2006年10月21日 研修義務化 講義レベルアップで 08年度にも
研修義務化 講義レベルアップで 08年度にも
文部科学省は大学・短大教員の講義のレベルアップのため、全大学に教員への研修を義務付ける方針を固めた。来年度に大学設置基準と短期大学設置基準を改正し、早ければ08年4月にも義務化する。研究中心と言われる日本の大学で、学生への教育にも力点を置く必要があると判断したもので、「大学全入時代」を迎え、学生の質の低下を懸念する経済界からの要請も背景にある。具体的な研修内容などは今後、中央教育審議会で検討する。【高山純二】
対象となる教員は大学約16万2000人、短大約1万2000人(05年度現在)。
教員の教育内容や方法の改善のため、各大学で組織的な研究や研修をすることを「ファカルティー・ディベロップメント」(FD)と呼ぶ。文科省は99年9月、大学と短大の設置基準を改正し、FDの努力義務規定を盛り込んだ。これによりFDを導入する大学は年々増加し、04年度は全大学の約75%に当たる534大学が実施した。
しかし、各大学で現在行われているFDの内容は講演会の開催や研修会、授業内容の検討会など座学中心で、実効性や効果を疑問視する声もある。また07年度に大学・短大の志願者数と定員数が同じになる大学全入時代を控え、経済界には「企業で戦力として使える人材となるように教育してほしい」と、大学教育の充実を求める声も強い。
今後、具体的な研修内容は中教審で審議されるが、各大学ごとに建学の精神や求められる教員像が異なっており、「統一のガイドライン作成は慎重にすべきだ」という声もある。
一方、大学院は既にFDが努力義務規定から義務規定に改正され、来年4月から義務化される。
■FD(ファカルティー・ディベロップメント) ファカルティーは「教員」、ディベロップメントは「開発」の意。「大学教員資質開発」などと訳されている。米国が起源とされ、英国ではSD(スタッフ・ディベロップメント)と呼ばれる。文科省は「教員が授業内容・方法を改善し向上させるための組織的な取り組みの総称」をFDとしている。