安倍晋三総裁選公式サイト(リンク)
「基本法」で与野党譲らず、“教育国会”は激戦必至
「安倍政権」が始動する第165臨時国会が26日に召集される。
先の通常国会から先送りされた重要法案が山積する中、首相に就任する安倍晋三・自民党総裁は教育基本法改正案を最優先課題と位置づけている。野党は強く抵抗する構えで、早くも「教育国会」の様相を呈している。この問題を担う文部科学相らの人事への関心も高まっている。
与党側は22日、81日間という長期の会期案を改めて野党側に示した。重要法案を一本でも多く成立させる狙いだが、民主党は「教育基本法改正案の採決をしないことを担保しなければ応じられない」との立場を崩さず、対決姿勢を強めている。
安倍氏は20日の総裁就任時の記者会見で、教育基本法改正案を臨時国会での「最重要法案」と位置づけたうえ、もう一つの優先課題としてテロ対策特別措置法の延長を挙げた。その他の法案に関しては、「国会日程もあり、新執行部と相談しながら優先順位を決める」として、最終的に来年の通常国会以降に先送りする可能性も排除していない。
教育基本法については、政府提出の改正案と、民主党提出の対案が継続審議となっている。安倍氏周辺は「安倍氏は総裁選で教育再生・改革を唱え、具体的な提案も行った。教育基本法を決着させないと、具体策に着手できない」として、政府案で押し切る考えをにじませる。
これに対し、民主党幹部は「政府案の採決は断固拒否する」としたうえ、与党との修正協議についても、「小沢代表はそうした妥協を好まない」と否定的だ。このため、与党内では、早くも「野党が応じないなら、与党だけでも政府案を採決するしかない」との声が出ている。
こうした情勢を受け、新政権の人事では、文科相と教育担当の首相補佐官にも注目が集まっている。
文科相については、自民党内に「文相経験者が適任だ」という主張と、「安倍氏の教育改革は文科省の考え方と隔たりが大きいので、むしろ文教族以外の方がいい」との意見がある。
また、首相官邸主導を目指し、上限いっぱいの5人を置く予定の首相補佐官については、「文科省を抑え込めるベテランを文科相に置き、安倍氏と考えの同じ若手を教育担当補佐官とするのが最良だ」(安倍氏周辺)との案が浮上している。
読売新聞 2006年9月24日
教基法改正で平行線、臨時国会会期を採決へ
衆院議院運営委員会は22日の理事会で、臨時国会の会期を12月15日までの81日間とする与党提案について協議したが、教育基本法改正案の取り扱いをめぐり与野党の見解が折り合わず、合意に至らなかった。与党側は26日の本会議と、それに先立つ議運委で採決、与党の賛成多数で会期を決める構えだ。佐田玄一郎委員長は理事会後、記者団に「採決で決めざるを得ない」と述べた。
29日に新首相の所信表明演説を行い、10月2、3の両日に各党の代表質問を行うという与党提案については、あらためて協議する。
竹中平蔵総務相の参院議員辞職や岐阜県庁の裏金問題をめぐり、民主党が求めている臨時国会召集前の閉会中審査についても引き続き協議する。
産経新聞 2006年9月22日
憲法改正は盛り込まず 自公が政策合意の骨格
自民、公明両党は21日、自民党総裁に選出された安倍晋三官房長官が26日召集の臨時国会で新首相に指名される見通しとなったことを受け、安倍政権での連立基本政策合意の骨格を固めた。公明党に配慮し、安倍氏が党総裁選で掲げた憲法改正は盛り込んでいない。
安倍氏と公明党の次期代表に内定している太田昭宏幹事長代行が25日に会談し、正式合意する。
政策合意の骨格は、重点政策として、通常国会で継続審議となった教育基本法改正の臨時国会での成立に加え、政府の経済財政運営の基本方針(骨太の方針)に盛り込んだ歳出削減や成長戦略を着実に進め、小さな政府路線を目指す方針を明記した。
外交では、日米同盟と国連を中心とする国際協調を図ると同時に、中国や韓国との関係改善に力を注ぎ、アジア外交重視の姿勢を示している。
一方、安倍氏が総裁選で示した憲法解釈の変更による集団的自衛権行使容認や、今後5年をめどに目指すとした新憲法制定の方針には触れなかった。このほか(1)失業や倒産からの「再チャレンジ支援」政策の推進(2)少子化対策として、女性が働きながら子育てができる環境の整備−などを掲げた。
共同通信 2006年9月21日
安倍政権との対決確認 野党、共闘へ党首会談も
民主、共産、社民、国民新の野党4党は21日午前、国会内で国対委員長会談を開き、26日に発足する安倍政権について「小泉路線の継承であり、アジア外交の停滞や格差拡大の問題を解消できないのは明らかだ」として、臨時国会で対決姿勢を強めていくことで一致した。野党共闘態勢の構築に向けて、新首相の29日の所信表明後、早期に党首か幹事長会談を開く。
自民党の安倍晋三新総裁が最優先に取り組む考えを示した教育基本法改正については政府、与党案の採決に強く反対していくことを確認。与党が提案した臨時国会の81日間の会期幅を認めないことや野党国対委員長会談の定例化も決めた。
会談で民主党は党首討論について「10月の衆院補選前に実現するよう働き掛けていく」と伝えた。民主党の渡部恒三、共産党の穀田恵二、社民党の重野安正各国対委員長、国民新党の亀井久興幹事長らが出席した。
共同通信 2006年9月21日
教育改革で諮問会議新設・安倍氏、講演で構想表明
安倍晋三官房長官は14日午前、自民党本部で開いた党青年局主催の総裁選討論会で講演し、首相に就任した場合、教育改革を議論する首相直属の諮問会議を新設する方針を明らかにした。教員免許の更新制など改革の具体策については反発があっても推進する決意を強調。大学の入学時期を9月にずらし、その間を奉仕活動に充てる改革案も提唱した。
教育改革は安倍氏が政権構想で重要課題と位置付けるテーマ。講演では「英知を結集していく必要がある。教育の専門家、国際的な高い見識を持った方に集まってもらい教育再生を議論する」と述べて諮問会議設置の方針を示した。
教育改革については「大きな反発があるかもしれないが、もう待ったなしだ。しっかりと前に進めていく」と強調。「教員に向かない先生がいるのも事実で、免許更新制度はしっかり取り入れなければいけない」と訴えた。
日本経済新聞 2006年9月14日
「英知結集し教育再生」 安倍氏、公開討論会で講演
安倍晋三官房長官は14日、党本部で開催された公開討論会で、政権公約の柱として掲げている「教育の再生」の具体的な進め方について、「まずは教育基本法改正し、国内外の英知を結集して再生について議論してもらう。それに従って議論し法改正を行っていく」と述べ、「教育改革推進会議」(仮称)を新設したうえで関連する法制度を改正していく考えを示した。教員免許への更新制導入や学校・教員の評価制度の新設、格差を固定化しないための公教育の再生などに取り組むことも表明した。
また、靖国神社参拝について「行くか行かないか表明しない」としていることについて、「『参拝するな』と言う人が『はっきりしろ』という。これはどういうことか。中国、韓国が嫌がることを言えというのに等しい。底意について変だなと思っている。『参拝しろ』という人はかなりの人が(表明しないことに)理解を示してくれている」と指摘した。
討論会には国会議員のほか各都道府県連の青年局の代表など200人が参加。午後には谷垣禎一財務相、麻生太郎外相もそれぞれ講演する。
産経新聞 2006年9月14日
安倍氏、公開討論会で「教育の再生」進め方示す
安倍晋三官房長官は14日、党本部で開催された公開討論会で、政権公約の柱として掲げている「教育の再生」の具体的な進め方について、「まずは教育基本法改正し、国内外の英知を結集して再生について議論してもらう。それに従って議論して、法改正を行っていく」と述べ、「教育改革推進会議」(仮称)を新設したうえで関連する法制度を改正していく考えを表明した。安倍氏はまた、教員免許への更新制導入や学校・教員の評価制度の新設、格差を固定化しないための公教育の再生などに取り組むことを表明した。
衆院の比例代表候補の選定基準については、「今は確たるルールがないが、国民に選考基準をわかりやすく説明できるかたちをつくりたい」と述べた。
安倍氏は、靖国神社参拝について「行くか行かないか表明しない」としていることについて、「『参拝するな』という人が『はっきりしろ』という。これはどういうことか。中国、韓国が嫌がることを言えというのに等しい。底意について変だなと思っている。『参拝しろ』という人はかなりの人が(表明しないことに)理解を示してくれている」と指摘した。
北朝鮮による日本人拉致事件に関しては「この問題に落とし所はないという基本を変えてはならない」と強調した。このほか、子育て支援策や道州制などの推進にも強い意欲を示した。
討論会には国会議員のほか各都道府県連の青年局の代表など200人が参加。午後には谷垣禎一財務相、麻生太郎外相もそれぞれ講演する。
産経新聞 2006年9月14日
安倍官房長官:「大学9月入学も」 「教育」で有識者会議−−総裁選討論会
安倍晋三官房長官は14日午前、自民党本部で開かれた青年局主催の総裁選挙公開討論会で教育改革について「教育再生には英知を結集する必要がある」と述べ、「安倍政権」の発足後に首相直属の有識者会議を早期に設ける考えを明らかにした。具体的な検討項目として、大学の入学時期の9月への変更や入学条件としてのボランティア活動の義務化を挙げた。
安倍氏は現在の4月入学制の変更について「大学の入学を世界の大体の学校に合わせて9月にする必要がある」と指摘。入学時期の変更に伴う高校卒業から大学入学までの半年間については「ある程度ボランティア活動をしてもらうことも考えていく」と語った。【犬飼直幸】
毎日新聞・東京 2006年9月14日
「扇動は非常に危険」/民主小沢代表が安倍氏批判
再選を決めた小沢一郎民主党代表は13日、党本部で共同通信など報道各社のインタビューに応じ、安倍晋三官房長官の日中国交正常化をめぐる発言に関連し「偏狭な目的をもってナショナリズムをあおるのは非常に危険だ」と厳しく批判した。
小沢氏は「安倍政権」発足を念頭に、臨時国会では党首討論の回数を増やすよう自民党側に働き掛ける方針を言明。党首討論では新首相に対し外交姿勢や歴史観などを明確にするよう迫る考えを示すなど、与党との対決姿勢を鮮明にした。来夏の参院選で与党を過半数割れに追い込めなかった場合の引責辞任の可能性は否定した。
共同通信 2006年9月13日
【天木直人 ニッポン外交の迷走】 改革と対決に疲れた小泉ファンが安倍を潰す
やがて誕生する安倍晋三自民党総裁が、「集団的自衛権は認められるべきだ」とか、「教育基本法の改正は最優先課題だ」などとやたらに訴えている。それを見て護憲勢力や平和主義者は「小泉よりも危険なタカ派だ」と気色ばむ。
しかし、その懸念には及ばないだろう。ズル賢い小泉首相と違って、バカ正直で政局に未熟な安倍氏は、愛国的「信念」を訴えれば訴えるほど行き詰まり、小沢民主党に政権を奪われることになる。安倍新政権の成否のカギは、小沢民主党に先駆けて小泉政治を否定することができるかにかかっている。
小泉政権の末期にきてこの5年半は一体何を残したのかと語られるようになった。確かに今でも高支持率を保っている。それにもかかわらず、小泉政権の政策の評価をめぐる世論調査では点数が辛い。このことは、小泉首相の支持者が、必ずしも小泉首相の政策を理解し、評価して、支持したわけではないことを示している。
対決をことさらに煽り、抵抗されても屈しないという「改革者」を演じ続けたパフォーマンスが小泉ファンをつくったのだ。小泉首相の懐刀である飯島勲秘書官がこの点を誇らしげに吹聴しているらしい。「日本の新聞が全部批判しようとも、30%は小泉個人の固定ファンである」と(9月8日付、毎日新聞)。政治に無知、無関心な若者や、生活に困らないミーハーのマダムたち、そして権力に追従して恩恵にあずかろうとする現実主義者たち、彼らこそが30%の「固定ファン」なのだ。「代わりになる首相がいない」などという消極的な理由から小泉首相を支持した国民がそれに加わって5割前後の支持票を維持し続けた、それが小泉政権の正体である。
しかし、そういう「固定ファン」の多くは、小泉首相の降板とともにあっさりと小泉政治を忘れてしまう。その一方で多くの国民は5年半の小泉劇場にうんざりし始めている。世論の大勢は、もはや国論を二分する小泉的論争に疲れ、暮らしを楽にしてくれる、平和な政治を急速に求めているのだ。
この流れの変化に気づかずに、一部の保守、愛国者におだて上げられて事大主義的な外交を進めようとしたら、間違いなく小沢民主党に国民の支持を奪われる。安保闘争を乗り越えた祖父・岸信介のDNAを受け継ぎたいとか、総理を目前にして病気に倒れた父・安倍晋太郎の悲願を果たしたいなどというこだわりにとらわれるようでは、政権を長続きさせることは難しいだろう。
ゲンダイネット 2006年9月11日
『安倍氏ブレーン』どんな人?靖国、拉致、教育問題…
自民党総裁選が8日告示されたが、安倍晋三官房長官の当選は確実な情勢。その安倍氏を側面から支えるブレーンは「5人組」と呼ばれる保守系の論客たちだといわれる。どんな人物なのか。彼らの思想と経歴を検証すると、安倍氏が上梓(じょうし)したベストセラー本「美しい国へ」(文芸春秋)の原型が、くっきりと見えてくる。 (竹内洋一、山川剛史)
六月三十日。都内のホテルの一室に、安倍氏側近の一人、下村博文衆院議員を囲み、四人の学者・有識者が集まった。メンバーは、伊藤哲夫・日本政策研究センター所長、東京基督教大の西岡力教授、福井県立大の島田洋一教授、高崎経済大の八木秀次教授。ここに京都大の中西輝政教授を加え、安倍氏のブレーン「五人組」と称される。
この日は、靖国神社参拝問題などを議論し、「安倍氏は参拝に行くとも行かないとも明言しない」とする基本スタンスが確認された。出席者の一人は「以前から話し合っていたことで、その場で対処方針を決めたわけではない。この段階で安倍さんが四月に靖国神社に参拝していたことも知らなかったし、話題にのぼらなかった」と話す。
当の安倍氏は、四月の参拝が八月に明らかになった際に、参拝したとも、しなかったとも認めなかった。ブレーンの考え方を踏まえた対応のようにも映る。
■思いっきり保守5人組
関係者によれば、この五人のメンバーは今春からこの日までに三回程度、一堂に会し、「安倍政権」の課題について議論してきた。安倍氏本人にも政策的な助言をしてきたという。五人のブレーンたちは、どんな考え方を持ち、どんな活動をしてきた人物なのか。
伊藤氏は一九八四年に発足した保守系シンクタンクの所長。月刊誌「明日への選択」を発行し、憲法、歴史、教育、外交・安全保障など幅広い問題に保守の立場から提言を続けている。伊藤氏に「安倍政権」への期待を聞くと、「私は有識者でもないし、取材には一切応じないことにしています」とだけ話した。
伊藤氏は同誌一昨年五月号で「『個』と『自由』なるものは、家族や社会や国家という『共同体』の中でこそその内実を得るのであり、その意味でもまず最も基本的な存在である『家族』の意義に目覚めなければならない」と主張。安倍氏も近著「美しい国へ」の中で同様に家族の価値を強調している。
安倍氏を支持する民間団体「『立ち上がれ!日本』ネットワーク」の呼び掛け人の一人でもある。呼び掛け人には、中西氏、西岡氏、八木氏も名を連ね、「草の根」保守の結集を目指すとしている。八月末には都内で「新政権に何を期待するか?」と題したシンポジウムを開き、三百五十人を集めた。
西岡氏は、「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)」の常任副会長として、安倍氏と共同歩調を取ってきた。ただし、「安倍さんとは救う会の副会長として会うことはあるが、直接ものを聞かれたこともないし、助言をしたこともない。下村議員や伊藤さんを介した関係で、決してブレーンではない」と話す。
島田氏も「救う会」の副会長で、「安倍首相」にはこう求める。
「北朝鮮への国際的な圧力を高めることが大事だ。弾道ミサイルを発射した北朝鮮に対し、国連安保理の非難決議が採択されたのは、日本がリーダーシップを発揮したからで、外交面で安倍さんの実力が証明された。米国も日本が動かなければ、中東問題を優先しがちだ。安倍さんには、同盟国・米国を引っ張って北朝鮮への制裁決議を実現してほしい」
さらに、いわゆる「従軍慰安婦」の強制連行を認めた河野談話を修正すべきだとして、「安倍さんにも直接、何度も言っている」と話す。「北朝鮮は、日本は拉致被害者より多くの従軍慰安婦を連行したと主張する。これに対し、日本政府は『人数が過大だ。すでに謝罪している』と反論しているが、これでは相手の主張を認めているようなもので、反論として最悪だ」
自身を含むメンバーが「ブレーン」と呼ばれることについては「安倍さんは常に自分の考えを自分の言葉で表現している。ブレーンというのは大げさ」と控えめだ。同時に「安倍さんは助言に対してビビッドで早い反応を示す。慰安婦問題でどこまで修正に踏み込むか、重要なポイントだと思う」と期待も寄せる。
八木氏は憲法や政治思想が専門で、「新しい歴史教科書をつくる会」の会長も務めた。主な著書には「人権」にまつわる日本の現状を批判した「反『人権』宣言」(筑摩書房)などがある。
学者や教育関連団体、議員、俳優などを発起人に十月に正式発足する「日本教育再生機構」の準備室代表でもある。同機構はすでに「安倍政権の教育再生政策に期待し、全面的に協力」する立場を表明している。
同機構準備室は(1)伝統文化の継承と世界への発信(2)心を重視する道徳教育の充実(3)男女の違いを尊重し、家族を再興−など五つを基本方針に掲げている。
■皇位継承問題『女帝』に慎重
皇位継承問題では昨年五月、有識者会議で意見を求められ、「女帝」容認論を「天皇制廃絶論者の深謀遠慮」と批判。「初代の染色体は男系男子でなければ継承できない。(歴代の天皇は)一度の例外もなく男系継承されてきた。事実の重みがある」と主張した。
ちなみに、安倍氏も「女帝」には慎重な立場だ。
一方、国際政治が専門の中西氏も、「現在の日本は歴史的衰退期にある」との危機感から、健全なナショナリズムに基づいた教育改革ひいては国家観の形成が必要だと説き続けている。
著書「日本の『敵』」(文芸春秋)では、日本の新しい国家目標に「歴史と伝統を重んじ、自立する日本」を挙げており、「精神面での誇りと自立意識の回復なしに、国際社会において責任感を伴った本当の協調と共存も不可能だ」と主張している。
安倍氏も日本の将来像として「自立する国家」「自信と誇りのもてる日本」を掲げており、重なる部分が多い。
国家観の形成とは切り離せない教育についても、中西氏は積極的に発言。三年前、中央教育審議会基本問題部会で意見を求められ、「教育基本法は、国民が国や社会の安全や危機管理に義務を負うことが前提になっておらず、日本のアキレスけんになる」と批判した。
最近まで「つくる会」の理事を務め、八木氏を中心とする日本教育再生機構にも代表発起人として名前を連ねている。
<デスクメモ> 総裁候補の三人は、いずれも涼しげな面立ちで、アクがない。毛並みのいいサラブレッドばかりだからか。一昔前の脂ぎった大物政治家たちはいまや希少種なのだ。政治家の家系出身でない総理を探すと、実に四代前の村山富市首相までさかのぼる。「格差社会」をつくったのが、どんな人たちかよくわかる。 (充)
東京新聞 2006年9月9日
自民党 総裁選の風景 軍歌酒場の“安倍親衛隊”
自民党総裁選は八日、告示されました。自民党内は安倍晋三官房長官が圧勝する流れです。憲法と教育基本法の全面改悪を真正面から主張する党内最右派に位置する政治家・安倍氏に雪崩をうつ“自民党のいま”を探りました。(総裁選取材班、随時掲載)
東京・銀座七丁目の路地裏通り。店の入り口右わきに日章旗。軍歌酒場「F」――。
八月二日夜、自民党の若手議員の「軍歌をうたいつぐ会」が企画されました。案内状に「8月15日靖国神社参拝後の唱和のための軍歌演習を兼ねた暑気払いです」。
終戦記念日を前に軍歌を高歌放吟する自民党若手議員たち。自民党内で“安倍青年親衛隊”と評されます。軍用迷彩服を着用し、モデルガンを手にするのが趣味というメンバーもいます。
初当選組
軍歌を歌う若手議員は昨年総選挙で初当選した議員(八十二人)の半数でつくる「伝統と創造の会」(会長・稲田朋美衆院議員、四十一人)の一部メンバーでした。同会は今年二月十一日に旗揚げ。「自由民主党の立党の精神に立脚し、誇るべき伝統や国家の品格を守りつつ新たな日本を創造する」(設立趣意書)を掲げます。
メンバーの歴史認識を最近の発言からみると――。
稲田議員「(靖国神社問題は)憲法改正に伴いこれから自衛戦争や国際協力戦争で亡くなった人が出たら、どこで慰霊するのかも含めて議論が必要」(福井新聞八月十五日付、加藤紘一自民党元幹事長との対談)、「靖国神社というのは不戦の誓いをするところではなくて、『祖国に何かあれば後に続きます』と誓うところでないといけないんです」(月刊誌『WiLL』九月号)
赤池誠章議員「(日本の歴史は)戦前・戦後というようにわけられるものではない」「(靖国参拝に反対する中国、韓国とは)付き合わなければいい」「中国を封じ込めるのに必要なのは軍事力ですよ」(同誌)
右派結集
改憲―軍事力背景の外交―自衛戦争―戦死者―戦争へ志願する国民精神をはぐくむ戦争神社と教育が必要、というメンバーの発想には危うさと右翼的な冒険主義がむき出しです。戦前と戦後を分かつ平和と民主主義という戦後国民の常識を拒絶する響きがあります。一昔前なら自民党内でも“極右派”と呼ばれる異端の政治潮流に属する考えです。
若手右派議員は“安倍的”政権を政治信条とイデオロギーから熱望します。八月二十六日の自民党北信越ブロック大会で総裁選予定者討論の司会者をつとめた稲田議員は、その感想をこう語っています。「一番感慨深く聴いたのは、安倍官房長官が政策として戦後体制の是正と自主憲法の制定をまっさきに掲げられたことです。誰もできなかったことに安倍官房長官は挑戦しようとされているのです」(八月二十八日、伝統と創造の会『会長通信』二十二号)
こうした流れに「平和を願い真の国益を考え靖国参拝を支持する若手国会議員の会」、国家基本政策協議会、「日本の領土を守るために行動する議員連盟」、「海外派遣自衛隊員を支援する国会議員の会」、日本会議国会議員懇談会、拉致議連など党内右寄りグループが合流、総裁選を通して自民党内の空気を急激に“国防色”に塗り替えています。
「危険思想派」が党内席巻
自民党には改憲右翼タカ派の潮流は結党以来存在しました。一九六〇年代には岸信介元首相の側近議員らが中心になった素心会(千葉三郎元労相ら)、七〇年代に血判状で結束した青嵐会(中川一郎、石原慎太郎両氏ら)、八〇年代には国家基本問題同志会(亀井静香氏ら)などが改憲や日中国交正常化反対、教科書歴史問題是正、靖国参拝推進などを掲げて活動しました。
とはいえ、その行動と主張にはタカ派保守の節度と歯止めが多少なりとも感じられました。「国家基本問題同志会には軍国主義者は一人もいない。『二度と再び戦争を起こさない』という一致した信念で……」(『国家基本問題同志会』八八年四月刊)。言葉の上では少なくとも軍国主義を否定し、不戦の立場をうたいました。
殺気立つ空気の中
ところが――。いまや靖国問題で小泉首相の参拝を批判すると「媚中(びちゅう)派」「国賊」と激しいバッシングの嵐。北朝鮮がミサイル発射すれば敵地攻撃を、全面制裁をと、とめどもない過激な言葉が若手タカ派議員からためらいもなく発せられる――。
靖国神社問題で異論を唱える加藤紘一元幹事長の実家が八月十五日に右翼団体幹部の放火テロに見舞われました。
青嵐会の生き残り議員の一人である山崎拓元副総裁は月刊誌『論座』八月号で、タカ派と呼ばれてきた同氏自身さえ党内右派から「国賊扱い」と嘆くほどです。山崎氏は、自民党内の潮流について若手タカ派議員ら危険思想派一割、良識派三割、残りが大勢に流れる思考停止派と色分け。核武装論などを平然と主張する危険思想派が党内を引き回し、席巻しつつある――と同誌上で憂えていました。
異論を許さない強圧と好戦色とがないまぜになった殺気立つ空気を背景にしながら、安倍晋三氏が総理総裁の有力候補に浮かび上がってきたというのが、これまでの経過です。
消えるリベラル色
自民党の閣僚経験者は語ります。「かつて社会民主主義的な考えに近い議員も、護憲派議員も戦犯右翼といわれた議員も同居する自民党だった。幅広い国民の声を吸収でき、自民党長期政権の基盤だった。それが最近のほぼ十年で様変わり。軍事力信仰が強くなり、排外的な空気が覆う。それでいてアメリカにまるっきり弱い。硬直的な超保守政党に変わった感じ。小泉政権五年が拍車をかけた。一昔前の自民党ならば超過激保守主義者の安倍晋三君は総裁候補にはなれなかった」
総裁選に立候補した谷垣禎一財務相も「自民党は(幅広さがなく)細くなったといわれる。幅広い国民の声を十分吸収する政党であることを、この総裁選で示さなくてはいけない」(七日夜、東京都内のパーティーで)と語っています。
確かに、自民党結党一年後の一九五六年十二月の総裁選で靖国神社廃止論を唱えリベラル政治家といわれた石橋湛山氏が占領体制打破、改憲を掲げる戦犯容疑者だった岸信介氏(安倍氏の祖父)を破って総裁に就任した歴史もありました。一九九一年、九三年の総裁選では護憲派といわれた宮沢喜一氏、河野洋平氏(現衆院議長)をそれぞれ総裁に選びました。
いまや九三年総選挙以後の当選議員が過半を占める自民党内では知る議員も少ない故事となってしまっています。
二〇〇六年総裁選を通じて、国民が広く知る従来までの自民党とは似て非なる“右翼政党・自民党”への変質が同時進行しています。
しんぶん赤旗 2006年9月9日
安倍政権でこうなる 首相主導で「教育再生」
自民党総裁選で優位に立ち次期首相が確実視されている安倍晋三官房長官は「教育再生」を最重要課題に掲げている。首相直属の「教育改革推進会議」(仮称)を10月にも設置して官邸主導の教育改革を進める考えだ。安倍政権で教育はどう変わるのか−。安倍氏側近の下村博文衆院議員ら3人が参加して8月29日に開かれたシンポジウム「新政権に何を期待するか?」から拾った。
≪教員評価を厳格化…下村博文衆院議員≫
40万冊を突破した安倍氏の著書『美しい国へ』でも教育再生は最重要課題として扱われている=東京・丸の内の丸善本店(撮影・古厩正樹)
安倍さんの教育改革は官邸機能を強化して行われる。文部科学省に任せていてはピントがずれているし、時代の流れに合っていない。内閣ができたらすぐに首相主導の「教育改革推進会議」を設置して、来年の3月くらいまでに結論を出す。後は文科省に投げて中教審で議論してもらうにしても、根本的なものは作っていくということを考えている。
テーマは10くらいあるが、例えば、子供たちに、1人で生きているのではなく、社会みんなで助け合って生きているのだと実体験してもらうために、奉仕活動、ボランティア活動を必修化しようという案がある。
高校卒業は3月だが、大学入学は9月にする。半年のブランクのうち3カ月間は、介護施設などで奉仕活動をしてもらい、その経験がなければ大学に入学させない。
それから、駄目な教師は辞めさせる。一方で、いい先生の待遇をよくするという体系に変える。親が学校に期待しているのは、いい先生だ。
ジェンダーフリー教育は即刻やめさせる。自虐史観に基づいた歴史教科書も官邸のチェックで改めさせる。
一番大切なのは心であり、徳育だ。そういったものを、推進会議で一気に処方箋(せん)を作って実行に移すことが必要だ。
私は文科政務官をしていたが、文科省にも共産党支持とみられる役人がいる。官邸機能の強化には、省庁の局長以上の人事については官僚ではなく政治が任用することが必要だ。
≪カリキュラム見直す…山谷えり子内閣府政務官≫
安倍官房長官は「今の日本の教育がいいと思っている国民は1人もいないんじゃないか」というほど激しい怒りを持っている。
下村さんが文科政務官だったときに、文科省は過激な性教育や韓国からの教科書採択妨害文書について全国の実態調査をした。どこに問題があるか分かった。しかし文科省に任せたのでは、また緩んでくる。だから官邸に推進会議を作らなければならない。
教員免許更新制もグラグラしている。講習さえ受ければ更新するという方向に行っているが、官邸は、駄目な先生は駄目としなければならない。
ゆとり教育は「ゆるみ教育」になっている。中学の英語の必修単語を507から100に減らした。学力が落ちるに決まっている。
カリキュラムを実態に応じて見直すことができるのは、文科省ではなく官邸にきちんとした集団を作ることによって初めて実現する。
≪“徴農”でニート解決…稲田朋美衆院議員≫
藤原正彦お茶の水大教授は「真のエリートが1万人いれば日本は救われる」と主張している。
真のエリートの条件は2つあって、ひとつは芸術や文学など幅広い教養を身に付けて大局観で物事を判断することができる。もうひとつは、いざというときに祖国のために命をささげる覚悟があることと言っている。
そういう真のエリートを育てる教育をしなければならない。
それから、若者に農業に就かせる「徴農」を実施すれば、ニート問題は解決する。そういった思い切った施策を盛り込むべきだ。
教育基本法に愛国心を盛り込むべきだ。愛国心が駄目なら祖国愛と書くべきだと主張したら、衆院法制局が「祖国という言葉は法律になじまない」と言ったが、法律を作るのは官僚ではなく国会議員だ。
安倍さんにとって教育改革は最も取り組みたい課題なので、頑張りたい。
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■官邸と国民運動連携 シンポは、安倍氏のブレーンとされている中西輝政京大教授、八木秀次高崎経済大教授が呼びかけ人になっている「『立ち上がれ!日本』ネットワーク」(事務局長・伊藤哲夫日本政策研究センター所長)が主催した。
同じ日に開かれた別のシンポで山谷氏は「官邸の教育改革推進会議と国民運動が連携することが望ましい」と述べた。
産経新聞の取材に対し山谷氏は、国民運動組織として、同ネットワークや、八木氏が設立準備室代表を務める「日本教育再生機構」を挙げ「官邸と国民運動が一緒に教育再生に取り組みたい。教育現場の実態をどんどん官邸に報告してほしい」と語った。
八木氏は「安倍氏の政策と日本教育再生機構の基本方針は一致しているので、全力で協力したい」と話している。
産経新聞 2006年9月4日