2009年2月


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携帯トラブル  親子の対話から始めよう

 中高生の多くが携帯によるトラブルを経験。自己紹介のサイト「プロフ」をネット上に公開している高校生も半数近くに上るのに、親は知らない。

 文部科学省が、小六、中二、高二の児童生徒約一万七千人と保護者を対象にした携帯電話の利用調査結果から、こんな実態が浮かび上がる。

 いくつか問題点が目に付くが、まず気になるのは親子間の認識のギャップで、プロフがまさに当てはまる。

 学年が上がるにつれメールやネットの利用が増える傾向にあり、プロフも公開している小六はごく少数で、中二でも約14%にとどまる。それが高二になると44%に急増する。

 一方、保護者の多くはプロフを知らない。高二の親で、わが子がプロフを公開していると思っているのは17%。子どもの回答の半分にも満たない。

 注意が必要なのは、プロフは名前や住所、電話番号などを書き込むため、個人情報がさらされるうえ、不特定多数の人が自由に書き込めることだ。

 出会い系サイトと同様、悪用される恐れがあるというわけだ。

 事実、警察庁の昨年一年間まとめでは、プロフなどのサイト利用によってわいせつや児童買春などの被害に遭った十八歳未満の男女の数は八百人近くに達し、出会い系を上回った。

 出会い系が規制法改正で届け出制になるなどしたため、犯罪の舞台がプロフにシフトした可能性があるのだ。

 プロフには規制がなく、今後も被害が増える恐れがある。違法行為につながる書き込みは削除を要請するなど、きめ細かなチェックに加え、法的な対応の検討も必要になるだろう。

 そこまでいかなくても中二、高二の七割近くは、メール転送を迫るチェーンメールや架空請求などのトラブルを経験している。こちらも要注意だ。

 「携帯依存」の傾向が強くみられることも見逃せない。

 一日のメール送受信が十件以上は、中二、高二では約六割、小六でも二割強というから驚く。食事や入浴中も携帯を手放せない生徒もかなりいる。

 携帯を利用するのは自分の部屋で一人でいる時が最も多い。これでは、わが子がどんなふうに携帯を使っているか分かるはずがない。保護者の七割は有害情報の規制強化を望んでいるが、その前にサイトの中身や問題点、利用実態を知る必要がある。

 学校と連携、人を傷つけることがあれば、犯罪に巻き込まれる恐れのあることも子どもにしっかり教えたい。

 そのうえで使う時間、場所などルールを決める。携帯を使わない日を設けてもよい。仮想空間の中で誰かとつながり、孤独感を和らげ、自己肯定の場とするのではあまりにも寂しい。

 ルールづくりも含め、まず親子の対話から始めよう。

京都新聞 2009年2月28日

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学校支援地域本部 住民の熱意生かしたい

 小中学校で、学習の手伝いや花壇の手入れなど、学校が必要とする活動を地域住民のボランティアで行ってもらう「学校支援地域本部」事業が、本年度から全国で行われている。

 これまで学校単位で行ってきた「地域の先生」など、地域の教育力を活用した取り組みを組織化して定着を図るのが目的だ。本県では20市町村が28本部を立ち上げ、37小中学校で実施中。新年度はさらに実施本部、実施校が増えるのは確実となっている。

 児童生徒の学習の幅を広げるとともに、教師の負担軽減、地域コミュニティーの推進などが期待できる事業だ。地域の先生や、子どもたちの登下校の安全確保のため巡回する「見守り隊」などの住民活動の浸透により、既に取り組みへの下地がある本県。住民の熱意を生かす形にしたい。

 同事業は、2006年の教育基本法改正により、学校、家庭、地域一体で子どもをはぐくむ環境の整備がうたわれたことに伴う文部科学省の委託事業だ。

 実際に学校支援活動を行うボランティアと、学校の要望と活動のマッチングを行う地域コーディネーター、学校支援の企画や方針などを決める地域教育協議会で構成される。各構成メンバーは特段の資格などは必要ない。「地域の学校を応援したい」という住民であれば参加できることに注目したい。

 本県では、県教育委員会から各市町村などで組織する実行委員会に再委託するケースがほとんど。文科省は中学校の学区単位を本部設置のめどとしているが、本県で採択された28本部は、小学校単独、複数小学校、中学校単独、小中学校合同など多岐にわたるのが特徴だ。支援活動の実例は、花壇の植え込み、図書室の整理、校内見回り、調理実習補助、校外学習の引率、部活支援など多彩。地域の先生などの実戦経験が生きているとみるべきだろう。

 事業運営の鍵を握るのは地域コーディネーターである。学校が望む支援と住民ボランティアが実行できる活動をいかにマッチングさせるか、さらにボランティア間の調整を図る手腕も発揮されなければならない。県教育庁生涯学習課は各地で養成講座を開いているが、各地域にも適任者を確実に確保する努力が求められる。

 地域コーディネーターへの謝金など経費の全額が国庫負担の委託事業としてスタートした学校支援地域本部事業だが、行財政改革の影響で来年度以降、補助事業に移行する。既存の実施本部と新規実施市町村の一本部は委託事業となるが、それ以外は3分の1の国庫補助となる内容。同課の推計によれば、実施本部では平均約100万円が必要となる。事業展開には県や市町村の財政出動が不可欠。子どもたちの健全育成を願う住民の意欲を生かすため、最大限の配慮を期待したい。

秋田魁新報 2009年2月27日

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教員の非行 学校全体の信頼が揺らぐ

 学齢期の子どもを持つ親にとっては不安だろう。二〇〇八年度に県教育委員会が懲戒免職処分にした教職員数が十人に達した。過去最悪という。

 処分理由ではわいせつ事件が六人と最も多かった。祭りの混雑の中で女子児童の胸を触る。校内で盗撮をする。携帯電話サイトで知り合った女子高校生にカネを渡してみだらな行為をする。不祥事の内容を思い返すと、あらためて言葉を失う。

 酒に酔い、列車内で高校生を殴った校長もいた。教育の場に職を得ていながら、なぜこんなことをするのか。社会人としての常識に欠けていたとしか思えない。教育現場の多忙さが要因だと指摘する声もあるが、だからといって許されるはずもない。

 政令市である新潟市の教育委員会でも〇八年度、県教委とは別に二人を懲戒免職にしている。酒気帯び運転と窃盗がその理由だ。

 県教委によると、県内の教職員数は約二万人に上る。それに比べれば処分者の数は微々たるものだ。ただ、教育に携わる者には子どもや保護者からの信頼が不可欠なことを考えれば、影響は決して小さくない。

 個々の不祥事は一義的には個人に責任があるとはいえ、教育や学校全体への不信を生む恐れもある。信用が揺らげば、他の教員のやる気を損なうことにもなりかねない。

 多忙化を背景に、教員のうつ病などが増える傾向にある。厳しい状況の中で、誠実に児童や生徒と向き合っている先生も多いはずだ。それだけにダメージが心配になる。

 携帯電話を持っている中学、高校生の六割以上が、他人の悪口を書き込んだ「チェーンメール」などのトラブルを経験している。文部科学省が行った初めての調査で、こんな実態が明らかになった。

 携帯電話サイトを利用したわいせつ犯罪が問題となり、携帯の校内持ち込み禁止をめぐる議論も盛んになっている。わいせつ事件による教職員の処分が目立つ現状では、学校が子どもたちに携帯の危険性を説いても素直に耳を傾けてもらうのは難しいだろう。

 不祥事続発を受け、県教委は今月、緊急校長会を開いて指導の徹底を呼び掛けた。新潟市教委も対応に知恵を絞っている。ただ、処分の厳格化や懲戒免職者の氏名公表実施にもかかわらず効果が見えないことは、対症的な療法の限界を示しているともいえる。

 繁忙感の解消はもちろん、採用の在り方の見直しを含めた抜本的な対策が必要ではないか。肝心なのは身内の殻に閉じこもらず、外からの視線に敏感になることだ。教育界が開かれてこそ教員に職責への自覚が育つ。

新潟日報 2009年2月27日

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家庭でルールづくりを

 文部科学省が実施した携帯電話利用実態調査で、中学二年生と高校二年生の65%が他人の悪口などを書き込んだ「チェーンメール」などのトラブルを経験していることが分かった。

 一方で、事件やトラブルの原因にもなる自己紹介用「プロフ(プロフィルサイト)」については高二の44・3%が公開経験があると答えたのに、それを知る親はわずか16・5%にすぎない。

 児童買春にも悪用された個人日記などの「ブログ」も同様で、公開経験がある高二は41・6%もいるのに、知っている親は19・0%しかいなかった。

 多くの児童・生徒が携帯電話を利用しているのに、子どもたちの利用方法を保護者が把握できていない。大人がネットの持つ危険性を十分に認識していないことをうかがわせる調査結果だといえよう。

 子どもたちは料金の高い通話ではなく安いメールを利用している。メールを打つ場所は小中高とも「部屋などで一人でいる時」が多く、中二と高二では八割を超えている。

 しかも中二の46・9%、高二の70・9%が午後十一時以降に打っているのだから、親の監視が行き届いていないのは明らかで、学外での利用方法にもっと注意を払う必要があろう。

 学校での指導はもちろんだが、どのような使い方がいいのか、親子でしっかりと話し合わなければならない。その上で、きちんとした利用ルールを家庭の中で作っていくことが大切だ。

 見過ごせないのは、中二と高二の六割以上が携帯電話を介したトラブルを経験し、それが深刻な事態にまで発展する可能性があることだ。

 チェーンメールや迷惑メールを受けたり掲示板などに悪口を書かれた生徒は多い。逆に20%以上が自らもチェーンメールを送り、約5%の生徒が悪口を書いた経験があると答えている。

 インターネットを有効利用し、暮らしの中で生かしている児童・生徒が多いのは言うまでもない。が、ともすれば匿名による悪意を持った書き込みが氾濫するのもネットの特徴である。

 その場合、多くの人が参加することで内容がエスカレートし、いじめに発展することもある。気になるのは、いじめの対象になった子どもの自殺例は多いのに、それが「悪いこと」だときちんと認識されていないことである。

 調査からは、携帯電話を使い続け、夜更かしする子どもが増えていることも明らかになった。

 深夜までメールを送受信し、ブログを見たり、書き込んだりすれば睡眠時間が削られて、翌日の授業に身が入らなくなるのは確かである。

 怖いのは、携帯電話に依存しすぎることで人間関係が希薄になり、話し相手の表情を読み取れなくなることだ。

 人と意思疎通が図れなくなると、人を傷つけることにも鈍感になりかねない。

 子どもたちのトラブルを未然に防ぐためにも、「ケータイ依存」の危険性に私たち大人は敏感になる必要がある。

沖縄タイムス 2009年2月27日

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子どもの携帯 利用のルールと警戒を

 禁止より使い方、使わせ方を工夫し、ルールも含め親子でしっかりと対策を話し合う時に来ている。

 子どもたちの携帯電話の話だ。

 小中高生の携帯利用実態や意識について文部科学省が初の本格調査を実施した。出てきた結果に、驚いた読者も多かったであろう。

 携帯所有率は、小学6年生で約25%、中学2年生で約46%、高校2年生では約96%にも上る。うち約5%は2台以上持っている。「持たせるべきか否か」を、現実はすでに飛び越しているようだ。

 小学生の半数近く、中学生の3割弱、高校生の2割強が「保護者の勧め」で所有している。「家族間でいつでも連絡が取れる」という理由が7割前後。「持たせて安心」という評価だ。

 一方で、持たせてくれない親たちの4割前後が「利用料金が負担になる」「トラブルに巻き込まれる心配がある」との「不安」を理由に挙げ、「勉強の妨げになる」「生活リズムが乱れる」ことを心配し、携帯所有を認めていない。

 実際、文科省の調査ではメールを1日30件以上やりとりする「ヘビーユーザー」ほど就寝時間が午後11時以降と遅くなる比率が高くなっている。

 高校生ではヘビーユーザーの約85%超が11時以降の就寝。携帯を持たない生徒に比べ約2割も夜型が多い。心配は「現実」だ。

 気になるのは、所有を勧めた親たちが使われ方や使用ルールには無頓着な点だ。インターネットは小学生で5割強、中学生で4割の親が使用を禁止しているが、「利用マナー」を決めているのは小学生で4割、中学生で3割強、高校生では2割を切る。

 使用に無頓着な親の子ほどネット掲示板で他者を中傷する書き込みをしたり、悪質な「チェーンメール」を送ったり、もらったりとトラブルに巻き込まれる比率が高い。

 食事や入浴、そして授業中と46時中携帯を手にする。まさに携帯漬け、携帯中毒、携帯依存症の状態も顕著になりつつある。

 必需品の携帯だが、家族だんらんの時間を奪われないための鍵、子どもたちをトラブルから守る鍵は、保護者にある。危険性や注意点を学ぶ機会をつくり、家族で使用ルールを決め、危険なサイトへのアクセスを阻む「フィルタリング」を徹底する。それができないなら、携帯を「持たさない」選択もある。

琉球新報 2009年2月27日

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教科書検定審:情報流出で停止規定

 【東京】沖縄戦の「集団自決」(強制集団死)をめぐる教科書検定問題を受け、2008年12月に検定手続きなどの「改善策」を盛り込んだ報告書を文部科学省に提出した教科用図書検定調査審議会(検定審)は26日午前、東京で総括部会を開いた。申請図書や訂正申請などの情報が流出し、調査審議に支障があると部会などが判断した場合、審議一時停止などの措置を取る規定を盛り込んだ「審議会決定」案を、文科省が初めて提案し、検定審が了承した。「審議会決定」案は3月下旬から4月上旬開催の検定審総会で正式決定し、適用される。

 文科省は各種資料の検定終了後公開などを盛り込んだ「教科書検定規則の一部を改正する省令」案などについて08年12月26日から約1カ月のパブリックコメント(意見公募)を実施した。総括部会では寄せられた意見に基づいてまとめた最終案を報告したが、基本的な内容は変わらなかった。3月上旬に官報で告示され、4月1日に施行される。

 教科書検定規則の下部に位置付けられる「実施細則(大臣裁定)」の改正案も提案され、情報管理の徹底を訂正申請にまで広げることや、教科書に「愛国心」など教育基本法の目的などがどう反映されているかを示す対照表を検定申請時に提出することなどが規定された。

 パブリックコメントで寄せられた3677件の意見について同内容で集約した125件を公表した。

琉球新報 2009年2月26日

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教科書の分量制限なくす 検定審が基準改正

 教科書検定審議会は26日の総括部会で、昨年末にまとめた検定基準や検定規則の改正を審議、了承した。小中学校用の教科書では、内容の重複を認め、発展的な内容の分量制限もなくした。

 新しい学習指導要領に対応した改正で4月に施行。小学校教科書は2011年度、中学校教科書は12年度から使う教科書に基準を適用する。

 交ぜ書きを避け、振り仮名付きの漢字で学習するという新要領に合わせ、上の学年で習う漢字に振り仮名を付ければ、教科書で使えるようにし、少なくとも初出の際は読み方を示すこととした。

 改正では、現行の「程度が低すぎるところはないこと」との部分を削除、学年をさかのぼっての復習に配慮した。「内容は厳選」といった分量抑制の表現もなくした。

 また総括部会は、教科書検定作業の在り方として、議事概要の事後公開や特に慎重な審議が必要な事項については、専門家の意見を聞くことができるといった検定手続きに対する「審議会決定」案も了承した。

 審議は現行通り非公開とした。3月下旬から4月上旬に予定している検定審総会で決定する。

共同通信 2009年2月26日

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大学除籍理由 5割が経済/県内7校 02−07年度2641人 不況深刻 拡大を懸念

 二〇〇二―〇七年度の県内七大学の除籍者二千六百四十一人のうち、経済的理由によるものが約五割(千三百九十九人)を占めていたことが沖縄タイムスの調べで分かった。景気悪化で〇八年度後期の学費未納者も増加しており、多重債務問題などに詳しい琉球大学の花城梨枝子教授は「これまで以上に学費を払えない学生が大学を去っていくケースが増える可能性がある」と懸念している。(宮城貴奈)

 調査は琉大、沖国大、沖大、沖女短、県立芸大、県立看護大、名桜大、沖縄キリスト教学院の八大学にアンケート用紙を送り、一月三十日の締め切りまでにキリ学を除く七大学が回答した。

学費が払えない

 「経済的理由」の割合が高かった年度は〇六年と〇二年でともに57%。以下、〇四年の55%、〇三年52%と続いた。

 個別の除籍理由への回答はほとんど記述がなかったが、ある大学では「親の失業やリストラ」「親の仕事で受注量が減った」「家族の病気や入院、手術」と具体例が挙がった。また〇二―〇七年度の除籍者全員が「学費納付が困難」だった大学もあった。ある大学の職員は「除籍だけでなく、学費支払いが困難で自主退学する学生もいる」と話した。

 消費者教育が専門の花城教授は、景気悪化で「親の経済状況の悪化で授業料を払えない学生が増えている」と指摘する。四年次に上がってから除籍になるケースも出ている。

多重債務に警鐘

 花城教授によると、家庭の経済的な事情で高校、大学で貸与を受けた奨学金を家計の足しにする学生もおり、「本来教育の機会は均等であるべきだが、貧しい人が大学に行けない状態になっている。無理して大学に行っても、結局は奨学金という名の借金をつくり、卒業後に仕事がなければ、多重債務につながる」と警鐘を鳴らした。

 〇八年度後期は、県内のほとんどの大学で授業料の延納希望や未納者が前年同期に比べ増加、奨学金希望者も増えているという。

 県内の私立大学では経済的な理由で授業料が未納の学生を対象に緊急奨学金増設が相次いでいる。

沖縄タイムス 2009年2月24日

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文科省:教員指導力を追跡調査 1000人規模で3年間

 文部科学省は来年度から、教員養成課程に在籍する大学4年生や10年目前後の教員1000人程度を対象に、3年間継続して教員としての指導力などを追跡調査する方針を決めた。大学の教育カリキュラムや教員向け研修などの効果を検証し、来年度から導入される教員免許更新制などの改善に生かす狙い。

 調査は、教員養成大学と大学所在地の都道府県教委という組み合わせの計10組程度に委託する形で実施し、1組あたり50〜100人を想定している。幼稚園、小学校、中学校、高校、特別支援学校ごとに調べる方向で検討している。

 例えば、大学4年生の場合、大学のカリキュラムの内容や教員採用試験の成績、教員になってから受けた研修が、指導力や資質にどのように反映されているかを、本人へのアンケートや校長らからのヒアリングで調べる。

 文科省は今回の調査結果を基に、教員向け研修などの改善策を検討する。【三木陽介】

毎日新聞 2009年2月24日

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教科書変えさせた「そういう意味ではない」23日の首相

 【教科書検定】

 ――総理は昨日の青森の講演で、「我々はいい加減な教科書を変えた」という発言をされた。政治の力で内容を変えさせたとも受け止められる発言だが、検定制度の趣旨からいって、政治的介入はあってはならないと思うのですが、その……。

 「そら、当然ですよ。それは当然です」

 ――はい。

 「あの、教科、教科書検定という制度がありますんで、それによって、確かあれは、ペットを家族の一員というような話だったんじゃないすかねえ、あれは。それはちょっと違うんじゃないかということで、あれは、検定に関して、ペットの対する表現が書いた、多分、その例だったと思いますけどね。私の記憶です」

 ――(複数の記者が)総理。

 「順番を決めよう、はい」

 ――教科書を変えさせた、ということについては。

 「いや、変えた、いや、変えさせたと言ったのか知れませんけど、あれは教科書検定、えー、検定、委員会? だったっけな。教科書検定委員会(正しくは教科用図書検定調査審議会)が変える。ここが責任です。はいどうぞ」

 ――昨日の同じ講演で、総理は「日教組と闘う、それが自民党だ」という趣旨の発言をなさってますが、9月に辞任をさせた中山国交相の「日教組をぶっ壊す」という発言については「はなはだ不適切」とおっしゃってましたが、総理ちょっとかなり強い言い方……。

 「あの日教組から支援されている政党もある。私どもはそこと選挙で戦っていくということです」

 ――今の件ですけれども……。

 「はい」

 ――変えさせたということは、言葉通り聞くと、政治介入をしたというふうにしか受け取れないんですけれども。

 「ああそれ。そういう意味ではありません。教科書検定、えー、え、何だ、何だ、検定委員会だっけ? 検定、検定委員会が変える、そこが、責任を持って変えるところです」

朝日新聞 2009年2月23日

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文科省:教員1000人追跡調査へ 更新制にらみ

 文部科学省は来年度から、教員養成課程に在籍する大学4年生や10年目前後の教員1000人程度を対象に、3年間継続して教員としての指導力などを追跡調査する方針を決めた。大学の教育カリキュラムや教員向け研修などの効果を検証し、来年度から導入される教員免許更新制などの改善に生かす狙い。

 調査は、教員養成大学と大学所在地の都道府県教委という組み合わせの計10組程度に委託する形で実施し、1組あたり50〜100人を想定している。幼稚園、小学校、中学校、高校、特別支援学校ごとに調べる方向で検討している。

 例えば、大学4年生の場合、大学のカリキュラムの内容や教員採用試験の成績、教員になってから受けた研修が、その後の指導力や資質にどのように反映されているかを、本人へのアンケートや校長らからのヒアリングで調べる。

 文科省は今回の調査結果を基に、教員向け研修などの改善策を検討する。【三木陽介】

毎日新聞 2009年2月23日

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医師研修見直し 本末転倒の場当たり策

 厚生労働、文部科学両省がまとめた二〇一〇年度からの医師臨床研修制度の見直し策は、当面の医師不足対策にすり替えられ、本末転倒だ。国民がどんな医師を求めているかを忘れてはならない。

 〇四年度から始まった研修制度では国家試験合格後の二年間に内科、外科、麻酔科、小児科、産婦人科、精神科、救急の七診療科の研修を必修としている。

 見直し策では必修を一年目に内科(六カ月以上)、救急(三カ月以上)、二年目に地域医療研修(一カ月以上)にとどめ、それ以外は二診療科を選択する「選択必修」になる。

 現行通りに各科を回ることも研修病院の判断でできるが、特定の診療科だけの研修でも済む。この結果、制度上の研修期間は二年間だが、実質的には一年以上を専門医として研修に特化できる。

 見直しの背景にあるのは、出身大学に残らない研修医が増え、大学が関連病院へ交代で派遣する医師を確保できなくなったことだ。これが医師不足を深刻化させたとの不満は地方の大学ほど強い。

 研修期間を短縮し、さらに都道府県ごとに研修医の定員枠を設けて大都市への集中を減らし、大学に残る医師を増やそうというのが制度見直しの大きな狙いだ。

 地方の医師不足を考えれば理解できるが、研修制度ができたのは、これからの医師には専門に偏らず救急、地域医療、いくつもの疾患を持つ高齢者の増加などにも対応できる幅広い臨床能力を身につけてほしいという国民の要望からだった。研修医の生活保障に公費を投入するのもこのためだ。

 にもかかわらず研修期間を実質的に短縮するのは、制度を設けた本来の趣旨に反する。

 今回の見直しで、出身大学に残る研修医が増え、地域医療の水準が上がるかどうかも疑問だ。

 大学病院の研修医が減ったのは、待遇が悪いうえに魅力ある研修プログラムに欠けているとの指摘がある。今回の見直しで大学に残る研修医が多少増えても、その後専門医としての腕を磨く環境になければ二年後には別の医療機関に移動してしまうだろう。

 医師不足や地域偏在、診療科による偏在の是正は、研修制度の手直しで解消する問題ではない。

 国民一人当たりの医師数を計画的に増やすとともに、卒前教育を含めた医師養成のあり方、医学界全体で診療科ごとに必要な専門医数の算定や資格要件を明確にするなど総合的に取り組むべきだ。

中日新聞・東京新聞 2009年2月23日

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就職氷河期 嘆くだけでは始まらない

 深刻な不況の影響から新卒の採用計画を見直す企業が相次いでいる。昨年までの「売り手市場」から一変し、就職活動中の学生が不安を募らせている。

 勤め先が依然決まらない大学四年生が少なくない。内定通知を取り消されるケースも続出している。就職を希望する高校三年生の内定率はまだ82%にとどまっている。

 景気がさらに悪化すれば、就職戦線はさらに厳しくなり、バブル崩壊以後最悪の「就職氷河期」に入る恐れがある。だが、悲観するだけでは始まらない。前向きな姿勢を忘れずに逆境をはねのけてほしい。

 二〇一〇年春に卒業予定の大学三年生に向けた企業説明会が各地で開かれている。しかし、直前になって参加をキャンセルする企業が目立つ。採用を抑えて企業の生き残りを図ろうという経営判断があるからだろう。

 だがこの厳しさを、自分を鍛えるチャンスに変えよう。説明会を回りながら、社会の中で自分をどう生かせるのか問い直してみるのもいい。その中で自分の適性や将来の夢など新たな発見があるかもしれない。

 不況になると、特に公務員や大企業に人気が集中する。安定志向が働くのも理解できる。しかし、選択肢を自分の方から狭めてはもったいない。今は小さくともキラリと光る会社があるはずだ。そんな会社を自分の目で見つけようという姿勢を持ちたい。

 企業が求めている人材は、コミュニケーション能力やチャレンジ精神に優れた学生だという。どうすれば内定が得られるのかという具体的なマニュアルも出回っている。大事なことは、自分の長所を見失わないことだ。それを素直にアピールすればいい。

 大学生の就職活動は遅くとも三年生の秋ごろから始まる。就職協定があったころから比べて半年以上も早い。しかも、この不況で不安に駆られた学生たちは、早く内定を得ようと競って就職活動をしている。大学は就職活動と学業との両立に悩む学生への支援強化を図ってほしい。

 バブル崩壊時、多くの企業は新採用を取りやめたり、数を減らしたりした。このため、社内の年齢構成がゆがみ、活力が損なわれるという苦い教訓を生んだ。今また長期的な視点を失えば、同じ過ちを繰り返すことになる。

 この不況を優れた人材確保の好機と考えられないか。新卒者が売り手市場のころは容易に振り向いてくれなかった中小企業も多かったという。

 企業に求められるのは、社員を貴重な財産と考えてくれる姿勢だ。非正規社員の解雇に見られるように、これが最近急速に薄れている。学生には共に働くことの魅力を伝えてほしい。

新潟日報 2009年2月23日

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大学入試改革/高校と連携して取り組め

 いま、大学入試シーズンの真っただ中である。その入試のあり方を見直す国レベルの論議が高まってきた。

 中央教育審議会が昨年来、高校で習得すべき学力を問う新しい試験「高大接続テスト」(仮称)の検討を進めている。また、先ごろ首相直属の教育再生懇談会も三次報告に、このテストの導入を盛り込んだ。

 両会議とも教育改革に大きな影響力を持つため、現実味を帯びてくるのは間違いなさそうだ。しかし、まだ中身はあいまいで、どう入試に活用するのか、見えない。

 ただ、分かっているのは「大学と高校が連携して、高校段階の学力を客観的に測る試験」ということぐらいである。

 大学入試が大学側の都合が優先された選別手段だったことは否めない。もし、大学と高校が連携して改革に取り組むのなら、新テストに期待できるかもしれない。

 高・大が連携する入試を模索することは、当然それぞれの教育内容にもかかわらざるを得ない。高校卒業に値する教育とは何か、大学の入学にふさわしい学力とは何かが問われるからだ。

 そのためには、既存の入試のあり方を検証し、再考する必要がある。

 大学入試は近年、随分様変わりしている。推薦入学や、面接・論文などで適性審査するアドミッション・オフィス(AO)入試などが広がっている。もはや新入生の約四割が通常の学力試験を経ていない。

 入試が一発勝負のペーパーテストだけでなく、多様化するのは決して悪いことではない。ただ、そのことが大学生の学力低下の一因とする指摘があるのも事実だ。

 一方、ペーパーテストをセンター試験に頼る大学が増え続けている。今年のセンター試験には、八百近い大学・短大が参加し、過去最多となった。

 今年で二十年を迎えたセンター試験も課題が多い。答えを選ぶマークシート式は、膨大な答案の処理などに有効だが、思考力をはぐくむ教育にはマイナスとの批判が絶えない。

 高大接続テストは、こうしたいろいろな選抜試験が抱える課題を乗り越えるものにしなければならない。

 中教審が新テストを持ち出したのは、大学教育全般のあり方や改革を探る一環だった。もう大学は志願者と募集人数が同数となる全入時代に入る。入試を見直すだけでなく、大学改革や高校教育とも文字通り「接続」し、しっかり取り組んでほしい。

神戸新聞 2009年2月23日

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医師研修見直し 地方への定着促したい

 免許を取ったばかりの新人医師は二年間、大学や市中の病院で実地研修を積まなければいけない。その仕組みが見直されることになった。

 制度導入からわずか五年。異例の見直しが決まったのは、東京など大都市に研修医が集中し、地方の医師不足が深刻になってきたことが背景にある。見直しは当然といえよう。

 現行の制度は、大学病院や市中病院で内科、外科など七つの必修科目と、将来進みたい診療科などの研修を義務付けている。研修医と病院双方の希望が合えば、自由に研修先は選んでいい。

 今回、厚生労働省と文部科学省の検討会がまとめた見直し案では、都道府県や病院ごとに研修医の募集定員の上限が設けられる。大学病院には定員枠を多く配分するという。

 現状のままでは、大都市の有力病院に人気が偏り、地方の大学病院に残る人材はめっきり減っているからだ。大学は埋め合わせのため、地域の病院に派遣していた医師を引き揚げ、地域の医師不足に拍車を掛ける事態になった。

 臨床研修制度がスタートする以前は、新人医師は主に出身大学の付属病院に配置。専門の診療科で研修するケースが大半だった。

 研修先として地元の大学病院を選ぶ医師を増やし、かつて大学医局が担っていた地域への医師派遣機能を立て直す―。見直しにはそんな思惑もうかがえる。大都市と地方の偏りをなくすには、選択の自由をある程度、制限することもやむを得まい。

 見直しのもう一つのポイントは、研修プログラムの弾力化である。必修科目を内科、救急、地域医療の三つに絞り、二年目は専門にしたい診療科でしっかり研修できるようにする。研修医を即戦力として活用する苦肉の策といえる。

 これまでの研修では、専門だけでなく、幅広い科で一定水準の診療ができる医師を育てる狙いがあった。それだけに必修科目の削減に、「質の低下につながる」と懸念する声も聞かれる。プログラムの工夫とともに、卒業前も含めた医学教育全体の見直しも検討すべき時期だろう。

 臨床研修の改善は一歩前進だが、それだけで医師不足が解消するわけではない。過酷な長時間労働は、勤務医が辞める大きな原因だ。地域で頑張る医師の待遇改善に本腰を入れなければ、真の解決にはなるまい。

中国新聞 2009年2月23日

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研修医制見直し 医師不足は解消できるか

 医師不足問題を受け、厚生労働省と文部科学省合同の専門家検討会が二〇〇四年度導入の「臨床研修医制度」について、見直しの提言をまとめた。

 見直す点は大きく二つある。

 一つは病院の病床数などを基にこれまで決めていた研修医の定員を都道府県ごとに上限を設け、病院の募集枠も制限するというものだ。地域による偏在を解消する狙いであろう。

 もう一つは診療必修科目の削減だ。現行の制度では二年の研修期間中、必修科目が七つあるが、これを内科、救急、地域医療の三科とし、あとは他の診療科から二科目を選択必修する。必修科目を減らし、研修医が希望する専門科の実習に重点を置く。

 こちらは専門性の高い大学病院へ人材を呼び戻し、医師不足が深刻化している小児科、産科など診療科による偏在を解消しようという思惑だろう。

 臨床研修医制により研修先を医師が自由に選べるようになったことで、大都市へ研修医が流れ始めた。定員枠見直しは都市部に研修医が集中しないよう、東京、大阪などの上限を低く設定し、地方は高くするという内容だ。

 ただ、こうした調整が国の思い通りに機能するかどうかは未知数であるといわざるを得ない。

 現在、本県では十の研修医療機関があるが、〇九年度は八十二人の研修医枠に対して確保したのは四十四人である。ここ数年の充足率も50%前後で、地方の多くが似た状況にある。

 都会の枠から漏れた研修医を地方に吸収してもらうという発想だろうが、大事なのは病院側がいかに研修プログラムを充実させるかではないか。

 しかし、研修を充実させるためには勤務医の確保が前提となるし、そのためには待遇や労働環境など現状の改善が不可欠だ。本県では医師不足から〇九年度の研修医確保そのものを見送った医療機関もある。

 医師不足の診療科を選択するかどうかは大学教育とも絡んでくる。訴訟リスクの高い診療科を敬遠するという実態にはどう対処するのか。

 専門性重視は総合医の養成という研修医制導入の当初の趣旨からも外れる。この論議は十分だろうか。研修医制の検証は確かに必要だが、目先の労働力確保にとらわれた見直しは医師の質の低下にもつながりかねない。医師不足対策は医学部定員の拡大と合わせ一体的な取り組みが欠かせない。

高知新聞 2009年2月23日

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臨床研修制度 疑問の多い見直し案だ

 厚生労働省と文部科学省の合同検討会が、臨床研修制度の見直し案をまとめた。

 沖縄を含む全国各地で起きている医師不足を解消するのが目的だが、今回の見直し案が抜本的な医師不足の解消につながるのか、はなはだ心許ない。

 見直し案の柱の一つは、二年間で義務付けている七診療科目の必修を一年目は内科と救急、地域医療の三科目に削減。それ以外の外科、小児科、産婦人科、精神科から二科目を選択必修にするものだ。

 もちろん現行の七科目でも継続できるが、新しい案では必修科目の研修は実質一年に短縮され、あとは進みたい専門科目の研修ができるようになっている。

 もう一つは、研修医が都市部に集中することを避けるために都道府県や研修病院ごとに定員を設けたことだ。二〇一〇年度から実施される予定になっている。

 現行の研修制度は、医師国家試験に受かった後、医師としての基本的な診療能力を身に付けてもらうために〇四年度にスタートした。

 しかし、新卒の医師が自由に研修先を選べるようにしたため、研修内容が充実し待遇もいい都市部の一般病院に研修医が集まるという弊害があった。

 それにより大学の医局に残る研修医が激減し、若手を失った地方の大学病院が地域の自治体病院に派遣していた医師を引き揚げさせるという動きが相次いだのである。

 各地で医師不足を引き起こしたのはこのためだ。

 現行の制度は、多くの診療科を経験することで診療の幅を広げ、どのような患者がきても対応できるような診療能力を持った医師を育てることを目的にしている。

 その点では、研修医も現制度を評価し、現場の病院関係者からも信頼が得られているといっていい。

 医師の絶対数が少なく多くの離島を抱えた沖縄では、地域医療の現場における総合診療の担い手が欠かせない。高度な医療技術を持つ医者が求められるのはそのためだ。

 それだけに、なぜいま制度を見直さなければならないのか、疑問なのである。

 ふに落ちないのは、全国的にも専門医不足が指摘される産婦人科医と小児科医なのに、産婦人科と小児科の二科目を必修ではなく選択にしたことだ。なぜなのか。この点についても説得力のある説明はない。

 さらに気になるのは、医師不足の解消を、教育を受けている真っ最中の若手医師で賄おうとしていることだ。

 大都市と地方の研修医数の偏在を是正する意図は分かるが、医師不足解消のために良い医師を育てる研修の目的がおざなりになるのではないか、という懸念もある。

 医師不足は過酷な長時間労働や医療費の抑制策とも深くかかわっている。それだけに診療報酬見直しや勤務時間の短縮など待遇を改善しなければ抜本的な解決は難しい。

 目先だけの見直しでは元も子もなくなるのであり、医学教育全体を見据えた改革につなげることが大切だ。

沖縄タイムス 2009年2月23日

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臨床研修見直し/医師不足を解消できるか 

 大学医学部を出た新卒医師は、現場で二年間の臨床研修が義務づけられている。その卒後教育が見直されることになった。

 必修診療科をいまの七から五に減らし、研修期間の二年は変えないものの、実質一年に短縮することもできる案だ。

 都市部や特定の病院に偏らないよう、都道府県や病院ごとの募集を制限する内容も盛り込んだ。大学医局に人が集まるようにし、医師不足を解消する狙いがある。省令改正を経て二〇一〇年度から実施する。

 〇四年四月から始まったいまの臨床研修制度は、研修医が自由に病院を選ぶことができる。待遇面も保障され、多くの診療科を回って幅広い知識と技術を習得できる利点がある。一方で、手術などの症例数の多い都市部の病院や設備が整ったところに研修医が集中し、医師の偏在を招く要因になっているともいわれる。

 なかでも大学医局は、上下関係や束縛されるイメージから敬遠されがちで、新卒医師は制度実施前に比べ、大幅に減った。そのため医局は医師を派遣する余裕をなくし、地域の医師不足を招いた。

 現制度の良い点を残しつつ、地域医療が円滑に運ぶようにしようというのが見直し案だ。必修の診療科を内科、救急、地域医療の三つに限定し、必修でなくなる五科から二科を「選択必修」として研修する。病院の判断で、これまで通り多くの診療科を回ることもできる。地域のニーズにしたがい、弾力を持たせた点は評価できる。

 見直しに際し、大学病院側の強い意向が働いた。ただ、これで地方に若い医師が回るかどうかは不透明だ。医師集めが目的化し、本来の研修が二の次になるようなことになっては本末転倒である。医師にとって意味のある二年にしなければならない。

 国は昨年、医学部の定員増を打ち出すなど問題の解決へ動いた。医師にふさわしい人材を、いまの偏差値重視の入試で集めるのには限界があると、多くの関係者は感じている。どんな制度が考えられるのか。教育のあり方にも、検討の余地がある。

 新卒医師に占める女性の割合は、ますます増えるだろう。結婚や出産で一線を離れた女性医師の復帰を促す施策や、多様な働き方を可能にする取り組みも要る。

 地域医療や在宅医療を担う人間味豊かな医師を育てていくことも重要な課題だ。

 臨床研修は、医師を一人前に育てるための土台である。理想の形に近づけていく不断の点検・検証が欠かせない。

神戸新聞 2009年2月22日

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中1ギャップ 解消に向け多様な試みを

 小学校から中学校に上がると、学習内容から先生や友人との関係まで、周りの「環境」が大きく変わる。そうした変化に、うまくついて行けない子どもが最近、増えているという。

 いわゆる「中一ギャップ」だ。顕著な事例が不登校の急増である。文部科学省の調査によると、2007年度の不登校は小学6年生が約8100人であるのに対し、中学1年生は約2万5100人と3倍以上に跳ね上がっている。

 その解消策として福岡市は今春、中学1年の学級規模をいまの40人以下から35人以下にする。併せて、不登校生が多い中学校に対応教員を配置するという。いずれも、子ども一人一人にきめ細かく指導できるようにする狙いだ。

 中学校の少人数学級は本年度、北九州市が一足早く始めており、すでに多くの政令市で導入している。福岡市の場合、有識者会議の提言を受けての実施だが、教員が生徒と向き合う時間を確保することは、不登校対策に限らず大事なことであり、その効果に期待したい。

 中一ギャップは、なぜ起きるのか。

 中学校では教科ごとに教員が違う教科担任制に変わり、先生とのつながりが弱くなる。小学校に比べて学習内容が難しくなり、学習につまずく生徒が増えてくる。部活動などで上下関係ができてくる…。こんな事情が、中学1年生の心に緊張や不安を生むといわれる。

 それも友人や教員との新たな人間関係が支えとなり、乗り越えるのだろうが、そうした不適応状態が改善されなければ不登校などになりやすいという。

 原因は一様ではなく、指導は個々に即した丁寧さが必要だ。少人数学級もその一環であることを忘れてはならない。

 さらに、中学校段階だけの対応では不十分だ。小中連携が欠かせない。

 小学校時代の子どもの普段の姿が中学校に伝わっているか。中学校の指導方針を小学校は知っているか。そういった基本的な情報交換はもちろん、中学校の教員が小学校の教壇に立つなど交流を地道に重ねることも、進学した生徒が中学校生活になじむことにつながるはずだ。

 中一ギャップ解消などを掲げ、横浜市は2012年度から全小、中学校で小中一貫教育を実施する方針を決めた。

 学習指導要領に縛られない教育特区を活用するなどして小中一貫に取り組む自治体は九州にもあるが、横浜市の場合、小学校が346校、中学校は145校あり、これほどの規模で一貫教育をするのは全国で初めてという。

 小中一貫は義務教育の9年間を一体化して連続性のある教育を目指す。小中連携をさらに進めた実践といえよう。

 中一ギャップに立ち向かう試みは、実態に応じて多様であっていい。小学校からどう送り出し、中学校でいかに受け入れて指導するか。仕組みも大事だが、教育現場で工夫と努力が求められる。

西日本新聞 2009年2月22日

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携帯原則禁止 一層の情報モラル教育を

 「教育活動には直接必要ない」として、文部科学省が小中学校への携帯電話の持ち込みを原則禁止する通知を、都道府県教育委員会に出した。高校についても授業中や校内での使用を禁止するなど「制限すべき」とした。

 子どもに携帯電話を持たせるかどうかは、親子で話し合って最終的に決めることだとしても、学校での日常に必要ではないという主張に異論はない。原則禁止はもっともだ。

 しかし、これで安心というわけにはいかない。校内持ち込み禁止は、携帯電話にかかわる問題を、教師の目の届きにくい校外へ押しやる可能性もある。持つ時期を遅らすだけで、携帯依存やトラブルなどを先送りすることにもなりかねない。文科省の通知が同時に述べるように、情報モラル教育を学校でも家庭でも、一層充実させなければならない。

 文科省の昨年12月時点の全国調査で、携帯電話の持ち込みを「原則禁止」としている公立小学校は94%、公立中学校は99%だった。鹿児島県は公立小、中学校とも100%に達する。公立高校も、82校中49校が原則禁止だ。

 すでに多くの学校で持ち込み禁止となっている現状にもかかわらず、携帯電話をめぐる事件は絶えない。昨年10月には、自己紹介サイト(プロフ)に中傷する書き込みをされたさいたま市の中学3年生が自殺した。鹿児島県教委の2007年度の調査でも、県内のいじめの認知件数が総数で減少するなか、ネットいじめは前年比1.5倍の70件に上った。大人が気づきにくい特徴があり、実態はもっと多いと予想される。

 情報社会となった今日、パソコンや携帯電話と隔離して大人になるわけにいかないことも確かだ。そうであるなら、どんな利便性があり、その裏にどんな危険が潜んでいるのか、他人や自分を傷つける場合もあることを成長に応じて具体的に教えなくてはならない。情報を得ることではなく、どう活用するかが大切なのだと、しっかり伝えたい。

 もちろん、学校まかせではいけない。子どもに携帯電話を持たせるならば、家庭でルールを決めよう。小中学生であれば、通話と位置確認に限定した機種にするとか、家にいるときは、居間の決まった場所に置くことなども一つの方法だ。子どもがどんなサイトを利用しているのかも把握してほしい。ルールを話し合う過程での親子のコミュニケーションも大切な情報教育になるはずだ。

南日本新聞 2009年2月22日

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子供の権利 わがまま許す条例は疑問

 家庭のしつけや学校の指導を難しくするような条例づくりが全国に広がっている。広島市でも子供の権利条例の制定作業を進めている。こうした条例は権利をはき違えたり、わがままを許す風潮を助長している。慎重に検討すべきである。

 子供の権利条例をつくる自治体が出始めたのは、日本が平成6年に国連の「児童の権利条約」を批准してからだ。

 条約の目的は18歳未満の子供たちを飢えや病気などから保護することである。だが問題は、こうした本来の目的を外れて特定の政治的狙いのために子供の「意見表明権」といった権利ばかりを強調するケースが多いことだ。

 例えば、京都の高校生らが国連児童の権利委員会で「制服導入は意見表明権を定めた条約に違反する」と訴え、海外委員から「制服もない国の子供に比べて格段に幸せ」などとたしなめられた。

 また「思想・良心の自由」などの規定を盾に卒業・入学式の国旗・国歌の指導を「強制」と反対する例も各地でみられ、埼玉県所沢高校で生徒会や教職員が校長主催の卒業式をボイコットする問題も起きた。「プライバシー尊重」は家庭のしつけを妨げかねない。

 条例を制定した自治体でも審議過程では反対が強く、高知県の条例では「休む・遊ぶ権利」に対して「甘やかすな」などの批判が出て削除された。昨年条例を可決した札幌市では、「一部教職員が子供の意見や権利を利用して学校現場を混乱させるおそれがある」などの反対意見が噴出した。

 広島市は昨年、条例の骨子試案を公表し、市民から意見募集している。骨子には「学び、遊び、休息すること」などの権利のほか、意見表明権などもある。これに保護者や学校関係者から指導しづらくなるなど懸念の声が強く、反対の署名活動も行われている。

 広島市は「子供が健やかに育つための取り組み」などと説明している。だが、目的や条文が曲解され、教育に弊害が大きいことは過去の例にある。懸念は当然だ。

 最近の条例制定の動きは子供が被害に遭う事件や、いじめ、児童虐待などが背景にあるようだ。

 だが、いじめや虐待防止には、親子の愛情や思いやりの心を育てることこそ重要で、時には厳しくしかる、毅然(きぜん)とした教育が今ほど必要なときはない。それを妨げ、縛る条例は極めて疑問だ。

産経新聞 2009年2月22日

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臨床研修制度 医師不足は解消されぬ

 新卒医師の臨床研修制度について、厚生労働省と文部科学省の合同検討会が見直し案をまとめた。

 今の制度は、各地で起きている医師不足の一因と言われ、見直しは当然、必要だろう。だが今回の案が、直ちに医師不足の解消につながるとは思えない。

 臨床研修はかつて大学の医局を中心に行われていたが、二〇〇四年に始まった現行制度で、新卒医師が自由に研修先を選べるようになった。

 東京をはじめとする都会の民間病院を選ぶ研修医が多く、大学医局は人手不足に陥った。このため、医局が各地に派遣していた医師を引き揚げるようになったことが、地方での医師不足につながっている。

 見直し案では、都道府県ごとや病院ごとの研修医の定員を定め、大学の定員を優遇するとした。

 今、研修先として大学病院を避ける医師が多いのは、経験できる症例数が民間病院に比べて少ないうえ、雑用が多かったり、処遇が民間より低かったりするためだ。

 この根本的な原因が解消されなければ、大学病院を志望する研修医は増えないだろう。魅力的な研修プログラムを組む努力も、大学側に必要ではないか。

 見直し案のもう一つの柱は、必修診療科の削減だ。

 現在二年間で学ぶ七つの必修科を三科に減らし、残りを選択科にする。余裕のできた期間で、志望する専門科の研修に重点を置けるようにする。これにより、研修中でも即戦力となる医師を養成するという。

 そもそも現行制度ができたのは、かつての医局での研修が専門領域に偏っていたためだ。幅広い知識を備えた医師を養成するという方向性自体は間違ってはいない。

 とりわけ、地域医療では初期診療や、いくつもの疾病に対応できる総合診療を担う医師が欠かせない。見直し案がこうした医師の養成につながるか疑問が残る。

 医師不足がいっそう顕著な産婦人科と小児科を必修から外したことにも、首をかしげる。研修で興味を持ち、これらの診療科を志す若い医師がいるはずだ。

 医師不足が進んだのは、臨床研修制度だけが理由ではない。

 政府は一九八〇年代前半から医師の抑制策を進め、昨年やっと増員へ方針を転換したばかりだ。医学部の定員増に伴い、教員や施設の拡充が欠かせなくなる。

 長時間労働など過酷な勤務に嫌気がさし、開業に転じる勤務医も少なくない。待遇改善が必要だ。

 医師不足の解消には、こうした複合的な要因を一つひとつ取り除いていかねばならない。

北海道新聞 2009年2月21日

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臨床研修制度 必修削減に懸念を抱くが…

 新卒医師の臨床研修制度が見直される。狙いは即戦力となる若手医師の確保と医師不足ならびに偏在の解消である。

 2本柱の1つは2年間で義務付けている内科、外科、小児科など7診療科目の必修を内科、救急、地域医療の3科目に絞り、残りのうち2科目を選択必修にする。

 必修科目の研修は実質1年に短縮され、2年目からはそれぞれ専門科目での研修となる。

 あと1つは研修医の都市部集中に歯止めをかけるため都道府県や研修病院ごとに定員を設けることである。新制度は2010年度から実施される。

■専門オタク化の反省■

 現行の臨床研修制度は04年度から始まった。医師国家試験の合格者に基本的な診療能力を身に付けさせることが目的だった。

 それ以前は新卒医師の大半は出身大学の医局に残り、大学病院で専門分野に入った。

 そのため専門性は高いが、自分の専門以外は診療できない医師が目立つようになったことへの反省から生まれた制度だった。

 しかし、研修先を自由に選べるようにしたことで予想外の弊害が生じた。待遇が良く、国際的な最先端医療を行う指導医がいる一般医療機関などに人気が集まるようになった。出身地の病院を選択した人もいるはずだ。

 必然的に大学医局に残る研修医が減り、県立延岡病院に対する宮崎大学医学部の医師派遣止めのように地方の大学病院が地域の自治体病院から医師を引き揚げるようになった。

 医師不足・偏在を引き起こした元凶とされるゆえんである。

■全人的医療担う医師■

 研修病院ごとに設定される定員は大学病院を優遇する見通しだ。医師の空白、過疎に悩む地域にとっては期待が持てる。

 しかし、縛りがあるから、行きたい医療機関が定員いっぱいだから、などの理由で出身大学の医局に残っても意欲は減退するし、早晩、新制度行き詰まりの要因になるだろう。

 研修先の自由化によって、大学病院に研修医が残らなくなった元凶を摘出しなければ根本的な解決にはならない。

 研修医を徒弟のように下働きさせ、酷使する体質が残っていないか。研修内容なども旧態依然としていないか。改善する努力があってこそ新制度が生かされる。

 心配な点もある。現行の研修制度では多くの診療科を経験することで医師の治療域が広がった。

 1人で当直している夜に「どんな患者が来院してもなんとか対応できる」など研修医たちからの評価も高かった。

 必修科目の削減によって、そういった利点が失われるのではないか。そんな懸念を抱く。

 広く、ある程度の深さもある全人的医療を担う医師を育てることは超高齢化社会に向かう時代の求めでもある。

宮崎日日新聞 2009年2月21日

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臨床研修見直し 目先ではなく大局から

 穴やほころびは、早めにふさいだり繕ったりするに越したことはない。けれども補修を急いで別のほころびや穴をこしらえるようでは元も子もない。

 新人医師に義務付けられている臨床研修制度の見直し案を、厚生労働省と文部科学省の検討会がまとめた。医師不足の解消が大きな狙いだ。

 見直し案の柱は2つ。研修プログラムの弾力化による必修診療科目の削減と、都道府県や病院ごとの募集定員に枠を設けることだ。

 現行制度では2年間で内科や救急、産婦人科、地域医療など7科目の必修を義務付けている。臨床経験を幅広く積むことで、医師としての総合的な診療能力を身に付けてもらうためだ。

 見直し案では必修科目が内科と救急、地域医療の3つに削減、他の2科目は選択必修とする。2年目から専門科目を研修することになるが、必修については実質1年の短縮を意味する。

 研修医の枠の制限には、都市部への集中を防ぐ狙いがある。

 懸案の医師不足がこれで解消されるだろうか。メスの入れ方に問題はないか。

 2004年度に新制度が導入された結果、出身大学の医局に残る研修医が激減した。大学病院は診療を下支えしていた若手を失い、やむなく周辺の自治体病院などに派遣していた医師を引き揚げざるを得なくなった。

 新制度が医師不足を引き起こした「主犯」にされたのだ。見直し案でも定員枠の優遇など、大学病院に戻る仕組みに比重が置かれた形である。

 地域への医師派遣機能を取り戻したい。この認識自体は間違っていない。

 だが研修医がよその病院に流れていく事実は直視しなければならない。その上で魅力ある研修プログラムを作るなど研修医を引き付ける努力が欠かせない。

 臨床研修の副作用は確かに否定できない。しかし医師不足の要因の1つにすぎない。過酷な勤務体制、診療報酬など複合的な要素が絡み合っている。

 当直の際、あらゆる症例の患者にそれなりの対応ができるようになったなど、研修制度への評価は決して低くない。

 目先のことに心を奪われ、大局を見失うことにならないか。拙速は避けるべきだ。

琉球新報 2009年2月21日

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大学院大学 金の卵産むニワトリに

 「本当に沖縄の経済発展に役立つのか」「基地絡みの単なるハコモノ振興策」「予算不足で頓挫する」。県内外から、そんな疑念や疑問が絶えないのが、政府が恩納村で建設中の「沖縄科学技術大学院大学(仮称)」だ。当の与党・自民党ですら党内の無駄遣い撲滅プロジェクトチームが「事業コストに対する効果が不明確」とやり玉に挙げる始末だ。

 疑念や疑問の源流をたどると、沖縄の米軍基地問題にたどり着く。これは政府の他の沖縄振興策にも共通するが、県民が求める米軍基地の撤去や過重負担の軽減に政府が応じられない代わりに「沖縄振興策」というアメをばらまき続けている。

 大学院大学も北部振興策や基地所在市町村への振興策などと同様、普天間飛行場の移設問題などの絡みで出てきた沖縄振興策の一つだ。だが、政府の「沖縄科学技術大学院大学概要」の説明の中に「基地絡み」との話は一切見当たらない。

 「概要」の中で、政府は同大学の沖縄設置の目的を「世界の科学技術の発展に寄与」し、「沖縄をアジア・太平洋地域の先端的頭脳集積地域として発展、経済的自立を図る」と強調している。

 しかし、「国設民営」される同大学が世界の一流の研究者を集める費用をどう負担し、年間1人2億円とも試算される研究者の膨大な研究費や滞在費、半数以上を占める外国人学生の公募費用や奨学資金をどう捻出(ねんしゅつ)するか、などの肝心な部分の説明はない。

 そのあたりがあいまいなままだったことも疑念や疑問を生んできた。そんな中で政府、自民党は19日、「沖縄科学技術大学院大学学園法(仮称)」案を了承した。

 法案では運営経費の2分の1以内を国が予算補助し、しかも施行から「10年間」は補助の上限は設けないという。つまり、全額補助だ。

 かなり手厚い措置だ。法案は3月3日の閣議決定が想定され、決定されれば同大学はいよいよ開学となる。

 同大学を基地絡みの単なる「ハコモノ振興策」に終わらせるか。それとも世界的な科学技術の先端的な頭脳集積拠点として活用・発展させ「金の卵を産むニワトリ」に育てるか。ここまで来たら、地元・沖縄にも覚悟が必要だ。

 膨大な予算だ。より効果的に沖縄振興に結実するようにもっと注文を付け、無駄遣いを監視したい。

琉球新報 2009年2月20日

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医師研修見直し―良医を増やすためにこそ

 これは、よい医師を育てることにつながるのだろうか。

 厚生労働省と文部科学省の合同の検討会が、医師免許をとった新人医師に義務づけられている臨床研修制度の見直し案をまとめた。

 今は2年間に内科、外科、小児科、精神科など七つの診療科で学ぶことになっているのを、内科、救急、地域医療の必修にとどめ、残りは選択制にして、2年目から専門分野に進むことができるようにする。

 さらに都道府県ごとに研修医募集の枠を設けて、大学病院に優先的に配分する。研修する病院も、基準を厳しくして一定規模以上に絞り込むという。

 これによって大学病院で研修を受ける医師をふやそうというねらいだ。

 どうしてこんな提言が出てきたのか。理由は、医師不足問題にある。

 04年度から始まった今の研修制度で研修先を自由に選べるようになってから、出身大学に残る研修医が少なくなった。人手が足りなくなった大学病院が地域の病院から医師を呼び戻し、医師不足を加速させたといわれる。そこでもう一度、大学病院の医師派遣機能を立て直そう、というのだ。

 しかし、今の研修制度はそもそも、そうした大学の医局を中心とした臨床研修が専門分野に偏りがちだったという反省から、幅広い診療能力をもつ医師を育てようと始まったものだ。

 このためには、最低でも2年の研修が必要、との意見が根強くあり、病院団体の間にも「本来の研修制度の理念が曲げられる危険性がある」との懸念が広がっている。

 医師のなり手が少ない産科や小児科を必修からはずすことにも「研修をきっかけに興味を持ってもらう機会が減り、志望者がさらに減るのでは」と心配する声がある。

 医師不足解消の名のもとに、肝心の医師の質が下がってしまったのでは本末転倒ではないのか。

 そもそも病院の医師不足は、医療費の抑制政策などと深くかかわったものだ。病院への診療報酬を見直し、勤務医の過酷な長時間労働をなくさなければ根本的な解決は難しい。

 診療科や地域によって医師の数が偏っている問題もある。どの分野でどれだけの医師が不足しているかをきちんとつかみ、それに見合った医師を育てることも求められている。

 今急がなくてはならないのは、むしろ、こうした臨床研修を終えた後の専門医の育て方や医師の配置のしくみについての議論だろう。

 臨床研修の見直しは、あくまで患者が医師に何を求め、そうした医師を育てるのに何が必要か、という観点から進められるべきではないか。

 良医を育てるという臨床研修の原点を忘れてはならない。

朝日新聞 2009年2月20日

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臨床研修見直し 医師不足の主因を見誤るな

 医師不足にどう対処するかという議論と、新人医師をどう教育するかという議論が、混線しているのではないか。

 厚生労働省と文部科学省の合同検討会がまとめた医師研修の見直し策である。

 2004年度から始まった現行制度は、新人医師に2年間、幅広く七つの診療分野を体験する臨床研修を義務づけている。研修先は出身大学の関連病院に限らず、全国の病院に希望を出して、選べる仕組みだ。

 見直し策は必修を内科、救急、地域医療の3分野に絞り、外科、小児科、産婦人科、麻酔科、精神科を選択制とする。これらを約1年で終え、残る期間は将来専門としたい診療科を集中的に経験できるようにした。

 幅広く総合力を培う研修は事実上、半分に短縮される。だが、それで十分と言えるだろうか。

 現行の研修制度は、以前の新人医師研修がほとんど大学の医局傘下で行われていたために、専門に偏った医師ばかり養成されてきたとの反省に立ってスタートした。この結果、現行の研修制度で新人医師の総合能力は高まったと評価されている。

 それを見直すのはなぜか。現行制度は、結果的に、医師不足現象に拍車をかけてもいるからだ。

 研修医の約半数は大学病院ではなく、主に都市部にある症例豊富な一般病院を選ぶようになった。徒弟制度のような雰囲気の中で研修医を便利な労働力にしてきた大学病院は人手不足となり、周辺の自治体病院などに派遣していた中堅医師を引き揚げてしまった。

 このため、今回の見直し作業では、あるべき医師教育の姿を追求する議論は脇に置かれ、どうすれば大学病院に研修医を取り戻せるか、という視点が優先された。

 総合的研修を短縮して専門研修の比重を高める目的は、より早く一人前の医師を現場に送り出すため、と説明されている。だが、そうすれば専門性の高い大学病院を選ぶ研修医が増えるだろう、との目算も背後にある。

 時計の針を元に戻すような見直しに、医療界からも疑問の声が少なくない。医師不足を解消することは喫緊の課題だが、そのために医師の臨床研修が不十分なものになってはなるまい。

 医師不足の根本的な原因は研修制度ではなく、人材の配置に計画性がないことにある。義務研修を終えた若手医師を、必要な地域と分野にきちんと割り振る仕組み作りを急ぐべきだろう。

讀賣新聞 2009年2月20日

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最後の定例会やっぱり対立 寺田知事と秋田県議

 秋田県議会2月定例会で、今期限りで退任する寺田典城知事と議会の対立が、またもや鮮明になっている。与野党を問わず県政運営への批判を展開する議会に対し、知事はかたくなに持論を強調して譲らない。3期12年に及ぶ寺田県政総決算の舞台で、議論が全くかみ合っていない。

 10日に開会した2月定例会は16、17の両日、代表質問と一般質問を行った。寺田知事の政治姿勢や県政運営を評価する声より、批判の声が上回っている。
 野党の最大会派・自民党の鶴田有司議員は、知事肝いりの情報公開に切り込んだ。市町村教委が反対する中、全国学力テストの市町村別成績を公表したことについて、「(知事の)手法は独断的。知事になりたてのころは、緊張した面持ちや謙虚さを感じたのだが」と非難した。

 与党の第二会派「みらい21」の樽川隆議員は、知事が行財政改革を進めた結果、職員数が減って事務ミスが多発していると指摘。「改革は果たして、簡素で効率的な県政運営を確立したと言えるのか」と皮肉った。
 こうした非難の声に、知事は議会に根回ししない自身の流儀を引き合いに出して、真っ向から応酬。「議会と対立する場面は多かったが、県民の県政への関心が高まったのは事実。個別の政策の評価は後世に譲るとして、自由な政治風土を醸成できたことが一番の成果だ」と強調した。

 長年対立を繰り返してきた両者だが、寺田県政最後の定例会だけに、本質的な議論を期待している県民は多い。
 相変わらずの“いがみ合い”に、傍聴していた秋田市の中年男性はため息交じりに話した。「互いに主張をぶつけ合っているだけ。いつになったら、この場で中身のある建設的な議論を聴けるのか…」。

河北新報 2009年2月19日

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学テ参加の必要性 保護者と教員に差 犬山北小でアンケ(愛知)

 全国学力テストに2年連続で不参加の犬山市の市立犬山北小学校(全校児童556人)で、保護者、教職員へアンケートした結果、テストの必要性について、保護者と教職員とでは、大きな意識の差があることがわかった。

 41%の保護者が「必要派」であるのに対し、教職員では「不必要派」が86%を占めた。アンケート調査は、昨年11月、各学年の1クラスの保護者と、教職員に実施した。

 「全国学力テストは必要か」の問いに、保護者120人が回答し、15人が「必要」、35人が「どちらかといえば必要」とした。「不必要」が15人、「どちらかといえば不必要」が11人で、「どちらともいえない」が44人で最も多かった。

 一方、教職員は22人が回答。「必要」とした教職員は皆無で、「どちらかといえば必要」が2人だった。これに対して、「不必要」が10人、「どちらかといえば不必要」が9人と不必要派は計19人。「どちらともいえない」が1人で、不必要との考えが圧倒的だった。

 調査結果について、同校の大矢恵一校長は「保護者の立場にすれば、必要との意見が多いことは理解できるが、全国学力テストに参加することで、学び合う姿勢を大切にしてきた犬山市の教育の取り組みに影響が出る事態も考えなければならない」と話している。

讀賣新聞 2009年2月19日

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記者の目:橋下大阪知事に萎縮し続ける教育現場=鮎川耕史

 タレント弁護士から転身した橋下徹・大阪府知事が今月6日、就任1年を迎えた。依然として府民の支持率は高いが、実際、府政にかかわる現場の人たちは「橋下1年」をどう受け止めているのか。特に橋下知事が力を入れる教育現場の本音を知りたくて、府内の公立小・中学校と府立高校の校長を対象にアンケートを実施した。橋下知事に対する意見も聞いたが、強い批判や不満が目立った。

 橋下知事は、全国学力テストの市町村別データの公表や、「夜スペ」で知られる東京都杉並区立和田中前校長の藤原和博氏の府教委特別顧問への起用など、教育への取り組みに熱心だ。一方で、「学校は府民のニーズに全く応えていない。学力だけがすべてではないとの考えが、はびこっている」と公言するなど現場には容赦なく、校長に広がる不満は予想できた。校長633人の回答を読んで、大阪の教育はまさにふんばりどころにあると感じる。その上で、これら校長の反発が、学校を活性化させるエネルギーにつながるのか。それとも意欲の停滞を横行させるのか、考えた。

 印象に残るのは、ある小学校校長の回答だ。一部を要約する。

 「質問に答えることは控えます。橋下知事の姿勢は、現場の意向を尊重せず、一方的に押しつけようとするものだからです。調査結果は知事に批判的なものになり、貴社はそれに沿った記事を掲載するでしょう。知事はそれを真摯(しんし)に受け止めるどころか、攻撃材料に使うことは明白です。今の教育現場は、『正論を言えばつぶされる』『ただじっと耐えているだけ』という、窒息しそうな状況にあります」

 記述はこう結ばれていた。「私の周囲の校長の多くは、同じ理由で『アンケートに回答は出さない』と語っています。教育を守るためのやむを得ぬ手段であることを理解してください」

 現状の圧政に、ただ黙って耐えているのだ、という訴えだ。いったい何が起きているのか。

 昨年11月、橋下知事に請われて府の教育委員になった陰山英男氏が小中学校校長の研修会で講演した。「百ます計算」で有名な陰山氏は、府の全国学力テストの成績が低迷していることに言及し、こう述べた。「日本人はみんな、(子供の学力に)無責任。金を出さない政府。しつけの悪い親。『悔しい』と言いたいが、それを言うべきみなさんが、学力の数値を落としているのですから言えない。目くそは、鼻くそを笑えないのです。プロの自覚を持ってほしい」

 質疑の時間、約950人の出席者はだれも手を挙げなかった。「なんであそこまで言われなあかんの」との声が帰途につく校長の間で飛び交ったという。その2カ月ほど前には、橋下知事が学力テストのデータ公表に難色を示す市町村教委をやり玉に挙げ、公の場で「くそ教育委員会」と発言している。アンケートの回答には「教育への下品な言い回しはやめてほしい」との意見も少なくなかった。

 テスト結果だけが教育の目的ではない。しかし点数が無視できないことも、大阪府の結果が全国平均より低いことも分かっている。知事が「保護者のニーズ」を強調して学力テストの成績向上を重要課題にする意義も、否定はしない−−。それが、私が知る校長の率直な思いだ。

 ではなぜ、「窒息しそうな状況」なのか。問題は、校長・教師たちの間に「不当なまでに誇りを傷つけられている」との受け止めが広がっていることにあるのではないか。毎日新聞のアンケート結果を見た橋下知事は「どうやってクビを飛ばすかですよ。校長連中は保護者が望んでいることを全く分かっていない」と報道陣に怒りをぶちまけた。そして、それが報道される。こうしたことの積み重ねが、教育現場に萎縮(いしゅく)と閉塞(へいそく)感をもたらす、と推測するのは、きわめて容易だ。府民の高い支持率を背景に「改革」を掲げる知事に異議を申し立てるすべもない。この状況が息苦しさにつながっているのだろう。

 ある中学の校長は「校長の中には、『やるしかないか』と知事の路線に同調する者もいる」と話す。アンケートでも「教育への取り組みに期待する」との意見もあった。トップと現場。埋められない溝ではないと考えたい。締め付けより、理解を基盤にした教育改革であってほしい。そのためには、トップが現場の声に耳を傾けることだろう。

 目には見えにくくとも、校長や教師が抱える「窒息しそうな状況」は大阪の教育に影を落とす。何よりも子供たちのために、やり過ごしてはならないと思う。(大阪社会部)

毎日新聞 2009年2月18日

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全国学力テスト:「県教委に提供しないで」 鳥取市教委、文科省に要望 /鳥取

 鳥取市教委は16日、全国学力テストの学校別データについて鳥取県教委に提供しないよう文部科学省に要望したと発表した。

 データの開示による序列化などの懸念を訴える声が上がったことから、同市教委は1月の臨時教育委員会で文科省に要望することを決定。中川俊隆教育長らが今月4日、文科省学力調査室を訪問し、口頭で「鳥取県では、学校別データが開示されることにより不適切に取り扱われる懸念が払しょくできない」と説明。学校別データは「県教委と市町村教委の立場と役割に応じ、市町村教委だけに提供してほしい」と要望した。

 同調査室は「県教委は市町村教委や学校の改善に向けた取り組みが期待される」とし、学校別データを県教委に提供する意向を伝えてきたという。

 同市教委は「今後は県教委にも学校別データを受けとらないよう要望したい」としている。【宇多川はるか】

毎日新聞 2009年2月18日

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全国学力テスト:参加問題 結論は来月13日に−−犬山市教委 /愛知

 犬山市教育委員会は16日、4月の全国学力テストへの参加問題を協議し、情報公開とテスト結果のあり方を中心に話し合った。参加、不参加の採決に至らず、結論は次回定例会の3月13日に持ち越された。

 10日のに行った市教委と校長会との意見交換では、校長会からテスト結果の情報公開が全国各地で進む中で、公開された場合のデメリットを心配する意見が大勢を占めた。この日は校長会での意見をどう判断するかが焦点になった。

 委員からは、「これまでの行政訴訟では、テスト結果を開示しても学校間の序列化や格差、社会的混乱を招くほどのことではないとの判決が大勢。テストに否定的な教育現場や事務局はこれにどう反論するのか」との意見が出た。さらに、「犬山が進める『学びの教育』にはテストは不必要で障害になるとの意見があるが、10年間続けてきた教育内容を検証するいい機会ではないか」など、参加に前向きな意見が続いた。

 これに対し、不参加派の瀬見井久教育長は「現場の意見を尊重すべきだ。参加するなら、テスト結果をすべて公開することを前提にすべきだ」と、委員会終了後に話した。

 一方、参加を進める田中志典市長は「過去2回テストを受けた自治体で、学校間の序列化が進んだという話は聞いたことがない」と話していた。【花井武人】

毎日新聞 2009年2月17日

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学テ参加結論先送り 犬山市教委、前向きな意見も(愛知)

 全国の自治体で唯一、2年連続で全国学力テストに不参加の犬山市教育委員会が16日、市図書館で開かれ、新年度の同テストへの参加について協議した。しかし、参加するかどうかの結論は出さず、3月13日の次回に先送りした。

 10日の小中学校校長会では、ほとんどの校長が参加に否定的な意見を述べた。この日の市教委では、校長会の意見を踏まえて6人の教育委員が意見を述べた。

 委員らは「犬山市の教育が強固なものであれば、一度テストを受けてもいいのではないか」「反対している校長も他市町に異動すれば考えが変わる」など参加に前向きの意見が多かった。

 田中志典市長は参加を主張しており、教育委員の交代ごとに参加に賛成とみられる委員を任命して、市教委の大勢は参加に傾いている。不参加を主導してきた瀬見井久教育長は「文部科学省が示したテスト実施要項は、情報公開請求などへの対応を示さないずさんな内容で検討に値しない。参加、不参加を判断しない『保留』もあり得る」としている。

讀賣新聞 2009年2月17日

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七尾が学力向上対策へ 「学テ」生かす試みに期待

 七尾市教育委員会が新年度から全小中学校で国語や算数、数学などの学力向上対策プランを実行する。

 小学六年生と中学三年生を対象にした昨年四月の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果から、苦手と考えられる問題点を導き出し、その弱い点を克服する対策である。全国学力テストの利用法の一つであり、試みが実を結ぶことを期待する。

 文部科学省は、全国学力テストの結果を都道府県レベルでしか公開していないが、それでも問題点の把握は可能である。石川県内の公立学校では小六、中三とも国語、算数、数学の多くの分野の正答率が都道府県順位で一けた台に入った。七尾市教委によると、同市の正答率も全国平均を上回ったが、思考力、判断力、活用力の設問では「弱い」傾向が見られたため、昨年九月に小中の教諭や教頭らが弱い点を克服するための学力向上委員会を設立し、十二月に市教委へ学力向上対策プランを提言した。

 新年度からの取り組みはこの提言に基づいて始まるが、たとえば「ノートに自分の考えを書く欄」を設けて表現させ、この積み重ねによって学力を身に付けさせるなど、具体的な提言になっている。

 学校教育法三十七条で、授業の運用や編成は学校長の裁量とされており、学校ごとに授業の工夫が行われている。そのため七尾市のような市ぐるみの取り組みとなると、まだ少ないようである。

 七尾市に先立ち羽咋市が全国学力テストが始まる前の二〇〇五年度から教育活性化プランを全小中で進めているのが注目される。七尾市の取り組みは、この羽咋市の試みをも参考にしたそうである。

 羽咋市の場合、一年間の成果を公開授業で示すことにしている。七尾市も結果の公開を目指してもらいたい。児童生徒の学力向上の取り組みを開かれたものにし、同時に教える側の相互研さんが深まれば、問題点のありかがよく見えるようになるだろう。

 こうした地域ぐるみの実践がさらに広がっていくことによって全国学力テストの意義も深まるはずと考えたい。

北國新聞 2009年2月17日

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大学入試 センター試験軸に改革を

 大学入試センター試験を経て、大学は本格的な受験シーズンに入っている。センター試験は20回目を迎え、すっかり定着した感があるが、今後ともいまのままでいいと考える人は少ないだろう。

 進学率の上昇に伴う過度の受験競争を反省し、国公立大に共通1次試験が導入されたのが30年前だ。それが衣替えして、私大も利用が可能となったセンター試験は1990年に始まった。

 しかし、数字の上では志願者が皆どこかの大学に入れる「全入時代」が近づくいま、状況は大きく変わった。少子化が進む一方で、規制緩和で大学・学部が増えて入学定員が拡大したためだ。

 大学が入りやすくなれば高校生の学習意欲は下がり、大学生の学力維持もままならない。高校と大学が直面する学力問題は深刻だ。昨年暮れ、中央教育審議会が出した大学の学部教育に関する答申も、そうした危機感が背景にある。

 そもそも、センター試験は受験生の基礎学力を見ることが目的であり、その後、各大学が自前の独自試験を加味して入学生を選抜するのが前提だった。

 ところが、試験科目を大学が自由に指定できるため、受験生の減少や定員割れを心配して、試験科目を少なくし高校生の負担を軽くする大学が増えてきた。なかには、安直にセンター試験のみで合否を判定する大学・学部も出現した。

 他方、センター試験とは無縁の進学経路も一般化した。推薦入試や面接・論文中心のアドミッション・オフィス(AO)入試である。学力不問の「青田買い」と指摘され、いまや大学生の4割が何ら学力検査を経ないまま入学している。

 こうした現状下、中教審が検討を打ち出したのが「高大接続テスト」だ。

 高校と大学が協力して、進学を希望する高校生の学力を客観的に把握する。結果を高校は普段の授業改善に、大学は推薦入試やAO入試を含めて独自入試に活用する。こんな構想が盛られている。

 3年前に発覚した高校の未履修問題は、入試対策を優先する一部進学校のゆがんだ実態を露呈した。高大接続テストが高校の学習指導要領に基づけば、そうした未履修はなくなるであろう。

 ただ、まったく新たな試験となると教育現場の混乱が予想され、現実的ではない。高校生の学力を把握するのはセンター試験本来の狙いであり、入試改革はその改善を軸に考えるべきだろう。

 以前からある論議だが、センター試験の結果を、各大学が事前に示した一定の水準に達しているか否かの判断に使ってはどうか。現在のような志願倍率が予定を超えた場合の二段階選抜に使うのではない。資格試験的な扱いで、水準に達した受験生は全員2次試験に進ませ、合否は2次試験のみで判定すればいい。

 全入時代の到来を前に、入試段階で新入生の学力をどう担保するか−は大きな課題だ。改革論議を急ぎたい。

西日本新聞 2009年2月16日

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学校とケータイ 持ち込み禁止だけでなく

 文部科学省は、携帯電話の小中学校への持ち込みを原則禁止するよう、都道府県教委などに通知した。高校では持ち込むなとまでは言わないが、何らかの形で校内での使用を制限すべきだという。

 学校は子どもたちが学習する場であり、仲間や教師とともに過ごす場だ。そこに携帯電話は不要であり、保護者ら外部との連絡が必要なら学校の電話を使えば済む。塩谷立文科相は「学校に持ち込ませる理由はない」とも述べている。

 通知が示した「携帯電話は、学校における教育活動に直接必要のないものである」との認識も、当然だろう。

 ただ、こうした禁止・制限通知は現状を追認したにすぎないともいえる。

 文科省が昨年12月1日時点で調べたところ、公立小学校の94%、公立中学校の99%が持ち込みを原則禁じていた。公立高校でも原則禁止は20%にとどまったが、授業中の使用禁止なども含めると、95%が何らかの制限をしている。

 携帯電話をめぐって、文科省は昨夏、校内での取り扱いを明確化するよう通知を出していた。それを受けて、各学校が短期間に「持ち込み原則禁止」などを決めたとは考えにくい。学校現場では早くから携帯電話の扱いに苦慮し、ルールを作っていたというのが実態だろう。

 登下校時の緊急連絡手段とするなどやむを得ない場合に限って、保護者の申請で持ち込みを認めている学校も多い。

 まずは、そのルールが徹底しているのかが問われよう。携帯電話に関しては、「ケータイ漬け」と言われる過度の依存や授業中のメール、学校裏サイトなどネットによるいじめ、犯罪被害などさまざまな問題が指摘されているのだ。

 同時に、子どもたちが学校で生活するのは1日の3分の1にすぎず、携帯電話のトラブルの大半は学校時間外で起きている。一方で、子どもたちにとって携帯電話は身近な存在になっており、学校にいる間だけそれを取り上げても、問題がすべて解決するわけではない。

 今回の通知で恐れるのは思考停止だ。学校も家庭も「ケータイは持ち込み禁止だから」と油断し、ただ持ち込ませないことに熱心になってもらっては困る。

 文科省は昨秋、教師向けに「ネットいじめ対応マニュアル・事例集」を作り、配布した。携帯電話の何が危険で、どんな弊害があるのか。いずれは使うことになる便利な道具であり、迷惑をかけないマナーがある。学校も家庭も、そういった指導、しつけに一層努めてほしい。

 そうした取り組みを支える意味で、市町村教委の役割は大きい。福岡県芦屋町と町教委は先月20日、「こども 脱ケータイ宣言」をした。小中学生の携帯電話所持の原則禁止を呼び掛けるとともに、必要なら家族でルールを決めて使わせるなど啓発運動を展開するという。

 今回の通知を、あらためて「子どもとケータイ」を考える契機にしたい。

西日本新聞 2009年2月15日

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学力テスト結果を公表した市町村に教諭増員…大分県教委

 大分県教委は、公表を巡って賛否がある全国学力テストの結果を自主的に明らかにした市町村教委に対し、4月から小中学校の教諭を増員する方針を固めた。「学力向上を目指す市町村を支援するため」としている。識者からは「姑息(こそく)なやり方」との批判がある一方、「画期的な施策」と賛同する声も上がっており、今後論議を呼びそうだ。

 同テストの結果について、文部科学省は「過度な競争や序列化につながる」として市町村別の公表を禁じているが、大阪府が昨年10月に一部を公表したのに続き、秋田県が同12月に全面公表するなど波紋が広がっている。

 大分県教委義務教育課によると、昨年4月の全国学力テスト結果を記した「学力向上推進計画」を今年3月をめどに策定するよう県内18市町村教委に求めた。この計画を公表した市町村教委には4月の定期異動で教諭を増員配置するという。計画を公表しない市町村教委には配置しない。

 県教委は県内全市町村に教諭を1人ずつ増員できるよう2009年度予算案に約1億5000万円を計上した。

 三浦徹夫課長は「学力向上には学校と地域が連携して取り組むべきで、客観的データは欠かせない。市町村教委を応援するためで強要しているわけではない」と話す。

 県では昨年の全国学力テストで正答率、平均点とも全国平均を下回った。この結果を受け、広瀬勝貞知事は昨年10月、「子供たちの学力レベルを知るうえで、公表してもいいのではないか」と前向きな姿勢を示し、小矢文則・県教育長も昨年12月、市町村教育長に自ら公表するよう求めた。同県内では、日田市と姫島村が結果を公表している。

 異例の施策に対し、文科省は「大分県教委から何の相談もなく、コメントのしようがない」としている。

 教育評論家の尾木直樹・法政大教授(臨床教育学)は「結果公表と教諭の増員配置を結びつけており、非常に姑息だ。人事権を振りかざす施策で、学力向上が図れるだろうか」と疑問を呈している。

 一方、明石要一・千葉大教授(教育社会学)は「テスト結果を単なる公表で終わらせず、教諭増員に結びつけて学力向上を図ろうというのは画期的だ」と評価している。

讀賣新聞 2009年2月14日

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高学歴ワーキングプア 博士の就職難 深刻 院生増加策も受け皿不足

 昨年のノーベル賞受賞は日本の科学力を世界にアピールしたが、博士号取得者の就職難は深刻化する一方という。国は90年代から政策的に博士を増やしてきたが、大学のポストは少なく、企業も年齢面などで採用に2の足を踏みがちだ。各大学院も就職支援に力を入れているが、急速な雇用情勢の悪化もあり、高学歴ワーキングプアという社会問題となりつつある。 (宮内瑞穂)

 博士号を所得した後、1、2年の短期で大学・研究所などに籍を置く研究職をポストドクター(ポスドク)と呼ぶ。その1人、九州大学大学院に籍を置く桜井玄さん(30)は「30代で准教授に次ぐ助教などの正規職員になれたら幸運。ポスドクにすらなれない分野もある」と語る。

 昨年4月に現職を得たが、任期は1年。他大学の助教などに応募しているが「来年度の行き先は未定」。約180万円の年収さえ失う可能性があり、そうなれば研究費を払いながら大学に在籍することになる。生活費は塾や短大の非常勤講師で稼ぐ予定だが、奨学金250万円の返済は3年後に迫っている。

   ◇   ◇

 文科省によると、2008年度の博士課程卒業者数(約1万6000人)のうち、教員や企業の技術者などの正規就職者は約6割。残り4割のうち最も多いのがポスドクと言われ、04年度の約1万4000人から、06年度には約1万6000人に増えた。「高学歴ワーキングプア 『フリーター生産工場』としての大学院」の著者で自身もポスドクの水月昭道さん(41)=京都在住=は「水面下でフリーター化している博士はポスドクの数倍はいる」と見ている。

 博士号取得者急増のきっかけは、91年度に政府の大学審議会が出した提言「大学院の量的整備について」だ。専門能力を持つ人材育成などを目的に、2000年度までに大学院生の数を2倍に増やす必要性を訴えた提言を受け、大学も積極的に院生獲得に乗り出した。博士課程在学者は91年度の約2万9000人から、08年度約7万4000人に膨れ上がった。

 しかし、主な就職先である大学の正規職員は減少傾向にあり、期待されていた企業への就職も伸び悩んでいる。「博士課程進学=大学の先生という暗黙の了解がかつてあった」と語る水月さんは「民間企業は年齢制限が厳しく、博士号取得者を受け入れるための給与体系が整備されていない」と問題点を指摘する。

   ◇   ◇

 文科省は06年度から「キャリアパス多様化促進事業」で全国12カ所の大学などに予算を配分、就職説明会などを実施してきた。その1つの九州大学は「研究分野にこだわらず、職種を広げ、博士の論理力や分析力を『売り』に就職支援」した結果、2年半で約60人を民間企業に送り出せた。経産省は中小企業などが出資する研究組合に、研究者1人につき最大二110万(年間)の賃金補助を出す制度の創設を検討している。

 病院経営などに携わる「麻生」(福岡市)は積極的に博士号取得者を採用してきた企業の1つ。古野金広専務(60)は「博士には物事の全体像を把握できる能力が高い人が多い」と評価しながらも、「要はジャンルにこだわらずチャレンジ精神を持つ人材が求められる」「35歳以上は年齢が問題になる場合もある」とも打ち明ける。

 「博士は研究ばかりでコミュニケーション能力が低いといった偏見が企業側に依然根強い」と九州大キャリア支援センターのコーディネーター井上剛實さん(64)は嘆く。水月さんは「多大な税金を投じて育てた博士が社会で生かされないのは大きな損失。新たな仕組み作りが必要」と語っている。

西日本新聞 2009年2月12日

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教職大学院 教委との連携強化が課題だ

 教職大学院が質の高い教員を養成していくためには、教育委員会との連携を一層強めていく必要があろう。

 文部科学省の大学設置・学校法人審議会が、昨年4月にスタートした教職大学院19校の運営状況などを調査した。その結果、教委との連携や入学者の確保など、教職大学院が抱える共通の課題がわかった。

 教職大学院は、大学新卒者を指導力のある新人教員に、現職教員を学校運営の核になれる中堅教員に育てるのが目的だ。

 調査結果によると、教委から派遣されて入学する現職教員が予想外に少なかったのが目立つ。

 教職大学院は、実践的な指導力を身につける実習を重視している。このため、地域の小中高校など実習の場となる学校を確保することが義務づけられている。それには教委の協力が欠かせない。

 志願者を増やすためには、教職大学院の修了者に、教員採用や処遇にあたってのメリットを示すことも必要だろう。処遇などを決めるのも、教委である。

 東京都教委は、教職大学院と個々に協定を結び、その修了者については、学長推薦による採用選考を行うことを決め、初任者研修の一部免除も検討している。

 また、これらの教職大学院との間で設けた協議会で、都教委が提示したカリキュラムなどの実施状況も評価している。

 こうした取り組みが、教職大学院と教委の結びつきを強める。今回の調査結果では、都道府県教委によって、教職大学院との連携について温度差があるという。各教委は、地域の実情に応じた取り組みを検討してもらいたい。

 ほかにも、実習を免除する基準や判定方法、大学新卒者と現職教員が一緒に受ける授業の形態などが、課題として指摘された。

 実習は一定の教職経験があれば免除されるが、その基準などを明確にする必要がある。

 新卒者と現職教員が同じ授業を受けることは、双方に役立つ面もある。だが、一緒に受ける方が効果的な授業と、そうでないものをよく吟味すべきだ。

 都教委と教職大学院による協議会の報告では、実習の場を提供した学校に良い刺激を与えた例を挙げている。ある小学校では、若手教員が教職大学院生の学ぶ姿を見て、自分も行きたいという気持ちになった、という。

 教員志望者や現職教員の進学意欲を高めてもらう努力を続けることが重要だ。

讀賣新聞 2009年2月12日

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「学テ参加、慎重に」校長会が要望書=犬山市

 文部科学省が実施する全国学力テストに2年連続で不参加の愛知県犬山市教育委員会は10日、市立小・中学校全14校の校長らで構成する校長会と合同の会合を開き、2009年度の全国学力テストへの対応について意見を聴取した。校長会は「学力テストの調査結果が開示される流れが加速しており、開示された場合に序列化や過度の競争が引き起こされる可能性が高くなる」などとして、市教委に参加問題を慎重に討議するよう求めた要望書を提出した。

 学校現場から参加に否定的な意見が出たことに関し、学力テスト参加を目指している田中志典市長は、「市民感情とずれている面もあるのではないか」と述べた。

 市教委は16日の定例会合で、09年度の学力テストへの参加問題について協議する。(了)

時事通信 2009年2月12日

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教育再生懇談会 店じまいにした方がいい

 「国民総掛かりの教育論議を起こす」と力み返った前身の教育再生会議とは打って変わったこの脱力感は何なんだろう。

 教育再生懇談会が麻生太郎首相に提出した第三次報告の内容の乏しさには目を疑う。この程度の提言しか示せないなら、もう店じまいした方がいいのではないか。

 報告の主なものは「小中学校への携帯電話持ち込み原則禁止」「大学財政の構造転換と研究・教育水準に応じた私学助成の拡大」「高大接続テストの導入」「教育委員会への外部人材積極登用」などだ。

 いずれも既に論議が行われているテーマだ。携帯電話は文部科学省が先月末に小中学校への持ち込みを原則禁止にすることが望ましいとする通達を出したばかりである。

 外部人材の積極登用にしても教員採用試験の口利き事件を機に、教育委員会の改革が叫ばれている。私学助成は言わずもがなだ。

 基礎学力を測る接続テストも文科相の諮問機関である中央教育審議会の部会が、推薦入試などに活用できる新しい学力検査の実施を提唱している。

 首相直属の懇談会が、いまさら麗々しく報告書にまとめるようなものではあるまい。これでは国民総掛かりの議論を起こしようがないではないか。

 教育再生懇の本来の役割は、将来の日本を背負う子どもたちに、どのような教育の場を与えるべきかを骨太に論議し、教育改革への指針を示すものだったはずだ。

 携帯問題では飛躍的に進歩する通信技術に教育現場が追い付いていっていない現実がある。ただ禁止するだけでは根本的な解決にはなるまい。

 いま子どもが使うには好ましくないとしても、いずれ携帯は生活に欠かせない道具となるだろう。その利便性と裏に潜む危険性をどう教えていくかに焦点を当ててほしかった。

 接続テストは大学生の学力低下が背景にある。文科省は生徒数が減っているにもかかわらず、大学の新設を容認してきた。そのツケが「全入時代」に噴き出してきたのではないか。

 再生懇は大学の在り方そのものを論議すべきだった。大学認可の問題、入試の方法、大学教育の本質などである。国民の論議を喚起する材料はいくらでもあったはずだ。

 これまでの報告も文科省に気兼ねしたものが多かった。これでは中教審とどう違うのかと言いたくなる。

 麻生首相は再生懇に今後の検討課題として、厳しい経済状況下での「教育の安心確保」「スポーツ教育の充実」などを与えた。教育は国の根幹にかかわる。再生懇に「再生」の覚悟があるかどうかを問いたい。

新潟日報 2009年2月11日

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全国学力テスト:参加問題、犬山市教委と意見交換 校長会全員が否定的 /愛知

 犬山市教育委員会は10日、4月の全国学力テストへの参加問題について市立小中学校長会と意見交換した。14校すべての校長(1校は代理)が学力テストに否定的な見解を述べ、校長会の総意として「学力テスト参加は慎重に討議を」との要望書が提出された。市教委は過去2年、学力テストへの不参加を決めたが、教育現場の意向を直接聞いたのは初めてで、結論にどう影響するかが注目される。

 1月の定例教育委員会で、委員から「事務局が提出する資料は大半が学力テストのデメリットばかりを強調した内容で、公正に判断できない」と不満の声が出たため、校長会に全委員6人が出向いて意見交換した。

 席上、校長から、情報公開によりテスト結果が開示されることを危惧(きぐ)する意見が相次ぎ、校長全員が「序列化や過度の競争を引き起こす可能性が高く、共生による学びの学校づくりの理念に相反する」などと参加に否定的な見解を述べた。

 また、テスト結果が出るのに半年もかかることを指摘し「教育現場の改善に生かせない」との意見もあったという。

 要望書はこうした意見を集約するとともに「(参加する場合には)情報開示によって学校運営や教育活動に支障が起きないよう配慮を」と求めている。

 この結果について、市教委のある委員は「全校が全く同じ意見というのには驚いた。意図的なものを感じる」と話した。

 16日の教育委員会では情報公開のあり方を中心に話し合う。【花井武人】

毎日新聞 2009年2月11日

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学テ参加、大半否定的 犬山市で小中学校校長会

 犬山市の小中学校校長会が10日、同市図書館で開かれ、市内全小中学校の校長ら14人と教育委員6人が全国学力テストの是非について意見を交換した。意見交換は、前回の1月28日の市教委で教育委員から「教育現場の認識を聞きたい」との要望があったため、非公開で約2時間にわたって行われた。

 出席した校長、教頭全員が発言し、「テスト結果の情報公開請求を拒否できず、他市町村、学校間の序列化、過度の競争につながる」と、参加に否定的な意見がほとんどだったという。

 また、全校の校長の連名による「開示を避けることができない現状での参加については慎重に討議していただきたい」との要望書が市教委あてに提出された。

 瀬見井久教育長は「要望書は現場からの勇気ある提言だ。校長会からの実質的な不参加表明だ」とし、田中志典市長は「市民感情と教育現場のずれが感じられる。参加することは犬山が目指す教育の成果を知らしめるよい機会と思う」とのコメントを出した。

 次回の市教委は16日に開催され、テスト結果の情報公開請求への対応を討議する。

讀賣新聞 2009年2月11日

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公的教育投資 国際競争に堪えうる大学に

 国を担う人材の育成には、教育への十分な投資が欠かせない。特に、各先進国が力を入れている高等教育分野は、資源の乏しい日本が国際競争を勝ち抜くために重要である。

 政府の教育再生懇談会が第3次報告で強調したのもこの点だ。

 「大学全入時代」の教育のあり方について、高等教育への公的支援に納税者の理解を得るためには、「教育の質の担保に努力しない大学は淘汰(とうた)もやむを得ない」としている。その上で、評価できる大学への支援拡充を求めた。

 高等教育の質が低下すれば、大学卒業者らに与えられる学位が海外で通用しなくなったり、優秀な留学生を呼び込めなくなったりして、日本の高等教育全体の評価を下げかねない。

 各大学の優れた事業などについて、競争原理を導入した公的資金の配分が徐々に始まっている。これらを、さらに充実させていく必要があろう。

 経済協力開発機構(OECD)が昨年発表した国内総生産(GDP)に対する公的教育支出の割合(2005年)をみると、日本は04年より0・1ポイント下がり、過去最低の3・4%になった。比較可能な28か国で最下位だった。

 最近公表された民間の国際大学ランキングでは、日本は他の先進国に比べて低迷している。

 企業や卒業生からの寄付が潤沢な米国の大学などと、単純な比較はできない。だが、教育学者からは「寄付に対する文化の違い」だけでなく、米国の大学では基金運用に多数の専門職員を配置し、努力しているとの指摘もある。

 日本の大学でも、自助努力の一環として検討に値するだろう。

 昨年策定された国の教育振興基本計画では、教育への投資充実を求めている。

 基本計画は決定直前になって、文部科学省が急遽(きゅうきょ)、今後10年間に投入する教育投資の目標額を盛り込もうとした。しかし、十分な準備もなく粗雑な算定だったため、目標額を明記できなかった。

 基本計画を受け、中央教育審議会も中長期的な大学教育のあり方を審議している。教育専門家らだけではなく、経済学者なども交えて議論すべきではないか。

 どの分野でどういう成果を上げるために、どれだけの公的な資金をつぎ込むのか。

 教育の分野では、数値目標を掲げるのが難しい面もある。だが、可能な限り数字で指標を示し、メリハリを付けた現実的な施策を打ち出してもらいたい。

讀賣新聞 2009年2月10日

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犬山市長、教育長に勧告「行事の職責果たせ」 全国学力テストで対立

 愛知県犬山市の田中志典市長は9日、全国で唯一参加していない全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)をめぐり対立を続ける瀬見井久市教育長に対し、所管事務に職責を果たすよう勧告した。教育長への勧告は昨年末から3回目。田中市長は「改善されなければ勧告を出し続ける」と言っており、4月に予定されている2009年度学力テストを前に、市長対教育長の対立は“場外乱闘”の様相を呈してきた。

 勧告では、8日開催の犬山国際友好シティマラソン開会式に瀬見井教育長が欠席したことを取り上げ「市民から厳しい叱責(しっせき)や質問があった」と指摘。これまでも教育長が教委の関連行事に出席しないことに触れ「今後は職務を再認識し、市民の期待に応えるよう強く勧告する」とした。

 今月4日には、教育長が小学校の創立記念式典を欠席したことについて同様の勧告を出していた。さらに昨年12月には、丹羽俊夫委員長の解任動議をめぐる混乱に対し、教育長に教委の適切な運営をするよう勧告した。

 田中市長は「仕事をしない教育長に早く辞めてもらわなければ、市民に申し訳ない。教育委員会の正常化のためにも、辞めるまで攻め続ける」と対決色を鮮明にした。これに対し瀬見井教育長は「一方的な話で、法的に根拠のない勧告にコメントする必要はない」と無視する姿勢を示した。

中日新聞 2009年2月10日

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2月県議会開会 寺田県政12年の総括を

 2月定例県議会がきょう10日、招集される。年4回の定例会の中でも当初予算案の審議など最も重要な議会であり、会期も1カ月近くに及ぶ。今回は4選不出馬の意向を示している寺田典城知事にとって最後の定例会。3期12年の寺田県政を議会がきちんと総括し、県政の今後の取るべき方向性を考える機会にしなければならない。

 12年前の1997年4月、食糧費問題で前知事が引責辞任したのを受けて登場した寺田知事は、「県庁改革」を旗印にして情報公開制度の充実などを図ってきた。行財政改革でも一定の成果を挙げたといえる。

 また、子育て・教育分野では少人数学級実現のための教員配置などに力を入れてきた。全国学力テストで本県が2年連続全国トップ級の成績を収めたのは、家庭や地域の教育力に加え、予算に裏付けされた行政側の「学ぶ環境づくり」への取り組みも大きいだろう。

 ただ、本県の置かれている状況は寺田県政の12年間で一層厳しさを増したともいえる。三位一体改革など国の政策にも左右されてきたが、全国最速の人口減少率、農山村部の疲弊、中心市街地の空洞化、東北最低レベルの経済力など県勢の低迷ぶりは各種指標にも表れている。こうしたマイナス指標を一歩でも二歩でも前進させる効果的な政策は、残念ながら見当たらなかったのではないか。

 寺田県政と県議会との関係もここ一番で食い違いがみられた。県政を前進させるための議論というよりは、感情的なしこりもあって、後ろ向きともいえるやりとりが少なくなかった。

 今議会で三たび提案する地域振興局再編関連条例案などはその一例。8カ所にある地域振興局を3総合振興局と5地域振興局にし、3総合振興局に人員と機能の集約を図るというのが県側の案だ。これに最大会派の自民党などが反対しており、三たび否決される可能性もある。

 同じような内容の条例案を3回も提出する県側の姿勢も問題だが、それを3回も否決しようとする議会側にも再考の余地があるのではないか。主張がどこまでも平行線をたどるなら別だが、県民のために効率的な行政を目指す点では一致しているはず。問題はその中身と手法だろう。政治には、時には妥協も必要だ。ぜひ一致点を見いだして県政を前進させてほしい。

 09年度当初予算案、とりわけ緊急経済・雇用対策関連も重要なテーマだ。県内でも「派遣切り」などの雇用問題が深刻となっている。県は1200人分の働く場を設ける雇用創出分を予算計上しているが、1200人程度では増加する一方の離職者にはとても追いつけない。さらなる雇用創出へ向け、議会も一緒に考え、アイデアを出すべきだ。4月の知事選前の当初予算案を「骨格」ではなく「本格」とした寺田知事の真意も当然、ただすべきだろう。

秋田魁新報 2009年2月9日

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憲法が生きる教育を 保護者・教職員らが集会 東京

 「とりもどそう東京に! 憲法が生きる教育を 東京集会2009」が七日、東京都千代田区の社会文化会館三宅坂ホールで開かれ、四百人が参加しました。主催は労組、団体でつくる実行委員会。

 浜林正夫・一橋大学名誉教授が「社会全体が壊れているなか、新自由主義的教育改革で教育も社会の安全網の役割を果たさなくなっている。教育の立て直しは社会全体を立て直すものだ」と主催者あいさつしました。

 山本由美・東京田中短期大准教授が講演し、教育の国家統制を進める新自由主義的教育改革で、東京では学校選択制や共通学力テスト、学校評価を通し学校・地域間の競争が激化していると指摘。子どもたちの受けるダメージを読み取り「改革」に反対する必要があると強調しました。

 リレートークで母親や教職員が「全国で少人数学級を実施していないのは東京だけ。オリンピックに毎年一千億円積む金があるなら三十人学級実現を」「特別支援学校の寄宿舎で子どもは友だちとかかわり社会生活の第一歩を踏み出す。都が寄宿舎を廃止するのはおかしい」と述べました。

 集会では「子どもたちを苦しめる『教育改革』を許してはならない。地域、学校で運動をつなぎあい、どの子も大切にされる教育を取り戻そう」とのアピールを採択。日本共産党の小池晃参院議員、笠井亮衆院議員がメッセージを寄せました。

しんぶん赤旗 2009年2月8日

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開学時に50研究班 大学院大/分科会で中期目標審議

 【東京】政府の独立行政法人評価委員会の沖縄科学技術研究基盤整備機構(OIST)分科会が六日、都内であり、二〇〇九―一一年度の中期目標を審議した。沖縄大学院大学の開学時に教員の半数以上が外国人となるよう目指すことなどを確認した。

 私立の形態をとりつつ国の財政支援を受けるが、内閣府は「開学時に五十の研究班を想定し、一つの班で必要な研究経費は年間約二億円」と説明した。

 委員からは「世界と競争できる資金をどう確保するのかが、最も懸念される」と指摘があった。内閣府は「競争的資金の獲得に強い問題意識を持っている」と述べ、海外の大学のような研究基金も検討するとした。

 恩納村キャンパスの〇九年度一部供用開始を受けて、国内外の大学院生受け入れを拡大。教員のテニュア(終身在職権)や定年の扱いを含めた人事制度などが検討課題に挙がった。

沖縄タイムス 2009年2月8日

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携帯電話教育 将来上手に使えるよう

 文科省は「小中学校の教育活動に携帯電話は不要」として、緊急連絡の手段など例外的に許可する場合を除き、児童生徒による学校への持ち込みを原則禁止する通知を都道府県教委に出した。

 高校については、行動範囲の広がりなどを考慮して、授業中の使用禁止や校内での使用禁止などのルール作りを促している。「ネットいじめ」や有害サイト、出会い系サイトなどのトラブルから、子どもたちを守るのが目的だ。

 全国的には、既に大半の小中学校で禁止されている。本県でも昨年12月時点で公立小学校の約75%、中学校は98%を超える学校が原則禁止。文科省通知は実態を追認した格好だ。

 文科省は、通知の中で「情報モラル教育の一層の充実」を求めている。通知は、学校の中に限り、ひとまず子どもたちを携帯から遠ざける「口実」にはなっても、根本的な解決策とはなり得ないのは当然だ。

 これを機に学校と保護者、子どもたちが一緒になって、ネット社会の功罪を考える取り組みに本腰を入れるのでなくては、通知は学校現場や保護者が、本質的な責任を回避するという意味しか持ち得ないだろう。

 日本PTA全国協議会が2007年、全国の小学5年と中学2年、その保護者らを対象に行った調査によると、PHSを含む携帯電話の所持率は小学生で19%、中学生は43%。実際の通話よりメールを多用しており「深夜でもやり取りをする」のは小学生で11%、中学生は51%に上る。

 保護者の38%は携帯電話の影響を否定的に見ているが、使用時間の長さや時間帯などのルールがない家庭が小学生で35%、中学生は半数を超える。気になるのは、子どもの方は80%近くが「ルールがない」と思っていることだ。親の意識が子どもに十分伝わらない傾向が見て取れる。

 県内では、同じく07年に県警が中高生を対象に行った利用実態調査があるが、基本的に警察活動に資する目的で行われた調査では、子どもの意識や学校、家庭の取り組みなど、携帯電話をめぐる詳細な実態はつかみにくい。

 携帯電話は、ナイフのように、その物自体に危険があるのではない。本来的には利用価値のある道具であり、小中学生の多くが近い将来所有する可能性をにらめば、有害性に傾きがちな取り組みでは視野が狭まる懸念がある。

 教育行政が率先して地域の実態把握に努め、保護者らとデータを共有した上で、功罪両面から携帯電話とのかかわり方を指導していく必要があるだろう。

 NTTドコモやヤフーなどの情報通信関連業界は今年に入り、教育団体と共同で「安心ネットづくり促進協議会」を設立した。日進月歩の情報技術の発達は、ともすれば子どもの知識に親や教師が追いつかない現実もある。業界は企業色にとらわれず、情報モラルの確立に積極的に寄与していくよう望みたい。

遠藤泉(2009.2.8)

岩手日報 2009年2月8日

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火山観測体制 大学頼みでは不安残る

 桜島と浅間山(群馬・長野県)の火山活動が活発化している。気象庁は両火山の噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から3(入山規制)に引き上げた。大噴火につながる可能性は低いというが、活動の予測には難しさがつきまとう。油断してはならない。

 地下のマグマが上昇してきて噴き出す現象である噴火は、火山性の地震や微動、山体の膨張などを伴うことが多い。そのため地震に比べると予測しやすいと思われがちだ。

 しかし、顕著な前兆がないまま噴火に至る例も少なからずある。まして噴火の規模、どれだけ続くかの見極めは難しい。であっても異変を見逃さないためには警戒を怠れない。

 活動予測の土台となる観測、研究体制も整っているとはいえない。火山国・日本には108の活火山があるが、うち気象庁が常時観測するのは34に過ぎない。しかも各地の国立大の観測に大きく依存している。

 ところが、ここに来て、気象庁は大学に頼りすぎ、体制強化を怠ってきたつけの支払いを迫られている。国からの運営費交付金が減り続けているため、大学が観測体制を維持するのが難しくなってきたからだ。老朽化した機器を更新できないばかりか、研究者も減少している。

 文部科学省は来年度から研究上重要な火山に予算や人員を集中する方針を打ち出したので、この状況は加速するだろう。重点観測火山は現在の半分程度に絞られるので、2007年12月以降、21の火山に導入され、ようやく浸透してきた噴火警戒レベルの運用にも不安が残る。

 大学が抜けた後の観測は気象庁がカバーするしかない。手薄にならざるを得ないだけに、自前の観測体制の強化が急務だ。火山専門家を増やす取り組みの重要性も増した。

 浅間山は今回、初めて警戒レベルが3に引き上げられた。噴火の前日に発表できたのは長年、地道に積み重ねてきたデータが生きたからだろう。00年3月に起きた北海道・有珠山の噴火では北海道大などの長年の研究・観測が、噴火2日前の住民避難指示につながったといえる。

 ただ、ほぼ同じパターンで噴火を繰り返す有珠山のような例は特別ととらえるべきだ。今の火山学の実力は、経験したことがない活動を予測する域には達していない。研究者によると、桜島の活動も従来とは違うパターンで推移しているという。まだまだ分からない火山だらけの日本で、監視を緩めていいわけがない。

南日本新聞 2009年2月8日

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大阪副知事に綛山教育長──橋下知事意向

 大阪府の橋下徹知事は6日、3月22日に任期が切れる総務省出身の三輪和夫副知事(52)の後任に綛山(かせやま)哲男教育長(59)を起用する人事を固めた。教育長の後任には中西正人総務
綛山哲男教育長
部長(57)を充てる方針。

 現在、副知事は三輪氏と府職員生え抜きの小河保之氏(62)、昨年10月に就任した関西電力出身の木村慎作氏(58)の3人。2月議会で同意を得た上で就任する。任期は4年。

 綛山氏は橋下知事が重要政策に掲げる教育分野の改革を後押しする。同氏は当初「教育を死なすわけにはいかない」と知事の歳出削減策を批判。ただ、全国学力テストの結果公表では知事の意向を踏まえて市町村教委側に結果公表を要請するなどした。

 綛山氏は大阪大を卒業し、1973年に入庁。2002年に知事公室長に就任。生活文化部長、企画調整部長、政策企画部長を歴任し、07年4月から教育長を務めた。中西氏は京都大卒で74年に入庁。行政改革室長や人事室長を経て、07年から総務部長。

日経ネット関西版 2008年2月7日 

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大阪副知事に教育長起用へ 霞が関出身者ゼロに

 大阪府の橋下徹知事は6日、総務省出身で3月22日で任期切れとなる三輪和夫副知事の後任に綛山哲男教育長(59)を起用する方針を固めた。6日午後、議会関係者に伝えた。

 大阪府の副知事は定数3。三輪氏のほか、関西電力出身の木村慎作氏、府職員生え抜きの小河保之氏が就いており、綛山氏が就任すれば、中央官庁出身者はいなくなる。2月府議会に提案し、同意を得た上で就任の見通し。任期は4年。

 綛山氏は、橋下知事が全国学力テストの市町村別結果を公開する方針を表明した際、府内の市町村側に公開の意義や目的を説明するなど橋下知事の教育改革に尽力した。

 綛山氏は大阪大卒で、1973年に府庁入り。2002年に知事公室長となり、生活文化部長、企画調整部長、政策企画部長を経て、07年4月から教育長を務めた。

共同通信 2009年2月6日

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ケータイは勉強の邪魔?大阪・成績低下、逆に東京・高学力

 文部科学省が先月末、全国の小中学校に通知した「携帯電話持ち込み禁止令」を機に、子供とケータイの問題が改めて注目されている。

 通知の直接の理由は「学校での教育活動には必要ない」というものだったが、各地の教育委員会からは「ケータイが勉強の邪魔になっている」という調査結果も出始めた。実際のところ、ケータイと学力はどこまで関係があるのだろうか――。

 「ケータイへの依存度が高くなれば、学習時間は短くなる」。昨年12月3日、公立小中学校への持ち込み禁止を宣言した大阪府の橋下徹知事はこう強調した。発言の根拠となったのは、府教委が昨年7月、小2〜高3の約1万4000人を対象に行ったケータイ利用アンケートの結果だった。

 「1日の使用時間」「1日のメールの回数」「メールを受信してから返信するまでの時間」から、携帯依存度を高・中・低の三つに分類。依存度が「低」のグループでは、1日の学習時間が30分以下の子供の割合は3割弱だったが、「高」では5割を超えた。受験を控えた中3の2割以上が、1日3時間以上ケータイを使っている実態もわかった。

 大阪府は、2008年度の全国学力テストの合計点が小学校で全国41位、中学で45位と低迷している。調査担当の水本哲也・首席指導主事は「ケータイがどれだけ子供の時間を奪っているのか、親は知らないのでは」と指摘する。

 3年間にわたって中学生約3000人の学力の変遷を追った兵庫県尼崎市教委は昨年11月、「ケータイは成績に悪影響を及ぼす」との結果を公表した。3年間持たなかった生徒の平均偏差値は男子が52・9、女子53だったのに対し、持ち続けた生徒は男子が48・9、女子が49・1。特に、中3から持ち始めた女子は1年間で2・0ポイントも下がった。

 石川県教委の場合、昨年4月、小学4年生約1万1000人を調べたところ、持っていない児童の正答率は国語で82・4%、算数77・4%。通話やメールをほぼ毎日している児童よりそれぞれ9・5ポイント、11・8ポイント高かった。

 学力とケータイの使用頻度はどこまで関連があるのか――。文科省が08年度に実施した全国学力テストと小中学生のケータイ利用アンケートの結果を、読売新聞が都道府県別に集計したところ、小学生の成績がトップの秋田県は「ほとんど使わない」「持っていない」と答えた児童の比率が全国で2番目に多かった。中学生の成績がトップの福井県もケータイの利用頻度は5番目に低かった。

 とはいえ、愛知県の中学生は、ケータイの利用頻度は全国で9番目に高いが、成績は10位。東京都の小学生も、全国で最も多くケータイを使っているのに、成績は5位とトップクラス。中学受験塾の「四谷大塚」は「中学受験を目指して塾に行く子供の7割がケータイを持っているので、そのせいでは」と分析する

讀賣新聞 2009年2月6日

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全国体力テスト:鳥取県教委、結果開示へ 次回、学校別など全国初

 文部科学省が実施している「全国体力テスト」について、鳥取県教委は5日、次回から市町村別と学校別データの開示を前提に実施すると明らかにした。文科省は都道府県に、市町村名や学校名を明示したデータを公表しないよう求めており、開示を前提に実施すると表明するのは都道府県レベルで初めてとみられる。同県教委は「全国学力テストを原則開示とした情報公開条例改正の議論を踏まえた」としている。

 毎日新聞が行った08年度の市町村別、学校別データの開示請求に対し、非開示を通知するとともに、今後の方針を明らかにした。

 08年度分の非開示の理由は「市町村教委や学校が非公開を前提に参加しており、開示すれば信頼関係を損なう」と説明。一方で「体力テストのデータは生活習慣や家庭教育にかかわるものが多く、データの活用を学校教育だけに限定すべきでない」ことを、次回以降の開示の理由に挙げた。

 全国体力テストは文科省が小学5年と中学2年を対象に08年度初めて実施。次回は今年4〜7月に行われる。【宇多川はるか】

毎日新聞 2009年2月6日 東京夕刊

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体力テスト非開示 市町村別学校別結果 本社請求に県教委

 鳥取県教委は五日、文部科学省が本年度初めて実施した「全国体力・運動能力調査(体力テスト)」の県内市町村別、学校別結果の開示を求める新日本海新聞社の開示請求に対して、非開示処分とした。来年度以降実施される体力テストについては、全国学力テストの対応と同様、原則開示するという。

 新日本海新聞社などマスコミ各社が先月、県情報公開条例に従って開示請求していた。県教委の福本慎一次長は非開示とした理由について「市町村教委は非公開を前提に参加したもので、開示すれば信頼関係が失われる」と説明した。

 文科省は実施要領で、都道府県教委が市町村別、学校別結果を一方的に公表することは「過度の競争につながる恐れがある」などとして禁じ、公表も開示もしないように求めていた。

 県内では昨年、全国学力テスト結果の開示をめぐって論議となり、十一月県議会で開示請求者の「配慮規定」を盛り込んだ県情報公開条例を改正。その上で、来年度以降実施される学力テストについては開示を決めた。

日本海新聞 2009年2月6日

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学位と金 あしき慣習では済まぬ

 こんな非常識な慣習がまだ続いているのだろうか。東京都の私学、東京医科大で博士号の学位論文審査にかかわった三十人を超す教授が、博士号を取得した医局員らから謝礼名目で現金を受け取っていたことが分かった。

 謝礼が学位審査に与えた影響は不明だが、公平であるべき審査に金銭が絡んでいたこと自体、学位への信頼を揺るがしかねない。早急に全容を明らかにするとともに、現金授受が続いていた背景を解明すべきだ。

 東京医科大では二〇〇五―〇七年度にかけて、一件の論文につき、審査を担当した教授三人に一人当たり十万円を渡すのが慣例だったという。

 同じような現金授受は、昨年三月に横浜市立大の医学部で発覚し、教授らが停職処分などになった。文部科学省はこれを受けて、各大学に学位審査の厳正化を通知していた。

 東京医科大のケースはその後、文科省に寄せられた内部告発で発覚した。大学が主体的に調査に乗り出したのではあるまい。学内に調査委員会が設けられたが、文科省への最初の報告も不十分として、再度の報告を求められている。大学側の危機感が伝わってこない。

 〇七年には名古屋市立大で教授が学位審査の問題を漏えいし、現金を受け取っていたことが判明。教授はその後、収賄の有罪判決を受けた。

 文科省によると、国立大の教授は公務員とみなされ、現金の受け取りが収賄罪に問われることもある。だが東京医科大のような私学では、直ちに罪には問われないという。

 たとえそうだとしても、博士の学位に公立、私立の区別はない。やっていることが同じなら、私学の教授も罪の意識を持ってしかるべきだろう。また公立、私立を問わず、なぜ大学の医学部で社会常識と懸け離れた慣習が長年続いているのか、徹底した調査が求められる。

 「医局人事を教授が握っており、将来を考えると謝礼が必要だ」という関係者もいる。教授に権限が集中する医局の体質に問題があるのなら、改善の方策もあるはずだ。

 深刻なのは、同様の問題が発覚するたびに、「氷山の一角」「全国の医学部で常態化している」という声が聞こえてくることだ。ことは医学界に対する社会の信頼にかかわる。「あしき慣習」で済ませてはならない。

高知新聞 2009年2月5日

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教育重視、秋田の力をブランドに 学力テスト好成績受け

 4月に知事選を控える中で編成された県の2009年度一般会計当初予算案。通常は骨格編成となり、特色がない内容になりがちだが、今回の予算案では教育分野を重視する姿勢が目立っている。

 全国学力テストで本県が2年連続トップ級の成績を収めたことを受け、好成績の背景となった本県の教育力や地域力を地域ブランドとして定着させ、全国への情報発信に乗り出す。「秋田の教育力・地域力発信事業」として342万円を計上し、「教育フォーラムin秋田」の開催、関東、東北の小中学校の修学旅行の誘致支援などを行う。

 また、修学旅行の誘致支援についても、これまでの誘致活動に加え、同課は「学力テストの好成績を生んだ地域の暮らしぶりなどを合わせてPRしたい」と意気込む。具体的内容はこれから詰めるが、他都道府県の小中学生が県内学校の授業を見学したり授業や行事を体験することなども検討している。

秋田魁新報 2009年2月4日

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キャリア教育 学校任せでは実を結ばない

 文部科学相の諮問で、中央教育審議会が「キャリア教育・職業教育のあり方」について審議を始めた。折しも急速に雇用不安が高まっており、審議は大きな課題を担うことになった。

 キャリア教育とは何か。中教審は99年、中学・高校と大学の教育のつなげ方について答申した際、この言葉を用い「望ましい職業観・勤労観および職業に関する知識や技能を身につけさせ、自己の個性を理解し、主体的に進路を選択する能力・態度を育てる教育」と定義した。

 もっともだが、何やらつかみどころがない。学校現場の先生にはなおのことだろう。体系的な課程が整っているわけではない。

 新学習指導要領では、例えば小学校では国語や道徳、総合的な学習の時間などにこうした理念をちりばめ、中学では職場訪問など体験活動の充実をうたう。高校で「キャリア教育」の文言が登場し、推進のため産業現場で長期間の実習などをするよう求めている。実際の取り組みは、従来の進路指導に加えた各校の工夫にゆだねられているといってよい。

 こうした中で今回の諮問のポイントは「体系化」だ。将来社会に出て職に就くために学校の各段階で求められる「基礎的で何にでも有用な能力」を明らかにする。それを確実に育成できるような体系的なキャリア教育の充実策を考えてほしいというのだ。

 具体的な例示はないが、コミュニケーション能力から責任感、協調性とチームワークなどに至るまで目標はいくつも想定できる。問題は数量化が難しいそれらをどう絞り、段階的に教育していくか。かつてない試みともいえよう。

 そして諮問は、専門的知識・技能を育成する従来の高校、大学の職業教育のあり方も見直し、社会の多様なニーズに柔軟に応えるものを、と求めている。

 そもそも近年学校にキャリア教育の必要性が指摘されたのは、産業構造や就業形態の変化とともに就職に対する意識も変わったことによる。動機づけや技能的準備が不十分なままでは「ミスマッチ(不適合)」も起きやすい。諮問理由によると、新卒者が就業後3年以内に離職する割合は中学卒約7割、高校卒約5割、大学卒約4割という。

 ただ、キャリア教育が事態改善に有用でも、学校教育の範囲にとどめていたのでは十分な効果は望めまい。地域社会や雇用者側に常に新しい人材を受け入れ、責任をもって育て伸ばす姿勢がなければ、在学中のインターンシップのような実習体験教育さえ形骸(けいがい)化しかねない。

 また視点を変えれば、キャリア教育が目指すものは教育改革の基本理念である「生きる力」と重なる。この審議は限られたテーマではなく、本来の教育のあり方を考えることにもなろう。成果を期待したい。

毎日新聞 2009年2月3日

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全国一斉、考え直せ

 文部科学省が全国一斉に行った学力テストと体力テストの公表をめぐり、各地で対立や議論が続いている。

 公表の是非を論じる前に、そもそも全国一斉に行う必要があるかを考えたい。結論から言えば、原則的に抽出調査で足りる。貴重な予算は、より必要な教育投資に使うべきだ。

 全国学力テストは二〇〇七年度に四十三年ぶりに実施され、〇八年度も四月に行われた。全国の小学六年と中学三年を対象に、国語と算数・数学の基礎的知識と応用力を調べた。学習環境や生活習慣も併せて調べた。

 全国体力テストは昨年四−七月に小学五年と中学二年を対象に行われ、握力や立ち幅跳びなど八種目の実技と、朝食摂取の有無などを調べた。

 その結果、学力の正答率(初年度)では、全国平均で基礎的知識は七−八割前後だったが、応用力は六−七割。知識はあっても活用が苦手な傾向が見られた。京都府は全国平均並み、滋賀県は全国平均をやや下回った。

 体力テストでは他の調査同様、全国的な低下傾向が目立った。特に中学では男女とも全然運動をしない生徒が予想以上に多く、体力の二極化が目立った。結果的にすべての項目で過半数が一九八五年度の平均値を下回った。

 文科省は両テストとも毎年続ける意向だが、賛成できない。従来行われてきた他の抽出調査とほぼ同様の結果が出ているからだ。学力テストはこの二年間の結果で十分、体力テストもせいぜいあと一年で十分だろう。

 両調査にかかった費用は、学力テストが初年度七十七億円と二年目五十八億円、体力テストが約一億九千万円。調査に屋上屋を架す必要はない。予算は教員増や校舎の耐震化など、より適切な教育投資に回すべきだ。

 一方、調査結果の公表をめぐっては各地で混乱が続く。文科省は都道府県の平均値を発表、市町村分は当該教育委員会の判断に任せ、学校別の平均値発表はしないよう求めている。

 文科省が慎重なのは結果公表が差別化や競争激化を招きかねないとみるからだ。一例をあげれば、就学援助を受ける子どもが多い学校ほど、学力テストの正答率が低くなる傾向が明確になった。公表が、学校間差別を助長する恐れがないとはいえない。学校別の数値公表は望ましくあるまい。

 それでも市町村別の数値については公表の仕方を工夫し、目的を明確にして出す選択肢もあろう。向日市教委では昨年秋、学力調査の市平均値を公開し、翌月、テスト結果の分析と今後の取り組み方針も発表した。こうした姿勢が大切ではないか。

 体力テストも同様だが、課題を明らかにして、保護者や地域の意識啓発を図ることも大切だ。数値に一喜一憂せず、生かす工夫を重ねるべきだろう。

京都新聞 2009年2月3日

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科学技術立国 すそ野を広げていこう

 これで先端技術が身近になり、子どもの理数離れに少しは歯止めがかかるのではないか。種子島からH2Aロケット15号機で打ち上げられた小型の相乗り人工衛星のことである。高等専門学校の学生や町工場などが開発に携わり、目的も雷予報に地球撮影など多くの興味を引くものだった。

 2010年度には鹿児島の産官学の技術を詰めた衛星KSATも宇宙に飛び出す予定だ。鹿児島の子どもも科学の楽しさに目を見張り、未来へ明るい夢を膨らませるだろう。

 先端技術はロケットだけでなく、一国の経済を浮揚させる。資源に乏しい島国の日本にとって、優秀な技術と人材はとりわけ重要だった。グローバル化が進んだ今も、日本経済と国民生活の繁栄は科学技術立国の成否にかかるといっていい。

 政府は先端技術の開発を経済活性化の柱の一つと位置づけ、関連予算を例外的に増やしてきた。第3期に入った科学技術基本計画は投資目標額を25兆円としている。

 ただし問題がないわけではない。一つは独創的、先駆的と評価された研究に助成される「競争的資金」の在り方である。研究を提案して資金獲得を競えという狙いはわかる。しかし、助成期間は多くが2、3年の短さだし、研究者の実績や経歴が審査で重視されるため、結果として若手研究者が選に漏れがちだ。

 昨年ノーベル賞を受けた日本人4人の業績に共通するのは、好奇心に駆られた若いころの基礎科学分野の研究であったことだ。短期の成果を求める競争ばかりでは、むしろ独創の芽を摘まないか心配である。競争的資金の規模はまだ米国の10分の1程度に過ぎない。総額を増やすとともに、審査基準や助成期間の緩和といった見直しが必要である。

 二つ目は大学など高等教育機関への公財政支出の低さである。日本の水準は欧米主要国の半分程度、経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で最低だ。なおかつ国立大学の台所を支える運営費交付金は毎年約1%ずつ削られ、京都大では非常勤職員約100人を「雇い止め」にした。

 ノーベル物理学賞の小林誠さんは「運営費交付金が毎年減っている。基礎科学、基盤的研究が置かれている現状は大変厳しい」と受賞会見で述べていた。研究にも競争は必要だ。だが、現状は行き過ぎではないか。いつ役立つかわからない。そんな研究にも若手が没頭できるよう科学技術立国のすそ野を広げていきたい。

南日本新聞 2009年2月3日

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子供の体力 運動する機会を増やせ

 児童生徒が対象の全国体力テストで、中学二年女子の三割は一週間の総運動時間が六十分未満だった。運動している子としない子の二極化が目立つ。意識してでも、体を動かす工夫がいるようだ。

 全国体力テストは文部科学省が昨年初めて実施した。毎年行っている抽出方式の体力・運動能力調査とは別のもので、小学五年と中学二年の全員が対象だ。一昨年から始まった全国学力テストの「体力版」といえる。

 テストは五十メートル走や握力、反復横跳びなど八種目の実技を行い、生活・運動習慣も尋ねた。

 結果をみると、子供の体力が低下している実態があらためて浮き彫りになった。ピークだったとされる一九八五年当時と比べ、五十メートル走やソフトボール投げなどの比較できる種目の大半で劣った。

 体力の低迷は運動時間の少なさによる。一週間の総運動時間が六十分未満の割合は男子が小五11%、中二9%だが、女子は小五23%、中二31%。運動している子としない子の二極化傾向も顕著だ。

 テレビ視聴やゲーム遊びの増加、塾通い、安全な遊び場がない。「三間(時間、空間、仲間)」の減少が指摘されて久しい。子供が運動する機会をできるだけ増やし、体力低下を食い止めなくてはならない。

 体力の向上は生活習慣が密接にかかわる。学校任せにせず、家庭でのサポートも重要だ。

 文科省は体力テストを「一人一人の実態を把握し、対策を講じてもらうため一斉方式にした」というが、全体で参加者は七割だった。小学校の参加率は石川100%、愛知99%だが、東京44%、滋賀10%と、都道府県で格差がみられた。国からの実施通知が昨年三月、期限が七月末では準備できない自治体が出るのは当然だ。

 学力テストに後れを取るまいとした文科省担当部局の思惑が先走ったのだろう。体力テストの導入は拙速だった感が否めない。

 参加率に差があるのに文科省は都道府県別平均値を公表した。どれほどの意味があるのか。橋下徹大阪府知事は「大阪は体力も駄目」と怒り、市町村に結果公表を求めた。学力テストと同じく過度の競争を招く懸念がある。

 データを個々に生かしていくなら毎年実施が筋だが、費用や手間がかかる。傾向把握なら抽出方式で十分だ。新年度も小五と中二の全員対象で行う予定という。子供には活用できず、現場の負担を増やすだけにならないだろうか。

中日新聞・東京新聞 2009年2月2日

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携帯禁止 依存脱する環境整えたい

 子供の携帯電話に関し文部科学省が小中学校では持ち込みを原則禁止とする通知を出した。高校では校内の使用禁止などを求めている。通知は当然である。

 携帯電話を持つ子供は急速に増え、内閣府調査では小学生で約3割、中学生で約6割、高校生で9割超が使っていると答えた。通話以外にメール交換ができる機能があり、指1本の簡単な操作で情報交換できる。

 便利な一方、性や暴力など有害情報に触れたり、出会い系サイトなどで見知らぬ大人と知り合い犯罪に巻き込まれたりする事件が後を絶たない。悪口が書かれるなどいじめの温床にもなっている。対応が強く求められながら指導は追いつかない現状だ。

 文科省調査では小中学校の9割以上の学校がすでに携帯電話の持ち込みを原則禁止にしている。

 だが隠れて持ち込む生徒もおり必ずしも禁止が徹底されていない。放課後の連絡、防犯用として子供に持たせる家庭が増え、家庭から申請があれば許可している小中学校も半数以上あった。

 しかも肌身離さず持っていたいという携帯電話依存の子供が増え、取り上げると教師に文句をいう。親が抗議してくるあきれたケースもあるという。

 大阪府の橋下徹知事が昨年、公立小中学校で持ち込み禁止を打ち出したが、都道府県教育委員会のうち、こうした指導方針を定めているのは半数にとどまる。

 文科省が通知を出したのは国としての方針を示して学校現場の指導をしやすくするものだ。緊急連絡用など例外を認め、授業中は学校が預かるなど指針も示した。

 ただ学校の取り組みには限界がある。通知で文科省はネットいじめが学校外で起きている例をあげて家庭や地域の協力を求めた。

 中学生の半数、小学生の1割が深夜までメール交換しているという調査がある。こうした利用実態を知っている親は少ないだろう。持たせるなら家庭で使用ルールをしっかり決め守らせるべきだ。

 大阪府は教委や警察の共同事業で「使いすぎは学習や健康のさまたげ」などステッカーをつくりキャンペーンに乗り出した。

 地域ぐるみで携帯電話を持たせない運動により、非行を防止しているところもある。四六時中、携帯電話を手放せない子供たちの現状は変えねばならない。社会が連携して歯止めをかけたい。

産経新聞 2009年2月2日

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学力テスト:知事のデータ開示、大阪府内の校長9割が批判

 橋下徹・大阪府知事の就任1年(2月6日)を前に、毎日新聞は、府内の市町村立小・中学校の校長全員(1480人)を対象に、知事の教育行政について尋ねるアンケートを実施した。562人が回答した。橋下知事による、全国学力テストの市町村別平均正答率の開示については9割以上が批判。市町村教委が自主的に平均正答率を公表することにも4分の3が反対した。データの公表に対する教育現場の抵抗感の強さが浮かび上がった。

 ◇大阪府内の校長に本社調査
 小学校の校長1016人、中学校の校長464人にアンケート用紙を郵送し、無記名で回答を求めた。小学校長347人、中学校長215人が回答した。

 アンケートでは、橋下知事の開示のあり方について択一式の質問で評価を尋ねた。結果は、62%が「市町村別平均正答率は一切開示すべきでない」と回答。「設問別だけ公表する市町村の平均正答率は開示すべきでない」との回答も30%あり、批判的な評価は合わせて92%に上った。

 また、市町村教委が自主的な判断で平均正答率を公表することへの賛否についても、74%が「反対」と答え、「賛成」は23%だった。反対理由では「市町村により地域事情が異なり、公表に意味がない」が最も多かった。

 ◇校長アンケと逆、府民は賛成76%…先月の本社調査
 毎日新聞が大阪府民を対象に1月17、18日に実施した世論調査では、橋下知事が全国学力テストの市町村別平均正答率を開示したことに76%が「賛成」と答えた。「反対」は15%。校長アンケートの結果とは逆の傾向を示した。行政全般にわたり情報公開の流れが進むなか、学力に関するデータも公開が妥当とみる意見が多数派のようだ。賛成を年代別でみると30代が84%と最も高く、70代以上が65%と最低だった。

 ◇全国学力テストのデータ公表問題
 文部科学省は都道府県教委に対し、市町村名を明らかにして市町村別データを公表しないよう実施要領で求めている。これに対し、橋下知事は昨年10月、「実施要領は知事を拘束できない」と主張し、府教委から受け取ったデータを部分開示。12月には、秋田県の寺田典城知事が全市町村の平均正答率を全国で初めて公表した。来年度以降分についても、鳥取県が市町村別・学校別データを開示することを決めている。こうした動きに対し、文科省は「市町村別データはいらない」と申し出る都道府県教委にデータを渡さないことを検討したが、橋下知事らの批判を受け、来年度の実施要領にこの措置は盛り込まなかった。

毎日新聞 2009年2月1日

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国際教養大学理事長・学長 中嶋嶺雄 教育の秋田、その底力の秘密

 ≪学力テストだけじゃない≫
 秋田の教育がいま、全国的に注目されている。その第1の要因は、昨年、一昨年と小中学校の全国学力テストで秋田がトップに立ったことであった。当初は半信半疑であった人びとも、2年連続トップになったことで、「なぜ秋田が」と真面目に問うようになった。東京の山手線には「秋田に学べ」という進学塾の広告が出たほどである。

 第2は、寺田典城県知事がこの全国学力テストの市町村別成績を公表し、一石を投じたからである。学力テストの市町村別結果については、文部科学省が公表しない方針を打ち出し、自治体の各レベルの教育委員会もそれに従っている。寺田知事の決断は、そのような国家統制への地方からの挑戦にほかならない。県内では藤里町など一部町村が反発して学力テストへの不参加をいったんは表明するなど、さらに論議を呼んだ。

 第3は、PRめいて恐縮だが、開学5年目の国際教養大学の評価が、先日の大学入試センター試験の点数などでも再上昇し、この秋田の地に日本はもちろん海外からも優秀な学生がつめかけていることである。ある大手予備校が最近発表した入試難易度予想データによれば、本学のC日程(センター試験の成績と英語小論文)で合格ボーダーラインに達するにはセンター試験の93%の得点が必要となっている。これは実に、東京大学(理IIIを除く)の92%を上回っていた。

 ここまで書いて、秋田の子どもたちは体力テストでも全国トップクラスと報じられた。「教育の秋田」にはいま、大きな注目が集まる。

 ≪「田舎」の方が成績優秀≫

 まず第1の全国学力テストでの連続トップの好成績については、県内でもさまざまな検証がなされている。

 好結果を生んだ要因の一つとして、家庭がしっかりしていることが挙げられた。朝食、夕食を両親や家族とともに規則正しくとる。それは学童・生徒の精神や情緒の安定につながっていると指摘された。家庭の在り方がいかに重要かがわかるであろう。

 秋田の子どもたちは塾に通う率がきわめて低い。しかしその分、家庭で予習・復習する。テレビを見る時間も少ない。さらに秋田市の有名な「竿灯(かんとう)まつり」にも見られるように、子どもたちが地域社会で役割を演じていて、田舎に行けば行くほど鎮守の祭りにも多く加わっている。つまり今日の日本社会が失いつつある古き良き伝統が生き、保守されているのだ。

 そこで第2点、市町村別の学力テストの成績を知事が公表するに至った所以(ゆえん)に移ろう。同じ秋田県内でももちろんテスト成績にはばらつきがある。だが、ハタハタ漁の八峰町や秋田杉の里の上小阿仁村、西馬音内(にしもない)の盆踊りの羽後町といった人口の少ない田舎の方が、秋田市など都市部よりも成績が良いという、大いに考えるべき結果が含まれていたのである。

 ここには、日本社会の現状を見る上での重要な課題が潜んでいるように思う。

 そもそも、学力テストの詳しい結果を公表すべきでないという文科省方針は根本的に誤っている、と私は思う。それが序列化につながるとか、競争をあおるといった理由づけもおかしい。これでは「ゆとり教育」から脱却するという最近の方針転換がどこまで本気なのかと疑いたくなる。

 ≪大学教育にも知事の支援≫

 教育においては、能力や成績に応じた対応がぜひとも必要なのである。運動会で等級を避けたり、成績表の相対評価を避ける「平等主義」の悪弊からは、速やかに脱しなければならない。他の都道府県教委も日教組も結果公表には文科省と同一歩調をとっている。そのような「一貫性教育ギルド社会」から脱しない限り、わが国の教育再生はできないのではないか。

 第3の国際教養大学に関しては、私が責任を負う公立大学法人であり、詳細な言及は避けたい。しかし本学の開設自体が秋田県議会での、つまり寺田県政の重大課題なのであった。それだけに私たちは、これまでの日本の大学にはない個性を求めた。

 すべての授業、学内の会議を英語で行う。全学生が1年間の海外留学で1学年分の単位を取得し、単位の互換を可能とするカリキュラムと、そのための国際コードを設けた。教職員の教育力、とくに英語力を高め、海外からの留学生はもちろん日本人学生の勉学意欲を引き上げる。新入生は全員が寮生活で、図書館は24時間開いている。

 さらに「8月に卒業、9月に入学」といった世界の実情に合わせたグローバル水準の大学にしたことが大きかったと考える。これが、秋田という一地方で、最も先端的な高等教育を可能にしているといえるのかもしれない。(なかじま みねお)

産経新聞 2009年2月1日

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県内子どもの体力 運動する環境を整えよう

 徳島県内の子どもたちの体力不足、運動離れが深刻だ。

 文部科学省が小学五年と中学二年を対象に本年度初めて実施した全国体力テストで、実技八種目のうち、小学五年女子の握力とソフトボール投げ、中学二年の男女の握力を除いて、全国平均を下回った。特に、小学男子の体力は全国ワースト二位だった。

 生活、運動習慣調査では運動している児童と、していない児童の二極化傾向を示した。

 子どもの体力低下の原因はどこにあるのか。県教委や学校関係者は調査結果を詳細に分析し、保護者や地域の人々とともに指導・改善に取り組んでもらいたい。

 運動不足の最大の要因は徒歩で登校する小中学生が少ないことだ。

 市町村合併や少子化で学校の統廃合が進み、中山間地域を中心にスクールバスや公共交通、自家用車の利用が多くなっていることによる。

 日曜日に運動している時間も全国平均を下回った。「場所がない」「仲間がいない」が主な理由だ。

 塾通いの増加や犯罪防止もあって、学校での部活動以外に、地域で安心して自由に遊べる場が減っていることを示している。

 体育の授業だけでなく、運動する機会を意識してつくる必要がある。それは大人の責務である。

 今回のテストは、これまでの年一回の抽出調査では詳細な状況が把握しにくいとして、学年全員方式を導入した。

 だが、結果は抽出調査と大差がなかった。文科省の分析結果も「朝食の摂取状況が良いほど合計点が高い」「毎日一時間以上運動すると体力向上に効果がある」など、当たり前と思えるような内容だった。

 テストには二億円近く掛かっており、毎年実施する必要があるのかどうか。再検討してもらいたい。

徳島新聞 2009年2月1日

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