました。
志位委員長は冒頭、教育基本法改悪法案の今国会廃案をめざすと表明。同時に、法案が秋の臨時国会に持ち越された場合には、「どれだけ多くの国民にことの真相を伝え、この動きに反対する文字通りの国民的運動、国民的世論をつくれるかどうかが、たいへん重要になってくる」と今後のたたかいの重要性を強調しました。
そのうえで、国会論戦で浮き彫りになった改悪法案の「憲法に背反する二つの大問題」――内心の自由の侵害、教育内容への歯止めない国家介入について詳述。教育現場に「強制はしない」と国会答弁で明言した「日の丸・君が代」を、東京都が問答無用で押しつけている生々しい実態の告発に参加者は聞き入りました。
志位委員長は、国家的介入の歯止めをなくして強制しようとしているのは、子どもたちを競争にあおりたてる「全国一斉学力テスト」の実施、習熟度別指導の画一的押しつけだと指摘。幾重にも憲法に背反し、子どもたちの未来を奪う教育基本法改悪にたいし「反対する国民的運動を急速に広げ、このたくらみを阻止するためにがんばりぬこう」とよびかけました。
各地でCS通信視聴
大阪
大阪の会場となった大阪市のクレオ大阪中央では映像に見入り、メモを取る人の姿が目立ちました。
熱心にメモをとっていた枚方市の男性(67)は、「戦争への反省、日本国憲法の実現にむけた教育など、高い理想をもったのが教育基本法だと改めて思いました」と話しました。
女性(28)=保育士=は、「教育基本法改悪が憲法九条の改悪とつながっていることがわかってこわいと思いました。国策に従わない子は切り捨てていくということは、保育士の言うことをきかない子は切り捨てていくということと同じです」と語りました。
会場では宮本たけし参院大阪選挙区候補があいさつしました。
岩手
岩手県では、盛岡市の岩手教育会館など四カ所に設置した大型スクリーンで志位委員長の講演のCS通信を視聴しました。岩手教育会館には、市民、党員ら二百人が集まりました。
志位委員長が、政府は教育基本法改定の理由を説明できず、「村上ファンド」の問題も教基法のせいにするのではと指摘すると、会場から笑い声と拍手が起きました。
参加した元教師の男性(59)は「教育基本法の大切さを知らせて、守る責任を感じた」と話し、教育学部の男子学生(20)は「人格の完成をめざす教育基本法の理解を深めたい」と語っていました。
参加者の感想
●「君が代」強制はひどい
東京・品川区の大学一年生(18)は「教育基本法について詳しく知りたくて参加しました。志位さんの話は総合的でとてもよくわかりました。今年都立高校を卒業したのですが、志位さんもいっていたように『君が代』のときに立たないと先生が処分されてしまう、でも戦争のときのことを考えると立ちたくない、と悩みました。こんなやり方はひどいと思います。このままでは日本は危ない方向にいってしまう。もっと学んで周りの人たちにも改悪反対を訴えていきたい」と話していました。
●フィンランドの話印象的
中央大学一年の女子学生(18)は「私も習熟度別授業を受けてきましたが、できないとされた生徒にはあきらかに先生の態度が違うんです。志位さんが話した競争じゃなくて助け合いのフィンランドの教育が日本の教育基本法を参考にしたという話が印象的でした」と語りました。
●落ち込んでいたが元気に
東京都の区立小学校教諭(56)=男性=は「政府の改悪案のどこに問題点があるのか、よく分かりました。共産党の分析力のすごさと教育にたいする考えの深さもすごいと思います。現場で、年々強まる管理強化に落ち込みがちでしたが、志位さんの話を聞いて元気がでました。特に、国家が教育になぜ抑制的でなければならないか、教育は人間の内面的な価値に関する文化的な営みであるという話には感動しました。教育とは何か、を改めて考えさせられ、職場で頑張ろうと思いました」。
2006年5月25日「しんぶん赤旗」主張
教育基本法改悪 現場荒廃させる危険がみえた
教育基本法改定案の審議が衆院特別委員会で始まり、首相出席のもとで、各党の代表が質問しました。
教育基本法の全面改定で子どもと教育をめぐって現場でどんな問題が起こるのか―。国民が知りたいことに切り込んだのが、日本共産党の志位和夫委員長の質問です。
愛国心強制と競争加速
教育基本法が改定されれば、二〇〇二年に福岡で実施され市民の強い批判で翌年から撤回された「国を愛する心情」を通知表で評価するというようなことが、全国に押し付けられるのではないか―。この懸念にたいし、首相は、評価すること自体が、憲法の「内心の自由」を侵す“間違い”であるとはいいませんでしたが、「評価は難しい」と認めざるをえませんでした。
通知表をめぐっては、多くの教師が、「愛国心といわれても評価できない」と悩んだことが、マスメディアでも問題になりました。
首相が、「難しい」と認める目標をなぜ学習指導要領に盛り込んだのか。しかも今度はその内容を法案に盛り込み、「達成」を義務づけています。評価が「難しい」という首相の答弁は、その難しいことが、法的に強制される危険を浮き彫りにした点でも、法案が肝心な中身で大きな矛盾を抱えていることを示した点でも重大です。
もう一つが、政府が基本法を改定して、まっさきにやろうとしている全国いっせい学力テスト問題についてです。志位委員長は、国連・子どもの権利委員会からも繰り返し是正を求められている“競争教育”とのかかわりを追及しました。
たとえば、独自に学力テストを実施している東京都では、学校ごとの順位の公表と小中学校の学区制廃止とが、セットで進められた結果、三つの区で、新入生がゼロの学校が生まれています。新入生を迎えるのが楽しみのはずの四月に入学式がない、これがその学校の子どもたちの心をどれだけ傷つけているか計り知れない―。志位委員長の告発に、首相は、「学力テストがいけないとは思わない」と居直りました。
志位委員長は学力テスト一般を否定したのではありません。いっせい学力テストが学校と子どもに序列をつけ、「勝ち組」「負け組」にふりわけるという、教育として好ましくないことが、学校現場で現実に起こっていると指摘したのです。
政府は、来年度に全国学力テストの実施を計画しています。全国学力テストの目的が、「競争意識の涵養(かんよう)」にあると、政府は明らかにしています(〇四年十一月四日の経済財政諮問会議に当時の中山文科相が提出した資料)。
こうしたねらいで教育の現場に競争をもちこもうとする教育基本法改悪が、だれもがわかる教育を求める国民の願いに背くのは明らかです。
徹底審議で廃案を
教育の荒廃や少年犯罪の原因を教育基本法にからめる、政府の手法にたいし、国民の間から「筋違い」(高知新聞四月十四日付)との声があがっています。
政府は、現行法のどこが問題か、何一つ説明できないでいます。それは、子どもと教育をめぐるさまざまな問題の根源が、教育基本法にあるのではなく、子ども一人ひとりの人間的な成長をめざす教育基本法の理念をないがしろにしてきた自民党政治にあるからです。
憲法をふみにじって、「愛国心」を強制し、子どもたちを競争に追い立てる、教育基本法改悪案は徹底審議の上、廃案にするしかありません。
2006年5月22日 しんぶん赤旗
法で強制は誤り 学習指導要領の「道徳」 教育基本法改悪法案の「徳目」 ぴったり符合
教育基本法改悪法案は第二条「教育の目標」で、「愛国心」など二十項目もの徳目(徳を分類した細目)を並べています。もとは現行の学習指導要領の「道徳」であることは一目瞭然(りょうぜん)(表)。法律化によって強制力を持たせれば「内心の自由」をいっそう侵すことになります。
改悪法案「教育の目標」と学習指導要領の関係はどうか。たとえば「教育の目標」の「我が国と郷土を愛する態度」という項目は、中学校向け指導要領「道徳」の「郷土を愛し」「国を愛し」と符合します。
「告示」のはずが
小坂憲次文部科学相は「(「教育の目標」の)事項については現行の学習指導要領に規定され、各教科や道徳などにおいて実際に指導が行われており、今後、その指導の充実を図ろうとするもの」(十六日の衆院本会議)と説明しました。
徳目の中には当然のように見えるものもあります。しかし法律に書き込み「達成」を義務づければ、二重の意味で重大な問題となります。
まず、指導要領は文科省の「告示」にすぎません。文科省は法的拘束力があると主張しますが、教育学者からは強い反対意見があります。法律化によって「告示」にはないはっきりした強制力を持つことになります。
教育基本法(一九四七年制定)の原案作成にたずさわった田中耕太郎元文相(後の最高裁長官)は、『ジュリスト』(五二年一月創刊号)で、「教育の目的」は本来学問的問題であり、法律で決めるべきでないと書いています。教育基本法が「教育の目的」を「教育は人格の完成をめざし…」としているのも、戦前の間違った教育目的を正すための最低限の規定であり「これを拡張または強化してはならない」と強調しています。
全体の目標に
また改悪法案が、「道徳」の内容を、教育全体の目標に引き上げ、教育全体を道徳教育に従えようとすることも問題です。
日本教育法学会教育基本法研究特別委員会は「戦前教育が修身を筆頭科目として忠良な皇国民の錬成に集約されたように、教育を全面的に道徳教育に一元化していく志向をみてとることが容易である」(『教育基本法改正法案に対するコメント』)と批判しています。
田中元文相も「『教育勅語』に代わるべき『教育宣言』のごときものを国が制定して…教育の目標を明示すべしとする意見が今日なお跡を絶たない。…(これは)教育の理念や目的を国家や法またはその他の外部的権威がディクテートする(注・命令する)という誤った仕方を踏襲発展せしむるものである」(前出の『ジュリスト』)と警告していました。
小泉内閣が国会に提出した教育基本法改定案の審議が始まります。この法律の制定(1947年)以来初めてのことです。国民の関心の高い教育にかかわる重大な内容をもつ法案であり、日本共産党は徹底審議をつうじて廃案にすることを強くもとめてたたかいます。
教育基本法を変える「理由」を、政府は説明していません
教育基本法は「教育の憲法」といわれるほど重みのある法律です。
政府は、基本法を全面的に改定する理由として、「時代の要請にこたえる」ためといっています。ところが、政府の文書のどこをみても、現在の基本法のどこが「時代の要請」にこたえられなくなっているのか、一つの事実も根拠もあげられていません。
改定案づくりを推進してきた自民党、公明党の幹部たちは、少年犯罪、耐震偽装、ライブドア事件など、社会のありとあらゆる問題を教育のせいにして、「だから教育基本法改定を」といっていますが、これほど無責任な言い分はありません。
いま、子どもの非行やいわゆる学校の「荒れ」、学力の問題、高い学費による進学の断念や中途退学、子どもや学校間の格差拡大など、子どもと教育をめぐるさまざまな問題を解決することを国民は願っています。
しかし、これらの問題の原因は、教育基本法にあるのではなく、歴代の自民党政治が、基本法の民主主義的な理念を棚上げにし、それに逆行する「競争と管理の教育」を押しつけてきたことにこそあります。
政府の改定案のなによりも重大な問題は、これまでの、子どもたち一人ひとりの「人格の完成」をめざす教育から、「国策に従う人間」をつくる教育へと、教育の根本目的を180度転換させようとしていることです。
政府の改定案は、基本法に新たに第2条をつくり、「教育の目標」として、「国を愛する態度」など20におよぶ「徳目」を列挙し、その「目標の達成」を学校や教職員、子どもたちに義務づけようとしています。そのことは、改定案の第5条(義務教育)でも、第6条(学校教育)でも、さらに具体的に明記されています。ここにあげられている「徳目」それ自体には、当然のことのようにみえるものもあります。問題は、それを法律に書き込み、政府が強制することが許されるのかということにあります。
法律のなかに、「教育の目標」として詳細な「徳目」を書き込み、「○○の態度を養う」としてその「達成」が義務づけられ、学校で具体的な「態度」が評価されるようになったらどうなるでしょう。時々の政府の意思によって、特定の内容の価値観が子どもたちに強制され、子どもたちの柔らかい心が、政府がつくる特定の鋳型にはめこまれてしまうことになります。これが、憲法19条が保障した思想・良心・内心の自由をふみにじることになることは明らかです。
日本共産党は、子どもたちが市民道徳を培うための教育を重視し、その具体的な内容を「十の市民道徳」として提唱してきました。その一つに「他国を敵視したり、他民族をべっ視するのではなく、真の愛国心と諸民族友好の精神をつちかう」ことをかかげています。これらは憲法と教育基本法の平和・民主の原則からおのずと導き出されるものであり、「人格の完成」をめざす教育の自主的な営みをつうじて、培われるべきものです。市民道徳は、法律によって義務づけられ、強制されるべきものでは、けっしてありません。
すでに東京都では、政府が国会で「強制はしない」と言明していたにもかかわらず、これを乱暴に無視して、「日の丸・君が代」の強制がおこなわれています。「君が代」を歌わない先生を処分する、さらに「君が代」を歌わなかった生徒が多いクラスの先生を処分するという、無法な強制をエスカレートさせています。
基本法が改定されるなら、こうした強制が全国に広がるだけでなく、一人ひとりの子どもたちが「国を愛する態度」を、「君が代」を歌うかどうか、どのぐらいの大きさの声で歌うかで「評価」され、強制されることなどがおこりかねません。教育の場に、こんな無法な強制を横行させてはなりません。
現在の教育基本法は、教育の目標として、事細かな「徳目」を定めるということを一切していません。教育とは、人間の内面的価値に深く関わる文化的営みであり、その内容を法律で規定したり、国家が関与したりすることは、最大限抑制すべきだからです。その抑制をとりはらって、国家が「この教育目標を達成せよ」と命じることは、戦前・戦中、「教育勅語」によって12の「徳目」を上から子どもにたたきこみ、軍国主義をささえる人間をつくったやり方と同じではありませんか。
政府の改定案は、この法律が定める「教育の目標」を達成するために、教育にたいする政府の権力統制・支配を無制限に拡大しようとしています。
現在の教育基本法は、「教育の目的」について、「教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたっとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない」と定めています(第1条)。そして、この「教育の目的」を実現するためには、「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って」おこなうとし、国家権力による教育内容への「不当な支配」をきびしく禁止しています(第10条)。さらに、「学校の教員は、全体の奉仕者」として、国民全体に責任をおって教育の仕事にたずさわることを原則にしました(第6条)。これらは、戦前の教育が、国家権力の強い統制・支配下におかれ、画一的な教育が押しつけられ、やがて軍国主義一色に染め上げられていった、歴史の教訓に立ってつくられたものです。
ところが改定案は、「国民全体に対し直接に責任を負って」を削除し、「この法律及び他の法律の定めるところにより行なわれるべきもの」に置き換えています。「全体の奉仕者」も削っています。さらに政府が「教育振興基本計画」によって教育内容を、数値目標をふくめて詳細に決め、実施し、評価することができるとしています。要するに国が法律で命じるとおりの教育をやれ、政府が決めたとおりの計画を実行せよというのです。こうして改定案は、政府による教育内容への無制限な介入・支配に道を開くものとなっています。
それでは、どういう教育を強制しようというのでしょう。改定案が、子どもたちに強制しようとしているものは、「国を愛する態度」などの「徳目」とともに、競争主義の教育をもっとひどくすることです。
文部科学省におかれた中央教育審議会は、基本法を変えていちばんやりたいこととして、「振興計画」に「全国学力テスト」を盛り込んで制度化することをあげています。かつて1961年から64年にかけておこなわれた全国一斉学力テストは、子どもたちを競争に追い立て、学校を荒らし、国民的な批判をあびて中止に追い込まれました。最近になって、一部の地域で「いっせい学力テスト」が復活しましたが、同じような矛盾が噴出しています。これを全国いっせいに復活させようというのです。
もともと教育の自主性、自律性、自由を尊重するというのが、憲法第13条の幸福追求権、19条の思想・良心・内心の自由、23条の学問の自由、26条の教育を受ける権利など、憲法がもとめる大原則です。そのことは、国家権力の教育への関与のあり方が問われた「学力テスト旭川事件最高裁判決」も認めていることです。教育への権力的統制・支配を無制限に広げる基本法改定は、憲法の民主的原理を根本から蹂躙(じゅうりん)するものです。
教育基本法を全面的につくり変えるねらいは、どこにあるのでしょうか。
基本法改定は、憲法を変えて「海外で戦争をする国」をつくろうという動きと一体のものです。憲法改定をすすめる勢力のいう「愛国心」とは、「戦争をする国」に忠誠を誓えというものにほかなりません。そのために教育を利用しようというのです。それは、前文から、憲法と教育基本法とが一体のものであることを明記したことばを削除し、「平和を希求する人間」の育成という理念を取り去っていることからも明らかです。
また、日本の政府・財界は、教育の世界をいっそう競争本位にして、子どもたちを早い時期から「負け組・勝ち組」に分け、弱肉強食の経済社会に順応する人間をつくることを狙っています。その考え方は、「落ちこぼれの底辺を上げることにばかり注いできた労力を、できる者を限りなく伸ばすことに振り向ける」、「限りなくできない非才、無才には、せめて実直な精神だけを養っておいてもらえばいい」(三浦朱門・元教育課程審議会会長)などという発言にはっきりとあらわれています。
教育基本法改定は、「海外で戦争する国」「弱肉強食の経済社会」づくりという二つの国策に従う人間をつくることを、狙いとしています。日本共産党は、こうしたくわだてにきびしく反対します。
憲法と一体に制定された教育基本法は、日本が引き起こした侵略戦争によって、アジア諸国民2000万人以上、日本国民300万人以上の痛ましい犠牲をつくったことへの、痛苦の反省にたったものです。かつて天皇絶対の専制政治が、子どもたちに“日本は神の国”“お国のために命をすてよ”と教えこみ、若者たちを侵略戦争に駆り立てたことを根本から反省し、平和・人権尊重・民主主義という憲法の理想を実現する人間を育てようという決意に立って、日本国民は教育基本法を制定したのでした。
教育基本法の改悪は、子どもたちの成長に深刻な悪影響をおよぼすとともに、わが国の平和と人権、民主主義にとってきわめて重大な危険をもたらすものです。それは、憲法の平和と民主主義の理念に反する暴挙です。
このくわだてにたちむかい、阻止することは国民的な意義をもつ課題です。子どもと教育の現状に心を痛めるすべてのみなさん、平和と人権、民主主義を大切にしようと願うすべてのみなさん、ともに手をたずさえ、教育基本法の改悪をやめさせるために国民的運動を急速に起こそうではありませんか。
教育基本法改悪に反対して千八百人が十日、国会周辺で集会とデモ行進をおこない、「戦争をする国の人づくりを許さないぞ」と声をあげました。全教、教組共闘、子ども全国センター、教育基本法全国ネットワークの共催です。
日比谷野外音楽堂で開催の「教育基本法改悪阻止5・10総決起集会」で、全教の石元巌委員長は「改悪案は学校をいっそう息苦しくする。戦争をする人づくりを狙っていることは明らかだ」とし、廃案へ全力を尽くす決意をのべました。全労連の熊谷金道議長は「子どもをめぐる悩みや要求を出し合い、憲法、教育基本法を生かす運動につなげよう」と訴えました。
連帯あいさつした日本共産党の市田忠義書記局長は、政府の改悪案について、現行の教育基本法がもつ平和で民主的な人格の完成をめざす内容を投げ捨てるものだと批判。「愛国心」の達成度を「教育の目標」として競わせるなど憲法改悪と一体に「戦争する国」に忠誠をつくす国民をつくろうとしていると指摘し、国会内外で改悪をやめさせる共同を呼びかけました。
参加者は国会請願デモをしました。教師の父母と参加した助産師は「赤ちゃんをとりあげるとき、この子の将来は大丈夫かと不安です。戦争をしない世論づくりに頑張っていることが分かってよかった」と話します。
衆・参議員会館前では四百五十人が座り込み、「自民党・公明党が密室協議で作った改悪案は世論で打ち破ろう」と唱和しました。日本共産党の石井郁子副委員長があいさつしました。
しんぶん赤旗(2006年5月5日)
こどもの日 憲法と教育基本法を宝として
「学校の空気が嫌いだ」と、小学校入学後まもなく登校できなくなった少女。五年生になり再び学校に通いだすようになったのは、「なんだか、家にいるような、ふんわりとした、安心感のある授業」の雰囲気とかかわっているといいます。そんな“心配から安心へ”の記録を少女とお母さん、担任でまとめた本(『不登校からの旅立ち』旬報社)を読むと、教育という仕事は、子どもの内面の葛藤(かっとう)に働きかけ、自主性を促す精神的文化的な営みだと改めて実感させられます。
子どもと教育をめぐる困難と格闘しながら日々努力する全国各地のさまざまなとりくみに、励まされます。
平和を手渡したい
一九五一年五月五日、「われらは、日本国憲法の精神にしたがい」に始まる児童憲章が制定されたように、こどもの日は、国民主権、戦争の放棄、基本的人権を定めた憲法の精神と結びついています。
平和がなければ、「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する」(こどもの日の目的)こともできません。憲法九条を改定して、日本を、「海外で戦争する国」につくりかえる動きがあるもとで、子どもたちに平和な日本と世界を手渡すために、いっそう力をつくしたいと思います。
児童憲章と同じように、「われらは、日本国憲法」で始まる法律があります。
教育の目的や方針などを定めた教育基本法です。政府は、この教育基本法の冒頭にある「日本国憲法」を削除する改定案を国会に提出しています。
現行法の始まりは次の文章です。
「われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである」
憲法がめざす平和的で民主的な国づくりは、国民の不断の努力が必要であり、それは教育の力にかかっています。
政府の改定案は、ここから、「日本国憲法を確定し」と、憲法の「理想の実現は、根本において教育の力にまつべきもの」を削りました。
憲法と教育基本法には、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し」(憲法前文)、教え子たちを戦場に送った戦争教育の反省が込められています。
こうした反省の上にうちたてられた教育基本法の民主的原則を破壊しようというのが、政府の改定案です。
現行法がきびしく禁じている国家権力による教育内容への介入を公然とすすめる改変が行われようとしています。
たとえば、不登校からの子どもの立ち直りです。待つこと、安心して生活すること、本人が決めること、自己肯定感を育てること。こうしたことを大切にして、さまざまな場で子どもたちを支援しています。しかし、法律で不登校を何日までに何割減らせと命じられたらどうでしょうか。各地で行われている教育の営みがぶちこわしになってしまいます。
改悪を許さない
教育は、人類が長い歴史のなかで生み出した知識や技術、知恵と先人の努力を子どもたちに伝え、人格を形成する精神的文化的な仕事です。子どもの発達に即した学びをたすける責任をはたすために、お国のための教育への改悪を許すわけにはいきません。
しんぶん赤旗(2006年4月29日)
教育基本法改定案
愛国心入れるよこしまな狙い
小泉内閣が、今国会での成立をねらって、教育基本法改定案を閣議決定しました。
教育基本法は、「日本国憲法の精神に則り、教育の目的を明示」(教育基本法の前文)したものです。こんな大事な問題を、国会会期の残り三分の一という短い期間で一気に通すというやり方はあまりにも乱暴です。
教育内容への政治の介入
改定案の中身が重大です。現行の国民主権にたった国民の教育権を改定案は否定して、国家による「教育権」におきかえています。
第一〇条の改変です。現行法は、「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである」(第一〇条一項)と明記しています。改定案は、ここにある「国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである」を削除して、その代わりに、教育は「この法律及び他の法律
の定めるところにより行われるべきもの」などを加えています。
現行法にある「国民全体に対し直接に責任を負って」というのは、教育が、その時々の政治的官僚的支配のもとにおかれるのではなく、子ども・保護者・住民など国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきだということです。これは、時の政治的支配に従って、教え子たちを戦場に送った、戦前の戦争教育の反省にたって、うちたてられた民主的原則です。
改定案が、この民主的原則を削除して、“法律の定め”におきかえることは、教育内容への行政の介入を法律で規定することになります。
現行法は、民主的道徳についてもその基礎を提示しています。
「個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間」(前文)、「平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたっとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民」(第一条)
日本共産党は、民主的道徳を身につけるための教育を三十年も前から一貫して重視してきました。その内容を、「人間の生命、たがいの人格と権利を尊重し、みんなのことを考える」「真実と正義を愛する心と、いっさいの暴力、うそやごまかしを許さない勇気をもつ」「社会の生産をささえる勤労の重要な意義を身につけ、勤労する人を尊敬する」など十項にまとめてきました。これらは、憲法と先にあげた教育基本法の精神から出てきます。その十項目に「他国を敵視したり、他民族をべっ視するのではなく、真の愛国心と諸民族友好の精神をつちかう」ことをあげています。
改定案は、教育の目標に、“国を愛する態度を養う”ことを盛り込みましたが、現行の教育基本法から当然導かれる内容をあえて書き込むところに、よこしまなねらいを感じないわけにはいきません。
憲法改悪と結びついて
教育基本法の改定は、憲法九条の改定と連動しています。主権者として一人ひとりの子どもの「人格の完成」を目的とする教育から、憲法改悪がめざす「海外で戦争する国」にふさわしい人間を育て上げる教育への変質をはかろうとしています。こうしたねらいをもって、教育基本法に“国を愛する態度”が盛り込まれれば、第一〇条改定とむすびついて、特定の政治的立場にたつ「愛国心」を教育現場におしつけ、憲法に保障された内心の自由を侵害する重大な危険をもたらすことになります。
教育基本法改悪を許さないたたかいを広げていきましょう。
しんぶん赤旗(2006年4月16日)
教育基本法与党合意 国が教育しばること許さない
与党が教育基本法の「改正」内容を合意し、これをうけて政府は法案づくりにはいりました。こんなやり方と内容でいいのか。いちばん困るのは子どもたちです。
愛国心を押しつけ
みなさんの毎日にとても関係のある学校や図書館や児童館、家庭などでの教育のおおもとを定めた、「教育の憲法」といわれる大切な法律があります。その法律は、みなさんをふくめた国民の納得のいく話し合いできめていくのが当たり前です。
ところが、与党のごく少数の人たちが三年間、新聞記者も入れない場所で、ごく少数の役人の人と一緒に、どう変えるかを議論し、「もう結論が出た」といって、連休がおわったら国会で法律を変えてしまう、といいだしました。
内容もたいへんなものです。
一つは、新聞やテレビでも「心配だ」と声があがっている愛国心です。正確にいうと「国を愛する態度」をみんなに持たせることを学校の目標にするのです。学校はみなさんの「態度」を点検し、問題があると判断すれば、「態度」を改めるよう指導することになります。指導しやすいように、なにか一律の「態度」が基準として押しつけられるでしょう。
東京都の学校では「君が代」斉唱が基準です。歌わないと先生を処分で脅して「君が代」を大きな声で歌うことを求めています。こうするように校長先生を動かしてきた東京の教育委員の一人は「事実上、教育基本法は改正した」と威張るように言っています。
しかし、「国を愛する態度」をどう示すかは、一人ひとりでみんなちがいます。示したくないと思う人もいます。それを点検されたら、おとなだっていやです。憲法では一人ひとりの「良心の自由」が認められ、そんなことは子どもにもおとなにもしてはならないことになっています。
それから、いまの法律では、政府や政治家は、教育の内容にあれこれ口を出してはならないことになっています。みなさんのおじいさん、おばあさんの時代、政府が教育内容を統制して、「日本は正しい戦争をしているんだ」と子どもに教えてひどい戦争になりました。そのことを反省してきめられた大切な原則です。
与党は法律をかえて、その原則をこわそうというのです。「教育振興基本計画」という名前の制度をつくり、教育で何をするかを政府が決めるようにするからです。その「計画」で政府がまずやりたいと言っているのが、先生たちが心配している「全国学力テスト」です。すでに学力テスト競争をはじめた学校では、先生たちには「平均点を何点あげろ」とノルマが課せられ、「平均点を下げるから」とテストの日に学校を休む生徒もでて、「なんでこんなことをするのか」と涙ながらに怒っているお母さんもいます。法律が変われば、こんなことがどんどん押しつけられます。
変える必要ありません
私たちおとなは教育に関心をもち、よくしたいと思っています。一人ひとりの子どもが大事にされるように少人数のクラスにすることや、みんながよく分かるように勉強を教えることや、体罰やえこひいきのないあたたかい学校をつくることなどです。そのためには教育基本法をかえる必要はまったくありません。
教育をよくすることに背をむけて、大切な法律を国がみなさんや教育をしばる法律にするなど許せません。多くのおとなが立ち上がって、そんなことをさせないようにします。