2009年1月


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ケータイは学習を妨げる 地域、PTAは早く立ち上がろう

■橋下府知事携帯電話発言
 公立小中学校児童生徒の学校への携帯電話持ち込みを禁止すべきである―との橋下徹大阪府知事の発言に話題が高まっている。大勢は橋下知事発言を歓迎している向きだ。本紙社説もそれに与したい。

 携帯電話は「ケータイ」と表記されるほど児童生徒に普及している。そして、それによる嫌がらせメールやネットいじめをはじめ、出会い系やアダルトサイトへのアクセスなど種々の問題が派生している。それに因をなしての橋下大阪府知事発言である。

 学校生活で携帯電話が果たして必要なのか。なるほど最近の携帯電話は多種のソフトウエアが搭載されており、電子辞書をしのぐ機能を有するものさえある。あるいはGPS機能のついている機種もあり危機管理に役だっている。また、送り迎えの連絡などで必要な児童生徒がいることは確かだろう。しかし、多くの児童生徒は遊びやおもちゃ感覚で手にしているのではないか。

 本郡の中学校では生徒指導上、携帯電話の学校への持ち込みを禁止しているようだが徹底しているか気になるところである。

 橋下発言に対して、石原東京都知事は、親が買って与えているのであり、電話料も親が支払っている。親の責任で行っているので、どうするかは親の問題である―。

■説得できない親
 だが現実はどうか。その論理で片づけられないほど現在の教育は疲弊している。それほど親の指導性と子どもの欲求の間には乖離(かいり)がある。親の望むようにはなかなかならない現実がある。

 このことに本紙コラム「不連続線」(昨年12月9日)はふれている。

 ―「みんな持っているのに」。子どもにせがまれると親は弱い。「ダメだ」とはねつけても、「仲間外れになる」とべそをかけば、大抵の親は最終的に根負けしてしまう―

 これだけ普及した携帯電話は子どもにとって単なる持ち物ではない。片時も手放せない安定剤のようなものになっている。手元に置いていなければ不安でたまらない、いわば依存症化している子どもも少なくない。

 友人にメールをしなければ落ち着かないし、着信がなければ不安でならない。あるいは、着信後、何分か後に返信しなければ友人関係が壊れるという。そういう子どもが結構いるようだ。その媒体をなしているのが携帯電話である。

 従って、自宅にいても落ち着いた学習時間を奪っている。自宅が火事に遭い、いったんは逃れたものの、携帯電話を取りに戻り命を落とした高校生もいる。

 この現実をみたとき、とても親の責任において―と言うわけにはいくまい。こういったケータイ現象を社会問題事象ととらえ、大人はこの病理現象から子どもを救ってやらねばならない。

■学校単位でも無理だ
 そこで、学校への携帯電話の持ち込み禁止であるが、学校単位ではとても無理があろう。子どもには特異な子ども文化とか感性があり、親や教師の説諭になかなか応じないところがある。

 集団生活の中でよこしまに培われた同類項的感覚とでもいうべき仲間意識がそうさせるのだ。子どもは、そこから外れることを畏(おそ)れる。その疎外感を取り払うことは容易ではない。

 幸い各地で、PTAがこの問題に立ち上がっている。わが地域でも呼応したい。素早い行動が求められる。橋下知事の投じた一石が全国的な波紋になってほしい。文科省や県教委は旗振り役になり親や学校を手助けしたい。教育行政の存在感を見せる時だ。

八重山毎日新聞 2009年1月31日

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携帯電話 親子で話題にしてみよう

 携帯電話を持っている県内中高生の七人に一人は、一日「五時間以上」利用している―県警のアンケートで、親も知らない子どもと携帯電話との密接な関係≠ェ明らかになった。

 利用方法のトップは中高生ともに「メール」だ。「五時間以上」の生徒は、学校生活と睡眠時間を除いた生活時間のほとんどを、メールのやりとりに費やしていることになる。

 一日のメール送信数が「百通以上」という生徒も中学生で10・0%、高校生で5・7%いた。「メール依存」ともいうべき異常さである。

 メールなら本音が言いやすい、という声をよく聞く。裏を返せば、顔を合わせない分、とげとげしい言葉も繰り出されやすくなる、ということだ。

 携帯電話が登場する以前の子どもたちは、相手と顔を合わせ、反応を見ながら、どんな言葉が相手を傷つけ、また自分が傷つくのかを学んできた。すなわち、「自分の言葉に責任を持つ」ことを体験を通して学んできた。

 メールに対し、「すぐ返信しなければ」とプレッシャーを感じている子どもは少なくない。豊かなコミュニケーションとはどのようなものかを大人は子どもたちに伝えるべきではないか。

 携帯のサイト上にホームページを自分または友人と共同で開設している中高生が半数以上いることも分かった。問題は誹謗(ひぼう)・中傷の書き込みを「された」「した」中学生が11・5%、高校生は14・1%いることだ。

 標的になった生徒が思い悩み、自殺する悲劇も全国で起きている。ネットの匿名性を悪用した人権侵害が子どもの周りではびこっている現実を、大人は深刻に受け止める必要があろう。

 同じく社会問題となっている出会い系サイトも、中学生4・0%、高校生5・1%が利用したことがあると答えている。少数とはいえ、これも親にとっては心配な数字である。

 携帯電話の利用が低年齢層にまで広がる中で、いじめや「メール依存」など、携帯を持つことのマイナス面がクローズアップされ始めている。

 利用実態に関する全国的な参考データはあるが、県警のアンケート結果は中高生約一万七千人の声に基づく「本県の実態」だ。現実を踏まえた本格的な論議を広げる機会としたい。

 まずは今回の結果を親子で話題にし、「わが家の利用のルール」づくりへの第一歩にしてはどうだろう。

高知新聞 2009年1月30日

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「知の拠点」一層の充実を 弘大60周年

 本県唯一の国立大学(現国立大学法人)である弘前市の弘前大学が今年、創立六十周年を迎え、六月に記念式典を予定している。

 弘大は開学以来、あまたの有為な人材を県内外に送り出してきた。卒業生は五万六千人余を数える。

 弘大医学部の社会医学講座が、箱根駅伝で初優勝した東洋大陸上部をスポーツ医学の面から支援してきたことが新年早々、本紙に報道された。

 また、人文学部の四年生二人が難関とされる公認会計士試験に現役合格。教育学部の四年生は、日本クラシック音楽コンクールの木管楽器部門・大学の部で最高位に輝いた。このところ弘大をめぐる明るい話題が目立っている。

 中央から遠距離であることがハンディととらえられがちな地方だが、実はそうではないことを現役の弘大生や関係者が実力で示してくれた。

 人間で言えば六十年は還暦に当たる。本県の「知の拠点」弘大は、節目の年を新たな出発点とし、一層の充実を目指してほしい。

 弘大は戦後間もない一九四九(昭和二十四)年五月三十一日に誕生した。旧制弘前高校、青森師範学校、青森青年師範学校、青森医学専門学校、弘前医科大学の五校が統合、総合大学としてスタートした。

 開学以来、弘大は地元弘前市へ経済、文化、教育などの分野で多大な貢献をしてきた。

 弘大によると、大学の支出や学生の生活費などを基に試算した二〇〇七年度の経済波及効果は四百五十七億円に上るという。

 弘前市の〇八年度一般会計当初予算が六百四十七億五千万円。市の予算規模と比べても弘大の経済効果の大きさがうかがえる。

 また、医学部を抱える総合大学として地域医療に果たす役割も見逃せない。

 ただ、課題も少なくない。文部科学省の国立大学法人評価委員会は昨年十月、全国の国立大学法人の二〇〇七年度業務実績に関し評価結果を公表した。

 それによると、弘大は〇七年度の大学院博士課程の充足率は、同評価委が指標とする90%を下回る74.8%にとどまっていた。このため「業務運営の改善および効率化」の項目で、五段階評価の下から二番目の「やや遅れている」と指摘された。

 「財務内容の改善」と「その他の業務運営に関する重要事項」は「順調に進んでいる」、「自己点検・評価および情報提供」は「おおむね順調」の評価だっただけに、大学院博士課程の充足率向上対策が急務となっている。

 六十周年を迎える〇九年度には、弘大医学部付属病院の高度救命救急センターの建設が始まる。構想では四月に着工し、一〇年七月の開設を目指している。

 また、海洋や地熱、バイオマスなど自然資源を活用した新エネルギー研究の国内最大級の拠点施設「北日本新エネルギー研究センター」を四月、青森市松原の旧市民図書館内に設置することにしている。

 地元貢献を旗印に地域密着を図りながら、教育水準や研究内容で「全国区の大学」を目指している弘大の一層のステップアップを期待したい。

東奥日報 2009年1月30日

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小中学校一貫 公教育復活につなげよ

 横浜市は二〇一〇年度から市立の小学校と中学校のすべてで「一貫教育」を導入する。私立中学受験に挑戦する児童が増え、公教育への信頼は低下している。改革を進めて復活につなげたい。

 横浜市立の小、中学校は五百校近くにのぼる。小中一貫教育はすでに東京都品川区などが導入しているが、これだけ大規模で取り組むのは全国で初めてだ。

 小中一貫は小、中の九年間を一体的にとらえて子供の学力向上や学校生活に対応していこうという教育方式だ。中学に進んだとたん、勉強についていけなくなったり、先輩後輩の上下関係になじめない「中一ギャップ」には効果があるとされている。

 横浜市は小中一校ずつの連携、一中学校と複数の小学校、小中複数校同士でのグループをつくる。

 小学校では一一年度から本格的に英語教育が始まるが、中学の英語教諭が小学校に出向いたり、数学が苦手な中学生には小学校教諭が基礎を教え直すといった小中間での人的交流を検討している。

 東京都八王子市なども小中一貫の準備を進めている。一貫よりも結び付きが緩やかな「連携」から始める動きもある。川崎市は教職員交流を中心とした連携教育をスタートさせ、神奈川県厚木市は連携のモデル学区を設ける。

 小中の一貫や連携を導入する自治体が増えている背景には、私立中学を受験する児童の急増がある。一都三県では小学六年生の20%近くは中学受験し、公立中に進まなくなっている。

 費用がかかるにもかかわらず私立中受験者が増えているのは、私学が進学実績を伸ばしてきた成果であり、公立の中学や高校への信頼が低下した現実がある。

 私学は大半が中高一貫だから私立進学者が増えれば増えるほど、公立の中学や高校は存続が危うくなる。小中一貫は公立学校に子供を囲い込む狙いもうかがえる。

 しかし、一貫や連携が形だけになっては公教育の信頼回復は難しい。小学校では多くの場合、先生が一人で全教科を教え、中学校では教科担任制をとる。教員免許も別々で、人的交流を図っても制約がある。成功につなげるには教える内容を見直し、改良していくしかない。

 学ぶ側に効果的で、教える側に効率的なカリキュラムが組めるのか。横浜市は年度内に各校にモデルとなるカリキュラムを示すという。他の自治体の関心は高い。模範となるものを作ってほしい。

中日新聞・東京新聞 2009年1月26日

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体力テスト これも「競技」にするのか 

 小学五年と中学二年を対象に、昨年初めて行われた全国体力テストの結果を、文部科学省が公表した。

 子どもの体力低下が懸念されており、国が全国的な状況を把握して地域ごとに指導改善を図る狙いという。調査は、握力や上体起こしなど体力を見る種目、五十メートル走など運動能力を測る種目の実技に加え、生活・運動習慣の調査も行った。

 実技は、八種目の合計点(八〇点満点)とする都道府県別の平均点で六-一〇点程度の差が出た。兵庫県は、小中学生の男女とも全国平均を下回った。

 一方、生活・運動習慣調査では、中二女子の運動不足が目立ち、中学生は運動する層としない層の二極化傾向が表れた。兵庫では、運動をしない小学生の割合はほぼ全国平均並みだったが、「時間がない」との理由が際立ったという。

 全体の分析は、睡眠や食事など規則正しい生活習慣があれば体力テストの成績も高い、と結論付けている。当然といえば当然の結果である。

 全国規模の体力テストは、文科省が一九六〇年代から公立校を対象に毎年抽出調査を行ってきた。自治体によっては、独自の調査を実施するところも少なくない。そこからは、体格の向上に反して体力が低下傾向にあることが分かっている。

 昨春、文科省が全国テストの実施を急に決めて全校参加を求めた。だが、準備不足もあって現場の反発が強く、不参加を容認する形となった。参加率の全国平均は、小中学校とも70%程度にとどまり、その中で兵庫は小学校の約9%、中学校13%と、共に最も低かった。

 今回、文科省は「確かなデータが得られた」と自賛するが、学校や専門家からは「屋上屋」「予算の無駄」といった厳しい意見も出ている。体力テストは、昨年度に復活し、さまざまな波紋を広げた全国学力テストと同じような構図である。

 体力や運動能力は一人一人異なり、その弱点をつかんで、学級・学校単位で改善させる取り組みこそ求められる。全国平均値や都道府県の序列にどれだけの意味があるのか。平均値はこうした努力の積み重ねの結果を測る目安の一つにすぎない。まして全員参加の意義はもっと分かりにくい。

 限られた教育予算は有効に使いたい。体力テストは傾向把握なら「抽出」で十分であり、それを活用して具体的な体力・運動能力向上策を講じた方が意義がある。

神戸新聞 2009年1月26日

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全国体力テスト 調査継続の意義を問う

 文科省が昨年、全国の小学5年と中学2年の男女全員を対象に初めて行った「全国体力・運動能力・運動習慣等調査」で、岩手っ子の体力は総じて全国上位だった。

 子どもらの体力向上へ、教育現場を中心とした意識的な取り組みの成果といえるだろう。関係者には、大きな励みに違いない。

 しかし、本県の児童生徒の体力が総じて全国平均を上回る傾向は、従来の抽出調査でも把握されていたことだ。50メートル走など、瞬発力にかかわる種目に課題があることも、肥満傾向があることと合わせて既に指摘されている。

 運動部加入率の高さ、十分な睡眠時間、きちんとした食生活など、文科省が示した成績上位県にみられる傾向は、これまでも種々の調査で示されてきた。

 教育行政として「処方」こそが待たれる時に、再び三たび「診察」を繰り返し、分かり切った「診断」を下す全国一斉調査に、はたしてどれだけ意義があるのだろうか。

 文科省は旧文部省時代の1964年から、抽出方式で子どもから大人までを対象にした「体力・運動能力調査」を続けてきた。99年には、各年代の体位の変化やスポーツ医科学の進歩、高齢化の進展などを踏まえて「新体力テスト」を導入。経年変化を蓄積している。

 85年をピークに子どもたちの体力は低下傾向。文科省は「抽出調査だけでは見えない原因があるはず」と学年全員調査に乗り出したが、出てきた分析結果の大半は、子どもたちの日常を知る教師らには分かり切った内容だ。

 従来の抽出調査に合わせ、全国の約7割の小中学校で独自の調査が行われているという現状では「一人一人へのきめ細かな指導に生かす」との目的も、各地方が率先している。今さら全員を調べなければならない理由とは言えまい。

 調査への参加は公立校で約7割という。都道府県別の参加率は、本県など100%の県もあれば10%台もあるなどばらついた。ちなみに、お隣青森県の参加率は小学校が約34%、中学校は37%台。愛知県犬山市のように、実施が決まった直後に「意義が認められない」と積極不参加を表明した自治体もあった。

 教育現場が多忙を押して一斉調査に時間を割くほどに、その意義が理解されているとは考えにくい。

 今回のテストは、全国学力テストの体力版だ。各学校は学力と体力の両面で、自分の位置が分かることになる。個々の子どもにとっても同様。結果的に、文武両面で国が理想とする姿に子どもたちをはめ込むことにならないか。

 体力は学力以上に個性が大きい。運動が苦手だったり障害がある子もいる。学校は、不得意でも努力することの大切さを教えているだろう。体力づくりも教育なら、少しずつでも自分の壁を乗り越えていくのが成長だ。そこに「平均」を持ち出すことに、さほどの意味があるのだろうか。

遠藤泉

岩手日報 2009年1月25日

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子どもの体力 全員調査は必要ない

 文部科学省が初めて実施した「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」の結果がまとまった。

 調査は小学5年と中学2年のすべての児童生徒を対象としている。全国の約7割の小中学校が参加。いわば全国学力テストの体力版である。

 体育の授業以外の運動時間が週あたりで1時間に満たない子どもが、小5、中2の男子のほぼ1割を占める。女子では小5で2割強、中2だと3割に上る−。調査結果は、子どもの運動不足と体力低下をあらためて裏付けている。

 ただ、子どもの体力が低下傾向にあることはかねて指摘されてきた。「朝食を毎日食べると体力がつく」「運動部に入ると体力が向上する」といった分析も、当たり前のことだ。文科省は以前から毎年抽出調査を行っていて、内容も重複している。

 本年度の費用は1億9000万円。来年度予算案の概算要求にも3億円が盛られている。

 多額の費用をかけて、全員調査を続ける意味があるとは思えない。本年度の結果を、体力づくりの具体的な方策につなげて、子どもがのびのびと運動できる環境の整備や、指導者の充実に財源を振り向ける方がいい。

 このテストが、数値や順位だけで能力を判断する風潮を強めないか、心配にもなる。全国学力テストは、順位に知事や教育委員会が一喜一憂し、結果の公表をめぐり混乱が続いている。

 国が家庭の生活習慣にまで踏み込んで調査し、体力向上に結びつけるやり方にも違和感がある。

 子どもの運動離れが深刻なのは確かだ。少子化が進み、外で集団で遊ぶ機会は奪われている。

 山間部の統廃合が進む小中学校では、スクールバスでの登下校が増えている。市街地でも不審者情報があれば、女の子は親が車で送迎せざるを得ない。部員や指導者の減少で、部活動の休廃止が相次いでいる。

 転んだときに手がつけない。跳び箱の授業で手や足を骨折−。長野県内の小中学校での光景だ。遊びや運動の経験不足で、体の使い方が分からない子どもがいる。

 運動の習慣は大人になってからの健康にも影響する。全校での縄跳びやマラソンなど、継続して体力づくりに取り組む機会を増やしたい。PTAや地域も協力して、放課後や休日に、子どもたちが楽しみながら体を動かせる場を、地域に広げていくことが大事だ。

 これらの取り組みは、全国一斉の体力テストなしでもできる。

信濃毎日新聞 2009年1月25日

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全国体力テスト 向上へ環境の整備が大切

 文部科学省が昨年四―七月に小学五年と中学二年を対象に初めて実施した全国体力テストの結果を公表した。大規模な調査である。きちんと分析し、子どもたちの体力向上へ有効に生かさなければならない。

 調査は、小五と中二のすべての児童生徒を対象としたが、実際にテストを受けたのは小学校が約一万五千六百校の約七十八万人で、全体の71%、中学校は約七千六百校の約七十七万人で、70%だった。例年秋に体力テストを行っている学校が多く、日程変更が難しかった。

 実技は握力や上体起こし、立ち幅跳びなど八種目を行った。さらに児童生徒の生活・運動習慣や学校の施設などの状況も調べた。八種目の数値を得点化した八〇点満点の体力合計点を、都道府県別平均値でみると約六―一〇点の差が出た。地域差が大きいということだろう。

 岡山、広島、香川各県は、小中学校別、男女別の四分類で広島の中二男女以外、体力合計点の平均が全国平均を上回った。岡山県の小五男子は全国八位、女子は六位と高い水準にあった。ただ、全国平均を下回る種目もみられ、岡山県教委は新年度に有識者による委員会を設けて結果を分析し、家庭、学校向けの体力向上プログラムをつくるとしている。きめ細かく検討してもらいたい。

 子どもたちの体力低下がいわれて久しい。文科省は、今回の全国一斉テストで「やっと確かなデータを得ることができた」と対策強化を意気込む。全国テストを通してこれまで熱心でなかった地域や学校を刺激する効果があったのなら、一定の評価ができよう。

 文科省は、全国体力テストを毎年実施したいようだ。しかし、大規模な調査を定期的に行う必要性には疑問の声が強い。今回の結果をみると、従来から行ってきた抽出方式の結果と大きな差はない。学校現場からは興味を引く分析内容に乏しいといった意見が出ている。自民党の「無駄遣い撲滅プロジェクトチーム」の昨年の公開討論では不要論が表面化したほどだ。全国調査の継続に説得力があるとは思えない。

 今回の調査では、天然芝の屋外運動場がある学校は、体力合計点が高い傾向にあった。それなのに、天然芝の学校は小中学校とも2%程度しかない。全国体力テストの事業費は約一億九千万円に上った。調査に多額の費用をかけるよりも、体力向上を促す施設整備や指導者養成に力を入れる方が有意義だ。

山陽新聞 2009年1月24日

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体力テスト 生活の中に運動習慣を

 文部科学省は、全国の小学五年生と中学二年生を対象に初めて実施した「全国体力テスト」の都道府県別結果を公表した。一昨年から行われている全国学力テストの「体力版」ともいえる。

 文科省は「成績上位県は体育系の部活動への参加率が高く、睡眠時間も多いなど生活習慣が良い傾向にある」と分析している。新味はない。体育、生活指導をしている教師の実感と変わらないだろう。

 体力テストは、学力テストの後を追うように、十分な議論もなく導入された。「ゆとり教育」の見直しを旗印に、子供たちを競わせれば学力も体力も、向上するという教育観が透けて見える。

 平均値を示し、追いつけ、追い越せと運動を強いることが、本当に健康な体づくりにつながるのか。立ち止まって、冷静に考えたい。

 文科省は「過度の競争につながる」として、体力テストでも学力テストと同じく市町村別、学校別の結果公表を禁じてはいる。

 しかし、学力テストと同様、体力テストも全国平均を下回った大阪府の橋下徹知事は、結果を公表すべきだとの考えを早々に表明した。

 追随する自治体が出ることも予想される。体力テストも、学力テストと同じ混乱の火種を抱えている。

 体力テストは昨年四月から七月にかけて、小、中学生それぞれ約八十万人が参加して行われた。握力、反復横跳び、五十メートル走など八種目の運動能力を調査したほか、生活・運動習慣も調べた。

 子供の体力の推移を把握するなら、文科省が六歳から七十九歳を対象に抽出方式で毎年実施している「体力・運動能力に関する全国調査」で十分との指摘もある。

 体力テストは一億九千万円かかった。同省は新年度も継続する考えだが、多額の予算をつぎ込む意味があるのだろうか。

 北海道は小、中学生とも結果が全国平均を下回った。あせったり、落胆したりする必要はない。

 大人になっても続けられる、自分に合った運動習慣を見つけることが大事だ。学校や自治体は、子供たちが、汗をかく喜びを味わい、健康について考えを深める機会を多く持てるよう工夫してほしい。

 今回の調査で、道内の子供たちは全国に比べ、朝食を毎日とる割合が少なく、テレビを見る時間が長いのが気になる。

 おいしく食事をとり、体をいっぱい動かして遊び、ぐっすり眠り、朝は、すっきりと目覚める−。生きる力につながるリズムだ。

 子供時代に、しっかりとした生活習慣を身につける。それが大切だ。

北海道新聞 2009年1月23日

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小中学生の携帯電話「家庭でも情報モラル教育を」

 小中学生の携帯電話の使い方が再び論議を呼んでいる。さいたま市では「ネットいじめ」で中学生が自殺、これに関連し、文部科学省は携帯電話の学校への持ち込みについて、月内にも国としての方向性を出す予定だ。

 ただ、学校への持ち込みを禁止するだけでは悪質な書き込みなどによるいじめは防げない。学校現場に頼らず、家庭でのしっかりした情報モラル教育と利用への責任ある監視が必要なのはいうまでもない。

 さいたま市のケースは、中学3年の女子生徒が同じクラスの生徒の自己紹介サイト「プロフ」上に悪口を書かれた。見つかった遺書には実名を挙げ、「書き込んだ生徒を許さない」という内容が記されていた。

 学校裏サイトやプロフへの悪質な書き込みは、陰湿ないじめとして問題が深刻化している。いじめに遭った児童生徒が不登校になったり、自殺に追い込まれたりする事案は全国で後を絶たない。

 2007年度の県内の国公私立小中学校・高校でのいじめ件数は前年度を下回ったが、インターネットや携帯電話のメールによるいじめは2.4倍に跳ね上がった。

 ネットいじめは学校裏サイトが温床となり、書き込みも匿名性により、その実態はつかみにくい。把握できた件数は氷山の一角と考えるのが妥当であろう。

 携帯電話の使用では、書き込みにとどまらず、有害サイトへのアクセスも問題化している。出会い系サイトをめぐっては、届け出や児童に関する書き込みの削除を業者に義務化した改正規制法が施行されたが、その有効性はまだ未知数である。また毎日数十通のメールを送るなどの「携帯依存」も指摘されている。

 大阪府教育委員会は文科省の方針提示に先駆け、小中学校への携帯電話持ち込みを原則禁止する方針を決めた。通学時の安全確保に必要な場合は、保護者の申請に基づき許可し、下校時まで預かるといった対応を取る。

 携帯電話にはもちろん子供や家族にとって有効な機能がある。防犯ベルを作動させると自動的に保護者にメッセージが届いたり
、全地球測位システム(GPS)で位置情報を確認できたりと、緊急時の連絡にとどまらず、子供に携帯電話を持たせることで安心する保護者も多いだろう。

 ただ子供の利用実態を把握している保護者はどれくらいいるか。文科省が通達を出しても、家庭での使用までは制限できない。学校では利用をチェックするには限界がある。

 使用を野放しにすることなく、ときには厳しい態度で利用状況を確認することが必要だ。学校と保護者が連携し問題意識を深め、情報モラルの大切さを説くことも忘れてはならない。

陸奥新報 2009年1月23日

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全国体力テスト 成果かみしめ一層前へ

 本県の子どもたちが、またもや輝かしい成績を残した。文部科学省が小学5年と中学2年を対象に本年度初めて実施した「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」(全国体力テスト)で、全国トップレベルにあることが明らかになったのである。2年連続で好成績を収めた「全国学力テスト」と合わせ、秋田の子どもたちが学力、体力とも高水準でバランス良く成長していることを率直に喜びたい。

 調査結果を見ると、本県のレベルの高さは歴然。小学5年男子の50メートル走が全国平均よりわずかに遅かっただけで、握力や反復横跳びなど他の7種目はすべて全国平均を上回った。

 各種目を得点化した体力、運動能力の総合点では小学5年が男女とも2位。中学2年は男子が3位、女子が6位という健闘ぶりに、教育関係者も日ごろの実践に手応えを実感しているに違いない。

 こうした好成績に至るまでには、教育現場での地道な努力の積み重ねがあったはずだ。本県の子どもたちは身長や体重など体格は全国トップクラスでありながら、冬場の運動不足などから体力面では劣るというのが長年の定説だった。

 このため、県教育委員会は2001年度に始業前や授業の合間に小学校で取り組む「業前・業間運動」を全県的に呼び掛け、当時4割弱だった実施率は08年度に8割を突破。実施率の上昇と比例して、県独自の体力テストの成績も上昇カーブを描いてきたという。

 さらに、他県に比べスポーツ少年団や中学での運動部活動が盛んな点もプラス要因となった。県教委は「本県の体育指導が、力強く推進できているとの認識を深めた」としている。

 体力不足というレッテルを返上する結果をもたらした取り組みは高く評価されてしかるべきだが、手放しでは喜べない。今回の調査で示された課題を冷静に見据えながら、一層のレベルアップを図るために活動を検証することが肝要だ。

 例えば、今後に不安を抱かせるデータとして受け止めるべきなのが「普段の登校の方法」。徒歩で登校する割合は、小学生で全国平均を5ポイント以上も下回っている。本県の場合、統廃合で学区が広くなり、バス利用の小学生が増えているためだが、やや劣るとの結果が出た「脚力」との関連も含めて対応策を考えることが必要だろう。

 いずれにしろ、今回の結果が教育現場に自信を与えたのは事実であり、これを機に体力向上への全県的なムード盛り上げを図りたい。そのためにも、地域の主体的な取り組みは不可欠。全国学力テストの市町村別正答率を公表した寺田典城知事は、体力テストについても「オープンにすべきだ」との考えを示したが、一方的な公表によって再び現場を混乱させてはならない。市町村教委の主体性を尊重してこそ機運は高まるはずだ。

秋田魁新報 2009年1月23日

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体力テスト公表 運動嫌いを増やさないか

 文部科学省が小学五年生と中学二年生を対象にした全国体力テストの結果を発表した。体力テストは年に一度、抽出調査が行われているが、全員が対象なのは本年度が初めてだ。

 全国学力テストの体力版ともいえる調査では、現代っ子の運動不足の実態が明らかになった。一週間に運動が六十分未満の生徒が中学では女子の三割、男子の一割もいた。

 本県は小学五年生が男女とも総合点で全国三位となるなど、ほとんどの種目で全国平均を上回った。だが全国と同様、運動が嫌いな子への対応や体力の低下傾向は現場の悩みでもある。

 少子化や都市化、塾通いなどで子どもの生活は大きく変わった。犯罪を恐れ、子どもだけでの外出も避ける時代である。外で自由に遊べるような環境が年々損なわれているのだから、当然の結果といえるだろう。

 文科省は本年度テストの実施に二億円近く費やした。二〇〇九年度予算案には三億円が計上されている。

 学力テストに続き体力でも全員参加型のテストを始めたのは一人一人の実態をきめ細かく把握し、対策を講じるためという。だが従来の抽出調査でも大体の傾向は把握が可能だ。自前で体力テストを行っている学校も多い。

 朝食をきちんと食べたり、よく運動したりする子は運動能力が高いという分析を聞かされても、何をいまさらという気がするだけだ。

 億単位の費用と繁忙な現場に負担を掛けてまで毎年全員対象の調査を行う価値があるのか。子どもの体力低下はテスト以前からいわれていたことだ。求められているのはその対策である。カネの使い方が間違っていないか。

 懸念されるのが過度な競争や序列化をあおる恐れがあることだ。市町村別成績は非公表だが、成績下位だった大阪府が公表を求めるなど学力テストの時と同様の混乱が生じている。

 体力テストでは、学力テストでも上位だった福井県や秋田県が好成績を収めた。休み時間のランニングを義務化して成果を挙げている学校もある。

 このままでは体力テストに向けて、自治体が子どもに運動を強いるような風潮が広がらないとも限らない。

 そもそも子どもの体力は学校だけでなく、家庭や地域とのかかわりの中ではぐくまれるものだろう。体力を「偏差値」化するような文科省のやり方が、子どもの運動離れをなくすことにつながるとは思えない。

 中学生女子の運動の時間が少ないのであれば、その原因を探り解消に努める。小学生の時から、体を動かす楽しさを覚えさせる。指導者を養成する。子どもが自由に走り回れる環境を取り戻すための方策を考えたい。

新潟日報 2009年1月23日

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体力テスト まずは「生活」の改善だ

 「学力」に続いて「体力」でも、本県の子どもたちを取り巻く厳しい状況が明らかになった。

 文部科学省が小学五年と中学二年を対象に初めて実施した「全国体力テスト」で、本県の小五男女が最下位となった。中二男子も四十五位、女子は四十六位と振るわなかった。

 本県の子どもが体格、運動能力で全国平均を下回っていることは、以前から指摘されている。結果に目新しさはないものの、学力、体力両面で好成績を収めた地域との「格差」は際立っている。結果を深刻に受け止め、体力低下に歯止めをかけなくてはならない。

 握力や反復横跳びなどの実技を十段階で配点し、合計点の平均値を比べた。生活・運動習慣などの調査も併せて行った。

 中学男子を除くと、調査は人口規模が小さくなるにつれ、体力合計点が高くなる傾向がある。本県はその意味からも例外≠セ。

 県教委は学校体育を充実するなどして、早急に全国水準に近づけたいとしている。より効率的、効果的に本県の子どもの体力の底上げを図るためにも、学校教育の工夫改善は望ましい。

 生活習慣では、本県の小五の睡眠不足傾向も浮かび上がった。高知は中学受験に向け高学年から塾に通う子どもが増える。共働きが多く、夕食時間も遅くなりがちだ。こうした生活習慣が体力の低下に何らかの影響を及ぼしている可能性もある。分析が必要だ。

 調査では、一回二時間以上の運動を、週に三日以上している子どもの合計点が高い傾向がみられた。この点においても本県の小五、中二は運動をする機会が全国平均を下回っている。

 子どもを狙った犯罪が相次ぎ、かつてのように子どもを外で自由に遊ばせることは難しくなった。塾に習い事にと子どもの生活は多忙になっている。

 課題は多いが、急ぐべきは生活習慣の改善だ。「毎日朝食を食べる」「睡眠時間を十分とる」ことは体づくりの基本である。保護者の責任も大きい。

 実際、学力、体力の両テストで上位の秋田は、生活習慣でも望ましい状況にある。成長期の子どもにとっての生活リズムの大切さを再認識したい。

 国による体力関係のデータは既に膨大な量が蓄積されている。問題点も明らかだ。文科省は調査の継続につぎ込む予算を、現場の実践に還元するべきである。

高知新聞 2009年1月23日

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学校と携帯電話 「持たせて指導」も一つの方

 文部科学省は小中学校への携帯電話の持ち込みについて「原則禁止が望ましい」とする方針を固めた。携帯電話を介した「ネットいじめ」や出会い系サイトなどの犯罪から子どもたちを守らなければならない。これが禁止に踏み切る理由だ。

 児童生徒の携帯電話をめぐっては、政府の教育再生懇談会が小中学校での持ち込みや使用を禁じる方針を盛り込んだ報告書をまとめた。大阪府では昨年、橋下徹知事が高校を含む公立学校での「原則禁止」を打ち上げ、学力低下の議論と絡んで波紋を広げた。

 携帯電話との付き合い方を子どもたちにどう教えるか。たしかに親や教師らには悩ましい問題である。

 子どもに携帯を買い与えたものの、本音は迷いを抱えたままの親も少なくないらしい。「あれば便利だができるだけ持たせたくない」との調査結果もある。

 実際、出会い系サイトなどをきっかけに児童買春など犯罪に巻き込まれる事件が後を絶たない。最近は生徒らが書き込むネット掲示板「学校裏サイト」を舞台に悪口雑言、中傷など新たないじめの温床になっている問題が浮上。親や教師らは気が気でない。

 しかし、携帯の負の側面だけに目を向けて、子どもから取り上げたり、学校への持ち込みを禁じたりして問題が解決されるわけではない。携帯はごく普通の道具になっている時代だ。

 親子の緊急時の連絡手段になっているほか、衛星利用測位システム(GPS)で子どもの居場所を知ることで防犯にも役立っている。利器としての携帯にも目を向ける必要がある。

 本質はその使われ方だ。有害サイトの閲覧防止のためフィルタリングを条件付ける。授業中はもちろん、深夜のメール交換はやらないなど、使い方をめぐり家族で話し合い、約束ごとを取り決めることだ。親子が納得できるルールを作る方が現実的ではないか。

 学校でも基本は同じだ。ルールを定め、守るための方策に知恵を絞りたい。

 携帯の普及は止まらない。一律の禁止ではなく「持たせて指導する」方向を探ることは、情報を主体的に判断、取捨選択する能力を高める「情報リテラシー」の理念にもかなっている。

琉球新報 2009年1月23日

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小中一貫教育 子どもの支えになるなら

 子育てには、長い目で見守るという姿勢が欠かせない。そう考えれば、これも教育の充実に向けた方策の一環といえるだろう。

 横浜市のすべての市立小中学校で二〇一二年度から小中九年間の一貫教育が行われる。人口三百六十万人以上の最大政令指定都市だけに対象の学校数も多く、これほど大規模での実施は初めてという。

 小中一貫教育は一部自治体で導入されている。先進地として有名な東京都品川区は国から教育特区に認定され、独自のカリキュラムを設けるなどして取り組んでいる。

 横浜市の場合はこうしたケースと異なる。特区認定は受けず、小中の連携や交流を重視する。中学校の先生が小学校で英語や理科を教える出張授業や文化祭の合同開催などを行う。

 本県でも三条市が特区制度を利用しない形での小中一貫教育導入を目指している。二つのモデル地域を選び、既に児童、生徒が行事などを通じて交流を続けている。

 小中一貫教育が注目される理由の一つは、中学入学に伴って不登校やいじめが急増する「中一ギャップ」だ。一貫教育により、この背景にある進学後の人間関係や学習内容への戸惑い解消につなげたいとの狙いがある。

 子どもが着実にステップアップしていく支え。小中一貫教育がこの大事な役割を果たせるなら歓迎したい。そのためにはまず、教師や保護者ら大人が本気で力を合わせることが必要だ。仕組みは出発点にすぎない。

 本県の教育現場には「いまさら」との思いがあるかもしれない。特に旧町村部では住民のつながりが強く、ことさら意識しなくとも学校と地域の連携が機能してきたからだ。それでも足元を見つめ直すという視点で小中一貫教育の意義を考えてほしい。

 県外で一貫教育を始めた所では、小学校と中学校の教員に意識の違いがあったことを反省する声が出ている。

 例えば中学校で生徒の問題行動が起きた時に、先生は「小学校では何を教えていたのか」と考える。小学校の先生は「中学校に行って子どもが変わった」と思う。こんな具合だ。

 同様の傾向があれば、小中の垣根を払っていく。教員一人一人がその思いを共有することで「一貫」という形をとらなくても小中連携は深まり、教育環境が改善されるのではないか。

 横浜や三条の試みはまた、地元の教育を充実させるために自治体には工夫の余地があると教えている。

 合併や少子化も手伝い、本県の教育を取り巻く環境は変わっている。県や市町村、それぞれの教育委員会には地域と子どもの未来を見据えたより良い教育の在り方を追求してほしい。

新潟日報 2009年1月21日

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学力テスト、藤里町は「原則参加」 市町村別公表なら不参加も

 藤里町教育委員会は21日、臨時会を開き、2009年度の全国学力テストに原則として参加することを決めた。ただし、文部科学省の実施要領に反して市町村別平均正答率を公表するなら参加の取りやめもあり得るとした。

 藤里町教委は、08年度の学力テストの市町村別平均正答率を寺田典城知事が公表したことに反発。今月8日の定例会では、09年度のテストには「公表されるなら不参加」としていた。しかし県教委への報告を前にあらためて対応を協議することにし、臨時会を開催。学力テストへの参加を全会一致で決めた。県教委には「実施要領に反するようなことになれば、当日になって不参加とすることもあり得る」と条件が付くことを伝えた。

 臨時会後、袴田俊英委員長は「子どもたちからテストを受ける機会を奪うことは、大きな過ちにつながるかもしれないと考えた」と、原則として参加することにした理由を説明。古川弘昭教育長は「公表されると分かった段階で、再度委員会を開いて不参加を決めることもある」とした。

秋田魁新報 2009年1月21日 21:27

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大学入試改革 安易な学力不問の流れ止めよ

 センター試験が始まり、今年も大学入試たけなわだ。少子化などで数字上、総定員に総志願者数がほぼ収まる「全入時代」を迎え、多くの大学が選ぶ側から選ばれる側に回ったともいわれる。現実に昨年は私立の半分近くが定員割れを起こした。

 ここは正念場だ。ますます基礎的な学力検査を黙過するような「お手軽入試」で学生確保を図るようでは大学の将来はない。手間をかけ、試行錯誤はあっても適性、意欲、能力、知識を判定する入試本来の姿に近づけないと、大学は評価と信用を失うしかない。日本の高等教育全体を損ねかねず、目指す「知識基盤社会」実現もおぼつかない。

 入試改革は曲折の軌跡だ。寄せ来る受験生をふるいにかけるだけが目的の難問奇問を排し、幅広く基礎的な学力を確かめ、その上で各大学が独創的な選抜試験をする。そんな目的で30年前導入されたのが国公立の共通1次試験だ。だが一律・共通のため得点で受験生の入学先の偏差値ランキングを作る結果になり、1990年に今の大学入試センター試験になった。

 これは私立も自由に利用でき、この試験で各校が志願者に課す科目も独自に選択できる。これでランキングを生じさせる弊害を避け、入試の多様化、個性化が一段と進むはずだった。だが、進学率は上がるものの、少子化や規制緩和の大学増設などで大学の学生獲得競争が次第に強まり、科目を減らしたり独自学力試験をしないなど、試験を安易にする傾向が現れた。

 時間をかけ多角的に審査するはずのAO(アドミッション・オフィス)入試や従来の推薦入試も形骸(けいがい)化が指摘される。4割以上が学力検査をくぐらず入学するまでになっている。

 一方で大学生の深刻な学力低下が報告される。6割の大学が高校レベルの補習をするなど基礎学力の補完をしている。そうしないととても専門教育ができないという。基本的な教養の欠落も指摘されている。

 教育界の危機感は深い。昨年末、中央教育審議会は大学学部教育改革の答申で、こんな現実を直視し「学力不問」の実態を改めてAOや推薦でも「学力把握措置」を講ずるよう求めた。そして高校・大学が協力して進学志望者の学力把握を図る「高大接続テスト」も検討案に加えたが、これはもはや高校の卒業認定はあてにできないという示唆とさえ受け取れる。

 だが、より根本の問題は学習意欲や動機付けだ。日本の子供たちが勉強を楽しんだり、将来の夢と結びつけたりすることが相対的に希薄なことは国際比較調査に表れている。入試改革は単に受験知識を増加させればよいのではなく、適性や意欲、好奇心などを土台にする基礎学力をより的確に見いだすものへ変わらなければ真の改善には遠い。

毎日新聞 2009年1月18日

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「大学全入」が問う入試改革

 大学入試センター試験が始まり、受験シーズンが幕を開けた。1990年にスタートしたセンター試験は今年で20回目、その前身の共通一次試験の導入は79年だったから、ちょうど30年前のことだ。

 この間に入試事情は様変わりし、数字の上では志願者全員がどこかの大学に入れる「全入時代」が近づいている。しかしこれに伴う入学者の学力低下問題も深刻だ。新たな選抜システムを探る時期である。

 かつて、大学入試には難問奇問が続出し、受験生に過度な負担を強いた。その反省から、基礎学力はまず統一テストで判定しようと国公立大に導入されたのが共通一次だ。

 私立大も参加し、どの教科を使うかは各大学に委ねたセンター試験もこの理念を受け継いできた。今では私立大の大半が利用して選考の資料にしている。その限りでは一定の成功を収めた仕組みだろう。

 しかし、少子化と大学数増加のもとで「入りやすい大学」が増え、基礎学力が不十分な入学者が目立つのが実情だ。センター試験の一部の教科だけで合否を決める大学が多いし、面接などが中心のアドミッション・オフィス(AO)入試も当たり前になった。大学生の約4割が本来の学力試験を経ていないという。

 こうした状況を受けて、中央教育審議会などは大学進学を望む高校生の基礎学力を見極める「高校・大学接続テスト」の検討を提言し、久々に入試改革論議が高まっている。

 まずは各大学が形ばかりのAO入試など学力軽視の選抜をやめるべきだが、高大接続テストも重要な選択肢だろう。ただ、現行のセンター試験と別に設けるのでは屋上屋を架すことになりかねない。センター試験を高大接続テストに衣替えするといったやり方が現実的だ。

 入試改革をめぐっては、ほかにも国立大の入試日程を分散して複数受験・複数合格を可能にすべきだという意見などが出ている。センター試験も年に複数回の実施を求める声がある。高大接続テストに転換するならそれがより妥当な姿になろう。

 全入時代が到来するなかで、入試の弾力化と基礎学力の担保をいかに両立させるか。時代に合わせた制度改革をためらってはならない。

日本経済新聞 2009年1月18日

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現場から:学力テスト市町村別公表 6割の親が賛成 /秋田

 ◇「隠す体質」に不満の声 相互不信あおる結果に
 寺田典城知事が“独自判断”で全国学力テストの市町村別平均正答率などを発表したことについて、県内各地で小中学生の父母30人に意見を聞いた。6割を超す19人が公表に賛成し、反対は4人だけ。教育上の効果以上に「なぜ隠したがるのか」という不満が数字に表れた形となった。市町村教委や学校関係者は、公表が競争をあおり学力テスト偏重の傾向を招いてマイナスの影響が大きいと主張。保護者らの“過剰反応”への警戒も聞かれ、相互不信をあおる結果となっている。【まとめ・坂本太郎】

 ●賛成

 今回の公表について、ほとんどが「関心がある」と回答。学力テストへの注目度の高さをうかがわせた。

 賛成する人で目立ったのは「まとめたデータがあるのに、一部だけが握っているのはおかしい」「自分の子供の位置がより具体的にわかる」という二つの意見だった。

 美郷町の団体職員の男性(49)は「競争原理とまでは言わないが、非公表では地元の学校のレベルがわからない。少人数学級の地域の成績がいいなど、公表結果を見てわかることもある」

 小中学校が1校ずつしかなく学校が特定される八郎潟町の自営業の男性(40)も「公表しない理由がわからない。結果を見てみんなで考え、先生たちにもがんばってもらえばいい」と話す。

 教委や学校に対し「教育的配慮を口実に隠そうとしているのでは」との疑問が出る一方で、横手市の会社員の女性(46)は公表に賛成しながらも「学校はとても熱心で、先生を信頼している。複雑な気持ち」と漏らした。

 公表への関心が極めて高く「弱点を知れば成績向上につながる」と答える人も多かった半面、学校でどのように活用しているかを知っている人は学力テストを受けた学年の子供がいる保護者でもほとんどいなかった。

 「PTAの会合で学力テストの結果を受けた教育方針の報告があったが、いつから取り組むかわからなかった」(潟上市の母親)との声も聞かれた。

 ●反対・その他

 反対意見では、秋田市の小学校でPTA副会長を務める主婦(44)は「県平均と傾向の説明で十分。秋田市の規模なら学校は特定されないが、数字を比較されると子供が劣等感を抱いてしまう恐れがある」と指摘。同市の会社員男性(40)は「学力向上という名のもと、塾通いが盛んになり受験競争も過熱化するだけでは」と話す。

 一方、「どちらでもいい」「あまり関係ない」との受け止め方も7人。秋田市の嘱託職員の女性(44)は「子供の学力の参考になるが、あそこの学校がいいとか悪いという話が飛び交っており地域や学校の間で格差ができてしまうのではとの心配もある」と功罪両面を挙げた。

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 ◇小中学生の親の声アンケート
 【賛成】

「学校単位でも、どんなレベルか知りたい」母親(秋田市・小3男)

「隠されると知りたくなる。子供の位置が知りたい」母親(秋田市・小5女、小1女)

「結果は知りたい。公表で対策もできると思う」母親(秋田市・中1女、小5女)

「子供の勉強に対する意識が高くなる」母親(秋田市・小6男)

「周りの状況がわかる。ただしあくまで平均点」母親(秋田市・中2男)

「ある程度周囲を知らないと努力しようがない」母親(秋田市・中3女、小4男)

「個人名さえ出なければいいのでは」母親(秋田市・小5男、小2男)

「弱い分野がわかって子供に勉強するよう言いやすい」母親(秋田市・小4女)

「一部機関だけが知っていて教えないのはおかしい」母親(秋田市・中2男)

「現状の学力を知ることができる」父親(能代市・小2女)

「レベルの比較ができる」母親(横手市・中2女)

「発表しないより、した方がいい」父親(鹿角市・小4男、小2男)

「学校側の説明は抽象的すぎた。公表でよくわかった」母親(潟上市・小5男、小2女)

「自分の子供の教育には大いに関心がある」父親(鹿角市・小2女)

「子供たちの現状を知る目安。知る権利がある」父親(大仙市・中2女、小1男)

「他がどのレベルか知りたい。学校別も公表を」母親(三種町・小5男、小4男)

「手法はよくないが子供と地域の結果がよくわかった」父親(八峰町・小6男、小2女)

「教育現場も切磋琢磨(せっさたくま)を」父親(美郷町・中1男)

「情報や意識を共有して学力向上に生かせばいい」父親(八郎潟町・中1男、小5男)

 【反対】

「学校現場の人たちと公表について話したのか」母親(秋田市・小1女)

「少人数の地域は個人の特定になる」母親(秋田市・小4女)

「塾の影響もあるはずで単純に評価できない」父親(秋田市・小4女、小3男)

「県平均の数字と学校による傾向の説明で十分」母親(秋田市・小6女、小4女)

 【その他】

「知りたいが、テスト向けの勉強ばかりも困る」母親(秋田市・小4女)

「反対ではないが、なぜもめるのかわからない」母親(秋田市・小4女、小1女)

「平均点と比較しないのでどちらでもいい」母親(秋田市・小6男、小4女、小4女)

「勉強のきっかけになるが、逆効果もありそう」母親(秋田市・中3女、小6女)

「どちらでもよい」母親(鹿角市・小6女)

「どちらでも構わない。結局はその子次第」母親(男鹿市・中2女、中1男)

「市町村の平均点を知ってもあまり意味がない」父親(潟上市・中3男)

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 10日から15日まで、県内であった催しの会場を中心に、勤務先や学習塾の前でも聞いた。カッコ内は小中学生の子供の学年と性別。

 ◇教科重視、悪影響を懸念
 「データを隠すつもりはない。だがきちんと議論をするには、土壌が必要だ」

 保護者の多くが公表に賛成していることについて、ある小学校長はこうつぶやいた。「今回の公表によって、本当に生産的な議論ができるのか」

 保護者アンケートでは、県別より市町村別、さらに学校別と、より多くの情報を求める傾向が見られた。

 教委や学校関係者は国語と算数・数学の点数(正答率)が「市町村の教育力」のように見なされることに戸惑いを見せる。

 この校長は「目の前の子どもを良くするための取り組みはすでにしている。公表するからにはきちんとした分析と今後の方向性まで示すべきだし、子供たちの能力は他の指標も含めてトータルで考えなければならない」と訴える。

 別の自治体の中学校長も「公表が続くようなら現場は学力テストばかりを気にしなくてはならず、国語と数学(算数)ばかりを重視する学校も出てくる」と悪影響を懸念する。

 小中学校とも1校しかない上小阿仁村の小林茂教育長は「子供それぞれに事情や特徴があるし、学年によっても状況は違う。単純に数字で子供を比べて見られるのは切ない」と話した。

 県教委のまとめなどでは、15日までに09年度の学力テストへの対応を決めたのは、能代市▽大館市▽潟上市▽北秋田市▽にかほ市▽小坂町▽上小阿仁村▽三種町▽八峰町▽井川町▽大潟村▽美郷町−−の12市町村教委。

 藤里町はいったん「市町村別公表の方針が変わらなければ不参加」としたが、21日に再び委員会を開いて改めて協議することになった。他は「文部科学省の実施要領を守ってもらいたい」などとしながら参加の方針。

毎日新聞 2009年1月16日

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宇宙基本計画  打ち上げ初受注で一歩

 韓国の多目的衛星を日本のH2Aロケットで打ち上げることが十二日の日韓首脳会談に合わせて発表され、両首脳は協力関係の進展と歓迎した。

 国産ロケットが海外から人工衛星打ち上げを受注したのは初めてだ。宇宙産業育成に弾みをつけたい。

 国家戦略として宇宙開発に取り組む宇宙基本法が昨年成立し、宇宙基本計画の策定が進む中、幸先よい一歩を踏み出したといえよう。

 中国が米国とロシアに次ぐ宇宙遊泳を成功させ、インドが初の月探査機を打ち上げるなど各国の宇宙開発競争は激しさを増している。

 わが国は一九七五年に人工衛星を打ち上げるなど開発は早かったが、国際競争力の面では出遅れた。

 昨年五月に自民、公明、民主の与野党が共同提案した宇宙基本法が成立、宇宙開発戦略本部が発足した。

 今年五月ごろに宇宙基本計画を策定する予定で、内閣府に宇宙局(日本版NASA)を置けば宇宙政策を総合的に推進する体制が整う。

 今後の宇宙開発は研究主体から国民生活の向上や安全保障、宇宙産業の育成など利用の拡大を図る方向だ。

 戦略本部がまとめた基本計画の骨子は(1)地上の生活を豊かで安全に(2)安全保障の強化(3)宇宙外交の推進(4)戦略的産業の育成(5)人類の夢・次世代への投資−の五本を柱にしている。

 生活に欠かせない気象衛星や漁業、鉱物など資源探査、災害監視など「宇宙の目」が果たす役割は多い。

 宇宙産業は経済波及効果も大きい。ロケットや衛星の開発は関連する分野が広く、宇宙開発は科学技術、生産力など国力そのものといえよう。

 H2Aの打ち上げ事業は二〇〇七年度に民営化されたが、国内需要は年二機程度で採算ラインに届かない。

 各国との受注競争では高コストがネックになり、鹿児島県種子島の発射場も使用期間の制約がある。どう宇宙産業を育成するか、課題山積だ。

 基本法で焦点となったのは安全保障分野の宇宙利用だった。

 「平和目的に限る」としてきたが、国際解釈に沿った「非侵略ならば平和利用」に改め、偵察衛星など防衛目的に利用できるようになった。

 今後ミサイル防衛など軍事利用が進むことが予想されるが、基本法にある「憲法の平和理念」を守り、情報公開の原則を維持する姿勢が大切だ。

 外交面では成果が期待できる。気象や災害情報の国際協力だけでなく、来月から日本人宇宙飛行士が長期滞在を始める国際宇宙ステーションへの物資輸送を担うことになっている。

 人類が太古の昔から夢を託してきた月や惑星探査などはわくわくする希望を与えてくれよう。宇宙開発を未来へつながる大きな資産にしたい。

京都新聞 2009年1月15日

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「委員長解任は無効」丹羽氏が主張 犬山市教委、学力テスト問題

 愛知県犬山市教育委員会が昨年12月の定例会で、塩谷立文部科学相あてに提出した2009年度全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)に対する意見書が越権行為だとして、丹羽俊夫氏の教育委員長解任を議決した問題で、丹羽氏が13日、決定は法的根拠がなく無効だとして、引き続き委員長職にとどまることを表明した。同市は全国で唯一、学力テストに2年連続で不参加。学力テスト参加に反対する丹羽氏と瀬見井久教育長が、参加を主張する田中志典市長と対立してきた。

 丹羽氏は瀬見井教育長が同席した会見で、地方教育行政法と同市教育委員会会議規則のいずれにも委員長解任についての規定がないことを指摘。解任決定に至るまでの一連の過程が法的な手続きに基づいておらず議決自体が無効だと主張し「この先も委員長にとどまり、責任を持って犬山の教育づくりを進めていく覚悟だ」と述べた。瀬見井教育長によると、弁護士などにも相談し、無効だという見解を得ているという。

 昨年12月22日の市教委定例会では、「学力テストは抽出調査にすべきだ」という丹羽氏が委員長名で文科省に届けた意見書をめぐり、対立する参加派の加藤武司委員が「委員会の議決を経ておらず、越権行為で職権乱用」として委員長解任要求の緊急動議を提出。5委員の投票の結果(丹羽氏は参加せず)、賛成4、反対1で解任が議決された。

中日新聞 2009年1月14日

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犬山市:学テ問題で解任の教育委員長「無効、辞めない」

 全国学力テストに参加していない愛知県犬山市の丹羽俊夫教育委員長の解任が可決された問題で、丹羽氏は13日記者会見を開き、「解任は法的根拠がなく無効で、委員長を続ける」と表明した。テスト参加を求める田中志典市長と不参加派の瀬見井久教育長との対立が背景にあるとみられ、テスト問題とは無関係な“場外乱闘”の様相を呈してきた。

 丹羽氏は「地方教育行政法では委員長の解任についての規定がなく、動議の提出、採決は無効」と主張。解任理由とされた、テストに関する意見書を委員長名で文部科学省に提出したことについて「学校現場の総意であり、委員長の独断、委員会軽視にあたらない」と話した。会見には瀬見井教育長も同席、「法的に根拠がない決定に従う理由はない」と支持した。

 これに対し、田中市長は「教育者の立場をわきまえない保身のための言動。事務方のトップである教育長まで賛同するのは問題」と話した。今後、混乱を招く言動があれば議会と相談し、瀬見井教育長の教育委員としての解職を求める考えも示唆した。

 今月28日には定例の委員会が予定されており、混乱が予想される。解任の法的根拠について、文科省からは「前例がない」(市教委)「互選で選ばれた委員長が委員会の採決で解任されるのは自然な考え方」(市長事務局)と回答があったという。

 市教委は先月22日、丹羽氏が意見書を独断で文科省に提出したとして賛成多数で委員長職を解任した。【花井武人】

毎日新聞 2009年1月14日

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全国学力調査の廃止・不参加の要請

                        2009年1月13日

文部科学省 御中
教育委員会 御中

      

〒112-0002 東京都文京区小石川2−3−28−201

                 自由法曹団東京支部

電話 03-3814-3971 ファックス 03-3814-2623



私たちは東京の弁護士から成る自由法曹団東京支部です。

文部科学省から全国学力・学習状況調査(以下「全国学力調査」といいます)の実施要領が発表され、文部科学省は2009年度も全国学力調査を実施する方向を示しています。

しかし、全国学力調査は、子どもたちと学校を序列化し、教育をゆがめ競争を激化させます。

この間、全国学力調査の結果公表に関する動きが報じられました。その中で結果公表の弊害として序列化、競争激化が指摘されました。この弊害は結果を公表しなくとも生じるものであって、全国学力調査に本質的なものです。

こうした序列化、競争の激化によって不正行為が行われる危険などの問題もあります。現に東京では足立区独自に行われた学力調査で組織的な不正行為が過去に行われました。

全国学力調査を実施する理由はありません。

以上より、私たちは次のことを要請します。



文部科学省に対して要請します。

 全国学力調査を廃止してください。



教育委員会に対して要請します。

 全国学力調査が行われた場合であっても、同調査について不参加としてください。                 以上

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前教育委員長、解任動議無効と主張=犬山市

 文部科学省が実施する全国学力テストへの参加をめぐり、昨年末に解任された愛知県犬山市教育委員会の丹羽俊夫前教育委員長(現教育委員)は13日、記者会見し、「関係法や市の規則に解任に関する規定は見当たらず、解任動議は無効だ」と主張した。

 丹羽氏は昨年12月19日、瀬見井久教育長の意向を受け、2009年度の全国学力テストについて、全員参加でなく一部参加にするよう求めた意見書を塩谷立文部科学相に提出した。意見書提出は教育委員会の承認を得ていなかったため、丹羽氏は同22日の定例教委で委員長職を解任された。

 丹羽氏の主張に対し、田中志典市長は記者団の取材に応じ、「(解任の有効性を)文科省に確認している。市民のことを考えず、単に保身にすぎない」と非難。その上で、「28日に予定される次回定例教委で混乱が生じるなどした場合、丹羽教育委員と瀬見井教育長の辞職勧告を出す」と述べた。

 犬山市の公立学校は全国で唯一、2年連続で学力テストに参加していない。(了)

時事通信 2009年1月13日

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学テ 秋田知事の公表強行 市町村教委 一斉に反旗 一時期の結果を子どもに突き付け 自信失わせていいのか

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 秋田県の寺田典城知事が全国学力テストの県内市町村別平均正答率などを一方的に公表した(十二月二十五日)ことにたいし、市町村教育委員会から「教委の独立性を侵すものだ」「序列化、過度の競争を招く」などと批判が強まっています。藤里町教委は八日、二〇〇九年度学テへの「現段階不参加」を決めました。(秋田県・桑高豊治)


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 昨年九月、寺田知事が「私の責任で(学力テスト結果を)公表せざるを得ない」と発言し、根岸均県教育長らが公表を説得する行脚を行いました。それにたいし、全二十五市町村教委が公表に反対しました。文部科学省の学力テスト実施要領は、参加や結果公表を市町村教委に委ねています。

不参加明言も
 県教委が市町村名を伏せて十月二十二日に開示したのにたいして寺田知事は、「公開したのかしてないのかよくわからない」といい、市町村別結果公表にこだわりました。

 この時すでに、複数の教育長が「参加の前提が崩れた。ルールを無視して公表するなら来年度学テに参加しない」と明言していました。

 寺田知事は公表理由に「公教育はプライバシーを除いて公開が基本」をあげました。知事公室は「職として知り得た情報は開示できる」「県民から請求はなかったが、県情報公開条例に基づいて公表した」といいますが、文科省の学テ実施要領上、知事は学テにかかわりを持ちません。

 部外者の知事が公表した教育情報は子どもたちに直結する情報です。藤里町の古川弘昭教育長は、「子どもは成長します。あるときのテストで問題が解けなくても数カ月後には解けるようになるものです。一部の教科のごく一時期の結果を子どもたちに突き付けて自信を失わせるようなことがあってはならないのです」と話します。

 「○村は小中ともいい。都市部の△中はガタッとおちる」などと発言する寺田知事にたいし、現場教師たちは、「子どもたちの状態で大きく変化する。平均点比較は意味をもたない」と批判します。

県教委に批判
 県教委も同席して九日に開いた町村教育長会議(会長・鶴飼孝東成瀬村教育長)では、教育に介入する知事への怒りとともに、学テ結果の自主公表をせまる県教委にも批判が続出しました。鶴飼教育長は「(結果公表で)たとえ一人の子どもでも、意欲をなくしたり、優越感をもったり、劣等感をもたせるなどということは教育の場で絶対あってはならないことだ」と発言しました。

 市町村教委の反発にたいし、寺田知事は「(来年度も)公表するべきだ」とのべ、不参加表明の藤里町教委には「一教育委員会が子どもの権利を否定するのはいかがか」と攻撃しました。

 この公表問題で、日本共産党県委員会、県高等学校教職員組合、県革新懇などが寺田知事にたいし直ちに抗議。「憲法に基づく民主教育を考える会」は四日、各市町村教委に要望書を送付し、二〇〇九年度学テへの「不参加」などを求めました。十日現在で十九市町村教委が来年度学テへの参加・不参加を検討中です。

しんぶん赤旗 2009年1月13日

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学力テスト 見直す時期にきている

 全国学力テストの結果公表をめぐって、混乱が続いている。

 秋田県知事が県教委の反対を押し切って、市町村ごとの科目別正答率を県のホームページで公表したため、同県内の藤里町教委が学力テストへの不参加を表明した。

 文部科学省は、「過度な競争や序列化を防ぐため」として、都道府県教委に市町村別の結果を公表をしないよう求めているが、秋田県のほか、大阪府、鳥取県などでも公表の動きが進んでいる。

 各地で知事と教委の意見が対立している。わずか二回の実施で、制度的ほころびと混乱は隠せない。

 文科省は学力テストの目的に、学力水準や学習課題の把握を挙げているが、教育専門家からは抽出調査で十分対応できるとの指摘もある。

 全国一斉、全員参加型のテストを抜本的に見直す時期にきているのではないか。

 学力テストの実施要領は、全国の小学六年と中学三年を参加させ、市町村、学校ごとの格差を比較できるデータを収集しながら、各教委に詳細な結果公表を禁じている。

 情報公開がこれほど求められる時代に、「由(よ)らしむべし、知らしむべからず」というような性格を持つ制度設計に、そもそも無理がある。

 文科省は、都道府県教委が国からテスト結果の一部を受け取らないことも、今後は選択できるようにする方針を示している。

 情報開示請求があった場合、公表を拒否できない場合があることがその理由だ。こんな奇妙な弥縫(びほう)策を講じてまで、テストを続ける意味があるだろうか。

 現行の全国学力テストは「ゆとり教育」の見直しの流れの中で、二〇〇七年から始まった。

 全員参加型の学力テストは、一九六〇年代にも行われた。しかし、テストの予行演習をしたり、成績の悪い児童生徒を欠席させるなど、過度の競争が問題となり、短期間で廃止になった。

 文科省は新年度も三回目の学力テスト実施を予定しているが、現行の仕組みを続けるかぎり、結果の公表をめぐる教育現場の混乱は続いていくだろう。

 過去二回のテストには計百三十億円かかった。得られた結果について、文科省は「学力差は、全体としてはそれほど大きなばらつきはみられず、学力が低下しているとはいえない」と分析している。毎年数十億円かける費用対効果に疑問も残る。

 教員増や学校施設の充実など、財政難の中で限られた教育予算を振り向けるべき施策は、学力テスト以外にもいくらでもある。

北海道新聞 2009年1月13日

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学校教育 現場の負担減らす対策を

 学校教育は社会状況を反映する性格を持っている。家庭の生活状況が厳しいと、子どもの学習意欲も低下しがちだ。政治や教育行政の責任者は、そのことを知らないわけではないのだろうが、教師の努力だけに期待するような施策が目立つ現状に疑問を感じる。

 文部科学省は昨年末、二〇一三年度から実施する高校の学習指導要領改定案を公表した。低学力化も目立つ高校教育で、義務教育段階の復習ができるようにしたことは評価できる。しかし同時に、英語教育の強化を図り、授業は英語で行うことを基本とし、学ぶべき英単語数も千三百から千八百に増やした。

 義務教育段階での学習が十分でない生徒が少なくない現状を認める一方で、英語での授業を求めることには矛盾がありはしないか。

 科学技術の発展を競い合う中国、韓国、インドなどにおける英語教育の充実を意識したものだろうが、英語での授業が可能な高校は限られるというのが実態であろう。あえて本格実施をするのなら、英語教師の増員も必要になる。

 文科省が実施する全国学力テストも、いくつかの自治体で混乱を生じている。学力テストは、すべての学校の小学六年生と中学三年生に国語と算数(数学)のテストを行い、結果は都道府県単位の公表にとどめ、学校ごとの成績公表は市町村教委に委ねている。

 これに対し、秋田県知事が市町村別平均正答率の公表に踏み切り、大阪府知事も市町村教委に公開を求めて一部が応じている。知事たちは情報公開の原則も根拠に挙げており、国民の間にも支持する声がある。

 しかし、現場には「結果の公開は行き過ぎた比較や競争を生む」という反発が強い。秋田県教委は「知事の公表は極めて遺憾」と文書で申し入れ、同県藤里町教委は八日、「県が公開の方針を変えないのなら、二〇〇九年度はテストに参加しない」と決めた。

 大阪府や秋田県の知事の行動は、自制が求められているはずの教育への介入と言えるのではないか。こうした動きに文科省も当惑気味だが、全国一斉のテストを行うのならば、ある程度予想されたことでもある。結果の公開をしなくとも、現場には無言の圧力がかかる。文科省も、その“効果”も期待したのではないのだろうか。

 これまでのテストでも、成績の低さと就学援助を受ける子どもや朝食を食べない子どもの多さに相関関係があるという結果が出ている。政治が対応すべきは、こうした社会状況の改善である。文科省がさらに全国一斉形式でのテストを続ける意味は少ないように思われる。

 文科省は、〇七年度に病気休職した小中高校などの教職員が八千六十九人いるとの発表も行った。前年度より約四百人増えた。病気の種類では精神疾患が約五千人、62%を占めた。うつ状態に苦しむ人が多いという。文科省も「子どもだけでなく、保護者への対応など、教員の忙しさが増している」と教育現場の疲労を認めている。

 現場の負担を減らす対策を真剣に考えるべき時である。

熊本日日新聞 2009年1月11日

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学校の携帯/禁止を情報教育の契機に 

 授業中、携帯電話でメール交換に夢中になる。ときにはいじめの道具にもなる。児童、生徒の携帯電話の使い方をめぐり、学校の悩みは深くなる一方だ。

 大阪府の橋下徹知事が、公立の小中高校では携帯電話を原則禁止とする方針を打ち出し、波紋を広げている。府教委も知事の意向を受けて、小中学校では持ち込み、高校では使用を禁じることを決めた。

 学校での携帯については、一部の自治体が一律に禁止している。だが、多くの自治体は学校の判断に任せており、学校側では原則禁止とするところがほとんどだ。

 府教委の調査でも、小中学校の九割前後がすでに禁じている。今回注目を集めたのは「知事の禁止令」だったことに加え、形だけの禁止となっている実態が浮き彫りになったからだ。知事としては、通達で徹底を図ろうとしたのだろう。

 内閣府などの調査によれば、小中高校生の携帯電話所持率はおおむね三割、六割、九割という。また、府教委の調査では、一日に三時間以上使う中学生は二割近く、高校生では三割を超える。確かに、携帯漬けといってよい実態がうかがえる。

 文部科学省は昨年、携帯を使ったいじめや犯罪に子どもが相次いで巻き込まれたことから、全国の小中学校に「原則禁止」のルールを策定するように通達した。さらに、政府の教育再生懇談会が先ごろ、小中学校での携帯の持ち込みや使用を禁止する方針を打ち出した。

 流れは「学校内の禁止」である。

 携帯が、いじめや犯罪にかかわりがなくても、使用のあり方や依存の度合いなど、問題が小さくないことは明らかだ。しかし、子どもたちから取り上げるのは現実には難しいし、放置もできないのが実情だ。

 禁止するにしても、子どもとの連絡用など安全確保のための使用には配慮が必要だろう。保護者の協力も欠かせない。

 一方で、「学校内で禁止しても校外での使用が増えるだけ」という指摘もある。確かに、禁止するだけでは携帯にまつわるさまざまな問題の解決にはつながらない。

 なにより、携帯使用の基本ルールについての教育が要る。さまざまなメディアを介して入ってくる情報に、子どもたちがきちんと向き合い、判断できるようにする「情報教育」こそが大切だ。

 問題は、こうした情報教育を進める学校側の体制が十分といえないことだ。あらためて見直す契機としなければならない。

神戸新聞 2009年1月10日

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学力テスト参加 「教委判断で公表の要領順守が条件」

 秋田県町村教育長会(会長・鶴飼孝東成瀬村教育長)は9日、秋田市内で臨時会議を開き、新年度の全国学力テストに参加するかどうかを協議した。参加の絶対条件として、結果公表は市町村教委の判断とする文部科学省の実施要領の順守を挙げる声が大勢を占めた。

 県内12町村の教育長や代理人が出席。3種町教委の大塚強教育長は参加方針を伝え、「テスト自体は応用問題を重点に据えており有意義。関係者が実施要領を守ることを前提に参加したい」と説明。同じく参加を決めた上小阿仁村教委の小林茂教育長は「子どもたちの学力の実態や指導の在り方を見直す機会になっている」と、テスト自体の意義を強調した。ほかの10町村教委は今月下旬にかけ、順次方針決定することを表明した。

 出席者からは参加・不参加を判断する上で、寺田典城知事が昨年末、市町村別の平均正答率を公表したことを懸念する意見が相次いだ。

河北新報 2009年1月10日

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学力テストへの参加20市町村決まらず 知事、成績公表方針変えず

 秋田市内で開かれた県町村教育長会議  寺田知事が昨年12月に全国学力テストの市町村別の平均点を公表したことを受け、市町村は、新年度の学力テストに参加するかどうか態度を決めかねている。読売新聞の調査によると、県内25市町村のうち、9日までに、北秋田、能代、潟上、三種、上小阿仁の5市町村が正式に参加を決めた。残り20市町村は未定としている。テストに参加するかどうかは、23日までに県が市町村の意向をとりまとめて文部科学省へ回答することになっている。

 県内12町村の教育長は9日、秋田市内で県町村教育長会議を開き、次回の学力テストに参加するかどうか意見交換した。「全国での学力の位置が分かる」などとテストの意義を認める意見が大勢を占め、不参加を表明する町村はなかった。

 会議には県義務教育課の須藤幸紀課長も参加。各教育長からは、「教育の独立性はどうなっているのか」「自治体に公表を強く迫るのをやめてほしい」といった質問や要望が相次いだ。「県教委と市町村教委の関係がぎくしゃくしてしまった。もとに戻りたい」と切実に訴える教育長もいた。

 次回の参加を決めた上小阿仁村の小林茂教育長は「テストを通して学力の実態や指導のあり方を見直す機会になる」と話し、「公表については配慮してほしい」と注文を付けた。

 県教委は、次回の学力テストについて、文科省の実施要領に従い、市町村を明らかにした成績の公表はしない方針を全市町村教委に伝えている。しかし、4月には知事選が行われるため、次回も知事が市町村名を公表するかどうかは、不確定なままだ。

 14日の臨時会議で協議するという大潟村の高橋一郎教育長は「小中学校が1校ずつなので市町村別の結果が公表されたのはまずかったと思う。しかし、一人ひとりの学習状況を把握できるなど、メリットの方が大きい」と参加に前向きだ。

 一方、「結果を公表するなら参加しない」との方針を県教委に報告した藤里町の古川弘昭教育長は「実施要領にのっとっていれば、テストはいろいろな活用ができるので昨年同様参加したい。ただ、公表されないという保証はない。もう少し様子を見なければいけない」と慎重な姿勢を見せる。

 横手市は文科省に対し、「参加するかどうかは未定、26日の定例会で協議して決める」と回答するという。高橋準一教育長は「県教委が寺田知事に対し、遺憾の意を示したことで知事と異なる立場がはっきりした」と述べ、県教委の姿勢に理解を示した。

 市町村別の成績が公表されることで、市町村間の過度な競争や序列化を懸念する声があったが、25市町村では、問題が生じたという自治体はなかったという。

           *

 寺田知事は9日、県庁で報道陣に対し、「教育はプライバシーを除いてはオープンであるべきだ。私の考えは変わらない」と述べ、新年度の全国学力テストの成績も公表すべきとの考えを示した。

 知事は、藤里町教委が「結果を公表するならテストには参加しない」との方針を県教委に報告したことについて、「試験があるのに放棄するというのは、義務教育のあるべき姿ではない」と批判した。

 また、テストの実施要領のあり方にも触れ、「一般的に社会性がないと思う。要領ではなく規則を作ったらいい。要領で守ってくださいと言うこと自体が文科省としては責任放棄だ」と語った。

讀賣新聞 2009年1月10日

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「はっきりした規則を作れ」秋田県知事、文科相にかみつく

 全国学力テストの市町村別結果の公表をめぐり、塩谷立文部科学相が成績を公表した秋田県の寺田典城知事を批判したことを受け、寺田知事は9日会見し、都道府県による成績の公表を禁じた文科省の実施要領について「社会性がない」などと批判。「『(社会性がないにも関わらず)実施要領を守ったらいい』というのは責任放棄。(塩谷文科相は)よりはっきりした規則を作ればいい」などと反論した。

 また、同県藤里町が成績が再度公表されるなら次回テストには参加しないと表明したことについては、「義務教育には、教育を受けさせる義務と子供には教育を受ける権利がある。一教委がそれを否定するのはいかがなものか」と不快感を示し、「(次回も)私が知事ならば公表する」との考えを示した。

 同町の不参加表明をめぐっては、塩谷文科相が9日の閣議後の会見で、「懸念していたことだ。全国学力テストをやめさせることが公表の意図なのか」と寺田知事の対応を批判していた。

MSN産経ニュース 2009年1月9日

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秋田県知事が学テ結果引き続き公開の考え

 全国学力テストの市町村別結果を公表した秋田県の寺田典城知事は9日夜、2009年度のテスト結果も「公表すべきだ」との考えを示した。結果公表なら不参加との意向を表明した同県藤里町教育委員会に対しては「一教育委員会が試験を受ける権利を否定するのはいかがなものか」と不快感をあらわにした。

 次回のテストは4月21日に実施され、寺田知事は「わたしがいたら結果を公表すると思う」と説明。しかしその直前の4月12日に知事選投開票日があることを報道陣が指摘すると「選挙と一緒にされても困る」と明言を避けた。

 昨年末の知事の公表をめぐり秋田県教委が「遺憾」と申し入れをしたことについては「教育の独立性は認めるので正常な姿だと思う」としたが「公教育はプライバシーを除いて公開が原則と考えている」との持論を繰り返した。

 市町村別の結果を都道府県教委が公表することを禁じている文部科学省の学力テスト実施要領については「社会性がない」と批判した。

共同通信 2009年1月9日

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学力テスト不参加…「懸念していた」塩谷文科相

 秋田県藤里町が今年4月の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)への不参加を決めたことについて、塩谷立文部科学相は9日、閣議後の会見で「寺田典城知事、県教委とよく話をして全国学力テストの趣旨を理解してもらいたい」と翻意をうながす一方、寺田知事による成績公表が不参加の理由とされたことについて「懸念していたことだ。全国学力テストをやめさせることが公表の意図なのか」と、寺田知事を改めて批判した。

 文科省の実施要領では、全国学力テストの学校別、市町村別の成績公表はそれぞれが自主的に行うとしており、都道府県による成績一覧の公表を認めていない。

 塩谷文科相は「不参加の自治体が出てくるから公表はしないということでやってきた。もし(全国学力テストが)必要ないということなら、まともに議論してほしい。不参加の自治体が出てきたことを知事としてどうとらえているのか、考えを聞きたい気持ちはある」と述べた。

MSN産経ニュース 2009年1月9日

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学力調査「公表なら参加せぬ」 秋田・藤里町が決定

 秋田県の寺田典城知事が全国学力調査の県内の市町村別の成績を公表した問題で、同県の藤里町教育委員会は8日、「公表するなら参加しない」という方針を委員の全会一致で決めた。国公立でこれまで不参加だったのは愛知県犬山市だけで、成績公表を理由に不参加の意思を示したのは藤里町が初めて。

 秋田県では、昨年末の朝日新聞の取材に対し、全25市町村教委のうち15教委が「不参加も含めて対応を検討する」と回答し、県教委が知事に「極めて遺憾」と申し入れる事態になっている。県内の町村教育長会は9日の臨時会議で4月実施の次回調査への対応について情報交換する予定で、離脱の動きは今後さらに広がる可能性もある。

 藤里町には小中学校が1校ずつしかなく、自治体別の成績はそのまま学校の成績を示す。同町の古川弘昭教育長は「具体的な数値を出して比較され、子どもたちがやる気を無くすと大変だ」と決定の理由を説明した。

 全国学力調査は小6と中3を対象に07年に開始。文部科学省は序列化や過度な競争を招かぬよう個別の成績を公表しないよう求めてきたが、寺田知事は昨年12月25日、「公教育は公開が原則」として市町村別の結果を県のホームページで公表した。同県は都道府県別成績が小学校で1位だが各教委は「無用な序列化につながる」と反発していた。

 調査について、鳥取県は09年度以降、請求があれば市町村別や学校別の成績を開示できるよう条例を改正しており、一部の教委に参加を再検討する動きが出ている。各地で離脱の動きが広がれば、全国調査という制度の根本が揺らぐ恐れがある。(伊藤綾)

朝日新聞 2009年1月9日

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学力テスト、新年度の参加協議へ 秋田県町村教育長会

 秋田県町村教育長会(会長・鶴飼孝東成瀬村教育長)は9日、新年度の全国学力テストに参加するかどうかを協議するため臨時会議を開く。

 寺田典城知事が12月末、全国学力テストの市町村別平均正答率を公表したことを受けた措置。

 会議には、県内全12町村の教育長が参加する予定。各教委の参加・不参加の方針や学力テストの意義などについて意見交換する。県教委の担当者も招き、新年度の学力テスト実施要領についての説明を受ける。

 文部科学省は、全国の市町村教委の参加・不参加の意向を今月中に確認することにしており、参加する町村教委は協議の内容を判断材料としたい考え。

 寺田知事が市町村別正答率を公表したことで、県内の町村教委の中には、新年度のテスト参加を白紙に戻すところも出ている。

 臨時会議について、鶴飼教育長は「各教委でいろいろな考え方があると思う。情報を収集し、参加・不参加の決定に当たって、適切な判断ができるよう役立てたい」と話している。

 一方、寺田知事は7日、県議会自民党と協議。議員から「県内の全市町村教委が新年度もテストに参加すると信じて公表したのか」と質問され、「そう信じてやった。子どもたちが参加することを教育委員会が止めるということは、限度を超えているのかなと思う」と述べた。

河北新報 2009年01月8日

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「知事の公表極めて遺憾」 学テで秋田県教委申し入れ 

 秋田県の寺田典城知事が全国学力テストの市町村別結果を公表したことに、同県教育委員会が「極めて遺憾」と文書で知事に申し入れをしたことが7日、分かった。県教委が知事に遺憾の意を示すのは異例。

 関係者によると、申し入れ書は、県教委が市町村教委に自主的な公表を呼び掛けてきたことに言及し「知事が市町村別成績を公表したことは県教委のこれまでの取り組みを無にするもので極めて遺憾」と結んでいる。また県教委は各市町村教委に、学力テストに来年度も引き続き参加するよう要請する文書を送った。

 寺田知事は昨年12月、県内の全25市町村別の平均正答率を公表。「公教育はプライバシーを除いて公開が基本。情報を共有して活用することが県民の利益につながる」と意義を強調したが、県内の市町村の教育長からは「序列化につながる」など反発が相次いだ。

MSN産経ニュース 2009年1月7日

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高大接続テスト 大学生の学力低下をどう防ぐ

 大学入試には、高校生の学習意欲を刺激し、大学生の学力水準を維持する機能があった。それがもはや期待できないということだろうか。

 中央教育審議会が大学の学部教育に関する答申の中で、高校生の学力を客観的に把握する方法の一つとして「高大接続テスト」の検討を打ち出した。

 高校は授業の改善に役立て、大学は入試や新入生の教育に活用する、新たな役割のテストが想定されている。背景には、大学全入時代を迎え、大学生の学力低下が顕著になってきた現実がある。

 推薦入試やAO(アドミッション・オフィス)入試による大学入学者は、全体の4割を超す約26万人、うち約23万人は学力検査を経ていない。大学進学希望・予定者の約4割は、高3秋の勉強時間が1時間以下という調査もある。

 高校生やその同世代が受けるテストには、約9割の大学が利用する大学入試センター試験と、高校中退者らに大学受験資格を与える高校卒業程度認定試験がある。

 答申は、高大接続テストについて高校と大学の関係者に研究や協議を促しているだけで、具体的な内容には触れていない。政府の教育再生懇談会は、センター試験より易しい試験を念頭に、同様のテストについて検討している。

 全く新しい試験の導入は、教育現場を混乱させる恐れがある。既存のセンター試験や高卒認定試験の改善を基本に考えるべきだ。

 センター試験については、資格試験のように扱うべきだという議論が、以前からある。

 2000年の大学審議会答申がその一例だ。答申では、各大学は受験生の学力が一定水準に達しているかどうかを判断することだけに使い、あとは大学独自の試験で合否を判定するよう奨励した。

 それから既に8年余りたつ。

 センター試験をめぐる議論は進まない一方で、文部科学省や中教審は、受験競争緩和のため個性を重視した多様な入試の重要性を強調してきた。これに伴い、各大学に推薦、AO入試が広がった。

 だが、少子化で定員確保に苦しむ多くの大学が、実施時期に制限のないAO入試を「青田買い」に利用してきたのが実態だ。

 大学が基礎学力不足の学生に補習を行うなど努力するのは当然だが、まず高校生の学力を引き上げる必要がある。

 文科省も、立場の違う高校と大学の関係者間の協議が進むよう力を尽くすべきだ。今回の答申をその契機としなければならない。

讀賣新聞 2009年1月7日

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