学力テスト(2007年10〜11月)



支庁別に結果公表 全国学力テスト

文部科学省が十月に都道府県別の結果を公表した全国学力調査(学力テスト)について、吉田洋一道教育長は三十日の道議会一般質問で「教育局(支庁)ごとの教育改善の観点に立って分析結果を公表したい」と述べ、支庁別に児童生徒の学力傾向と対策を公表する考えを明らかにした。

ただ、支庁別に平均正答率を公表するかどうかについては、「序列化や過度の競争につながらないよう十分留意する」として、引き続き検討する。

公表時期は明言しなかったが、道教委は現在、学識経験者らでつくる道検証改善委員会で結果分析を進めており、来年一月に全道の改善策をまとめる予定で、支庁別の公表はそれ以降になる見通しだ。

北海道新聞 2007年11月30日 14:09

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博士号の教員、来年度の配置検討へ 県発展戦略会議

外部専門家による寺田典城知事の補佐機関「県発展戦略会議」の第6回会合が26日、県庁で開かれ、教育行政の在り方などを議論した。前回の会合で意見が分かれた博士号取得者の教員採用について、慎重な立場だった根岸均県教育長は会議終了後、「来年度から学校に配置することを視野に検討したい」と前向きな姿勢を示した。

会合で根岸教育長は、博士号取得者のほか、スポーツなど各分野で顕著な業績を持つ人材も含めて教員として採用を検討していくことを説明。ただし、実際の採用時期については早くても来年度に採用試験を行い、21年度から配置となるとの見通しを示した。

これに対し、寺田知事は「(全国学力テストで)いい成績を取ったのだから、スピード感を持って手を打っていくべき」と述べ、本年度内に採用試験を行い、来年度から学校に配置していくことを求めた。根岸教育長は会議終了後、寺田知事の提案を踏まえ、会合での説明より1年前倒しし、来年度からの配置を検討する意向を明らかにした。

秋田魁新報 2007年11月27日

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「郡部強く、秋田市弱い」学力テスト 知事、結果あえて明かす

寺田典城知事は26日の定例会見で、公表が各市町村教育委員会と学校に委ねられている全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の市町村別・学校別結果について、「郡部の小さな学校が強く、教育環境が整っていると思われている秋田市が弱い」などと述べた。

県教育庁によると、これまでに全国学力テストの市町村別結果を公表した県内の市町村教委はない。会見で寺田知事は「あえて話せば」と前置きし、東成瀬村、美郷町が好成績で、秋田市が低調だったことを明らかにした。

その上で、「全県対比の数値は言わないような(不十分な)情報共有、課題分析は良くなく、改善に結び付かない。比較して初めて弱点を知ることができる」とし、公表しない市町村教委について「自分の都合だけでやっている」と批判した。

秋田魁新報 2007年11月27日

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学力テストやめる考えない 国民対話集会で文科相

「信頼される学校づくり」をテーマにした閣僚と国民の対話集会が18日、横浜市で開かれ、渡海紀三朗文部科学相は、参加者から「学校の序列化を招く」と反対意見が出た小中学生の全国学力テストについて「学校が生徒の学習状況を把握するのに必要。やめる考えはない」と答えた。

このほか、2009年度から導入する教員免許更新制や、来年度からの予算措置を求めている公立小中学校の教員定数増に関して「教員の資質向上や、子どもたちと向き合う時間の確保が大切だ」と理解を求めた。

対話集会は福田康夫首相が「大臣と語る希望と安心の国づくり」として始め、今回が第2弾。小泉内閣当時のタウンミーティングで「やらせ質問」が問題化したことを踏まえ、参加者を公募し、地元の教職員など約70人が参加した。質問内容の事前確認も行わなかった。

共同通信 2007年11月18日

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全国学力テスト、学校別成績を住民が公開請求…枚方

小学6年と中学3年を対象に今春実施され、10月24日に文部科学省が結果を公表した全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)について、大阪府枚方市の住民が市に対し、学校別の結果の開示を求める情報公開請求を行ったことがわかった。市側は開示に応じない見通しだが、開示に前向きな自治体もあり、論議を呼びそうだ。

枚方市教委によると、請求は7日にあった。市は来週中にも結果を通知する。

同市では、市独自に実施している学力テストを巡って、学校別の結果の開示を求める情報公開請求を市側が拒否して訴訟となった。今年2月、公開を命じる判決が大阪高裁で確定し、その後、市が開示した。

しかし、全国学力テストについては、文科省は序列化への懸念から学校別の結果を公表しないよう、全国に通知している。このため市教委は、開示請求には応じない方針。

ただ、文科省の通知に強制力はなく、宇都宮市が学校別の結果を公表する方針を打ち出すなど必ずしも足並みはそろっていない。

別の住民が枚方市分の結果の情報公開請求を行っており、市はこれについても対応を検討している。

讀賣新聞 2007年11月17日

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何のための全国テスト

奇妙な静寂が広がる。冷ややかな視線もある。

43年ぶりに行われた全国学力テスト。10月24日の公表当日こそ新聞各紙が紙面を割いたが、その後の報道は限られている。

結果の活用不十分 来年に向け検証を

文部科学省は現場での結果の活用を促したが、個々の子供や保護者に説明のないまま、すぐに個人票を返した学校や、データをコピーしたもののロッカーに眠らせている学校も少なくないと聞く。「本校の問題点は、自治体単位のテストでわかっている。全国学力テストの結果を受けて、何かするつもりはない」と明言する校長もいた。

連載「教育ルネサンス」は「続テストを生かす」で文字通り、テストを生かそうとする自治体や学校を改めて取り上げたが、これはかなり例外的だ。「国のテストだから、しゃかりきになることもない」という意識が広がってはいないか。

「序列化」や「過度の競争」を心配する文科省の方針もあだになった。これまで頑張ってきた成果として、テスト結果を住民に示したいと考えている市町村でさえ、公表に踏み切れないのはなぜか。文科省の定めた実施要領でも、自分の町の結果全体は、独自の判断で公表できるのに。

都道府県レベルでの正答率の差は、少しは話題になったが、どこに序列化や過度の競争の動きが見られるのか。むしろ、それとは逆の動きこそ、過度ではないのか。

そして、お茶の水女子大学の耳塚寛明教授が言うように、必要な学校への支援という点でさえ、国の分析モデルが不十分すぎるとなれば、いったい何のためのテストだったのか。

テストには様々な目的がある。現場の指導に生かすなら、子供の顔が思い浮かべられるような、現場に近いところでやるのがいいと、常識的にもわかる。国や教育委員会の施策の改善に生かすのなら、抽出調査で十分だったと、実施前から多くの専門家が口にしていた。

それが、抽出でないテストとなったのは、全国津々浦々の学校が競い合うことで、学力向上を図るという、当時の文部科学大臣の判断によるものだ。大臣の判断だから、この点は譲れない点だったと語る人も多いが、この判断が正しかったかも含めた検証が必要だろう。

文科省はすでに今月14日、来年度の学力テストの実施要領を公表した。今年度と大きな違いはないようだ。一方で、結果の分析についての専門家の検討会議も設ける方向のようだ。

今回のままのテストでいいとは、誰も思っていないはずだ。何十億もの税金と、実施から公表まで半年もかけることの重みを、改めて考え直すべきだと思う。(中西茂)

讀賣新聞 2007年11月17日

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国の分析では課題見えず

「『結果を使え』と言われて途方にくれている教育委員会や学校も多いのではないか」

お茶の水女子大学の耳塚寛明教授(54)(教育社会学)から、開口一番、こんな言葉が返ってきた。全国学力テストの実施方法などについて検討する文部科学省の専門家会議の委員の一人だった。

今回の全国学力テストの目的は、行政による教育施策の検証と、現場の指導改善の両方と定義されたが、実際に重きがあるのは教育施策の検証の方だと耳塚教授は見る。現場で生かすには、時間的な制約や、出題の中身が限定されていることがあるからだ。

ところが、「文科省が地方のモデルになるような分析を示していない。公にされた分析資料は、数分で読み終えてしまう。課題意識が何もない」と憤慨する。



テストの中身については「元々、ナショナルミニマム(国として最低限必要と考える内容)を測るという説明だったから、難易度の高いものにならないということはわかっていた」。活用力を問うB問題は「21世紀型の重要な学力。文科省が方向性を示した意味はある。現場に対するメッセージになった」と評価する。

しかし、分析についてははっきり落第点を付ける。「文科省は実証的な教育行政を目指しているのに、結果の検証をするだけの分析能力がないということ。能力のある人を集めて分析すべきだ」と指摘する。

例えば、学級規模と学力の関係。文科省は相関関係を示さなかったが、「へき地の小規模校も、意図的に小規模学級を作る学校も一緒に単純比較しても、相関が見られないのは当然。そういう点を考慮した分析をしないと」という。

また、「小学校で1000校、中学校で500校は、相当に問題のある学校。そうした学校に国が何をするかもはっきり言わない。これだけやさしいテストで、達成度の低い学校があるということを強調もしていない」とする。

さらに、「都道府県の差は小さい」というのが文科省の説明だが、「それで済ましてはだめ」とくぎを刺す。「都道府県の経済的レベルとテスト結果に関係が出なかった点が、昭和の学力テストとの大きな違いだが、東北地方がなぜ躍進したのか、分析することも大事。学習状況調査を見ると、宿題や補習などの指導に関係がありそうだ。そんな分析だってできるはず」



「文科省はろくなデータを持ってこなかった。ようやく宝物を手にしたのだから、ちゃんと使わないと。すべての学校でやった調査の利点は、学校を特定できること。素朴な使い方だが、足を運べば課題が見えるはず」と教委に提案もする。

「教育に施策や費用が必要だということを根拠づけるデータなのだから、都道府県が利用できる分析のモデルを国が示し、どういう施策を計画しているかまで発表しないと、テストを役立てたことにはならない」

B問題の指導について、「一番得意なのは受験塾。国際的な人材競争を考えると、先進国の学力モデルは参考にせざるを得ないが、階層差が反映されやすい学力。本当はそこが一番大きな課題だが、文科省の分析は、そんなことにはほど遠い」。様々な問題が、文科省の分析力に行き着くようだ。(聞き手 片山圭子 中西茂)

讀賣新聞 2007年11月17日

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最下位脱出へ 苦悩の沖縄

1年生の児童を前に絵本の読み聞かせを行う保護者。読解力向上がねらいだ(浦添市の仲西小で) 全国最下位だった沖縄県関係者の思いは複雑だ。

「全国平均くらいは取れるのではないかという思いがあった。ショックだ」

先月の全国学力テストの結果公表を受けた、沖縄県の仲村守和教育長(59)の弁だ。淡い期待の背景には1988年度から取り組んできた学力向上対策がある。

特異な歴史を歩んできた沖縄県は、全国最下位の県民所得や全国最高の失業率や離婚率といった社会問題とも相まって、学力水準の低さに長年あえいできた。本土復帰前の1964年に行われた全国学力テストでも、県平均点は「ビリから2番目の背中さえ見えない状態」(県教育庁義務教育課)。それだけに学力向上対策は県の主要政策課題と位置づけられてきた。

これまでの施策は基礎学力向上に重点が置かれてきた。最大の柱が、小学6年と中学3年の全員を対象にした達成度テスト。国語と算数・数学で毎年12月に実施。学校単位での授業の改善に役立ててきた。授業でも、計算や漢字のドリル学習、読書が重視された。

成果は達成度テストには出ていた。ただ、平均点を比較すると、小学生は89年に50点満点で31・9点だったのが昨年には41・0点、中学生は28・8点から32・4点と、小中に差がある。



今回の全国学力テストと一緒に行われた学習状況調査でも、授業以外の勉強時間が1時間未満の割合は、小学生では全国平均を下回ったが、中学生は45・1%と全国平均(34・8%)より10ポイント以上多かった。

大人社会でも酒席が多く、「夜型社会」とも言われる沖縄。中学生の深夜はいかいや飲酒での補導数も多く、家庭での学習時間の不足が学力の伸び悩みに直結してきたとの指摘も強い。

学校も手をこまぬいているわけではない。浦添市の住宅街にある仲西小学校では、家庭学習ノートを全児童に提出させ、5冊ごとに高良守校長(57)がパソコンで作成した児童の顔写真入りの賞状を手渡したり、校長室に飾ったりしている。まず小学校で習慣づけを、というわけだ。

その結果、今回の調査で、授業以外の勉強時間が2時間以上の児童の割合は32・2%と全国平均の25・5%を上回った。全国学力テストの結果も全国平均に近い数字となっている。



今月5日、仲村教育長は文部科学省を訪ね、小規模校への教員の増員や、学力サポーターとしての教員OB配置のための予算増を要請した。県教委は、達成度テストの内容や授業内容の見直しも検討。県立高校入試の問題の難易度を向上させる案も浮上する。

「20年間で一定レベルまで持ってきたという思いがある。我々の取り組みは道半ばだ」と仲村教育長。正答率の分布では、全国に比べて中位の正答率の児童生徒が多く、下位の比率はほぼ変わらない。上位陣の少なさと知識の活用力を問うB問題での不振が平均点を下げる要因となっている。

県教委は、基礎力向上一辺倒から応用力の養成にカジを切ろうとしている。ただ「基礎あっての応用力」との声も現場では根強く、先行きは不透明だ。(宮本清史、写真も)

沖縄県の全国学テ成績 今回の全国学力テストでは、知識を問うA問題、活用力を問うB問題とも、小中学校の国語、算数・数学のすべてで全国最下位だった。小学校では全国平均との差は5〜9ポイントだが、中学校ではさらに開いた。特に中学校数学の正答率は、A問題で57.2%(全国平均71.9%)、B問題では47.6%(同60.6%)と、10ポイント以上の差になっている。

讀賣新聞 2007年11月16日

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創造性重視 流れ強まる

今春の東大入試の自由英作文問題。自由な思考力が求められている 全国学力テストの「活用」問題はどんな反響を呼んだのか。

「どちらが役立つかと言われれば、断然区のテストです」。全国学テの結果公表直後、東京都荒川区内のある校長がもらした。

基礎学力テストを2003年から小中全学年に行っている荒川区は、毎年学校ごとに改善プランを作っているため、今回の分析で特別な委員会などを作る予定はない。ただ、「(知識の活用力を問う)B問題の分析には興味がある」と区教委。先進的にテストに取り組む自治体にとって、今回のテスト結果の意外性は少ないが、B問題への関心は高い。

今年度から独自に作成した副教材で読解力向上に取り組む神戸市も、全国の傾向と同様、A問題に比べB問題に課題がみられたが、「初めて経験する問題で、もっと低いかと思った」という声も学校から寄せられたという。「これまで取り組んできた副教材の活用や、教科を超えて『読んで考えて書く』指導に力を入れることが、B問題で求められる力につながるのではないか」と期待する。



「求められている学力の姿は、大きな転換点にある」。大手進学塾の河合塾(本社・名古屋市)の木下泰一・研究開発企画部長は指摘する。全国学力テストは、この流れを方向づけた。

木下部長は「文部科学省の学習指導要領改定に向けた中央教育審議会の中間まとめでも、社会で必要となる能力を育成するという方針が明確だ。大学入試への影響も避けられないだろう」とみる。

今春の東大入試では、英語の作文問題で、絵に描かれた状況を自由に解釈し、決められた語数で記述させる問題があった。国公立大の3分の2が出題している「自由英作文」は受験生の多くが苦手として、対策講座が人気を集めるという。私大でも、災害被災地に必要な支援を選んで英語で論理的に説明させる問題(慶応大経済学部)など、情報を解釈して批判的に読み、創造的な思考力が要求される問題が目立ち始めた。



こうした力はどう養うのか。教育評論家の岡部憲治さん(38)は、国際学習到達度調査(PISA)の基準をもとに考案した独自の習熟度レベルで全国学テを分析したところ、6段階のレベルのうち、真ん中にあたる「レベル3」が多いことに注目した。

この段階は、情報を整理し、教科を超えて知識を関連づけたり、自分の生活体験や気づいたことと照らし合わせることが求められる。「ここが、創造的な思考にジャンプできるかどうかの重要な分かれ目」と岡部さん。「ここでつまずく子には、一つ一つの知識の意味や背景を丁寧に確認する訓練から始めなければ上には進めない」

しかし、岡部さんは子供たちの可能性を見る。塾で小学生を教えた際、俳句を4コマ漫画に表現させる授業を試みたところ、暗記が得意でも、漫画の落ちを思いつかず苦しむ子が多いのに驚いたという。「勉強も四角四面にとらえず、自動車のハンドルのように『遊び』も必要。基礎知識はもちろん重要だが、子供の柔軟な発想を封じ込めない教育が求められている」と話している。(片山圭子)

検証改善委で活用策 文科省は全都道府県と政令指定都市に調査結果の活用方法を検討する「検証改善委員会」を設置するよう求め、委託事業として年度内に「学校改善支援プラン」の作成を進めている。研究事業として、独自の事業計画を公募し、選ばれた自治体に予算を増額する制度も作った。内容は教員研修のための講師派遣や独自の教材作成費などで、これまでに6政令市と8県の検証改善委員会が採択されている。

讀賣新聞 2007年11月15日

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学習状況公表 成果明確に

新潟県阿賀町教育委員会の学習指導センター指導主事、山田修さん(49)は、10月24日、町に届いた全国学力テストのあるデータに注目した。

今回のテストは、学力調査と、生活習慣や学習環境について聞く学習状況調査がセット。教科の好き嫌い、社会や自然への興味、テレビゲームに費やす時間など、小学6年で99、中学3年で101の質問をした。その中で、町立4中学校の3年生62人全員が、「家で学校の宿題をしている」「どちらかと言えばしている」と答えていたのだ。公立校の全国平均も県平均も8割ほどにとどまっている。

町内の学校では、「週末に課題を与え、月曜にテストをする」「各教科担任がどんな宿題を出したかを黒板に記し、日々の量にムラがないようにする」といった、家庭学習の習慣づけの指導に取り組んできた。また、町教委では、1日の家庭学習時間などについて、全児童生徒を対象に年2回アンケートもしている。

そのアンケートでも、家庭学習が充実してきているという結果が出ていたが、今回の突出したデータは、改めてそれを裏付ける結果となった。



阿賀町が家庭学習の定着に力を入れているのは、町内に学習塾がないといった過疎地の学習環境の中でも、しっかりとした学力を身につけさせたいと学校や保護者が考えているからだ。

「町のアンケート結果だけでなく、国や県と比較した町のデータを示すことで、学校や保護者が子供たちの良さや課題をより明確に知ってもらえる」と山田さん。町教委は5日に開いた校長会で、「学習状況調査」の町のデータの分析結果を各校に示し、事実上公表した。

9日に発行した教員向けの指導センターだよりで、「町の児童生徒は『総合的な学習』に意欲的」とする分析結果を公表した。総合的な学習の勉強を好きだと答えた児童生徒、総合的な学習によって教科の授業も分かりやすくなったと答えた児童生徒の割合が、いずれも国、県の平均より高いことを、グラフを使って説明した。



では、家庭学習に積極的で、総合学習の評価が高い阿賀町の子供たちの学力調査の結果はどうだったのか。文部科学省は、学力と学習状況の相関関係についても分析するよう、各教委や学校に求めている。

だが、阿賀町も、「過度の競争につながりかねないデータは、慎重に取り扱いたい」として、他の多くの自治体と同様、学力調査の結果公表は見送った。学習状況調査の結果さえ、公表しない自治体も多い。文部科学省の指導の結果、多くの自治体に競争や序列に対する過度の反応があったことは否めない。(高橋敦人)

全国学力テストの公表 文部科学省は実施要領で、学習状況調査も含むデータについて、都道府県が市区町村別のデータを、市区町村が学校別のデータを公表することを認めていない。ただ、自治体自身の全体のデータについては、公表するかどうかの判断を自治体に委ねた。

これまでの記事では… 阿賀町教委では、新潟県の学力テストを授業改善に生かし、結果の活用法を積極的に紹介し続けている。町独自の調査で、家庭学習に熱心だという結果が出て、過疎の町に自信をもたらしている。(10月12日付 テストを生かす14)

讀賣新聞 2007年11月14日

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来年は4月22日に実施 全国学力テスト

文部科学省は14日、来年の「全国学力・学習状況調査」(全国学力テスト)を4月22日に行うことなどを定めた実施要領を作成し、都道府県教育委員会などに通知した。

今年のテストでは、解答用紙に原則として名前を記入させていたが、個人情報の流出を心配する自治体などが相次ぎ、個人番号だけの記入も認めた。来年は最初から名前の記入は求めないとした。

調査対象は今年と同じ国公私立の小学6年生と中学3年生。内容も国語と算数・数学の2教科で、それぞれ知識と活用力を問う出題となる。

結果については、文科省が国全体と都道府県別の状況などを公表。各教委には引き続き、市町村名や学校名を明らかにしないよう求め、自校の結果を公表するかどうかの判断は各学校に委ねた。

共同通信 2007年11月14日

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データ分析 指導に自信

学習状況調査と学力テストとの相関関係を話し合う松宮校長(左)と学年主任の永砂教諭 全国学力テストの結果を生かす試行錯誤が始まった。

京都府の長岡京市立長岡第四中学校の会議室には8日、文字や数字がびっしり書かれた模造紙や大量の資料が広がっていた。「予想通りですね」という3年の学年主任、永砂正弘教諭(41)の指摘に、松宮功校長(52)が「これまで通りの方向で進みましょう」と笑顔を浮かべた。

松宮校長が注目したのは「考える力」がついているかだ。5年前、京都府のテストで「数学的な見方考え方」に課題があるとわかり、授業で、様々な解き方、考え方があることの指導に時間をかけさせてきた。

今回のテストでは、生活での活用を想定したB問題は全体的に正答率が高かったが、それ以上に松宮校長を喜ばせたのは「考える習慣」の定着が、一緒に行われた学習状況調査で浮き彫りになったことだった。

「数学の問題の解き方がわからない時は、あきらめずに色々な方法を考えるか」「普段の生活で計算をする必要がある場合、答えの見当をつけたり、暗算をすることがあるか」の回答が、全国や京都府全体の平均より各15ポイント近く高かった。

一人ひとりへの指導の方向性も見いだせた。B問題ができているのに、知識を問うA問題はふるわなかった生徒は、塾に行っていたが、自宅での学習時間は短かった。力はあるのに勉強に取り組む姿勢に問題があったのだ。具体的な情報があれば、生徒への指導も説得力が増すと考えられた。

「様々な情報と生徒の現実をつなげて分析できるのは現場だけ」と松宮校長は力を込めた。



今回の学力テストは、現場で活用できるようになっているのだろうか。

国立教育政策研究所研究員の山森光陽さん(32)は、京都府教育委員会の出先機関、乙訓(おとくに)教育局(向日(むこう)市)と共同で開発した分析用表計算ファイルを大幅に改良した。2日に行われた教員研修会で、「予想以上に公表データが多く、どこから手をつけたらいいか戸惑う」という声が出たからだ。

入力するだけで成績と学習状況の相関関係が理解できるよう工夫し、指導改善のポイントを見つけやすくした。

例えば、学習状況調査の「数学が好きか」という質問に対し、「あてはまる」と答えた生徒の正答数の分布と、全国と校内の平均が同時にグラフで一覧でき、「頑張っているのに結果に結びついていない子」がどれくらいいるのか浮かび上がる。AB両問題の成績のバランスの分布図から、クラス担任が考察できるファイルも作った。研修に参加した教員たちは、「これなら分かりやすい」と手応えを持ち始めている。

「データ分析のハードルを下げられれば、現場がめざす授業改善にもっと力が注げる」と山森さん。「宝の地図」を読み解くにはコンパスがあると早い。(片山圭子、松本美奈)

全国学力テストの公表資料 各学校には、全国の状況や調査結果を入れたCD―ROMのほか、児童・生徒に返却する個人票が送付された。学校で分析する場合、全国や都道府県内との平均正答率などとの比較はできるが、他校と直接比較はできない。都道府県教委には学校ごとや個人データは配布されず、市町村教委も児童・生徒の個人名が特定できないようにしている。

これまでの記事では…

長岡第四中では全国学テの直後に全解答をコピーして採点。「A問題ができる生徒は、B問題もできる」といった学校全体の現状を大づかみしていた。(9月25日付 テストを生かす1)

乙訓教育局では、学力テストの結果を生かすための教員研修会を、公表前から繰り返してきた。(10月9日付 テストを生かす11)

讀賣新聞 2007年11月13日

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学力向上チーム設置など学力テスト結果で動き出す自治体

43年ぶりに実施され、先月末に結果が公表された全国学力テスト。文部科学省では、意欲的な「学校改善支援プラン」を作成した自治体には予算支援措置を講ずることを明らかにするなど“学テ効果”を期待する。各都道府県教育委員会では緊急の学力向上チームを設置したり、よりきめ細かな指導につなげようと地域別の結果の公表を検討するなど、さまざまな動きが出始めている。

■庁内に学力向上チーム

文科省は各都道府県や政令市の教育委員会などに対し、学力テストの結果を今後の教育施策に活用するよう、「検証改善委員会」の設置を要請。自治体ごとに調査結果を分析した上で「学校改善支援プラン」を作成するよう求めている。

学力テストの平均正答率が公立小、中いずれも全国で45番目となった大阪府でも改善委を設置、今月中に初会合が開かれる。

これに合わせ府教委では、小中学校課、教職員人事課などの職員でつくる「学力向上チーム」を設置することを決めた。改善に向けた課題が複数の部署にまたがることを踏まえた取り組みで、学校や市町村教委への支援、教員から相談を受ける態勢づくりに取り組む。

今月6日には、綛山(かせやま)哲男教育長らが文科省などに出向き、教育予算の拡充や教員の重点配分を要望。府教委教育政策室は「児童、生徒数に比例して配分するのではなく、課題を多く抱える自治体に集中して配置するよう訴えていく」と話す。

■応用力育成テスト模索

小中両方とも平均正答率で47番目という厳しい結果が出た沖縄県。大阪と同様、教育長らが文科省を訪れ、教員の増員配置や文科省の調査官派遣など学力向上に向けた対策への支援を要請した。

県教委義務教育課の山中久司課長は今回の結果に「復帰以来、県をあげて学力向上対策に取り組んできた。成果が表れるだろうと期待していたのだが…」とショックを隠せない。

県はこれまで小6と中2の児童・生徒全員を対象に、国語、算数・数学、英語の「達成度テスト」をするなどの対策を講じてきた。しかし、「達成度テストは基礎的な問題が中心。応用問題に対応しきれないということが今回のテストで分かった」と山中課長。今後、テストの内容の見直しを検討するとしている。

■データ生かすため公表

文科省は、地域や学校の序列化を避けるため、市町村や学校ごとのデータは公表しないよう各教委に強く要望。大阪府を始め多くの自治体は、都道府県より細かい単位の発表はしない方針だ。

しかし、自治体によって異なる教育課題を割り出し、よりきめ細かな指導につなげようと地域ごとの成績を公表しようという動きもある。

北海道は道内14支庁ごとのデータ公表を検討中。また、鳥取県は県東部、中部、西部の3エリアごとの平均正答率を今月中にも発表する。

県教委小中学校課は「データはなるべく公表し、今後の指導に役立てるべきだ。学校別でなく、地域別であれば過度な競争にはつながらないと判断した」という。

お茶の水女子大の耳塚寛明教授(教育社会学)は「問題は集めたデータをどう生かすか。学校規模や地域特性などのデータと学力調査の結果を細かくクロスさせて検証すれば、支援が必要な学校や具体的な支援策が見つかるはず」と話している。

MSN産経ニュース 2007年11月10日

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文科相、予算支援前向き/「学テ」最下位

【東京】渡海紀三朗文部科学相は六日午前、同省の全国学力テストで最下位となった沖縄県への対応について「県側からも要請を受けており、テスト実施の目的が生かされる支援は当然」と述べ、予算支援を含め学力向上に積極的に取り組む考えを明らかにした。閣議後の会見で答えた。

仲村守和県教育長が五日、文部科学省を訪ね、学力調査官の派遣や小規模校の教員増、学力改善推進モデル事業への指定などを求めていた。渡海文科相は「すでに富山県の検証改善委員会から要請があり、調査官を派遣している。(沖縄については)具体的な日程調整や詳細を詰めて対応したい」と述べた。

また、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題で、教科書会社の訂正申請後の審議について「教科用図書検定調査審議会の開催を求めているが、審議が終わる段階までは静かな審査をお願いしており、結果が出た段階で審議経緯をできるだけ皆さんに説明したい」との認識を示した。

沖縄タイムス 2007年11月5日

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調査官派遣を要望=学力テスト最下位の沖縄県

沖縄県教育委員会の仲村守和教育長らは5日午前、東京・丸の内の文部科学省を訪ね、同県の学力向上対策への支援に関する要請を行った。10月に発表された全国学力テストで、同県の正答率が全教科で全国最下位になったことを受けたもので、検証改善の指導を行う「学力調査官」の派遣などを求めた。

同県は今月中にも、学力テストの結果分析のための検証改善委員会を設置する方針で、文科省の学力調査官に分析結果の活用方法などについて助言を受けたい考え。

要請内容はそのほか、▽特に正答率が低かった中学数学の改善を支援するための「学力サポーター」配置▽学力の低下傾向が見られた過疎地や離島の小規模校への教職員の加配措置▽2008年度実施を文科省が計画している「学力改善推進モデル校」への指定―など。

要請を受けた文科省の金森越哉初等中等教育局長は、「支援できるよう考えていく」などと前向きの姿勢を示したという。仲村教育長は記者団に対し、「最下位だという劣等意識に結び付いてはいけない。粛々と(対策を)やっていきたい」などと語った。(了)

時事通信 2007年11月5日

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学力テスト問題 文科省に教職員増など要請

金森越哉初等中等教育局長(左)に学力向上対策への支援を求める仲村守和県教育長=5日午前、文部科学省 【東京】全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)で、県内公立小中学校の平均正答率が全教科で最下位だったことを受け、仲村守和県教育長は5日午前、文部科学省に金森越哉初等中等教育局長を訪ね、学力向上対策への支援を要請した。

仲村教育長は(1)学力調査官の派遣(2)中学校への「学力サポーター」の配置(3)教職員の増員(4)「学力改善推進モデル事業」の実施―の4項目を要請した。

仲村教育長によると、金森局長は学力調査官とサポーターについて「支援できるようにしたい」と前向きな姿勢を示した。

同省が来年度事業として予算要求している教職員増員とモデル事業に関しては「予算を実現し、趣旨を踏まえて対応したい」と答えた。

仲村教育長は、離島や過疎地で調査結果が落ち込んでいることを説明し、具体的な施策が必要と強調。「県は検証改善委員会を早急に立ち上げ、行政・学校・家庭・地域が一体となった県民総ぐるみの学力向上対策を推進する。(政府にも)特段の配慮をお願いしたい」と求めた。

要請後、仲村教育長は「局長からは前向きな発言をいただいた。県も努力するので、教育の均等という観点から文科省にも支援をお願いしたい」と期待感を示した。

仲村教育長は高校歴史教科書検定で沖縄戦における「集団自決」(強制集団死)の日本軍強制の記述が削除・修正された問題で、検定意見の撤回と記述の復活も求めた。金森局長は「教科用図書検定調査審議会の中でしっかり検討したい」と述べたという。

琉球新報 2007年11月5日 16:03

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学力向上策の支援要請/県教育長 文科省へ 検定意見撤回も

【東京】仲村守和県教育長は五日午前、文部科学省に同省初等中等教育局の金森越哉局長を訪ね、十月二十四日に発表された全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)で沖縄が全教科で全国最下位だったことを受け、学力向上対策への支援を要請した。

金森局長は、県教育庁が今月中の立ち上げを目指す検証改善委員会への学力調査官の派遣や、中学数学の学力底上げのための「学力サポーター」派遣への予算配分など、本年度分の支援策について、「支援できるよう考えたい」と前向きな意向を示したという。

また、県内小規模校への教員増員や、沖縄を「学力改善推進モデル事業」に指定するなど、二〇〇八年度予算関連の支援については「予算(獲得)が実現すれば、要望の趣旨を踏まえて対応したい」と述べたという。

仲村教育長は、教科書検定問題についても「記述の回復と検定意見の撤回が県民の思い。四月から子どもたちが、記述が回復された教科書で授業できるようにしてほしい」と申し入れた。

金森局長は「今、四社から訂正申請が出ている。教科用図書検定調査審議会でしっかり検討してもらい、四月には間に合わせるようにしたい」と述べた。

全国学力テストの都道府県別結果で、沖縄は国語、算数・数学の二教科で、基礎力をみるA問題と応用力をみるB問題の平均正答率が八種類すべて最下位だった。県教育庁は現場教員、有識者らで構成する検証改善委を立ち上げ、児童・生徒の学習環境と学力との相関関係などを詳細に分析するほか、学校の支援プランも策定する予定だ。

沖縄タイムス 2007年11月5日夕刊

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親の経済格差が子どもの学力に影響

400ページにも及ぶ分厚い冊子は、文部科学省が43年ぶりに実施した全国学力テストの分析結果です。ここから浮かび上がったものの1つは、親の経済格差が子どもの学力に影響を与えている実態でした。

今年4月、全国の小学6年生と中学3年生全員を対象に行われた学力テスト。その結果を地域別に見ると、大都市や中核市の平均正答率よりも僻地の正答率が、小学校、中学校とも低く、科目によっては最大5%程度の開きがあることがわかりました。

また、就学援助を受けている子どもが多い学校の方が正答率が低い傾向があることもわかり、親の経済力の格差が子どもの学力に影響を与えている実態も浮き彫りになりました。

「教育における格差というものが出ないよう努力していくというのが私の立場でもあり、また、文科省も頑張っていかなければいけないだろうと」(渡海文科相)

「小泉・安倍の急進的競争主義改革。そういうものが生み出した、まさに“格差社会”ですよね。その中で生きていくことに、大人も子どもも苦しんでいるわけです。そこが表れている」(評論家・元高校教諭 佐高 信 さん)

文部科学省は、学校の決まりや規則を守る規範意識の高い子どもの方が正答率が高かったことをポイントの1つとして強調しています。規範意識という言葉にこだわった安倍総理は退陣しましたが、在任中に行われた学力テストの結果は、子どもたちの教育の指針となる学習指導要領を改訂する上で大きな材料になります。

TBSニュース 2007年10月22日

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基礎はOK、活用に課題=都道府県、国公私立で格差−小6、中3全国テスト

文部科学省は24日、小学6年と中学3年の全児童・生徒を対象に、今年4月実施した「全国学力・学習状況調査」(全国学力テスト)の結果を公表した。基礎的な知識は身に付いていたが、知識を実生活などに活用する問題の正答率が中学国語以外は6割強にとどまったほか、選択式設問に比べ記述式で正答者数が少なかった。

北海道や沖縄県など5道府県が全国平均を下回り、国立、私立は公立より正答率が高いなど「格差」も判明。テストと併せて実施した生活習慣や学習環境などの質問調査では、過去と比べ、学習意欲や家庭学習の時間に増加がみられた。

全員対象のテストは中学生が43年ぶり、小学生は初めて。国語と算数・数学の2教科で基礎力を問うA問題と応用力をみるB問題を課し、愛知県犬山市を除く、国公立と私立の6割に当たる計約221万人が参加した。

全国平均の正答率をみると、A問題は小学国語、算数と中学国語がいずれも82%、中学数学は73%。これに対し、B問題は中学国語の72%を除き、すべて60%台前半だった。

時事通信 2007年10月24日

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「前教育指導室長の発案」 学力テスト配布で足立区報告

東京都足立区教育委員会は12日、05年1月に行われた都の公立小中学校に対する学力テストの1カ月前に校長会で問題の一部を配布したことについて、「前教育指導室長が発案した」との調査報告書をまとめた。前室長は事前配布について教育長の了解を得たとしているが、当時の教育長は「知らない」と答えているという。

前室長は部下に問題配布を指示した際、「漏洩(ろうえい)につながるからまずいのではないか」との進言を受けたが、「教育長の決定だ」と聞き入れなかったという。

調査過程では、前室長が配布後、「やらせてください」「問題形式に慣れさせてください」などと発言したとの校長の証言もあったという。だが報告書では、前室長が配布した目的は「(テストの)円滑実施のサンプルにするためだった」とし、「不正行為を促す意図はなかった」と結論づけている。

朝日新聞 2007年10月13日

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学力テストで問題事前配布「教育指導室長が主導」足立区教委調査結果

2005年1月に実施された東京都の学力テストの約1か月前、足立区教育委員会が校長に実物の問題用紙などを配布していた問題で、同区教委は12日、「当時の教育指導室長が事前配布を主導した」とする調査結果をまとめた。

成績を上げるため不正行為を校長に促したとの疑惑については「その意図はなかった」と否定したが、配布の際に室長が「ご活用願いたい」などと発言していたことも判明した。

報告書によると、当時の室長は問題用紙が校長会の前日に都から届けられることを知ると、部下の指導主事らに対し、校長会の配布資料の中に問題用紙を入れるよう指示。これに対し、指導主事2人は事前配布に反対したという。配布の目的について、当時の室長は「(名前の記入形式などに慣れてもらい)テストを円滑に実施するためだった」と説明。しかし、校長への聞き取りでは110人中54人が「活用・準備を促す発言で、不審に思った」などとした。区教委は「多くの校長が不正を強いられているような感情を抱いた」とは認めながらも、「区教委側には不正を促すような気持ちはなかった」と結論付けた。

一方、教育長の関与については、当時の室長は「当日朝に教育長から配布の了承を得た」と証言したが、当時の教育長は「知らない」と否定している。

讀賣新聞 2007年10月12日

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学力テスト成績、学校・市町村別は公表せず

今年4月、小学6年と中学3年を対象に実施された全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果について、47都道府県すべてが、文部科学省から提供される市町村別や学校別の成績を公表しない方針であることが、読売新聞の調査で分かった。

全都道府県 競争、序列化懸念

主な理由は「序列化や過度の競争を防ぐため」で、全都道府県が、住民から情報公開請求があっても「原則不開示にする」としている。一方、データの提供は当初予定より1か月半以上遅れており、「結果を分析する時間が足りない」と、各教育委員会などで不安が高まっている。

文科省は、学力テストの平均点や問題ごとの正答率などを、国全体と都道府県別に分けて公表する一方、都道府県教委に、各都道府県のデータに加え、管内の市町村や学校のデータを提供する。さらに、市町村教委には各市町村と管内の学校のデータが提供され、各学校には学校のデータのほか、児童・生徒一人ひとりの成績表が配られる。

読売新聞が47都道府県と17政令市の教委に、提供されるデータの取り扱いをたずねたところ、全都道府県が、「市町村や各学校の結果を公表しない」と回答した。静岡県教委は「数字だけがひとり歩きして、競争や序列化を招くかもしれない」と話し、兵庫県教委も「市町村や学校によって環境が違うのに、一つの尺度で評価すると弊害が大きい」と理由を説明する。

文科省は都道府県に対し、市町村や学校単位の結果を公表しないよう求めているが、市町村が自身の成績を公表するかどうかは、市町村の判断に委ねている。しかし、17政令市の教委のうち13教委は、「他の市町村と比べられたくない」などと公表に消極的で、「教科ごとの平均点などを公表する」としたのは、さいたま、新潟、広島、福岡の4市教委にとどまった。

住民からの情報公開請求があった場合の対応でも、全都道府県が「市町村の成績を勝手に公開すれば、市町村が今後、参加しなくなる恐れもある」などを理由に、提供された市町村や学校のデータを原則開示しない方針を明らかにした。

中には、「国からデータをもらえば、情報を公開せざるを得ないと考え、一時は結果を受け取らないことも検討した」(鳥取県教委)というところもあった。しかし、文科省からの要請もあり、最終的には、請求があっても不開示にすることにしたという。

一方、文科省は当初、テストの結果を2学期からの授業に生かせるよう、8月末にもデータを提供する方向で作業を進めていた。しかし、自治体や学校に提供する資料が計約350万枚と膨大で印刷に手間取っていることなどから、時期が大幅にずれ込んでいる。

「来年度からの学力向上策に生かせるかも微妙になってきた」。鳥取県教委の担当者はそう心配する。各都道府県では検証改善委員会を設置し、市町村や学校ごとの弱点をあぶり出して今後の施策に反映させる予定になっているが、データ提供が遅れれば、分析の時間が足りなくなるためだ。長崎県教委の担当者は「10月初旬に設定した改善委員会の初会合をすでに2回も延期した」とこぼす。

また、神奈川県の公立小の校長は「一人ひとりの成績表が配られるので、きめ細かい指導ができると期待している。卒業まで時間も限られているので、早く結果を知りたい」と訴え、栃木県の公立中の校長は「生徒が自分で弱点を克服しようにも時間がない。早く結果を提供してもらわないと、『全員対象』の意義が半減する」と嘆いている。

全国学力テスト 今年4月24日、全員参加を前提にしたテストとしては43年ぶりに実施された。愛知県犬山市の14校を除くすべての国公立と私立の約6割の小中学校が参加。小6、中3の計233万人が国語と算数・数学の「知識」と「活用」を試す問題に挑んだ。

讀賣新聞 2007年10月12日

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学力改善策、自治体が苦慮・全国テストの結果大幅遅れ

全国学力テストの結果公表が遅れ、自治体に戸惑いが広がっている。文部科学省は当初9月中に公表し自治体に成績や分析結果を提供する予定だったが「分析などに時間がかかっている」と10月に入っても時期は定まらないまま。結果を学力向上に生かすのがテストの目的だが「肝心の学力改善の支援策が作れない」と自治体から不満の声が上がっている。

「公表はいつになりますか」。文科省の担当部署に都道府県教育委員会から問い合わせが相次いでいる。文科省は8月下旬、教委を集めて開いた説明会でいったん「9月中をメドに公表する」と伝えた。ところが初めての大規模集計であることもあり「成績表の印刷や分析作業が予想以上に煩雑」(担当者)。連日深夜まで分析作業に追われているが、いまだに明確な時期を示すことができていない。

日本経済新聞 2007年10月9日 19:15

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「全国」に頼らず 学力評価

1学級を無作為に2分割した少人数授業を進める犬山市の市立犬山南小 全国学力テスト不参加の自治体は、評価の<原点>にこだわる。

4月に行われた全国学力テストに、教育委員会として唯一不参加の選択をした愛知県犬山市。中心部に近い市立犬山南小学校の3年生は、11人で算数を学んでいた。無作為にクラスを2分割した少人数授業だ。

女性教諭が「これはちょっと難しいよ」と言いながら書いた文章題に、一斉に手が挙がる。指名された子が、隣席の子の励ましにうなずきながら、か細い声で答えると、ほかの子供たちの顔がほころんだ。

答えた子は入学以来、校内でほとんど口をきかなかったが、最近、少しずつ言葉を発するようになった。後ろで授業を見守る松山輝久校長(57)も、その子の前進ぶりに思わず笑みを浮かべた。

同市の小中学校は14校すべて、国の標準より少ない「30人程度」で学級を編成している。習熟度別授業はとらない。算数などでは、少人数授業の中で4人程度のグループ学習も多用、わからない子にわかる子が教える方式も使う。

きちんと言葉を選んで発言しているか、聞く態度はどうか、ノートの書き方はどうか……。一人一人を多面的に評価するには、少人数クラスは不可欠だという。そうした評価の一環で、教師自作のテストや業者による診断テストも使う。

だが「市内共通の評価基準やテストも作ることはない」と市教委の滝誠・指導課長(51)は断言する。障害を持つ子や在日外国人の子が多い学校など、犬山ぐらいの自治体でも、学校の事情が大きく異なり、一律に比べるのは難しいからだ。

瀬見井久(せみいひさし)教育長は強調する。

「学力とは自ら学ぶ力。学ぶ意欲をどう引き出すかに尽きる」「評価で一番重要なことは、教師を変え、子供を変えること。授業を変える手段としての評価が重要だ」「独自の取り組みには独自の評価がいる。学校が手がける施策には自己評価がいる。ほかから評価してもらうことは何の役にも立たない」

市教委はこうした考え方に立ち、昨年7月に作った市内全小中学校の校長らによる教育評価研究委員会で、学力評価のあり方を検討してきた。先月6日の会議でも、滝課長は「評価とは目の前にいる子供の状態の正確な把握。ふだんの授業改善に生かせてこそ意味がある」と力説した。

「自ら学ぶ力を、どう評価したらいいのか」「進歩や成長を継続的にとらえる評価の方法は?」「発表力や話す力が弱い。どうしたらそこを伸ばせる評価が可能か」。参加者からは、評価の難しさを打ち明ける声が相次いだ。

「大切なのは、評価者と評価を受ける人が顔が見える関係にあるということ。学校内できちんと学力評価の基準と手だてを確立していれば、指導・学習に直結できる」と滝課長は言う。

研究会の議論の経過は今月末までにまとめられ、全小中学校が参加する来月2日の授業改善交流会で配布される。犬山独自の教育改革は、次のステップを歩もうとしている。(松本美奈、片山圭子)

犬山市の教育改革 「犬山の子供は犬山で育てる」という基本理念のもと、10年前に始まった。「自ら学ぶ力」を育てるため、少人数学級や少人数授業のほか、独自の副教本作りも行っている。全国学力テストは「学校間に無用な競争をもたらす」などとして、唯一不参加だったが、昨年12月に当選した田中志典市長は不参加に反対で、市民も意見が分かれていた。

讀賣新聞 2007年10月6日

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私学「全国」への評価二分

数学の授業の冒頭で百ます計算に取り組む東横学園の生徒たち。解き終わると、静粛を保ったままそれぞれ答え合わせに入っていた 全国学力テストに対する私学の姿勢は大きく分かれた。

「はじめっ」

授業開始と同時に「百ます計算」の紙が配られ、静まりかえった教室に鉛筆の音が響く。東京都世田谷区の私立東横学園中学校の数学の全授業は、こうやって始まる。「計算力を養うというより、授業前に心を静める効果が高い」という矢島了子校長(64)が全校あげて取り組む「学力革命」の一環だ。

矢島校長は、全国学力テストの実施を耳にした時、「絶好のチャンス」とすぐに参加を決意した。学校改革の検証材料になると確信するからだ。

全国の私立中学校の3割余が集中する東京。少子化時代で、生徒確保に頭を悩ませる私立校が珍しくなくなってきた。東横学園も例外ではない。中学の志願者が定員を割り込む中、神奈川県立高校の教頭から03年に招かれた矢島校長は、「外部からの評価を上げていくほかない」と判断した。

生活指導を徹底し、家庭学習の時間や教科を毎日記録させて教員がコメントする「学習日記」を導入。論理的思考力を養う教育プログラム「論理エンジン」も全校で始めるなど、次々と学力向上策を打ち出した。「他校との比較に興味はない。国の調査なら自校の生徒の経年変化も分かるのでは」と期待を寄せる。

「自校が全国でどのあたりのレベルに到達したのかに関心があった」(大阪市の私立中校長)といった反応は私学にも多い。

だが、東京は別だ。

「参加はしたが、簡単過ぎて受けさせた意味が全くなかった」と言い切る進学校もある。一方で「思考力を問う、よく練られた出題だった。大学受験を意識して知識の詰め込みに偏る可能性もある進学校の生徒に、本来の勉強は一夜漬けでは意味がないということを示す良い機会だった」(成城中学校・中田秀夫教頭)という声も上がった。

東京私立中学高等学校協会の会長を務める八雲学園中の近藤彰郎校長は「全体の中での位置を知ること自体は意味があるが、授業時間とてんびんにかけた結果、判断が分かれた。受けた学校には私学の実力を見せたいという気持ちもあったのではないか」と分析する。

同協会では、参加・不参加について各校が様子見する段階で「参加は強制ではない」という趣旨の文書も配布、これが不参加に拍車をかけたという見方もある。

一方、日本私立中学高等学校連合会長の田村哲夫・渋谷教育学園理事長は「私学の競争が激しい東京では、私学間の順位が、何らかの形で公になってしまうことを心配したのでは」と考える。その上で「全国学力テストの問題は、世界的に求められている能力を意識して作られている問題で、生徒たちのいい体験になったはずだ。自校の位置を判断する良い材料なので、徐々に参加校は増えるのではないか」と見る。

国が実施する全国規模の一斉テストは43年ぶり。1回だけでは、その評価が定まらないことも確かだろう。(片山圭子)

私学の不参加、東京に集中 全国の私立小中学校、中等教育学校、特別支援学校868校のうち、全国学力テストに参加した学校は62%の534校。東京の場合は参加率が極端に低く、私立中182校のうち、参加はわずか32校にとどまった。大学の付属校が約半数と目立っている。ちなみに大阪府内だと、私立中61校のうち参加が約8割。

讀賣新聞 2007年10月5日

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全国学力テスト 集計遅れ公表めどたたず 膨大な作業量、文科省見誤る

小学六年生と中学三年生を対象に四月、四十三年ぶりに行った全国学力調査(学力テスト)の集計作業と成績公表が大幅に遅れている。文部科学省は当初、九月中に公表する予定だったが、児童生徒二百三十万人分の結果のとりまとめなどに時間がかかり、公表を延期していた。文科省の見通しの甘さを指摘する声も出ている。

同テストは四月二十四日、全国約三万二千五百校の小六と中三が受けた。文科省が公表するのは全国と都道府県単位の成績。学校と児童生徒の個別の成績は、市町村教委や学校に直接郵送する。

文科省によると、主な作業は《1》成績結果の分析と検証《2》公表する報告書の作成《3》学校を通じて個別の児童生徒に成績を通知する「個票」作成−など。文科省はいずれも作業中とし、延期後の公表時期は示せない状況だ。

作業の遅れについて、文科省教育水準向上プロジェクトチームは「作業量が膨大。四十三年ぶりなのでノウハウもなかった。大臣も代わるという事態もあった。正確性と信頼性を高めるため、慎重に確認作業を行っている」と説明する。

文科省は成績公表を都道府県別のみとしたが、市町村教委や学校の自らの分の公表はそれぞれの判断に委ねた。げたを預けられた格好の現場では戸惑いも広がる。

国際基督教大の藤田英典教授(教育社会学)は「分析や整理に時間がかかり、簡単に結果を出せるものでないことは分かっていたこと。文科省は作業はもちろん、公表の問題も含めて見通しが甘いのではないか」と話す。

北海道新聞 2007年10月2日

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