教育再生会議の分科会、「道徳を正式教科」で一致
政府の教育再生会議第1分科会(学校再生)は29日、首相官邸で会合を開き、学校で最低限の社会規範などを教えるため、「道徳」を小中高校の学習指導要領で正式な教科と位置づけることで一致した。
道徳の授業は現在、小中学校で週1時間行われている。ただ、正式な教科ではないため、成績評価の対象外で、専用の教科書もなく、授業の実態が不透明との指摘があった。高校では道徳の時間はない。教科名は「徳育」とする案もある。
分科会は5月の第2次報告に向けて、今後、授業のあり方などを検討する。
一方、第1分科会に先立つ再生会議の総会では、1月の第1次報告後の3分科会の検討状況が報告された。安倍首相はあいさつで、「改革を成し遂げ、物事を変えるには色々な抵抗があり、大変さを実感しているが、教育改革には内閣一体で取り組む」と強調した。
讀賣新聞 2007年3月30日 1:11
<教育再生会議>「道徳」を正式教科に 第1分科会で一致
政府の教育再生会議の第1分科会(学校教育)が29日、首相官邸で開かれ、道徳教育を小中高校を通じた「正式な教科」と位置づけることで意見が一致した。道徳教育は現在、絶対評価(小学3年以上3段階、中高5段階)の対象外だが、将来は対象に加える方向で検討し、5月に出す第2次報告に盛り込むことでおおむね合意した。
道徳教育は、学習指導要領で国語や算数などの教科とは別の領域とされる。小中学校で年間35時間の「道徳の時間」があるほか、小中高を通し音楽や体育など学校の教育活動全体を通じて実施するものとされている。
しかし分科会後の記者会見で、小野元之副主査(元文部科学事務次官)は教科とする方向で一致したことを明らかにするとともに、教科名を徳育に改めることも提唱した。道徳教育をめぐる現在の状況については「道徳教育に不熱心な教師がおり、教材も充実していない」と語った。
道徳教育は、指導要領で「自分自身」や「他の人とのかかわり」など指導上の4視点を示し、授業では「心のノート」などの副読本が使われている。教科になれば教科書検定を通過した教科書の使用が義務付けられる。
教科化は法改正は必要なく、指導要領を改定すれば可能。ただし、中央教育審議会(文科相の諮問機関、中教審)の審議を経る必要があり、再生会議の2次報告に盛り込まれた場合、中教審の判断が焦点となる。教育関係者や野党からは「戦前の修身教育の復活」との批判も出そうだ。
この日は第1分科会に先立って総会が開かれ、安倍晋三首相が「(教育を)変えようとすれば抵抗がある。抵抗をエネルギーに変えてもらいたい」とあいさつした。【平元英治】
毎日新聞 2007年3月29日 21:42
「徳育」教科の新設提言=2次報告へ論点整理−再生会議
政府の教育再生会議(野依良治座長)は29日午後、首相官邸で総会と「学校再生」分科会を相次いで開き、5月の第2次報告に向けた中間の論点整理を行った。分科会では規範意識をはぐくむため、小中学校での道徳教育を充実させる必要があるとの認識で一致。正式な教科として「徳育」(仮称)を新設するよう提言した。
小中学校の道徳の授業は現在、学習指導要領が定める「教科」とはなっていない。「徳育」の新設により、正規の教科書が作成されるほか、数値による成績評価なども行われることになる。道徳教育充実の具体策としては(1)小学生に1週間の自然体験(2)中学生に1週間の社会体験−なども盛り込んだ。
時事通信 2007年3月29日
地方教育行法改正案など了承=自民
自民党は27日の総務会で、今国会に提出する教育関連3法案のうち、教育委員会制度改革を柱とした地方教育行政法と各学校の目標・目的などを見直す学校教育法の両改正案を了承した。
3法改正の最大の焦点だった教委改革では、地教行法改正案で教委に対する文部科学相の指示を新たに規定。「教委の法令違反や怠りによって、児童生徒の生命・身体を保護する必要が生じ、他の措置によってはその是正を図ることが困難な場合」に行使できるとしている。
学教法改正案は、教育基本法の改正を受け、義務教育の目標に「我が国と郷土を愛する態度を養う」ことなどを盛り込んでいる。両改正案は、公明党内の手続きを経て、30日の閣議で正式決定される見通し。
教員免許に10年ごとの更新制を導入するための教育職員免許法改正案は、27日朝の公明党政調役員会で与党内手続きが完了。その後の持ち回り閣議で正式決定される。政府は、3法改正案を一括して30日に国会提出する方針。(了)
時事通信内外教育版 2007年3月27日
「大学改革」目玉に…教育再生会議が予算配分など議論
政府の教育再生会議(野依良治座長)は5月にまとめる第2次報告に向け、大学・大学院改革の議論を進めている。
志願者数と入学者数が一致する「全入時代」を迎え、学力低下など大学が抱える様々な問題への処方せんを示し、第2次報告の目玉としたい考えだ。
3月13日の再生会議第3分科会で中嶋嶺雄副主査(国際教養大学長)は「経営の苦しい多くの私立大学が入学金や授業料で補おうとして、安易に定員を増やす悪循環に陥っている。中国から半ば労働力のように学生をかき集める大学もある。本当の教育の場ではない大学が多すぎる」と大学の実情を嘆いた。
他の委員からも、大学の地盤沈下や極端な学力低下など、現状を憂う声が相次いだ。
讀賣新聞 2007年3月24日 12:59
大学卒業に認定試験、教育再生会議分科会が検討で一致
政府の教育再生会議の第3分科会(教育再生)は20日の会合で、大学の学部教育の質を担保するため、卒業時の認定試験の導入を検討することで一致した。
分野別に試験を実施し、試験結果を基に大学が卒業を認定する仕組みを想定している。5月の第2次報告に盛り込みたい考えだ。
会合では、出席委員から「極端に言えば九九が出来なくても大学に入れる」などと、大学生の学力低下を懸念する声が相次ぎ、4年間の学部卒業時に何らかの認定試験を設ける必要性で大筋合意したという。
また、学部教育での〈1〉到達目標の設定〈2〉成績評価の厳格化〈3〉語学や文章作成力など各学部共通の基礎教育の充実――なども検討する。学部教育を充実させ、より高度で専門的な人材を育成する大学院教育につなげるのが狙いだ。
讀賣新聞 2007年3月21日 11:54
<教育再生会議>大学の「卒業認定試験」導入検討
政府の教育再生会議で大学教育のあり方を検討する第3分科会が20日、東京都内のホテルで開かれ、大学教育の質を高めるため、大学卒業に当たって学生に一定水準の学力が身についているかどうかを外部から評価する「卒業認定試験」の導入を検討することを決めた。5月の第2次報告に具体案を盛り込むことを目指す。
現在は、大学は必要な単位数がそろえば卒業できる。卒業認定試験はこれとは別に、大卒者一人一人の学力水準を認定する仕組みを作ることで大学全体の学力向上を促すのが狙い。分科会では希望者全員が大学進学できる「全入」時代をひかえ、「出口である卒業認定が甘い」(中嶋嶺雄・国際教養大理事長)などの意見が出た。【平元英治】
毎日新聞 2007年3月20日 22:22
<教育再生会議>学年ごとの「到達目標」設定方針
政府の教育再生会議は安倍晋三首相が掲げる「公教育の再生」の一環として、小学校と中学校の学習指導要領に「学年ごとの到達目標」を設ける方針だ。新たに「分数計算ができる」「漢字を覚えている」など学年ごとに子どもが習得すべき基準を設け、読み書き計算でつまずく子どもがいれば、学校の判断で授業時間を増やすこともできるようにする。5月の第2次報告で打ち出す「ゆとり教育」見直しなどの具体策に盛り込む。
文部科学相の諮問機関である中央教育審議会は05年の答申で、義務教育9年間を見通した到達目標の明確化を打ち出している。再生会議の方針はそれより一歩進め、学年ごとに必要な資質・能力の水準を示し、落ちこぼれそうな子どもへの補習などを通じて学力の底上げを図る考え。現在は学習指導要領で学年ごとの「指導する内容」が示されているだけで、再生会議は中教審が進める指導要領の改訂に反映するよう働きかける。
また、指導要領を授業実施の「最低基準」とする考えを明確に打ち出し、それを上回る学習内容は、学校独自の判断で教育課程(カリキュラム)に組み込めるようにする。比較的学力の高い学校とそうでない学校で教える内容に格差が生じることになる仕組みだ。
中教審が行う指導要領の改訂も「各教科ごとのエゴで横並びになりがち」(再生会議委員)との理由から、教育関係者以外の大学研究者らの意見の反映を求める。
さらに、1日7コマの授業実施や夏休み・春休みの1週間程度の短縮で、第1次報告の授業時間10%増を実現。国語、算数(数学)、理科、社会、英語(外国語)の5教科を「基本的教科」として重視する姿勢を鮮明にし、増加分の授業を優先的に振り向けるよう求める。【竹島一登】
毎日新聞 2007年3月19日 13:19
奉仕・体験学習の国民会議を提言 教育再生会議
政府の教育再生会議は16日、規範意識・家族・地域教育再生分科会(第2分科会)を開き、子どもに好ましくないテレビ番組やパソコン・携帯電話で見られる出会い系サイトなどの有害情報対策とともに、奉仕・体験学習・スポーツ活動に取り組む「国民会議」(仮称)を創設する方針で一致した。
「国民会議」の具体的な姿は「これからの課題」(第2分科会主査の池田守男資生堂相談役)だが、各経済団体やPTAなどの教育関係の民間団体などで構成することを想定。有害情報対策の徹底のために、マスコミの経営者や、スポンサーとなる一般企業の経営者の参加も求める。
朝日新聞 2007年3月16日
教委への是正指示権を決定=教育3法で首相
安倍晋三首相は12日夕、教育関連3法の改正について伊吹文明文部科学相、菅義偉総務相らと会談し、焦点となっている教育委員会改革では、教委に対する文科相の是正指示権を認め、地方教育行政法改正案に盛り込むよう指示した。会談後、首相は記者団に対し、10日に中央教育審議会(文科相の諮問機関)がまとめた答申を踏まえ「いじめや子どもの命、安全にかかわることは国が指示できるようにする」と語った。
会談では、3法改正案を速やかに提出することが確認された。文科省は今月中に改正案を提出する方針だ。
児童・生徒の生命・身体の保護のため緊急の必要がある場合、指示を行うことが必要との判断による。また首相は、教委に対する「是正要求」を新たに同法改正案に盛り込むことを指示。「憲法に規定する教育を受ける権利が侵害される」ような場合に対応するため、是正指示に準じる措置として新設する。高校必修科目の履修漏れなどが、是正要求の対象として想定される。
首相は、「教育現場を一新し、教育新時代をつくっていきたい」と強調。是正指示権に対しては、「地方分権に逆行する」などと地方6団体が強く反発し、中教審の答申にも反対意見が付記されたが、首相は「いろんな意見があるが、最後はわたしの責任で判断した」と述べた。
時事通信 2007年03月13日
教育制度改正に関する中教審答申の要旨
中央教育審議会が10日に答申した「教育基本法の改正を受けて緊急に必要とされる教育制度の改正について」の要旨は次の通り。
【学校教育法】
1.義務教育の目標と年限
(1)改正教育基本法に教育の目標に関する規定が置かれたことを踏まえ、目標を次のように改める。▽自主、自律および協同の精神、規範意識、公正な判断力、公共の精神に基づき主体的に社会の形成に参画する態度▽我が国と郷土の現状と歴史についての正しい理解、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度、国際理解および国際協調の精神。
(2)年限は、現行制度通り9年と規定する。
2.副校長、主幹、指導教諭といった新しい職の設置
3.大学に在学する学生以外を対象とした新たな大学の履修証明制度の新設
【教育職員免許法】
1.教員免許状の有効期間と更新
(1)普通免許状と特別免許状に10年間の有効期間を定める。
(2)免許状更新講習を修了した者、または勤務実績その他を勘案し講習を受ける必要がないと認めた者について、免許状の有効期間を更新する。
2.指導が不適切な教員の人事管理の厳格化(教育公務員特例法改正)
(1)任命権者は、第三者からなる審査会の意見を聞いて「指導が不適切な教員」の認定を行う。
(2)任命権者は、指導が不適切と認定した教員に対し、研修を実施しなければならない。
【地方教育行政法】
1.教委の体制の充実 (1)市町村は、教委の共同設置、広域連合などにより、広域で教育行政事務を処理する体制の整備・確立に努める。
(2)文科相・教委は、教育委員に対する研修の実施に努める。
2.教育における地方分権の推進
(1)教育委員の数は、5人を原則とし、都道府県・市の教委は6人以上、町村の教委は3人以上とすることができる。
(2)教委の所掌事務のうち、文化、スポーツに関する事務は、首長が担当できる。
3.教育における国の責任の果たし方
国の法律上の責任を果たすことができるよう、以下を踏まえ、適切な仕組みを構築していく。▽児童生徒の生命や身体の保護のため緊急の必要があるなど極めて限定した場合、国が適切に対応できるよう、地方公共団体に対し何らかの措置(指示等)を行えるようにする必要があるとする意見が多数出された▽これに対し、地方分権の流れに逆行するとの意見など強い反対意見も出された。
4.私立学校に関する地方教育行政
私立学校でも法定された最低限の基準を担保するため、以下を踏まえ、適切な措置を講ずる。▽必要に応じ、都道府県知事が教委に対し、助言、援助を求め得るようにすべきだとの意見が出された▽当審議会としては教委が指導を行うことを可能とすることは採らないことが適当と考える。
時事通信 2007年3月12日
教育再生会議、大学院充実の作業部会設置
政府の教育再生会議(座長、野依良治・理化学研理事長)は9日、教育再生分科会(第3分科会)を開き、大学院改革などを検討する「プロジェクトX(エックス)検討チーム」を設置することを決めた。
日本の大学院は国際競争力がないうえ、社会人や留学生らが入学しにくく閉鎖的だとの問題意識をもとに、国内外に開かれた大学院入試のあり方、博士課程の学生に対する資金援助の充実など抜本的な改革案づくりに取り組む。
一方、7日の第2分科会で、分科会の議事を非公開とする方針が示されたことに対し、委員の間からは「(非公開は)おかしいんじゃないか。公開で国民を巻き込んだ議論にすべきだ」(渡辺美樹・ワタミ社長)、「非公開の決定は、意思決定や手続きの問題点を感じざるを得ない」(白石真澄・東洋大教授)など反対する意見が出た。
朝日新聞 2007年3月9日
<教育関連3法改正案>国の教育長任命関与は見送りへ
政府・与党は1日、今国会に提出する教育関連3法の改正案で、国による都道府県教育長の任命への関与を盛り込むのは見送る方針を固めた。地方6団体や政府の規制改革会議から「地方分権に逆行する」との批判が強いことに配慮した。ただ、「国の関与」のもう一つの柱として、法令違反などがあれば文部科学省が地方に是正勧告・指示ができるようにする権限も盛り込まれており、そちらは維持する方針だ。
3法改正については、文科相の諮問機関である中央教育審議会(中教審)が協議しており、10日にも答申をまとめる見通し。政府・与党はこれを受け、教育委員会に対する「国の関与」を規定する地方教育行政法の改正案を国会に提出する。
政府の教育再生会議は、2月5日にまとめた教委制度の改革案で「国の責任の明確化」を提唱。99年の地方分権一括法で廃止された教育長の任命承認権を事実上復活する内容を盛り込んだ。
これに対し、政府の規制改革会議は「人事権に介入する根拠が示されていない」と批判。統一地方選を控える自民党からも文教族を中心に「踏み込みすぎだ」と、地方との対立を危惧(きぐ)する声が高まっている。このため、政府・与党は、任命にまで関与しなくても、是正権限を新設すれば国の関与は実質的に強められるとの判断に傾いた。
また、高校の履修不足問題を受け、中教審で教委が私立学校に「指導・助言・援助」できるようにする規定を検討していたが、私学関係者の「独自性が損なわれる」という懸念を受け、「指導」を削除し、より拘束力の弱い「助言・援助」にとどめる方向で調整している。【竹島一登】
毎日新聞 2007年3月2日