内閣府・教育再生会議(2007年7〜10月)


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「教育バウチャー」特区を検討、教育再生会議が制度素案

教員個人評価の導入は、国立大学の内発的な意思というよりも、文部科学省の「中期目標」に提示された影響が大きい。「中期目標」を達成するために、各大学は具体的措置として、「中期計画」で教員個人評価の実施を策定する必要があった。実際、五十四大学(同七八・二%)が、「中期目標・中期計画」に「教員個人評価に取り組む」ことを盛り込んでいる。

中期計画の達成状況は、国立大学法人評価で検証され、運営費交付金に反映される。国立大学にとって教員個人評価は、否が応でも実施しなければならない事項だった。導入・実施のための学内合意を得るには、主目的を「査定の手段」ではなく、「教員活動の活性化」とすることが重要だったと推測される。

日本経済新聞 2007年10月27日

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6・3制見直し検討 教育再生会議総会 年明けに最終報告へ

政府の教育再生会議(野依良治座長)は二十三日夕、福田康夫首相が出席して首相官邸で総会を開いた。年末の第三次報告に向け、小・中学校の「六・三」制の見直しや、九年制の義務教育学校(小中一貫校)の制度化案を提示。会議は三次報告に加え、首相の理念である「自立と共生」をキーワードに、来年早々、これまでの検討課題を総括する最終報告をまとめることで一致した。 

「六・三」制の見直しには学校教育法の改正が必要で、実現すれば一九四七年の同法制定以来の抜本改革となる。

会議は見直しの理由として(1)中学一年生の時点で不登校など生徒指導上の問題が増加する(2)子どもの早熟化傾向から小学四−五年生に心身発達上の段差がある(3)小学校高学年から理科などの科目で教科担任制による専門的な指導を行った方が効果的−などの理由を挙げ、小・中学校間の接続を改善する必要があるとした。

見直しの選択肢としては、全国一律に「五・四」制や「四・五」制に改める案や、地域の実情に応じた九年制の義務教育学校の導入などを掲げた。

東京新聞 2007年10月24日

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教育再生会議が福田政権で初会合、「小・中9年制」検討で一致

教育再生会議(野依良治座長)は23日、首相官邸で福田政権発足後初めての総会を開き、論議を再開した。柔軟な教育カリキュラムを編成できるようにするため、現行の小中学校の「6.3」制を見直し、9年制の義務教育学校の創設などを検討することで一致した。

教育再生は安倍晋三前首相が憲法改正などと並んで掲げた重要政策の一つ。安倍氏の辞任で論議が中断していたが、福田首相は冒頭「注目を集める会議と認識している。国民全員が関心を持っている話題であり、建設的な議論をしていただきたい」と求めた。

学校制度の見直しは小中一貫の9年制学校をつくり、地域の実情に応じて「4.3.2」などの学年のまとまりを設ける案を軸に検討する方向。大学への飛び級入学を促進するため一段の要件緩和を進める必要があるとの意見も相次いだ。一方、年末を予定していた三次報告のとりまとめ時期を巡っては「もっと時間をかけるべきだ」との異論も出た。

日本経済新聞 2007年10月24日

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福田首相、独自の具体案語らず 教育再生会議

福田内閣で初めてとなる教育再生会議の総会が23日、首相官邸で開かれた。安倍前首相の辞任で、同会議が開かれるのは約1カ月ぶり。12月に予定されていた最終報告は1月にずれ込むことになった。会議に出席した福田首相は、安倍前首相時代の方針を基本的に引き継ぐ考えを示した。

「所信表明演説で、フルにご提言を入れております。みなさま方は常識的な議論をなさっているし、それが世間にアピールしている」。福田首相は総会冒頭のあいさつで、こう語った。

この日の総会では、会議の目標として、首相の掲げる「自立と共生」を新たに打ち出した。池田守男座長代理は会議後の会見で「総理の考えは、私どもとそれほど遠くない。私どもとして非常に意を強くした」と述べた。

会議では、6―3―3―4制の見直しのほか、飛び級と留年制度について議論。池田氏によると、飛び級や留年は義務教育での導入は難しいとの意見で、ほぼ一致したという。

さらに中央教育審議会(文科相の諮問機関)で実現が困難な見通しとなった「徳育」の教科化についても再び議論し、委員の一部が最終報告に盛り込むよう強く求めた。

今後は週1回のペースで合同分科会を開く予定。次回は、6月にまとめた第2次報告で残された課題のうち、バウチャー制度と全国学力テストの検証と活用方法を取り上げる。

朝日新聞 2007年10月24日

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教育再生会議が1カ月ぶり再開

政府の教育再生会議(野依良治座長)は23日、福田康夫首相と関係閣僚も出席して第9回総会を開いた。「生みの親」だった安倍晋三前首相の辞任以来休止していたため、再開は約1カ月ぶり。政府・与党内では同会議の地位低下が指摘されているが、福田首相は「建設的な意見をこれからもぜひ、どんどん出していただきたい」とあいさつし、年末か年明けをめどに取りまとめる3次(最終)報告に向け意欲を示した。

町村信孝官房長官も同日の定例記者会見で「福田内閣としても教育問題を熱心に取り組むということが目に見えるようにしたい」と述べた。(了)

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再生会議 「徳育」の再議論も

政府の教育再生会議は、福田内閣の発足後初めての総会を今週開き、第3次報告に向けた議論を再開させますが、委員の中には、すでに提言した「徳育」という教科の導入について検討を加えるべきだという意見もあり、その内容をめぐって議論が行われる見通しです。

NHKニュース 2007年10月20日

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小中学校「4・5」年制も検討 教育再生会議の素案判明

政府の教育再生会議(座長・野依良治理化学研究所理事長)が十二月に取りまとめる第三次報告盛り込みに向けて検討する改革素案が二十日、明らかになった。子どもの早熟化傾向を踏まえ、学校教育法制定(一九四七年)以来の小中学校の「六・三」制区分見直しを明記。選択肢として、全国一律による「四・五」、「五・四」制への移行や、九年制の義務教育学校(小中一貫校)の制度化案を挙げた。二十三日に福田康夫首相が出席して再開される再生会議総会で本格的な議論に入る。

安倍晋三前首相が実現を目指した「教育バウチャー(利用券)制」は導入を見送る方向で、それに代わる福田流教育改革の「目玉」を打ち出した格好。ただ六・三制見直しには法改正が必要になり、実現に道筋を付けられるかは不透明だ。

六・三制見直しの理由としては「小学四―五年生の段階で発達上の段差がある」と説明し、中学入学の時点で不登校が増加している問題に対応する必要性を強調した。小学校低学年から高学年に移るこの年ごろから思春期に入る生徒への対応や、不登校問題の解決には中学校教員が関与できる体制が望ましいとの判断があるとみられる。

小学校高学年から理科などの科目で専科教員による指導を行うべきだと指摘されていることも理由に挙げた。

九年制一貫校の制度化案では「地域の実情に応じて、弾力的なカリキュラム編成ができるようにする」と強調した。また六・三制を維持したうえで、小中学校の間で「カリキュラムの連携や、教員、児童生徒の交流を進め、小中一貫教育を推進」する案も併記した。

学力向上に向けては、義務教育段階での習熟度別授業の拡充、飛び級や(1)六・三制を前提に小学校を五年、中学校を二年で卒業できる「早期修了コース」の設置(2)現行の高校から大学への「飛び入学制度」の要件緩和(3)高校生が大学レベルの教育を受けて単位取得できる「高大連携」の促進―を検討課題に列挙した。

共同通信 2007年10月20日

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義務教育に飛び入学 再生会議検討

政府の教育再生会議の第三次報告に向けた運営方針が明らかになった。義務教育段階も含めた「飛び入学」を改革の目玉として新たに検討課題にする。「エリート教育」の早期化に拍車を掛ける試みといえ、積み残し課題となっている教育バウチャー制導入とともに、論議を呼びそうだ。

教育再生会議は二十三日、福田康夫首相も出席して総会を開催。ほぼ一カ月ぶりに活動を再開する。

優秀な生徒、学生に早期から高度な教育を受けさせ、能力を伸ばすことをねらいとする「飛び入学」は、高校二年生から大学への進学、大学三年生から大学院への進学が既に制度化されている。

教育再生会議は第二次報告に大学の早期卒業制度の積極活用を盛り込んだ。今後、第三次報告の取りまとめへ向け、小中一貫教育などとともに、義務教育段階まで含めた教育の“前倒し”を視野に、現在の六・三・三・四制の見直しが議論されるとみられる。

再生会議ではこのほか(1)児童生徒側が、通う学校を選び、その人数に応じて予算が配分されるバウチャー制度や学校の統廃合(2)学校、教育委員会の第三者評価(3)小学校の英語教育−など第一次、第二次報告で積み残した課題を議論していく方針。特にバウチャー制度は、再生会議内でも賛否が分かれて先送りされてきた経緯があり、今回も難航が予想される。

中日新聞 2007年10月20日

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教育再生会議が23日再開

政府の教育再生会議(座長・野依良治理化学研究所理事長)は17日夕、有識者委員の中核メンバーでつくる運営委員会を都内で開き、今月23日に福田康夫首相も出席して合同分科会を開く方針を決めた。安倍晋三前首相が退陣表明をした9月12日の開催以来、約1カ月ぶりの再開となる。

再開後は週1回ペースで会合を開き、年内に第3次報告をまとめることも確認した。検討課題として生徒や保護者が学校を選択できるようにする「教育バウチャー(利用券)制」導入や、大学の学部再編を含む大学・大学院改革が挙がっている。

日刊スポーツ 2007年10月17日

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教育再生会議 再スタート

10月中の再開が固まった政府の教育再生会議は、先導役が安倍前首相から福田首相に代わったことで、改革内容の軌道修正は避けられない見通しだ。

改革は続行 方向は不明

ただ、福田首相は、教育改革を続ける意向は示しているものの、どのような「福田カラー」の教育を目指すのか、明言していない。

踏 襲

「山谷補佐官を再任した意味は、福田内閣も教育再生に一生懸命取り組むことを表している。私自身、文相(文部科学相)を2回経験した者として全力で応援する」

町村官房長官は9日夕の記者会見でこう述べ、安倍前内閣でも教育担当を務めた山谷えり子首相補佐官の下、教育再生会議を「改革のエンジン」として引き続き活用する考えを強調した。

教育再生会議は「安倍カラー」の象徴的存在だった。だが、政権交代に伴い、一時は存続が危ぶまれた。自民党幹部の1人は、「安倍前首相が退陣表明直後、当時文科相だった伊吹さん(現・自民党幹事長)に『教育再生会議は何とか残してほしい』と電話で頼んだ」と明かす。前首相の要請も踏まえ、福田首相と伊吹氏らが協議し、会議の存続が決まったようだ。

山谷補佐官は今月に入り、渡海文部科学相や文教族議員を回り、同会議の議題調整を本格化させた。

変 質

第3次報告に向けた課題は「教員の資質向上」「6・3・3・4制の在り方」など多岐にわたる。中でも、最大の論点となりそうなのが、教育への競争原理導入の典型となる「教育バウチャー制度」だ。導入には文科省や私立学校側が抵抗しており、委員間でも賛否が分かれる。

自民党内では、「積み残しの課題は、もともと実現が難しい内容が多い」(文科相経験者)などと、冷ややかな反応が多い。山谷氏自身も「議題見直しも含めて検討したい」と語り、今後、会議の性格が大きく変質する可能性がある。

首相本人は、教育問題について安倍前首相ほどの思い入れはないようだ。官房長官時代を通じ、自分なりの政策提言を披歴したことはほとんどない。所信表明演説などでも、「家庭、地域、行政が一体となって教育再生に取り組む」といった説明があっただけだ。

讀賣新聞 2007年10月10日

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教育再生会議、今月下旬に再開へ

政府は9日、首相直属の諮問機関である教育再生会議(野依良治座長)の総会と合同分科会を今月下旬に開き、政権交代で中断していた議論を再開させる方針を固めた。

年内の第3次報告取りまとめを目指す。「安倍カラー」の象徴的存在だった同会議だが、今後の議論では、目玉の一つである「教育バウチャー制度」導入などをめぐり、軌道修正を迫られる公算が大きい。

教育再生会議は、安倍前首相が首相官邸主導で教育改革を進めるため、首相就任直後の昨年10月に設置した。これまで2度の報告で、「ゆとり教育の見直し」「授業時間の10%増」などを打ち出した。

首相、官房長官、文部科学相、有識者らをメンバーとする総会のほか、有識者のみの分科会が三つある。総会は今年6月1日、有識者のみの合同分科会は9月12日以来、開かれていない。

再開する会議では、総会、合同分科会ともに福田首相が出席する方向で調整している。

今後の議論は、「安倍カラー」を色濃く反映した分野が焦点となりそうだ。具体的には〈1〉教育バウチャー制度〈2〉第三者機関による学校や教育委員会の評価〈3〉小学校での英語教育の在り方――などの懸案が想定される。

讀賣新聞 2007年10月10日

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混迷 教育再生会議 担当補佐官は再任だが… 文科相「バウチャー、なじまぬ」

安倍晋三前首相の突然の辞任で、存続が危ぶまれた“安倍氏肝いり”の教育再生会議。福田康夫新内閣では、山谷えり子教育担当補佐官が再任されたものの、閣内から「軽視発言」が続くなど混迷が続いています。

町村信孝官房長官は二十六日の記者会見で、年内に提出する予定だった第三次報告について、「努力目標は十二月らしいですが、充実した報告書をまとめるにあたって、いつでなければならないという会議ではない」と述べ、とりまとめを急がない考えを示しました。

この発言について、教育再生会議事務方は「まだ今後のスケジュールは決めていない。官房長官の個人的な考えとして、年内には間に合わないという一般論を述べたのではないか」と困惑気味です。

二十七日のNHK番組では、渡海紀三朗文部科学相が、同会議が今後議論する重要なテーマに挙げている教育バウチャー(利用券)制度について、「これで学校を選択するといっても地域差がある。義務教育という憲法二六条で保障されている権利が国民に担保されるのか。差ができる心配がある。教育には競争原理になじまない部分もある」と慎重姿勢を見せました。

同番組では、増田寛也総務相も「地方、とくに中山間地域では(バウチャー制度は)まったく考えられない。地域の実情をみてもっと議論する必要がある。地方部では、あそこ(再生会議)でなされている議論でどうかなというのはある」と不信感を示しました。教育バウチャー制度は、生徒数に応じて学校に予算を配分するもので、入学者が少ない学校を予算で差別することにつながり、国民からの批判も多く出ています。

また、自民党参院議員に転じた義家弘介氏が務めていた再生会議担当室長のポストはいまだに空白。「調整はしているが決まってはいない」(事務方)状況です。伊吹文明前文科相が「再生会議が引き継がれなくても困ることはないのではないか」(十二日)と述べるなど、一年前の“熱気”は感じられません。

しかし、再生会議の提言は、教員への統制を強化する教員免許更新制度などがすでに導入されました。提言に盛り込まれた授業時間数一割増や道徳の教科化などを具体化するため、中央教育審議会で議論が進んでいます。教育バウチャー制度、学校選択制の全国的導入などは財界が一貫して求めてきた課題です。

山谷補佐官は二十六日、「福田首相も『社会総がかりの教育再生』を掲げている。方向性はそれほど変わらない」と強調しています。教育再生会議への警戒はひきつづき必要です。

しんぶん赤旗 2007年9月30日

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教育バウチャー導入 慎重意見

政府の教育再生会議が第3次報告に向けて議論を本格化させることにしている、いわゆる「教育バウチャー制度」について、27日夜に放送されたNHKの番組の中で、渡海文部科学大臣や増田総務大臣から、地方での導入に慎重な意見が出されました。

NHKニュース 2007年9月28日 08:32

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教育再生会議最終報告、年明けの可能性も 町村官房長官

町村官房長官は26日の記者会見で、12月に予定されている教育再生会議の最終報告について「山谷(えり子)補佐官とも話したが、努力目標は12月らしいが、なかなか多様な議論もあり、多少ずれ込むこともあるといっておられた」と述べ、年明けにずれ込む可能性があるとの見方を示した。

同会議は最終報告に向け、学校や教育委員会を第三者が評価する制度や教育バウチャー制度について検討しているが、安倍前首相の突然の辞任もあり、実質的な議論が進んでいない。

朝日新聞 2007年9月27日

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バウチャー無用と文科相 教育の機会均等に疑問

渡海紀三朗文部科学相は二十六日、初閣議後の会見で、政府の教育再生会議が導入を検討している教育バウチャー(利用券)制度について「いらないと思う」と述べた。

渡海文科相は「子どもたちが等しく義務教育を受ける機会が与えられるのかどうか、地域的な問題が解けないという思いがある」と話した。

「全面的に否定するわけではない」としながらも「そうした問題がクリアされないと、面白そうだとか、活力が出そうだという考え方だけではどうかと思う」と述べた。

行政が発行した利用券で児童・生徒が学校を選択できる教育バウチャー制度は、安倍晋三前首相が教育改革の目玉政策の一つとして掲げた。再生会議内では十二月の第三次報告に提言として盛り込むことを検討中だが、学校間の競争を促すことの是非をめぐり賛否が分かれている。

共同通信 2007年9月26日

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教育再生会議の優先度低下否めず=福田新政権

福田内閣では、安倍晋三前首相の肝いりで設置された教育再生会議を担当する山谷えり子首相補佐官も、多くの閣僚と同様に再任された。山谷補佐官は26日、取材に対して「首相も『社会総がかりの教育再生』を掲げている。方向性はそれほど変わらない」と強調したが、町村信孝官房長官が3次報告の取りまとめを急がない考えを示すなど、優先度の低下は否めない。

町村長官は組閣名簿の発表時に「安倍政権の全否定で福田政権が成り立ったわけではない。教育改革問題は当然、引き続き取り組んでいく課題」と述べたが、26日の会見では「充実した報告書をまとめるに当たり、いつでなければならないという会議ではない」として、3次報告は当初予定の12月にこだわらない姿勢。山谷補佐官は「1カ月ほど議論の間隔が空いた分、ずれ込む可能性があると町村長官に伝えた」と説明する。

山谷補佐官は「私が再任されるかどうかはともかく、会議は存続すると思っていた。教育改革は多くの国民が支持している」と語るが、自民党の参院選敗北を境に、同会議の提言を具体化する関連法案の提出は難しくなっている。渡海紀三朗文部科学相は、同会議が今後議論するはずの教育バウチャー(券)制度について「国民に同じ機会を与えられるかと言えば、地域的な問題もある」と慎重な見方を示した。

会議が提言した「徳育」教科化も中央教育審議会(文科相の諮問機関)が見送る方向で、伊吹文明前文科相も「再生会議が引き継がれなくても困ることはない」と突き放している。「ヤンキー先生」義家弘介参院議員が務めた会議担当室長はいまだに空席で、かつての熱気は見る影もない。(了)

時事通信 2007年9月26日

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特集・教育再生を検証する(4・完)

◇「迷走」で自滅?
当初の予想に反し、うまくバランスが保たれた教育再生会議と文科省の関係だが、別の大きな要因として再生会議自体の「地盤沈下」も指摘されそうだ。

鳴り物入りで発足した教育再生会議だが、発足と前後していじめ自殺や高校必修科目履修漏れなど教育をめぐる問題が相次いだ。文科省には「いじめ自殺」を予告する手紙も届いた。当時再生会議のメンバーだった「ヤンキー先生」こと義家弘介氏らが「死ぬな」と訴え、再生会議は早速、いじめ防止へ緊急提言を行った。

もちろんいじめ防止は重要課題で、義家氏らの訴えにも一定の効果はあったとの見方はある。しかし、いじめ防止の緊急提言をめぐっては、委員が思い思いの意見を言っただけで、現場の運用の困難さなどが配慮されていない印象はぬぐえない。

そもそも再生会議が当初、論点として挙げていたのは「公教育の再生」。「いじめ」という国民に訴えやすいテーマが現れ、それに飛びついた「軽い」イメージも否めなかった。

また、再生会議の「迷走」を決定的に印象付けたのが「親学」をめぐる議論だ。再生会議の分科会のうち、規範意識などに関する第2分科会が、乳幼児のいる両親らが子育てを学ぶ「親学」について緊急提言を計画。提言案は、母乳による育児や、三世代同居による子育ての重要性などを訴える内容で、山谷えり子首相補佐官が中心になって作成した。

しかし、政府が家庭生活の在り方に介入することに、与野党から反発が出た。例えば「母乳が出ない人はどうすればいいのか」などの声も上がり、伊吹文科相も「人を見下した訓示のようなものをするのは、あまり適当ではない」などと苦言を呈した。そして結局、世論の批判に配慮する形で、提言は見送られた。

「教育に関しては、誰でも一家言あり、誰でも評論家になれる」というのは一般的に指摘されることだが、再生会議ではそれをそのまま実行してしまったように見える。迷走続きの会議は国民の信頼を失い、いわば「自滅」した形だ。

◇「議論しなくていい」が本音
議論の経過にはこのように問題があったとしても、教育再生会議がまとめた第1次報告は、教委制度改革などを柱とした教育改革関連3法の改正、第2次報告は教員給与の見直しや大学9月入学の推進などの改革に結実している。文科省側から見れば、「そもそもが検討していた課題ばかり」(初等中等教育局幹部)という面もあるが、官房幹部の1人は「やはり報告があったことで物事が速やかに進んだ」と評価する。

さらに、再生会議は年末に「第3次報告」をまとめる方針を決めており、07年7月には同報告に向けた議論を開始している。そこで検討課題として挙げているのが、「6・3・3・4」の現行の学制の見直し、教育バウチャー制度の導入などだ。

別の官房幹部は「これらを2、3カ月でまとめるというのは壮絶」と話す。同幹部は、教育再生会議について「最後まできちんと絵を描き切ってもらいたい」と言う一方で、「今後残っているのは難しい問題ばかり」と指摘した。

学制の見直しには、義務教育の在り方の見直しが伴う。仮に義務教育の年限が拡大すれば、国が負担する教育費として莫大(ばくだい)な財源が必要となり、税制改革の議論と不可分だ。自由な学校選択を可能とする「教育バウチャー制度」も、文科省から見れば「学校が少ない過疎地では難しい話で、大都市の理論」。「制度の影の部分を見なくては」などと検討には極めて消極的だ。

教育再生会議の今後に対して、文科省側からは「もう議論しなくていい」という思惑が透けて見える。いずれにしても、首相の辞任により、再生会議がさらに求心力を失うのは必至で、会議が存続するにしても、具体的な成果が得られる公算は小さい。

ただ、裏を返せば、文科省が消極的なこれらの事案こそが、真に検討が必要な分野とも見える。大局的な立場でこうしたことを議論をするのが、実は再生会議の本来の役割だったのかもしれない。(了)

時事通信 2007年9月25日

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特集・教育再生を検証する(3)

再生会議に一定の評価も=「第3次報告」には冷ややか
安倍内閣発足後程なく、首相が政権公約に掲げた教育改革を実現するため、教育再生会議が設置された。議論にまとまりがなく、「井戸端会議」「単なる放談」などとやゆする声さえあったが、安倍政権下で乱立した他の官邸の会議と比べると存在感があったのは事実。また、再生会議がまとめた第1次、第2次報告の内容は政策として着実に推進されつつあり、一定の評価もある。ただ、25日に発足する次期内閣が、「教育再生」をどのように引き継ぐかは未知数で、教育再生会議の動向も不明。文部科学省内では「もう議論が尽きているのでは」と、存在意義を問う声も出ている。年末にまとめると再生会議が宣言している「第3次報告」についても、期待度が高いとは言えない状況だ。

◇意外なバランス
教育再生会議が発足した当初、マスコミなどでは、文科省、中央教育審議会(文科相の諮問機関)との確執を予想する論調が強かった。首相肝いりの再生会議に対し、文科省や中教審が既得権を手放すまいとし、「教育行政の二重構造化の弊害」を危惧(きぐ)する関係者もあった。

従来、官邸主導を実現するための政府の会議は、所管官庁を「抵抗勢力」とし改革推進を図るという側面が強い。世間では、再生会議の改革路線に対し、文科相、文科省が抵抗するという構図を予想した。

しかし、ある文科省幹部は、再生会議発足以降の約1年間を振り返り「(文科省、文科相が)抵抗勢力にならなかった」と強調する。第1次、第2次報告に至る再生会議の議論でも、文科省との確執が目立つようなケースは無く、同幹部は「文科相がうまくバランスを取った」と分析している。

実際、再生会議との関係において、伊吹文明文科相が果たした役割は大きい。文科相は、「再生会議は首相のアドバイザリーボード」と繰り返し、決定機関ではなく、アドバイザーとしての再生会議の位置付けを明確化していた。例えば「いじめ」問題をめぐり、再生会議の一部委員が「出席停止」を主張したことが議論になった際も、「アドバイザリーボードの意見」であることを強調。文科相が「法律的な手続きを経なければ政府としての決定にはならない」という原理原則を貫き、いわば「聞きおく」的な対応を崩さないことで、「対立」には至らなかった面も強い。

教員免許更新制をめぐって、再生会議が中教審の答申と異なる見解を示したこともあった。長く更新制について議論していた中教審は、更新制を「不良教師の排除」のために使うことに否定的。一方、再生会議は、「だめ教師には退場していただく」とし、そのために更新制を導入すべきだと主張していた。

ここでは、文科相が、法律上の考え方を整理することで調整を図った。更新制については、中教審の答申通り、あくまでも教員のスキルアップなどを目標に導入し、その趣旨に沿って教育職員免許法を改正。一方で、教育公務員特例法という別の法律を改正し、指導が不適切な教員の認定制度を新たに設けることとし、両者の主張を組み入れた。(続)

時事通信 2007年9月25日

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特集・教育再生を検証する(2)

◇小泉改革の反動も
一方、最大の功績に「教育再生会議の設置」を挙げた幹部は「(設置により)今までの方向(の流れ)を防いだ」と力説する。同幹部によれば、官邸に設置されている経済財政諮問会議や規制改革会議は「市場原理を唯一絶対の価値」としており、これらに対して「文科省は抵抗するすべがなかった」。教育再生会議が官邸に置かれたことで、こうした流れが変わったという。

実際、特に規制改革会議は、文科省を「ターゲット」としている節があり、その提言も市場原理や競争原理を強く主張したものが多い。常にこうした主張に反発した文科省は「抵抗勢力」とされ、事実上、規制改革会議などが「勝利」する場面が多かった。

例えば、構造改革特区では、文科省が反対してきた株式会社の学校経営参入が実現。04年には、株式会社が運営する全国で初めての朝日塾中学校(岡山市)、LEC東京リーガルマインド大学(本部東京都千代田区)などが開校し、注目を集めた。しかし、最近では、そのLEC大学が、「ビデオを流すだけの授業が行われている」などと指摘され問題になった。文科省も学校教育法に基づき、大学に対しては初となる改善勧告を行った。

また、競争原理や市場原理について考えさせられる出来事として、東京都足立区の事例もある。学力テストの成績の伸び率を予算の配分に反映させていた同区では、学力テストをめぐり、学校長や同区教委がかかわった不祥事が相次いだ。

教育分野で競争原理、市場原理が過熱すれば、「学力向上」といった本来の趣旨がかすんでしまう危惧(きぐ)もある。小泉改革の反動もあってか、安倍政権下では、教育分野で競争原理、市場原理を強調することを「再考」する流れも強まってきたように見える。

地方分権の推進についても、若干の変化が指摘される。もちろん、教育行政においても地方分権の重要性を否定する人は少ないが、高校必修科目の履修漏れ問題や相次ぐいじめ自殺などを通じ、「では国の責任はどうなのか」と問う声が強まった。その結果が、改正地教行法に盛り込まれた教委に対する国の指示権などだ。

「実際に指示権など発動できるわけはない」というのが関係者の一致した見解。それでも国の関与強化に動いた背景には、小泉改革で三位一体改革などを通じ地方分権が強力に推進される中で、「教育は最終的に国が責任を持つものであるべきだ」と改めて確認する必要性を感じる教育関係者が少なくなかったことがあるようだ。

◇3分の1プラス6分の1
1年という極めて短い期間で、安倍首相の「教育再生」は制度の根幹となる法律を変え、政府の教育に向き合う姿勢は変容したようにも見える。

「安倍内閣の下で実態的に最も進んだのは教育改革じゃなかったかと思う」―。首相の辞任表明直後の会見で伊吹文科相は語った。文科相によれば、教育基本法、教育改革関連3法の改正で「(教育再生の)3分の1ができた」。残りのうち3分の1が予算で、「これから教育に携わる者が未来に対する責任を果たしていくという強い意志を持って初めて100パーセントになる」という。

法改正の3分の1と「(来年度予算)概算要求は作ったから6分の1」で、合わせて現在は「半分くらいの状況」と文科相は分析する。ただ、教育再生に向けた意識改革はある意味で法改正よりも難しいようにも見える。予算にしても、前半の概算要求の取りまとめより、要求を年末で予算編成に反映させることの方が誰が見てもはるかに難しい。

「3年間で教職員2万1000人増」。文科省が今回の概算要求で打ち出した数字だ。これがどの程度実現するかで、教育再生に向けた首相の実行力が試されると注目されていた。文科相は、「非常に心残りだっただろう」と首相の心境をおもんぱかったが、問題に対峙(たいじ)することなく辞任する首相に、文科省内にも脱力感が漂う。

「道半ば」の教育再生だが、次の政権が現路線をそのまま引き継ぐかどうかは不透明。まずは「2万1000人」の扱いが、再生への意気込みを問う試金石となりそうだ。(以下25日)

時事通信 2007年9月21日

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特集・教育再生を検証する(1)

最大功績は基本法改正=改革で停滞脱すも「道半ば」
戦後最年少宰相として華々しく登場した安倍晋三首相。その首相が突然の辞意表明まで約1年間、最重要課題として取り組んだのが「教育再生」だ。教育は国民生活に最もかかわりの深い分野の一つだが、改革の成果は見えづらく、一般国民に伝わりにくい。果たして安倍内閣の「教育再生」では、何が行われ、何が変わったか、検証した。

◇改革の原点
安倍内閣の「教育再生」で最大の功績は―。文部科学省の官房と生涯学習政策、初等中等教育、高等教育各局で、審議官、課長級の幹部7人に聞いてみた。6人が「教育基本法の改正」と即答。1人が「教育再生会議の設置」と答えた。

文科省と自民党の長年の懸案だった教育基本法の改正は、およそ3年にわたる自民・公明両党の議論を経て、小泉政権下の2006年4月に改正案が通常国会に提出された。そして、安倍政権発足後の臨時国会で会期末ぎりぎりの同12月、成立に至った。

小泉、安倍の2内閣、2国会を経て実現した同法改正だが、担当した文科省幹部は「安倍内閣で最重要法案として扱われたからこそ成立できた」と話す。「『米百俵の精神』と言いながら、教育改革は、あまり進まなかった」などと、小泉純一郎前首相の下で停滞感を覚えていた文科省職員にとって、改革の原点となる同法改正は「ようやく動きだす」という期待感にもつながったようだ。

基本法の改正から間を置かず、安倍首相は07年1月、学校教育、地方教育行政、教育職員免許法で構成されるいわゆる「教育改革関連3法」の改正を指示。これを受け、中央教育審議会(文科相の諮問機関)が、異例のスピード審議で3法についての答申を行い、それを基に法案がまとめられ、同3月末には国会に提出された。
 同3法についても、最重要法案の一つとして扱い、衆院には、これもまた「異例」とされる特別委員会を設置して集中審議を敢行。その結果、会期末ぎりぎりの6月、成立にこぎつけた。

「地教行法は、首相の指示が無ければ、改正されなかったかもしれない」と、担当局のある幹部。教育委員会制度改革を柱とする地教行法改正について、伊吹文明文科相は基本法が改正された直後、検討には少し時間がかかるとの見方も示していたが、首相指示を受けて方針転換した経緯がある。

参院選が自民党の歴史的惨敗に終わり、結果として「これから提出したのであれば、(民主党の反対で)絶対通らない」(幹部)ことになる。別の幹部も「あの国会でなければ、(教委改革に盛り込まれた)国の関与強化など通るはずがなかった」と振り返る。(続)

時事通信 2007年9月21日

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福田氏インタビュー詳報 

福田康夫元官房長官のインタビュー要旨は次の通り。

−安倍晋三首相の理念「戦後レジーム(体制)からの脱却」を引き継ぐのか。

「教育再生会議などはまだ途中段階だ。方針を引き継ぐかどうかはよく吟味しないといけない」

−自民党は参院選で3年後に憲法改正案の発議を目指すことを公約に掲げた。

「国会で(改憲案発議に必要な)3分の2を取れる態勢が組めればしてもいいが、今はそういう状況ではない。実現しない、道筋が立たないことを言うべきかどうか。与野党が合意し、国会全部の合意を得る努力をすべきだ」

−テロ対策特別措置法の延長問題への対応は。

「経済力を持つ日本が、国際的なプレゼンス(存在)を高めるために給油活動をするのは意味がある。日本が給油を止めれば、国際的にも波紋が起こる」

−新法案を来年の通常国会に提出することも選択肢にあるのか。

「(今国会での)審議日数も少なくなり、選択肢も狭まってきた。その中で何がベストか考えないといけない」

−自衛隊の海外派遣は恒久法が望ましいか。

「何か起こった時に慌てて法律をつくるということでは機敏な対応はできない。日本が国際的な平和活動に協力しようとの意思があれば、きちんと整えておくことは大事だ。恒久法をつくる際に、集団的自衛権に関係する部分をどう判断すべきか、政府の有識者会議『安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会』の答申は意味がある。話を聞きたい」

−武器使用基準の緩和については。

「戦闘行為の口火になるかもしれないとして、国連平和維持活動(PKO)でも国境警備や武装解除は行っていない。それでいいのかどうか」

−国会開会中の組閣で閣僚を大幅に入れ替えるのは難しいか。

「数の問題ではなく、質の問題だ。答弁能力があれば何人代わっても問題はないが、新しい人が答弁能力があるのか。適材適所がそううまくいくのか。まだそんなことを考える余裕はなく、白紙だ」

−野党との「話し合い解散」も視野にあるか。

「解散権は首相にある。だが参院で大きなダメージを受けている状況で『解散権は首相にある』と威張っていられるのか。今までのように首相が『やる』と言い切れるのかどうかは疑問だ」

−地域間格差が問題となっている。小泉、安倍両内閣の政策のどこに問題があったのか。

「規制改革だ。改革自体はいいが、経済合理主義的な部分が強くなり、例えば企業は正規職員を非正規職員にするなど企業本位の雇用関係をつくった。その結果、賃金が下がった」

「(地方に)『ばらまきをやれ』では財政が持たない。難しい問題だが、地方には怨嗟(えんさ)の声が満ちている。税制、交付税以外にも、やる気がある地方に積極的に支援する仕組みを考える必要がある」

−政治とカネの問題にどう取り組むか。

「政治活動の自由は担保されないといけない。何が何でも全部公開しろというのは危険だ。何かあった時には第三者機関が1円単位でチェックする仕組みをつくればいい」

中国新聞 2007年9月18日

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教育再生会議は当面休止=新内閣に存続申し入れへ

政府の教育再生会議の合同分科会が首相官邸で12日開かれたが、会議設置を主導した安倍晋三首相が辞意を表明したことで次回以降の日程が決まらず、当面休止する見通しとなった。会合後の記者会見で池田守男座長代理は「何としても継続させていただきたい」とした上で、新内閣発足後に会議存続を申し入れる考えを示した。

時事通信 2007年9月12日

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改造内閣・横顔 首相続投後押し=伊吹 文明氏

閣僚経験が豊富で、国会答弁の安定感は抜群。文部科学相として、昨年12月に改正教育基本法、今年6月には教育改革関連3法を成立させた。亀井静香元建設相が2005年に郵政民営化に反対して自民党を離れ、会長不在となった派閥を引き継いだ。昨年の同党総裁選では、いち早く安倍晋三首相を支持。参院選後も「党内で駆け引きすべきでない」と発言、首相続投を後押しした。旧大蔵省(財務省)出身。税財政のほか社会保障にも詳しいが、「気位が高すぎる」との評も。

時事通信 2007年8月27日

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どうなる?教育再生会議 参院選大敗で暗雲

与党が大敗した参院選の結果は、政府の教育再生会議(野依良治座長)にも影を落としている。27日に予定される内閣改造でメンバーが変わることに加え、議論に対して与党からの反発が強まることも予想される。教育再生を内閣の最重要課題に掲げ、「愛国心」を盛り込んだ改正教育基本法や、教員免許更新制などを導入する教育再生3法を成立させてきた安倍晋三首相だが、足踏みを余儀なくされそうだ。

安倍首相が続投を表明したことで、「12月に予定していた3次報告が幻になってしまうのでは」と危惧(きぐ)していた再生会議の関係者らは、ほっと胸をなで下ろした。23日には都内の小学校の夏季補習を視察するなど再生会議委員らは活動を続けているが、会議のあり方は大きく変わらざるをえない。

その一つがメンバー構成だ。内閣改造では、メンバーの塩崎恭久官房長官や伊吹文明文部科学相が交代する可能性が強い。「1次、2次報告をまとめるにあたって、塩崎氏のリーダーシップが非常に重要だった」(再生会議関係者)とされるだけに、影響は少なくないとみられる。

また、安倍首相は「補佐官も含め、人事については熟慮していく」と表明。首相はこれまで、山谷えり子首相補佐官(教育再生担当)の働きを高く評価してきたが、留任は微妙な情勢だ。参院議員に転身した義家弘介氏が務めていた再生会議担当室長の後任も決まっていない。

再生会議は3次報告に向けた審議を9月に再開し、(1)行政が配布した利用券を使い、生徒自身が選んだ学校に通う「教育バウチャー制」(2)教育委員会や学校の第三者評価(3)「6・3・3・4制」のあり方−などの課題を検討する。

このうち、首相が就任前から提唱してきたバウチャー制度は、3次報告の「目玉」とされる。ただ、学校間に競争原理を持ち込むことには、再生会議委員の間でも賛否が割れている。学校が多くない地方では効果も限定的になるだけに、参院選の敗因の一つとなった「地域格差」の問題も絡み、与党内からの異論が強まりそうだ。

参院で野党が過半数の議席を持ったことも懸念材料だ。民主党の支持基盤の一つである日教組は、教育基本法改正や教員免許更新制の導入など首相の教育改革路線に真っ向から反対してきた。首相が教育関係の法改正を狙っても、参院では否決される可能性が高い。

「教育再生は緒に就いたばかりだ。さらに教育再生会議の報告に沿って、教育再生は進めていかなければいけない」

首相は参院選の投開票から一夜明けた7月30日の記者会見でこう強調したが、道のりは険しさを増している。

産経新聞 2007年8月22日 19:02

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首相、高村元外相・保利元文相の入閣検討

安倍首相は14日、次の内閣改造で、自民党高村派会長の高村正彦・元外相(65)と無派閥の保利耕輔・元文相(72)を起用する方向で検討に入った。

首相は、27日に予定する内閣改造で、「人心一新」を図る考えを表明している。閣僚経験が豊かで政策に精通した党内の実力者を起用することにより、政府・与党の結束を固め、政権を立て直したい意向だ。

衆院当選9回の高村氏は、外相、法相などを経験している。来年7月に、地球温暖化対策での「ポスト京都議定書」の枠組み作りが大きな議題となる北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)を控える中、首相は高村氏を環境相に充て、議長国として各国との調整に当たらせる意向ではないかという見方が出ている。

また、来年8月に北京五輪が開催される中国との関係を重視し、日中友好議員連盟会長を務める高村氏を外相に推す声もある。

衆院当選10回で文相などの経験を持つ保利氏は、与党の検討会座長として教育基本法改正案の取りまとめに当たった。このため、教育改革の先導役として文部科学相に推す声が出ている。

保利氏は郵政民営化に反対して自民党を離党し、昨年12月に復党した。「郵政造反組」の保利氏を入閣させることで、党内融和の姿勢を打ち出す狙いもあると見られる。

讀賣新聞 2007年8月15日

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教育改革などに特別枠=08年度概算要求

政府は2日、2008年度予算の概算要求基準(シーリング)で、安倍晋三首相が重点分野と位置付ける教育改革、地域活性化、環境などを対象に、総額3000億円程度の特別枠を設ける方針を固めた。厳しい財政事情の中で歳出全体は切り詰めるものの、重要課題への予算配分は増やし、経済成長や構造改革を後押しする。

安倍首相は尾身幸次財務相に対し、シーリングでは最大限の歳出削減を行う一方、「地域再生や成長力強化、教育改革、環境立国などに役立つ政策に重点化を図ってほしい」と指示している。財務省は首相が示した4分野のほか、治安や防災対策、少子化対策など「骨太の方針」に盛り込まれた重要課題も対象に加える方針だ。

一方、政府は公共事業費を3%削減する方向で調整中。重点分野には公共事業も含まれるが、財務省は年末にかけての査定作業の中で、重点分野を予算化する場合は既存事業を縮小することで全体の歳出削減を図る。

政府は07年度予算の概算要求では、「経済成長戦略推進要望」として、技術開発などを対象に3000億円の上乗せ要求を認めていた。(了)

時事通信 2007年8月3日

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教育再生会議、幼児教育の無償化を検討へ

政府の教育再生会議(野依良治座長)は19日、首相官邸内で合同分科会を開き、年末の第3次報告に向けた検討課題をまとめた。幼児教育の無償化や教育バウチャー(利用券)の導入、小中高大学の「6―3―3―4制」見直しなど8つの項目を列挙。8月下旬をメドに具体的な検討に着手する。

小中高大学の見直しでは、小中一貫教育の推進や飛び級・飛び入学などの是非を検討する。大学改革や教員養成システムの改善、学校評価制の見直しなども課題とした。池田守男座長代理は会合後の記者会見で「これまでの提言内容の点検も積極的にやりたい」と話した。

会合には参院選に自民党の比例代表候補として出馬した義家弘介氏の後任で、私立豊川高(愛知県豊川市)の宮本延春教諭が初参加した。義家氏が務めた同会議担当室長の後任は決まっていない。

日本経済新聞 2007年7月20日

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教育バウチャーに賛否 教育再生会議3次報告へ向け会合

政府の教育再生会議は19日、12月に予定する3次報告に向けて、最初の会合を首相官邸で開いた。検討課題としては大学入試改革、「6・3・3・4制」のあり方、教育委員会や学校の第三者評価、教育バウチャーや学校の適正配置など予算配分のあり方が挙がっている。

座長代理の池田守男・資生堂相談役は終了後に会見し、教育バウチャーについて「委員の間でも賛否が分かれている。もう少し詰めて、何らかの結論を出したい」と語った。

朝日新聞 2007年7月20日

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副大臣会議、教育再生へ提言 各省連携へ

政府の副大臣会議は5日午前、教育再生に関する各省庁の施策を提言にまとめ、各副大臣が連携して教育再生に取り組む方針を確認した。

提言は(1)子供たちが安心して育つ環境づくりを進める(2)子供たちが健やかに育つ「学び場」「遊び場」をつくる(3)新しい時代に活躍できる子供たちを育てる−の3テーマに沿って、各省庁の施策をピックアップした。

具体的には、執拗(しつよう)なクレームなどで学校運営に支障をきたす「モンスターペアレント」(問題保護者)対策として、外部の弁護士を活用することや、義務教育段階からの金融経済教育の推進などを盛り込んだ。

産経新聞 2007年7月5日

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