新自由主義教育改革・学力テスト(2007年4〜5月)


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私の視点

ジャーナリスト(ロンドン在住) 阿部 菜穂子

◆教育の市場化 「サッチャー改革」の教訓

日本では全国学力調査が実施されるなど、教育の国家管理を強める改革が進んでいる。親に学校を選ばせるべきだとの声も強い。モデルはイギリスで80年代末に実施された「サッチャー教育改革」だという。改革の柱はナショナルテストの導入(教育の国家管理)と、テスト結果を公表して親に学校を選択させるという教育の市場化だった。

しかしイギリスでは、改革後ほぼ20年たった現在、様々な弊害が明かになったために、教育現場を信頼する体制の構築に向けて大きな修正が始まっている。日本がイギリスの教育改革を参考にするのなら、実情を正確に見た上でのことにして欲しいと強く思う。

サッチャー改革で、公立校は予算権や人事権などの「自治権」を与えられる一方、ナショナルテストの成績によって「アカウンタビリティ(住民に対し質の高い公教育を提供する責任と義務)」を求められ、成果は強力な権限を持つ学校査察機関が判定する仕組みになった。結果として学校に優劣がついて教育の階層化が進み、テストのために授業はゆがめられた。

97年以降のブレア労働党政権は教育予算を大幅に増額したが、学校にナショナルテストの成績到達目標を課すなど中央政府の管理と干渉を強めたため、現場の反発はむしろ強まった。

5月初め、議会特別顧問を務める教育学の権威、アラン・スミザーズ・バッキンガム大学教授は、同政権10年間の教育政策を総括して「政府は学校を自動車製造工場のように扱い、製品数の目標値を設定するように学校にテストの成績到達目標を課し、到達できなければ罰した」と批判した。

サッチャー改革以来、教師たちが主張してきたのは「子どもたちを一番よく知っている教師の判断を信頼して欲しい」ということである。ナショナルテスト廃止を求める声は大きく広がり、政府機関幹部からも同様の意見が聞こえる。

すでにイギリス連合王国を構成するウェールズや北アイルランドではナショナルテストが廃止され、スコットランドでも独自の学力評価体制が定着しつつある。サッチャー教育改革は過去のものとなった。

一方、教育の市場化とは対極的な手法で成果を上げているのは、経済協力開発機構(OECD)の15歳児学習到達調査「PISA」で「学力世界一」の評判を定着させたフィンランドである。昨秋この国の教育を取材したが、その大きな特徴は行政や社会が教師と学校を深く信頼し、教育の進め方に大きな自由を与えている点にあった。教師は生き生きと教え、子どもたちはよく学ぶ。

最近発表された国連児童基金(ユニセフ)による子どもたちの「幸福度」調査(21カ国が対象)でフィンランドはトップグループ、イギリスは最下位だった。この結果をイギリス社会は深刻に受け止め、教育のあり方を見直す議論に発展させているのである。

◇新聞記者を経てフリー。教育問題を中心に活躍中。近著に「イギリス『教育改革』の教訓」(岩波ブックレット)。2児の母親。

朝日新聞 2007年5月29日

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文科省、全国学力テストの解説資料を配布

文部科学省は17日までに、4月に実施した全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の問題の解説資料を作成し、市区町村の教育委員会などに送付した。各設問について正答・誤答例の解説や、指導への生かし方などを盛り込んだ。

例えば小学6年生の国語で、適切なスピーチの仕方を選ぶ設問について選択肢の「最初から最後まで同じ調子で話す」は「大事なところがはっきりしない」と誤答の理由を説明。スピーチの指導にあたって「各教科や特別活動との関連を図ることが重要」などと指針を示した。

日本経済新聞 2007年5月17日 17:38

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全国学力調査、町ぐるみ対策 北広島町教委 問題集作成、全21校に配る

文部科学省が先月24日に小6と中3を対象に実施した全国学力調査の直前に、広島県北広島町教委が、出題内容が類似した問題集を作成し、時間配分や解き方を児童・生徒に指導するように町立の小中学校に指示していたことがわかった。町教委は指導結果の報告も求めていた。全国学力調査をめぐっては、「学校や自治体間の競争をあおり、事前対策をする学校や自治体が出かねない」という懸念の声が研究者などからあがっていた。

関係者によると、北広島町教委は2月末、文科省が公開している予備調査の問題などを参考に独自の問題を作成するよう各校に指示。各校の教員が分担してつくった問題をまとめ、問題集(約120ページ)をつくり、4月初めに町立の全小中学校21校に配布した。

問題集は全国学力調査の出題形式と同様に「知識」「活用・応用」編に分類。出版社が市販した事前対策用の「学力調査テスト予想問題集」から引用した部分もあった。

実施2週間前の4月10日には門枡利男教育長名で、(1)問題集を取捨選択し、児童生徒にやらせる(2)集中して一定の速さで問題を解くことに慣れさせる(3)時間配分・問題の解き方を指導するーなどを文書で指示した。

また、問題集を何ページ解かせたかや、正答率などを全国調査の4日前までに報告するよう要請。各校は授業や宿題で問題集から解かせ、町教委によると、全21校から報告があったという。

門枡教育長は朝日新聞の取材に「2週間程度の対策で平均点が上がるはずがない。上がればうれしいが、指導は通常の教育活動の一環だ」と話す。一方、町内のある小学校教諭は「学力調査で町内の平均点を上げるための対策だと受け止めていた」と話す。

文科省学力調査室は「事前対策は禁止されていないが、調査の目的は児童・生徒の力を把握し、弱点を見つけて一人ひとりの学力向上につなげることにある」としている。(山本知弘、向井光真)

朝日新聞 2007年5月17日

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小学校教頭おせっかい指導/全国学力テスト

広島県三原市教育委員会は11日、文部科学省が4月24日に実施した「全国学力・学習状況調査」(全国学力テスト)で、市立小の男性教頭(52)が6年の男子児童2人に、誤答に気付かせるような指導をした、と発表した。

市教委によると、教頭はテスト中、各教室を巡回していたが、4時限目の算数で、2人に問題を指さしながら「もう一度読み直してみなさい」と話し掛けた。

教頭は「適切ではなかった。反省している」と話しているという。

スポーツニッポン  2007年05月11日 21:21

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ベネッセ雑誌 文部官僚が次々登場 3年で10人 学力テストPR

全国一斉学力テストの集計・採点・分析などを文部科学省から受託した受験産業大手ベネッセコーポレーションの雑誌『VIEW21』に、文科省の官僚などが繰り返し登場し、学力テストの狙いなどを語っています。まるで文科省公認の広報誌のようです。

『VIEW21』は小学版と中学版、高校版があり、小学版と中学版は年四回、高校版は年六回発行です。二〇〇四年からの三年間で十人にのぼる文科省の官僚が登場しています。

〇六年一月号は、文科省の銭谷真美初等中等教育局長のインタビューを掲載。「全国学力調査を学力把握と授業改善に役立ててほしい」などと学力テストの狙いを語っています。

〇六年特別号(七月発行)には、文科省の学力調査に関する「専門家検討会議」座長の梶田叡一兵庫教育大学長が登場し、「全国的な学力調査が起爆剤となり、教育委員会や学校、保護者それぞれの意識改革が進むことを期待しています」と発言。「極端にいえば、毎週、学力調査があってもよいというのが、私の個人的な考え」とまで述べています。

〇六年七月は、ちょうどベネッセが学力テストを受託することが決まった時期。特別号は「学力調査を指導改善に生かす」と題して、学力テストの総力特集をしています。

〇七年一月号では、学力テストの準備を行っていた文科省の学力調査室長の高口努氏が「全国学力・学習調査Q&A」に答えています。「スケジュールを詳しく知りたい」「どのような『学力』を測ろうとしているのか」など十五項目の質問に答えています。

ベネッセは約二十二億円(〇七年度)で学力テストの事業を受託しました。昨年の予備調査も含めるとベネッセに支払われた税金は三十億円を超えます。

同社の担当者は文科省が雑誌で学力テストの意義を語っていることについては、「とくに問題とは思っていない。自粛する必要性があるとは考えていない」と話します。

日本共産党の石井郁子議員は四月二十三日の衆院教育再生特別委員会でこの問題を指摘し、「事業を受託した特定の企業の雑誌に文科省のトップクラスの役人が登場する。こんなことがあっていいのか」と癒着を批判しました。伊吹文明文科相は「職員と当該企業との関係については、これからきっちりと厳しく言う」と苦言を呈しました。

ベネッセは、全国一斉学力テストを利用して、自社の学力調査の売り込みを小中学校に行っていたことも明らかになっています。同日の委員会で伊吹文科相は「事前にうちのものを受けたらいいなどを商売でしているというのは、企業としては決していい企業じゃない」と述べました。

企業宣伝に一役は重大
全日本教職員組合の山口隆副委員長の話 文部官僚が、とりわけ全国一斉学力テスト実施の責任者である学力調査室長が、自ら学力テストを委託した受験産業のベネッセの宣伝に一役買っていたことはきわめて重大です。

文科省が、学力テストの解答(回答)用紙を固有名詞で集約することにこだわったのには、こうした背景があったからなのかと疑わざるをえません。徹底的な究明を求めます。

しんぶん赤旗 2007年5月9日

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学力テスト札幌3万人 客観情報は必要/競争激化を懸念 実施、評価は分かれる

24日に実施された全国学力テストで、札幌市教委の管轄では小学6年生と中学3年生約2万人がテストを受けた。インフルエンザで学級閉鎖した小学校の1学級を除き、すべての学校で混乱なく実施されたが、教育関係者からはさまざまな意見が出た。

札幌市教委管轄でテストを受けたのは、市立小学校207校の6年生1万5465人、市立中学校98校の3年生1万5166人、山の手養護学校の小学部と中学部の計10人。市教委は「学力や過程での教育環境を把握するための調査方法となる全国学力テストは必要」としている。

全国学力テストについて、札幌市PTA協議会の栗原清昭会長(45)は個人的見解としたうえで、「子どもや親たちの中にも、自分が札幌市全体でどのレベルにあるのか知りたいと思う人もいるだろう」と語った。

元小学校教諭で「札幌『非行』と向き合う親たちの会」代表の谷光さん(64)は「結果のよくなかった学校は、保護者や市教委から学力を上げるようにとプレッシャーがかかる。学校間の競争が激しくなり、子どもたちが学力競争に巻き込まれる」と懸念を示した。

札幌市出身で日本数学協会副会長を務める埼玉大学の岡部恒治教授(61)は「学力調査なら予算をかけて全員参加で行う必要はない。抽出方式で十分だ」と指摘。

発達障害児教育が専門の北大大学院の田中康雄教授(49)は「学校間の競争が激化すれば学力の劣る子や障害のある子らが迷惑扱いされ、排除されるのではないか」と話した。(川村史子)

北海道新聞 2007年4月25日

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受験企業誌に文科局長 石井議員指摘 学力テストの委託先

全国一斉学力テストの採点・回収などの業務を文部科学省から委託されている受験産業大手のベネッセコーポレーションが発行している雑誌『VIEW21』に、文科省の担当局長などが登場し、学力テストの意義などを語っている問題が、二十三日の衆院教育再生特別委員会で明らかになりました。日本共産党の石井郁子議員が指摘したものです。

登場しているのは、文科省の銭谷真美初等中等教育局長や学力調査室長の高口努氏、全国学力調査の「専門家検討会議」座長を務めた梶田叡一氏などです。学力テストを受託した企業の雑誌で、文科省の担当者がテストを宣伝している実態に、自民党委員から「まるで官製談合だ」との声が上がりました。

伊吹文明文科相は「学力テストを利用して商売としてやっているのは、企業としては決していい企業ではないという印象を持っている。職員に企業との関係について厳しく言っている」と答えました。

石井氏は、二〇〇四年からベネッセの雑誌に十人近くの文科省の役人が出ていることを示し、「まるで文科省公認の機関誌のようだ。テストの委託は先にベネッセありきだったのではないか」と批判しました。

しんぶん赤旗 2007年4月24日

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知識の「活用力」を重視 国際学力調査も意識か

文部科学省は24日、全国の小中学校計約3万3000校で実施した全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の問題について、設問の狙いなどを発表した。国語と算数・数学の応用問題では、日常的な場面設定で、知識・技能を活用する力を評価するなど、国際学力調査の設問を意識した問題が多かった。

文科省は難易度について「学習指導要領に基づいた指導が定着していれば正答できる水準」としており、5月初めに設問趣旨や指導上のポイントを示した解説資料を各学校に配布する。

国語では、文学作品よりもスーパーのちらしや学級会の議事進行、手作り新聞などを題材にした問題が多く、統計資料などからデータを読み取る問題も出題された。問題用紙にはメモ欄を設け、必要な情報を書き留めながら解くよう促した。

算数・数学では地図やレストランのメニューを示して考えさせる問題も登場。複数の数値、情報を組み合わせて問題を解く力を見るため、記述式問題を多く出題した。

共同通信 2007年4月24日

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学力テスト不振校に教員追加配置も、教育再生会議が支援策

政府の教育再生会議は24日、第1分科会(学校再生)を開き、全国学力・学習状況調査(学力テスト)の結果で成績がよくない学校に対し、教員の追加的な配置など具体的な支援策をまとめ、5月の第2次報告に盛り込む方針で一致した。

分科会終了後の記者会見で、山谷えり子首相補佐官は「これまでの教育行政は、データに基づく困難校への支援ができなかった。教育格差はあってはならないとの観点から支援策を提言したい」と強調した。再生会議は支援の具体例として、<1>指導力のある教員の配置<2>習熟度別指導など指導力向上のための教員加配<3>有効な指導方法等の教員研修――などを示している。

また、分科会では、教育委員会の活動について自己評価する仕組みが必要だとの認識で一致し、具体的な評価項目として、「学力向上への取り組み」「いじめや校内暴力などへの取り組み」などを挙げた。

讀賣新聞 2007年4月24日 19:53

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学力テストの廃止求め声明 全教滋賀教職員組合 過当競争招くと

全教滋賀教職員組合は24日、同日行われた「全国学力・学習状況調査」(全国学力テスト)ついて、過当競争や学校間の序列化を招くなどとして、廃止を求める声明を出した。

声明では、▽競争と序列化を狙ったテストは、いじめや学力低下などの教育問題をさらに深刻化させる▽テストと同時に実施される学習環境や生活習慣の調査は、家庭事情に深く踏み込んでいるため個人情報保護の観点から問題がある▽保護者や国民にテストの狙いが十分に浸透していない−としている。

学力テストは、小学6年と中学3年を対象に国語と算数(数学)のほか、生活習慣などの調査も実施した。

京都新聞 2007年4月24日 19:27

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京滋の小中学校でも実施 全国学力テスト

試験開始の合図の前に、学校名や個人番号を記入する児童(午前9時、京都市下京区・朱雀第三小)

学年全員を対象にした調査としては43年ぶりとなる文部科学省の「全国学力・学習状況調査」(全国学力テスト)が24日、京都、滋賀の小中学校でもあり、子どもたちが真剣な表情で問題に取り組んだ。

京都府内でテストが行われたのは国公私立の432小学校と187中学校。国公立はすべての学校がテストに参加するが、修学旅行や地域行事と重なった学校は実施を延期した。私立は6割程度が参加した。

京都市下京区の朱雀第三小では6年生68人がテストを受けた。午前9時5分からの開始に先立ち、担任教諭が「自分が今どれくらいできるのかを確認し、これからどう勉強するかの参考にします」と趣旨を説明した。児童は配られた解答用紙に学校名と出席番号、氏名に代わる5けたの個人番号を記入。一斉に問題冊子を開いた。

滋賀県でも国公私立の233小学校と92中学校でテストが行われた。公立中の一部は修学旅行で実施を延期した。私立中の2校が不参加だった。

■中止仮処分申し立ての児童、拒否も
全国学力テストに疑問を持ち、中止の仮処分を京都地裁に申し立てた京都市などの9人の児童、生徒のうちこの日、8人は登校し、1人は登校を控えた。

登校しなかった小学6年の男児(11)の父(53)は「親権者として登校しないことを選択せざるを得なかった。引き裂かれる思いだが、格差社会を基礎づけるためのテストに子どもを使われたくない」と話す。登校した児童(11)の父(50)も「登校しない場合にどうなるのか知らされず、不安だった。本人も学校に行きたくないし、自分も行かせたくないが、心に傷が残る可能性もあり、本人のために受けることにした」と複雑さをにじませた。

テスト中止を求める仮処分について、京都地裁は24日午前までに、結論を出していない。テストが終われば「訴えの利益がなくなる」として、却下される見通し。

京都新聞 2007年4月24日

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番号方式採用、小学校は12% きょう全国学力テスト

24日に行われる全国学力・学習状況調査(学力テスト)で、個人情報を保護するため、全国の12%にあたる237の教育委員会が小学校で「番号方式」を採用することが23日、文部科学省の集計で分かった。大阪府はほぼ100%、東京都、京都府でも80%以上の教委が採用するとみられる。

学力テストは43年ぶりで、小学6年と中学3年を対象に行われる。

文科省によると、20日現在、全国の国公私立小中学校の約99%にあたる3万2756校、約233万2000人が参加。国立は全154校、公立は愛知県犬山市を除く1908教委の3万2068校。私立は868校のうち534校で、参加率は61%だった。

東京都の私立は中学が180校(対象学年のない学校も含む)中32校、小学校(同)は53校中15校の参加にとどまった。

一方、小学校で番号方式を採用するのは私立を含め5290校。記名式で学習や生活状況を調査するのは個人情報保護の観点から問題があるとの指摘があったため、文科省が導入を認めていた。

番号方式は児童に5けたの個人番号のみを記載させ、一覧表を学校が作製し、対照できるようにするもので、中学では当初から採用している。

産経新聞 2007年4月24日

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24日に全国学力テスト…小6と中3、233万人が参加

小学6年生と中学3年生を対象にした全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)が、24日に行われる。全員参加を前提にしたテストは43年ぶりで、各学校や自治体に学力の課題を見つけてもらうのが目的。愛知県犬山市の14校を除くすべての国公立と、私立の約6割が参加する。国内最大規模となるテストを目前に控え、教職員らは児童・生徒に注意事項を説明するなど、準備に追われた。

23日に文科省が行った最終集計によると、学力テストに参加するのは、全国の小中学校3万2756校の児童・生徒計約233万2000人。大学入試センター試験と比較すると、参加人数は約4倍、会場数では約40倍となる。

かかった費用は総額77億円。問題・解答用紙は段ボールで10万箱近くになり、3月ごろから印刷を始め、大手運送業者の配送センターに厳重に保管していたが、23日、各小中学校に一斉に運び込まれた。校長室などカギのかかる部屋で一晩保管されるという。

讀賣新聞 2007年4月24日

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小6と中3に全国学力テスト=43年ぶり233万人受験−犬山市と私立4割不参加

文部科学省が、小学6年と中学3年の全児童・生徒計約233万2000人を対象に実施する「全国学力・学習状況調査」(全国学力テスト)が24日午前、全国の小、中学校で一斉に始まった。学年全員が対象のテストは43年ぶり。結果は9月をめどに公表する。

テストは国語、算数・数学の2教科で、小、中学とも1日で終了。「知識」と「活用」の2種類に分けて出題し、併せて生活習慣や学習環境などのアンケートを実施する。

国公私立の小、中学のうち、99%に当たる約32700校が参加する。公立校では愛知県犬山市が「教育への競争原理導入」と批判し、市立小、中の計14校が実施しない。私立校も全体の4割を占める330校余りが参加しない。 

時事通信 2007年4月24日

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京都地裁、結論出さず 学力テスト中止仮処分申請

全国の小学6年生と中学3年生を対象にした「全国学力・学習状況調査」(学力テスト)は、プライバシーの侵害などに当たり違憲だとして、京都市と京田辺市の児童、生徒9人が両市にテスト中止を求めた仮処分申し立てで、京都地裁は23日までに結論を出さなかった。テストは24日に実施されるため、申し立ては「時間切れ」で却下される見通しとなった。

両市の教育委員会は「テストを受けたくない理由で登校しなくても、欠席扱いとする」との姿勢で、保護者や弁護団は「事実上の強制。裁判所が判断しないのは無責任だ」と反発している。

弁護団は「(テストには)プライバシーにかかわる生活調査も含まれ、強制するのは違憲、違法だ」などと主張し、両市に対して、児童や生徒がテストを受けなかった場合の対応について釈明を求めていた。京都市教委は23日に開かれた地裁の審尋で「通常の授業と同様に扱う」と回答した。登校しない場合は欠席とし、テストを受けたくない児童、生徒には別室での授業などを各学校の判断で行う、という。京田辺市教委も同様の扱いをする、としている。

テストの実施後、弁護団側から申し立ての取り下げがなければ、地裁は「訴えの利益がない」として却下する見通し。

京都新聞 2007年4月23日 23:38

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<学力テスト>差し止め訴訟事実上の却下 京都地裁判決

小学6年生と中学3年生を対象に24日実施される全国学力・学習状況調査は「プライバシー権を侵害し違憲違法」などとして京都市などの市立小、中学校の児童生徒らが実施差し止めを求めた第2回審尋が23日、京都地裁であった。裁判官は結論を出さず、24日以降は「訴えの利益がなくなる」ため事実上の却下となった。

毎日新聞 2007年4月23日 23:11

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学力テスト・学習状況調査:中止求め申し入れ書 愛労連など名古屋市教育長に /愛知

県労働組合総連合(愛労連)や新日本婦人の会県本部、自由法曹団愛知支部は20日、全国学力テストと学習状況調査の中止などを求める申し入れ書を、名古屋市教育委員会の岡田大教育長に提出した。

申し入れ書では、学力テストが市町村、学校、児童・生徒の序列化をもたらすと指摘。また、テストとともに実施される学習状況調査で児童・生徒の私生活に踏み込んだ約90項目のアンケートが行われ、プライバシーを侵害すると指摘している。【式守克史】

毎日新聞・愛知 2007年4月21日

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核心 全国学力テスト

全国の小学六年、中学三年を対象にした文部科学省の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)が二十四日、実施される。小中学生の学力低下が叫ばれる中、文科省はこのテストを「義務教育の結果を検証し改善を図る」ためと位置付ける。ただ、「児童・生徒の競争意識を強化し、学校間の序列化につながる」として愛知県犬山市が全国唯一の不参加を決めたほか、各地の教職員組合も反対の声を上げる。全国学力テストの意義や問題点は何か。賛成と反対の立場の専門家の意見を聞いた。(社会部・広瀬和実)

    ◇

賛 教育成果の点検で意義
お茶の水女子大 耳塚寛明教授

全国学力テストの第一義的な目的は、一定水準以上の教育が確保されているかを国の責務として検証することにある。日本の教育政策は、教育の成果を検証する仕組みを欠いてきた。学力テストは、行政が教育の成果を自己点検する意味で重要な意義がある。

全児童・生徒が対象となる調査によって、水準に達しない学校の存在が全国規模で浮かび上がるので、教育資源をどこに配分投下しなければならないか明らかになる。結果が学力格差是正のため有効に使われるよう都道府県や市町村区教委は国とともに考えるべきだ。

ペーパーテストで把握できる成果は学力の一部でしかないが、知識・技能のみならず、それを活用する力や課題解決力も調査では問われる。学力観の転換が期待できる。

だが、まだ完成形ではない。教育界内外の八方から押し寄せる要請を少しずつ受け入れた結果、一見何のための調査か分からない学力調査システムができあがった。一部官庁は結果を公表し、学校を競争状況に放り込んで活性化を図る民間企業的政策を求めるが、教育の世界の中では否定すべきこと。教育は製品とは違い公共性を持つ。

国は水準を満たしていないところに、どういう手だてを講ずるかという政策を同時に明かすべきだった。自治体もこの結果をどう扱い、教育行政に生かすかを示す必要がある。何らかのガイドラインが必要だ。

序列化などへの弊害を防ぎ、調査の目的に即した形で結果が使われる仕組みを作ること、学力以外の学校の努力、成果を見える形にしていくことが必要だ。

    ◇

みみづか・ひろあき 東京大教育学部卒業、同大大学院単位取得退学。同大助手などを経て現職。文科省全国的な学力調査の実施方法等に関する専門家検討会議委員。専攻は教育社会学。

    ◇

否 排他的競争意識あおる
名古屋大 中嶋哲彦教授

学力テストの目的について文科省は「テストの結果に基づいて教育・教育施策の改善を図るため」と説明している。国の定める「基準」で学校の教育活動や市区町村の教育施策を評価し、その「改善」の方向と方法を国が市区町村・学校に対して指し示す制度づくりの一環だ。

教育の地方分権化が進められる中、教育の改善は、市区町村教育委員会のサポートのもとで教職員と保護者・住民の協力で取り組むべき課題。全国学力テストは、国が評価者として学校・地域を競わせながらコントロールする手段となる。

テストの得点で成果を評価されるとなれば、学校の授業はテスト対策にシフトせざるを得ない。学力の保障という学校本来の課題がテストでの得点力の向上に置き換わってしまう。国民の排他的な競争意識が強められ、学校教育の制度と活動がこれまで以上に競争主義的になる恐れがある。

大阪高裁が一月、大阪府枚方市に対して市の情報公開条例に基づき、同市実施の学力テストの学校ごとの結果の公表を命じた。全国学力テストでも、結果の公表は法律上避けられない。

文科省は教育委員会に対し、学校の序列化や過度な競争につながらないよう、個々の市町村名や学校名を明らかにした公表をしないよう求めているが、有効な対策にはならない。

四月に実施されるテスト結果の返却が九月以降というのも、教育指導上の意味があるとは言えない。「学力の位置が分かる」という親の期待は裏切られ、その半面、家庭のあり方や養育責任が問われる可能性もある。

    ◇

なかじま・てつひこ 名古屋大法学部卒業。同大大学院教育学研究科博士後期課程単位認定退学。同大教育学部助手、助教授などを経て現職。犬山市教育委員。専攻は教育行政学。

中日新聞 2007年4月17日

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「全国学力テスト実施しないで」児童生徒9人が仮処分申請

全国の小学6年生、中学3年生を対象に、24日に実施される文部科学省の「全国学力テスト」について、京都市、京都府京田辺市の市立小中学生計9人が16日、テストでの生活習慣に関する調査はプライバシー侵害で個人情報保護法に違反するなどとして、両市に対し、自分たちへのテストを実施しないように求める仮処分を、京都地裁に申請した。

学力テストを巡る法的な訴えは初めて。

テストでは、国語と算数(数学)の試験のほか、テレビの視聴時間や家庭にパソコンがあるかどうか、といった調査も実施される。採点集計は民間企業が行い、国がデータを収集、保有する。

申請では、「特定の個人を識別できる情報が膨大に収集され、民間企業に流されることになる」と指摘し、違法な個人情報の取得にあたるとしている。

京都市は「個人情報の保護には万全を期している」、京田辺市は「コメントできない」としている。

文部科学省初等中等教育局の話「学力や学習状況を把握し、改善を図るのが調査の目的。個人情報保護は、委託先にも厳重な保管、管理をお願いしている」

讀賣新聞 2007年4月16日 23:06

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「全国テストはプライバシー侵害」と仮処分申請 京都

全国の小学6年生と中学3年生を対象に文部科学省が24日に実施する「全国学力・学習状況調査」はプライバシーの侵害になるとして、京都市と京都府京田辺市在住の児童と生徒計9人が16日、両市に自分たちへの学力調査の取りやめを求める仮処分を京都地裁に申し立てた。代理人の弁護士によると、学力調査の中止を求める裁判は全国初という。

両市の計画によると、調査用紙に氏名の記入は求めないが、学校名や組、出席番号、性別などを書かせ、採点は民間業者に委託するとしている。

申立書によると、無記名でも組や出席番号から個人が特定される可能性がある、と指摘。学習環境を尋ねる調査もあり、調査内容は明らかな個人情報に該当するとしている。そのうえで、こうした情報を民間業者に渡すことはプライバシー権の侵害や個人情報保護法に違反するなどとしている。

学力調査に疑問を抱いた保護者が知人を誘い、小学6年の5人と中学3年の4人が申立人になった。保護者の一人は「事前に十分な説明がなく、個人情報がどう使われるか不安」と話した。

文科省初等中等教育局の伯井美徳・主任視学官は「委託先に作業担当者の限定や情報の厳重な保管など万全な対応を求めている。教育委員会と連携しながら、個人情報の取り扱いには万全を期したい」とコメントした。

朝日新聞 2007年4月16日 22:50

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<学力テスト>違憲違法と差し止め申請 京都の児童生徒ら

小学6年生と中学3年生を対象に24日実施される全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)は「プライバシー権を侵害し、家庭教育への国家の不当な介入で違憲違法」として、京都市と京都府京田辺市の市立小、中学校の児童生徒計9人が16日、各市を相手に実施差し止めを求める仮処分を京都地裁に申し立てた。同テストを巡る法的訴えは全国初という。

同テストは学校ごとに行われ、「教科調査」と、生活習慣や学習環境を聞く「質問紙調査」の2種類。いずれもクラス・出席番号を記入させ、小学校では氏名(例外規定あり)も書かせる。問題の発送・回収や採点、学校などへの結果提供を、小学校はベネッセコーポレーション(岡山市)、中学校はNTTデータ(東京都)が担当する。

申し立ては「出席番号で個人を特定できるほか、膨大な個人情報が受験産業に流されたり、国に集積されるのは個人情報保護法と憲法13条に反する」と指摘。昨年の予備調査では、家にある本の冊数などプライバシーにかかわる設問があり、「国家による家庭教育への支配介入で、教育基本法と憲法26条に反する」と主張している。

記者会見した保護者や弁護団は「調査自体に反対ではないが、市教委も学校も一切説明せず、質問にもまともに応じない」などと訴えた。

京都市教委の藤村法子学校指導課長は「有用な調査で、小6は氏名の代わりに番号を記入する」、京田辺市の村田新之昇教育長は「内容を見ていないのでコメントできない」としている。【太田裕之】

毎日新聞 2007年4月16日 21:09

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学力テスト中止求め仮処分申し立て 京都の児童、生徒9人

全国の小学6年生と中学3年生を対象に4月24日に実施される「全国学力・学習状況調査」(学力テスト)は、プライバシー権や教育を受ける権利を侵害し、違憲だとして、京都市と京田辺市の児童、生徒計9人が16日、両市の教育委員会にテストの中止を求める仮処分を京都地裁に申し立てた。

原告の弁護団によると、学力テストをめぐる仮処分や訴訟提起は全国で初めてで、「家庭事情に踏み込む質問もあり、国や受託業者がこうした個人情報を収集・管理するのは問題だ」と訴えている。

申立書によると、学力テストは文部科学省や市町村教委などが実施主体で、国語と算数(数学)に加え、生活習慣や学習環境について問う「質問紙調査」も行う。氏名か、個人特定に結びつく番号を記入させ、採点や集計は民間業者が行う。

文科省が昨年末に実施した予備調査では、質問紙調査に「自分は家の人から大切にされているか」「先生から認められているか」などの項目があった。弁護団は「プライバシーにかかわる生活状況調査で個人を特定することに正当性はなく、憲法や個人情報保護法に反する。国家による教育内容、家庭教育への介入に当たり、教育基本法にも反する」と主張する。

申し立て後に会見した保護者は「調査自体に反対ではないが、氏名を書かせるのは疑問。事前の説明もない」と話した。

申し立てに対し、京都市教委は「学力実態や学習習慣を把握でき、指導の改善にも生かせる有用な調査。氏名の代わりに番号を記入する方式で、個人情報保護には万全を期している」とコメントし、京田辺市教委は「内容を見ていないのでコメントできない」としている。

学力テストをめぐっては、愛知県犬山市教委が「地方の特色ある教育づくりを阻害する」として不参加を表明している。

京都新聞 2007年4月16日 20:50

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全国学力テスト:「氏名でなく番号で」 市町村教委に和教組要請 /和歌山

文部科学省が小6、中3を対象に始める全国学力テスト(24日実施)について、県教職員組合(和教組)は3日、県内市町村教委に対し、テスト結果を氏名でなく番号だけで処理することなどを求める要請書を出した。「業務の一部が民間会社に丸投げされており、個人情報保護の点で重大な問題だ」としている。

県教委などによると、文科省から先月29日、解答用紙に個人番号だけを記入する措置も可能とする事務連絡があった。可能なのは、市町村の個人情報保護審議会が、氏名の記入を「支障がある」と指摘した場合と、すでに実施している独自の学力調査で番号を使用している場合としている。

和教組は「県全体が後者の条件に該当すると考える。文科省が6日までに連絡のあった地教委に限るとしており、早急に検討してほしい」としている。【最上聡】

毎日新聞 2007年4月4日

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全国学力テスト 板橋、吹田で「番号方式」採用 教組、党議員団の要求実る

二十四日実施予定の全国一斉学力テストについて文部科学省が、氏名の代わりに個人が特定できない番号を記入させる方式を認めたことを受け、番号方式での実施を決める教育委員会が相次いでいます。日本共産党や教職員組合、市民団体などが個人情報を保護するために氏名を記載させないよう求めてきた運動が市区町村を動かしています。

東京都板橋区では日本共産党区議団が四日、区教育委員会に「番号方式」での実施を申し入れました。区教委側は「今回の学力調査については氏名を書かずに番号を記入するようにすることを都に回答した」と答えました。

大阪府吹田市では市教育委員会が三日、共産党市議団にプライバシー保護のため、児童・生徒は全員、番号を記入する方式にすると明らかにしました。

党市議団は、三月議会で、外部のテスト業者が個人情報を集約する問題点を指摘。全教吹田、新婦人なども個人情報を守るよう申し入れをしてきました。

文科省は「特別の事情」がある場合は区市町村教委の判断で番号方式を認めるとしました。六日までに都道府県教委を通じて文科省に連絡が必要だとしており、全教では緊急に番号方式での実施を求める申し入れ活動に全力をあげています。

しんぶん赤旗 2007年4月4日

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学校格差が社会崩壊に 「主役は子ども」を壊す 学力テスト シンポから

三月三十一日に行われた緊急シンポジウム「このままでいいのか全国学力テスト」(本紙一日付既報)は、参加者から発言が次々続き、当初の予定時間を大幅に超過しました。百八十人で埋まった会場は、二十四日に迫った全国いっせい学力テストに対する関心と不安の強さを示しました。その一部を紹介します。

格差が拡大
国際基督教大の藤田英典教授は「教育格差の悪循環が進んでいる。ヨーロッパは歴史的につくられた格差の解消を教育に期待しているが、日本は教育と政策で格差拡大が進められている。安倍政権でそういう傾向が強まっている」と指摘しました。

週刊誌がそれぞれの地域別の子どもの偏差値を出したり、不動産業界がそれを住宅やマンションのセールスポイントにするなど「社会的モラルハザード(倫理の崩壊)が起きている」と批判。「教育を商品として扱い、学力によって学校の序列をつけて、どの学区に住むか、どこに子どもを入れるかと考えるのは当然という風潮が広まっている。それに拍車をかけるのが全国学力テストだ。日本の将来はこのままでは危ない。こういうことは早く中止した方がいい」と訴えました。

また、すでに自治体単位で学力テストが行われているところでは、クラスの成績が悪かった担任教師が肩身の狭い思いをし、テストの成績が悪い子どもは当日休むように指導されていることを紹介し、「匿名性はまったくない。全国一斉学力テストが行われれば、こういう風潮が強まる」と警告し、「政治が変わらないといけない」と述べました。

競争主義的
愛知県犬山市教育委員の中嶋哲彦・名古屋大教授は「全国学力テストは学校や自治体が行う教育を国が考える枠組みで評価するもので、学校教育がこれまで以上に競争主義的になる」と警告しました。

また、学力テストの結果を公表し、学校選択制や教育バウチャー(利用券)制の導入を進めようとする政府の意図があることも指摘しました。

そのうえで、学力テストへの不参加を決めた犬山市の「手づくり」で行っている教育を紹介し、「学力テストはそれに真っ向から反対するもの。それぞれの地域や学校で、自分たちで教育をつくっていく営みを全部押し流してしまうものだ。文科省がつくった枠組みに地域や学校を入れようというもので、受け入れるわけにはいかない」と怒りをあらわにしました。

会場から発言した犬山市の教育委員長は、「主役は子ども」として少人数のグループ学習など子どもと教師が信頼しあって授業をしている犬山市の教育を紹介。十年間の教育行政の実践の積み上げの上に、今回の学力テスト不参加があることを語りました。

最悪の改革
東京大の苅谷剛彦教授は「犬山市の教育は昨日今日始まったことではない。東京では都知事選や地方選のなかで有権者が問うていけば、流れは変えられる」と述べました。

苅谷氏は安倍内閣の教育再生会議について「きわめて問題の多い会議。戦後史の中でこれだけ拙速な教育改革はなかったのではないか。新自由主義的な路線がいっそう明確になった」と告発。

「学力テストを実施する前に授業時数を10%増やすという提言が出ている。診察なき処方ということだ。政策決定のつじつまが合わない」と批判しました。

会場からは、「点数競争で被害を受けるのは教員だ。みんな人間的な教育がやりたいと思って教師になったが、そんなことはできない。自分を追い込んでやる気がなくなっていく」(東京都江戸川区の教員)と学力テストを批判する声が出ました。

子どもが不登校だった大田区の男性は「学力テストが導入されたら、不登校の子はどうなるのか。平均点を下げるからテストが終わるまで学校にくるなとなる。子どもが立ち直れなくなる」と話しました。

しんぶん赤旗 2007年4月3日

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子どもの情報 企業に委ねる 全国学力テストやめよ 8氏アピール

文部科学省が二十四日に実施しようとしている全国一斉学力テストについて二日、小森陽一東京大学教授、佐藤学日本教育学会会長ら八人が呼びかけ人となって「子ども全員の個人情報を企業にゆだねることに反対し、個人情報保護法・憲法にもとづく対応を求める賛同アピール」を発表。署名を呼びかけました。

アピールは、子どもたちを競わせ、序列化をすすめる全国学力テストは学力向上につながらないとして反対を表明。「朝食を毎日食べているか」「一週間に何日塾に通っているか」など家庭状況に立ち入った質問への回答まで企業が集計・分析を行うという問題点を指摘し、個人を特定できる調査を受験産業にゆだねることは個人情報保護法に違反するおそれがあるとのべています。

テストの中止を求めるとともに、強行する場合でも集計・分析を企業にゆだねるやり方を見直すよう求めています。

記者会見した呼びかけ人の一人、堀尾輝久元日本教育学会会長は「なぜ全国一斉に小学六年生、中学三年生全員を対象にやるのか。子どもの『学力総背番号制』になり、競争を激化する問題点は大きい」とのべました。

呼びかけ人はほかに、新日本婦人の会の高田公子会長、元小学校校長の高橋昭一さん、津田玄児、村田智子両弁護士、全日本教職員組合の米浦正委員長。

伊吹文科大臣あての署名では「全国一斉学力テストは中止すること」「実施を強行する場合は、せめて出席番号と氏名は無記名にすることを各県教育委員会に指導すること」を求めています。署名用紙は新婦人のホームページに掲載されています。全教のホームページにも掲載の予定です。

しんぶん赤旗 2007年4月3日

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全国学力調査、答案用紙に氏名に代わり番号記入認める

全国の小学6年生と中学3年生約240万人の大半が参加し、24日に約40年ぶりに行われる全国学力調査で、実施主体の文部科学省は2日、答案用紙に名前を書く小6について、名前は書かずに番号を記入する方式も認めることを明らかにした。答案は民間の「ベネッセコーポレーション」(本社・岡山市)が回収・採点するため、関係者から「個人情報保護の点から問題」との指摘が相次いでいた。

中3の答案用紙には氏名欄がなく、あらかじめ書いてある個人番号で学校だけがどの生徒の答案かがわかる。ただ、番号と名前を照合するために一定の作業が必要で、小6では「児童の作業負担を減らす」との理由で答案に名前を書く。

文科省は「小6についても個人情報保護には万全を期している」としているが、全日本教職員組合や教育学者らが問題視。一部の教育委員会からも、名前を書かない方法での対応を求める声が出たため、文科省は「例外措置」として番号方式を認める。

文科省はその条件として、自治体の個人情報保護審議会から「氏名記入には問題がある」との指摘があることや、自治体独自の学力テストで番号方法をとっていることなどをあげている。

朝日新聞 2007年4月2日

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学力テスト このままでいいか “序列化に拍車” 保護者らシンポ

緊急シンポジウム「このままでいいのか全国学力テスト」が三十一日、東京都内で開かれました。学力テストへの不参加を決めた愛知県犬山市の教育委員長が「市議会で十六人の議員が連名で学力テストに参加すべきだと提起したが、『教委の独自性を考えると、政治が介入すべきではない』とはね返した」と会場から発言して注目を集めました。全国一斉学力テストの実施が四月二十四日にせまる中、保護者や教職員、学生など百八十人が参加しました。

パネリストとして四人が発言。犬山市教育委員の中嶋哲彦・名古屋大教授は「全国学力テストは、児童・生徒と家族の個人情報の収集そのものだ」と批判。学校選択の基準や教員評価に利用しようとしている政府の意図を示し、「単なる学力診断テストでなく、教育制度全体を大きく変えていくパーツ(部品)になるのではないか」と訴えました。

国際基督教大の藤田英典教授は「すでに社会的なモラルハザード(倫理の崩壊)が起こっている」として、不動産業界が偏差値が高い学校区を広告の中で強調していることなどを指摘。「学力で序列をつけるのが当然という風潮が広まっている。その動きに拍車をかけるのが学力テストだ」と批判しました。

京都大の松下佳代教授は「短絡的な学校評価につながってしまい、テストのためのカリキュラムや学習指導に陥りやすくなる」と警告しました。

東京大の苅谷剛彦教授は「学力低下は訴えてきたが、全国一律の学力テストには反対してきた」と述べ、政府の教育再生会議が進める教育の「新自由主義改革」を批判しました。

しんぶん赤旗 2007年4月1日

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「全国学力テスト」に疑問 不参加表明の犬山市で集い 愛知

「『全国学力テスト』で教育は『再生』するか?」と題した集いが一日、愛知県犬山市で開かれました。同市では、少人数指導など子どもたちの「学びあい」を大事にする学校教育を進める一方、全国一斉学力テストについて市教委は不参加を表明しています。集いでは、少人数指導で子どもたちが意欲的に学習している姿について報告され、全国一斉学力テストへの疑問の声が聞かれました。

主催は、「あいち県民教育研究所」。教育研究者や教師、父母ら九十人が参加しました。

中嶋哲彦さん(犬山市教育委員、名古屋大学大学院教授)が問題提供者として発言しました。全国一斉学力テストについて、「文部科学省が決めたルールで子どもや教師、学校、地域を競争させ、国が定める基準で評価し、学校の教育活動や地方の教育施策にしばりをかけようという制度だ」と批判。全国的な学校の序列化を招く危険性を指摘しました。

犬山市独自の学校教育について、小学校教師は、「少人数指導で、子どもから『一緒に楽しく学べる、教え合えるのがいい』と声が返ってきます。競争による不安でなく、『やった、できた』という自信をつけさせたい」とのべ、別の教師は「大変さもあるけど、習熟別ではない少人数指導や少人数学級で、子ども同士が学び合う授業をつくっています。競争でなく、本当の意味での学力をつけさせたい」と問題提起しました。

二人の小学生を持つ同市内の母親は、「毎日持って返るプリント類をみても、一人ひとり丁寧にみてもらっていると思います。なぜ、全国一斉学力テストに参加しないかわからなかったけど、学力テストが子どもには決してプラスにならないと思いました」と話しました。

しんぶん赤旗 2007年4月1日

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