小中生対象学力テスト、枚方市が学校別成績公開へ
大阪府枚方市は20日、全市立小中学生を対象に毎年行う学力診断テストの学校別成績を公開することを決めた。従来、「学校がランク付けされる」として公開していなかったが、非公開決定の取り消しを求める訴訟を起こされ1、2審で敗訴。「勝訴の見込みがない」と上告を断念していた。国や自治体の多くは、同市と同じ理由で学校別成績を明らかにしていないが、この確定判決をきっかけに、公開する自治体が増える可能性もあり、成績公開を巡って論議を呼びそうだ。
枚方市内の行政書士(37)が「学校間で極端な学力の差が生じてないか検討する」として2003、04両年度の中学校別成績の公開を請求したが、いずれも非公開とされ、05年11月に大阪地裁に提訴した。
訴訟では、学校別成績の公開が、学校の序列化につながり、児童・生徒の学習意欲の低下を招くかどうかが争点。昨年8月の1審判決は「テストは、学習の到達度を児童・生徒や保護者に明らかにし、目標を示して意欲を引き出すことが目的で、その趣旨が市民に正しく理解されれば、学校が序列化されることはない」と判断し、公開を命じた。今年1月の大阪高裁判決は1審判決を支持し、枚方市の控訴を棄却した。
同市によると、05年までに学力テストを実施した44都道府県のうち、学校別成績を公表したのは和歌山県だけ。残りの自治体は全体の平均点や市町村ごとの平均点しか公表していない。
判決確定を受け、同市は今後、学校別成績を学校関係者に配布するほか、市民の請求があれば公開する方針。市教委の渡辺聡・教育指導課長は「複雑な思いだが、成績だけが独り歩きしないよう、市教委のホームページや学校などで、テストの趣旨を周知したい」。
大阪府教委小中学校課は「今後のテストに影響が及ぶ可能性があるが、やはり学校名の公表は序列化につながると思う。今後の国の判断に注目したい」という。4月に全国の小6と中3を対象に共通テストを行う文部科学省は「判決は一自治体についてのもので国と同列に論じられない。学校別成績を公開するつもりはない」としている。
讀賣新聞 2007年2月21日
不参加は愛知・犬山市だけ 全国学力テスト
全国の小学6年生、中学3年生を対象に、文部科学省が43年ぶりに実施する全国学力テストに、愛知県犬山市教育委員会以外のすべての教育委員会が参加を表明したことが16日、分かった。
同省が4月24日の実施を前に、都道府県教委、区市町村教委などの意向を調査した。犬山市を除く1908教委が参加を表明。公立学校は、小中学校など合わせて3万2105校が参加し、参加率は99・96%となる。国立学校160校はすべて参加。私立学校は小中学校などの総数の61・88%にあたる539校が参加する。テストは、国語、算数・数学の2教科。
犬山市教委は愛知県教委に対し「全国学力テストは犬山の教育理念に合わないことから実施すべきものでないと考える」と回答していた。瀬見井久・同市教育長は16日午前、「従来の路線を粛々と進める」と話した。
中日新聞 2007年2月16日
学力調査に不安の声 一部不参加…参加校からも異論・反論
来春、国が実施する「全国学力調査」。ほとんどの自治体が参加する見込みだが、愛知県犬山市や一部の私立校は不参加の予定だ。結果の活用方法には、参加する側からも疑問や不安の声が上がる。6日からは、全国188校の小中学校で本番に備える予備調査も始まる。
◆競争原理に警戒感―不参加派
全国学力調査に「参加しない」と表明している愛知県犬山市。その教育長室を今年3月、文部科学省の課長が訪れた。
瀬見井久教育長 「犬山は独自の予算で教師を雇い、少人数授業などで学力を保証している。本来は国がもっと投資すべきでしょう」「やるべきことをせず、調査だけはやらせるんですか」
文科省課長 「国は国できちんとやっている」
教育長 「『マルペケ(○×)テスト』で測れる力は得点力だけ。そもそも教育に市場原理を持ち込もうとしている。無益でなくむしろ有害だ」
犬山市がこれほど国の学力調査に反発を抱く理由の一つは、今回の調査の発端を作った04年当時の中山文科相の発言にある。「競争意識を高める」「競争していく環境づくりが必要」と、そのねらいを語っていたからだ。
その後文科省は、「過度な競争や序列化を招かないように市町村別の公表をしない」などの配慮を決め、「各教委や学校が、全国的な状況との関係において教育や施策の成果と課題の把握、改善に生かす」ことを盛り込んだ。
しかし、瀬見井教育長は「後付けの屁理屈(へりくつ)で、根底には今も競争原理の導入がある。教育の動機付けは競争でなく学ぶ喜びであるべきだ」「把握や改善は当然、日々現場でやっている」と話す。
一方、私立小中学校も不参加が多そうだ。
東京私立中学高等学校協会会長の近藤彰郎・八雲学園校長は「強制でなく各校の判断でということなので、都内で参加するのは少ないだろう。本校も不参加」と話す。「私立は独自のカリキュラムがあり、公立と違って進度がまちまち。学力の判定も校内で定期的にしている。参加するメリットはあまりない」
たとえば、早稲田中は「公立と違う独自の中高一貫教育をしているので参加する意味がない」、慶応義塾中等部も「意義は認めるが、1日がかりになるのでむしろ授業に使いたい」として不参加の予定という。
◆期待と疑問 思惑交錯―参加派
文部科学省の学力調査の担当者はこの秋、全国行脚を続けている。市町村教委の担当者が集まる場で、調査について説明するためだ。
10月に高知市で開かれた説明会では、「国公私立の小6と中3すべての児童生徒が対象です」と何度か繰り返し、参加への協力を求めた。
また全員調査をする目的について、「各地域の児童生徒の学力を把握、分析し、施策に生かす」という国の政策面とともに、「各教委や学校が全国の状況との関係を見ながら課題を把握し、改善を図る」という点も強調した。現時点ではほとんどの学校が参加すると見込んでいるという。
教育現場では、調査をどう受け止めているのか。
「財政力のない地方としては、日本のどこにいても同じ学力を国が保証する方向で、今回の調査を生かしてほしい」(北海道の中学校長)、「データが多いのは悪いことではないので国の全員調査に賛成」(東京都の小学校長)などと、それぞれの思惑で歓迎する声が聞かれる。
宮城県は3年間参加してきた地方分権研究会主催の「4県統一学力テスト」に、来年は参加しない。「他県と時期を合わせたり問題を作ったりするのはどうしても予算と労力がかかる。国で全数調査をやって頂ければ助かる」と県教委の担当者は話す。
一方、調査の結果を指導の改善に生かすことについて、疑問視する声も多い。
東京23区のある教委幹部は「うちの区は自前の調査を詳細に分析している。都の調査も参考にする程度。国のもなくていい」と言う。この区の校長は、「授業時数の確保に四苦八苦しているなかで、現行の区、都に加え、国の調査にも時間を取られるのはつらい」と話す。
4月の結果が9月に返ってくることへの不満も多く聞かれる。別の区の場合、前年度末近くに実施している東京都の調査、4月実施の区独自の調査は、結果が7月までに出る。この区教委は「この時期なら、夏休みの指導に生かせる。国のように、小6と中3の4月時点の分析が9月に分かるようでは遅すぎる」。
文科省は「記述式の問題を一定の割合で入れる」としており、選択問題に偏らないようにして、問題解決の学力も見るとしている。また、結果と分析は9月に返すものの、4月の学力調査後に指導のポイントを記した資料を配るという。
◆「態勢未整備」85% 小中学校長アンケート
東大の基礎学力研究開発センターがこの夏、全国の小中学校の校長にアンケートした結果では、回答した約3800校の約85%が、「(全国学力調査は)結果を教育の改善に生かす方法が整備されていない」という問いに「強くそう思う」「そう思う」と答えていた。
アンケートの責任者、金子元久センター長は「国の調査だが、実際に結果を指導に生かす責任は都道府県教委が負うことになる。でも、その具体的な道筋やサポート態勢がまったく示されないから校長たちはこのように回答したのだろう」と話す。設問ごとの正誤を比べ、指導が弱い部分を把握するだけなら、自治体サイズの調査で十分ということになる。
校長アンケートの自由記述欄には国の学力調査に対する意見も書かれていたが、ほとんどは不安感だった。
「データが公開されないので、教え方の違いや地域性などの背景を分析するのも難しい。膨大な予算と手間をかける以上、国と都道府県は、どう前向きに活用するのか真剣に考えて提示すべきだろう」と金子さんは言う。
●東大の校長アンケート自由記述から全国学力調査への意見を一部抜粋
・授業時数の確保が難しいなかで、国、県、市、学校独自と4種類も実施することになる。
・一つの結果だけが独り歩きし、学校の序列化や一面的な人間の価値づけの方向に進むのではないかと危惧(きぐ)する。
・公立の普通学級には不登校児、特別な支援を必要とする児童が大勢在籍しているが、競争心をあおることによってそれらの子どもが大切にされなくなるのが心配である。
・学力一斉調査など、ますます管理が強まり教員の自主性が損なわれる方向が強まっている。
・「学力」の内実を問わないまま行えば、以前の知識偏重教育と質的にあまり変わらないものに戻ってしまうのではないかと心配。
・指導要領に示された最低限の到達目標に達しているかどうかの結果は先生にも反省を求めるもの。そのテストなら大賛成。学校を評価する道具になるなら納得できない。
2006年11月06日 11:39
全国学力調査に96億円…文科省
文部科学省は29日、2007年度予算の概算要求を発表した。
一般会計の総額は06年度当初予算比6715億円(13・1%)増の5兆8039億円。来年4月に小学6年、中学3年を対象に実施する全国学力調査に96億円、小学校の英語教育推進事業に22億円をそれぞれ計上した。
また、世界トップレベルの競技者育成のため、東京・西が丘に整備中のトレーニングセンター整備費などに182億円を要求した。
讀賣新聞 2006年8月30日
枚方市立中の学力テスト、学校別成績の公開命じる
大阪府枚方市が市立中学を対象に行った学力診断テストの学校別成績を公開しないのは違法として、同市内の行政書士(36)が、同市に非公開決定の取り消しを求めた訴訟の判決が3日、大阪地裁であった。
広谷章雄裁判長は「各校別の成績が各校を評価する唯一の指標とはならず、公開することでテストの適正な執行は妨げられない」として、非公開決定を取り消した。
判決によると、行政書士は2003、04年度のテストの各校別平均点などが記載された学校別一覧を情報公開請求。同市は「各校がランク付けされ、生徒の学習意欲を低下させるおそれがある」として公開しなかった。
讀賣新聞 2006年8月3日
県内自治体の8割が参加 ただ公表は半数 全国学力調査
義務教育の質を保証するため文部科学省が来年4月実施を目指す小中学生の全国学力テストについて、県内33市町のうち8割超に当たる28市町が参加する方針であることが1日、共同通信社と下野新聞社の自治体トップアンケートで分かった。児童生徒の学習到達度を把握する目的のほか、各学校に競争意識を促すためと答えた首長もいた。結果の公表は小山など13市町と4割にとどまった。藤岡町は「児童生徒や教員の負担が増しても相応の成果が得られそうにない」として不参加の方針を示した。
全国学力調査は小学六年と中学三年を対象に、国語と算数・数学の二教科で実施する。原則として全児童生徒が対象としている。
参加方針の二十八市町のうち結果の公表、非公表は各十三市町で同数だった。大田原、岩舟の二市町は参加はするが「公表するかどうかは未定」と答えた。
下野新聞 2006年8月2日
全国学力テスト 序列化の懸念を解消できるか
文部科学省は来年四月、全国学力テストを実施する。全国の小学六年と中学三年全員を対象に、国語と算数・数学の二教科で行われる。
全員調査の学力テストは、かつて一九六〇年代の学力テストで問題になったように、学校や自治体が序列化されたり、過度の競争につながらないかという懸念をはらんでいる。今度の学力テスト復活にあたって、過度の競争への懸念から中央教育審議会が十分な配慮を求めたのも当然だろう。
実施の背景には学力低下批判がある。文科省は「児童生徒の学習到達度を把握し指導改善に生かす」ことを実施目的の柱に掲げる。その目的がどれほど達成できるか、厳しく問われる。
なにより問題になるのは、学力テストに対する自治体の対応であり、テスト結果がどう公表されるかだ。
共同通信社と加盟新聞社によるアンケートの結果、参加意向の自治体は全体の84・2%にあたる千五百四十六市区町村だった。県内では二十市町のうち十九市町が参加を表明している。
参加する理由としては「現場の指導改善に生かす」「自分の自治体の水準を把握する」が大半を占めた。ここで注目したいのは、参加する市区町村の約半数がなんらかの形で公表を予定しているとした点だ。
もともと文科省は、教科の標準偏差や問題の正答率など結果の公表は都道府県単位としている。都道府県が市町村分を公表することや、市町村が各学校について公表することは禁じている。ただ市町村や学校が自らの判断で公表することは認められており、序列化の懸念は残る。
テスト結果を教育現場に生かしていくことは重要だが、市町村や学校がどのように公表するか慎重に検討することが肝要だ。地域や保護者への説明責任も求められるだろうが、数字の独り歩きで序列化につながることのないよう配慮すべきだ。
一方、アンケート結果で不参加とした自治体の数は少なかったものの、その理由には謙虚に耳を傾けたい。「すでに自治体で実施している」「自治体や学校が序列化される」「地方分権の趣旨に反する」などだ。
なるほど、学校現場の裁量拡大という流れのなか、一律の物差しで改善を目指すことに矛盾点はないだろうか。二教科の知識だけでなく、思考力や表現力、さらには「生きる力」の育成が重要なのはいうまでもあるまい。そうした意味での学力向上や指導の改善につながることが望まれる。
不参加方針を表明した愛知県犬山市は「全国一律のテストは競争原理によって点数を上げることはできても、自ら学ぶ力を測る手だてにはなり得ない」という。多様で特色ある教育の大切さを忘れてはならない。
かつての学力テストでは準備のための授業が行われ、成績の悪い生徒を試験当日は休ませるなどテストが自己目的化し、競争意識をあおる弊害もみられた。これらの教訓や多様な声にも応える必要がある。
愛媛新聞社説 2006年8月2日
本県は85.7%「参加」全国学力テスト
文部科学省が来年4月に実施する全国学力テストについて、共同通信社と岩手日報社など加盟新聞社が行ったアンケートで、県内市町村長の85・7%が参加し、うち半数が結果の公表を予定している−との結果が出た。全国の調査結果とほぼ同じ傾向が示された。
35市町村長中、「参加する」と回答したのは30人(参加の方向とした1人を含む)。「しない」と答えたのはゼロで、「分からない」1人、無回答4人だった。「参加」の30人中、「結果を公表する」は14人で、「公表しない」15人、「未定」1人。
文科省は、学校や自治体の序列化につながらないよう結果の公表は原則として都道府県までとしているが、全国的な傾向と同じく、本県でも公表する考えで参加する市町村長が多いことが分かった。
調査は5−6月、全国の市区町村長を対象に実施。本県の回収率は100%。学力テストについては、全国集計でも84・2%が参加し、うち半数が結果を公表予定−との結果が出た。
岩手日報 2006年8月1日
来春の全国学力テスト 鹿県48市町村「参加」
32自治体が結果公表へ
文部科学省が2007年4月に実施する全国学力テストについて、共同通信社と南日本新聞社など加盟新聞社が行った全国の市区町村長アンケートで、鹿児島県内では45市町村長が「参加する」と答えた。無回答の4自治体のうち、3市町も参加する方針を31日までに固めており、県内ほぼすべての自治体でテストが行われるもようだ。
テストの結果については、鹿児島市や指宿市、瀬戸内町など32自治体(65.3%)が「公表する」と回答。西之表市や垂水市、伊仙町など13自治体が非公表とした。
参加する最大の理由として、鹿児島市や知覧町、錦江町など6割超の自治体が「児童生徒の学習到達度を把握し、現場の指導改善に生かす」を挙げた。曽於市や三島村など12自治体が「自治体の水準を把握し、施策に反映させる必要がある」と回答。指宿市や与論町は「各学校の競争意識を促し、学力向上を図る」とし、南種子町は「国が一律に実施する調査であり、参加は当然」と答えた。
調査は5−6月に実施。無回答の市町村に対して南日本新聞があらためて取材したところ、薩摩川内市、大口市は参加し結果を公表すると答えた。さつま町は参加するが、公表については検討段階。奄美市は参加を含め検討中という。
南日本新聞 2006年8月1日
全国学力テスト、県内9割が参加
全国学力テストに参加するか 文部科学省が来年4月に実施する全国学力テストについて、県内の41市町村のうち90%に当たる37市町村が参加の意思を示していることが琉球新報の調査で1日分かった。このうち大宜味村は一部参加の考え。参加を表明している自治体で、テスト結果の公表を予定している市町村は5自治体で、29自治体が「決めていない」「検討中」と回答した。
7月31日と1日、各市町村教育委員会にアンケートを実施した。北大東村と多良間村は回答を保留した。
「参加する」は34自治体、「参加予定で検討中」と答えた市町村は2自治体だった。大宜味村は一部が参加し、一部が参加しない。現時点で「決めていない」も南城市、与那原町の2自治体あった。
「参加する」と答えた自治体の主な理由は複数回答で、「現場の指導改善に生かしたい」が28自治体、「自分の自治体の水準を図る」が24自治体、「国の調査なので参加は当然」が6自治体だった。
「参加する」と答えた市町村のうち、結果を公表すると回答したのは那覇、名護、浦添、糸満の各市と渡名喜村の5自治体、29自治体が態度を保留した。
公表しないと答えたのは宜野湾市で「自治体や学校が序列化される」を理由とした。試験結果の公表方法について、文科省は、自治体や学校の序列化を避けるため、結果の公表は原則として都道府県までとしている。
共同通信の全国調査によると、全市区町村の84%が参加の意向を示し、不参加の意向は3・9%に当たる71市町村で、無回答は12・0%の220市区町村だった。
琉球新報 2006年8月1日
東京ミニマム、08年度めどに最低限学習基準
小学校高学年までにかけ算の九九をマスターし、都道府県名を覚え、燃焼の仕組みを理解する――。
学力低下に歯止めをかけようと、東京都教委は2008年度をめどにすべての小中学生に身につけさせる最低限の学習基準「東京ミニマム」(仮称)を策定する。
学校で教えるべき内容の基準としては国の学習指導要領があり、都道府県が教育現場向けの具体的な基準を作るのは初めて。来年1月に小学5年生と中学2年生を対象に実施する一斉学力テストで成績下位層の実態を把握したうえで、大学教授などの専門家や現場の教員の意見も踏まえて、主要教科の基準づくりに着手する。
小中学生の学力低下は、文部科学省の国立教育政策研究所が今月14日に公表した学力調査結果でも浮かび上がった。それによると、漢字の書き取りでは小4の「チームのシュリョク(主力)になる」、中2の「輝かしいコウセキ(功績)を残す」の正答率がともに2割以下。計算問題では足し算とかけ算の交ざった「3+2×4」の正答率が小6で6割を下回った。
都教委では、一斉学力テストで対象の学年よりも低いレベルの問題を入れるなどして、基礎学力の定着度を調査。基本的な問題ができない児童・生徒が、ほかの教科ではどのような分野を苦手にしているかといった傾向もつかむ。
これと並行して、教員向けにも成績下位層をどう指導するかのマニュアルを作成する。
讀賣新聞 2006年7月30日
全国学力テスト 市区町村の84%が参加の意向
文部科学省が来年4月に実施する全国学力テストについて、全市区町村長の84・2%が参加の意向を示し、うち半数(全体の42・8%)は結果の公表を予定していると回答したことが29日、共同通信社と加盟新聞社のアンケートで分かった。不参加の意向は3・9%に当たる71市町村で、無回答は12・0%の220市区町村だった。
文科省は自治体や学校の序列化を避けるため、結果の公表は原則として都道府県までとしているが、多くの首長は公表を念頭に参加を考えていることが明らかになった。
調査は5−6月、全市町村と東京23区の計1843市区町村を対象に実施し、回答率は99・7%。不参加意向の中には、調査後に対応を変えた自治体もあり、最終的な数字は変動する可能性がある。
「参加する」と回答したのは1546市区町村。このうち、「結果を公表する」は786市区町村で、「公表しない」の760市区町村を上回った。
参加する最大の理由は「児童生徒の学習到達度を把握し、指導改善に生かす」66・6%、「自分の自治体の水準を把握し、施策に反映させる」23・2%で全体の約90%を占めた。そのほかは「国が一律に実施するもので、参加が当然」6・1%、「各学校の競争意識を促し学力向上を図る」3・2%の順だった。
参加しない理由は「すでに都道府県や市町村で実施している」40・8%、「自治体や学校が序列化され、過度の競争につながる恐れがある」29・6%、「教育内容の統制につながり、地方分権の趣旨に反する」14・1%などの順だった。
<全国学力テスト> 文部科学省が国公私立の中3と小6の全児童生徒を対象に国語と算数・数学の2教科で実施するテスト。参加は強制せず、自治体や私立校による自主参加の形式を取る。第1回の実施は2007年4月24日。文科省は、問題ごとの正答率などを都道府県単位で公表する。学校間の序列化につながらないよう公表は都道府県単位にとどめる一方、市町村や学校が自らの判断で公表することは認めた。今年11月から12月にかけて小中各100校で予備テストを行う。
◇自ら学ぶ力育たぬ
愛知県犬山市の瀬見井久教育長の話 結果公表は(参加意向の自治体の)半数程度だが、実際にはもっと多くなるのではないか。(文部科学省のように)自治体に委任すると言えば聞こえはいいが、結果を公表せざるを得ない自治体の実情は国も十分承知しているはずだ。全国一律のテストは競争原理によって点数を上げることはできても、自ら学ぶ手だてにはなり得ない。文科省の施策は、犬山市が積み上げてきた教育観とは異なるので参加はしない。ただ、現場で独自に学力対策ができるにもかかわらず、これまで努力を怠ってきた自治体があるのも事実。調査自体を否定する気はない。
共同通信 2006年7月30日
県学力テスト:在り方を検討 文科省の「全国」実施受け−−重なる時期、趣旨 /岡山
文部科学省が来年度、小学6年と中学3年を対象に「全国学力テスト」を導入するのを受け、県教育庁は県独自の学力テストの在り方を検討している。趣旨や時期(4月)が全国テストと重なるため。「廃止し全国テストで代替」「時期をずらす」など
を含め検討しており、「なるべく早い時期に結論を出したい」としている。【佐藤慶】
県の独自テストは04年度にスタートした「中学校学習到達状況調査」。小学校終了段階の児童の理解度を把握するとともに、小中学校の連携を深めて学習改善に生かすことを目的にしている。国語、社会、算数、理科の4教科あり、昨年度は全公立中165校の1年生1万7663人が取り組んだ。
一方、全国学力テストは国語と算数・数学の2教科。同省は全国一律実施を目指し、6月20日に都道府県教委に実施要領を通知しているが、自治体に参加義務はない。過去にあった同様のテストが「学校間の序列化や受験競争に拍車をかけた」などとの批判を受け中止された経緯があり、既に愛知県犬山市が不参加を表明するなど一部で批判の声も上がっている。
◇県内29市町村教委に意思調査 「参加」18、「検討」11
毎日新聞が県内29市町村教委に参加意思を尋ねた調査では「参加」18、「検討」11で、不参加の意向を示す自治体はなかった(6月30日現在)。
◇「学校に負担」懸念も
ただ、ある自治体の担当者は「学級づくりを重視すべき4月に2回の調査が実施されると、学校の負担が増加する」と懸念。県教育庁指導課の岡村富広総括副参事は「市町村に納得頂ける形で結論を出したい」と話している。
毎日新聞・岡山 2006年7月5日
都道府県の学力テスト、小中で対策“過熱”
都道府県が独自に行う学力テストで、事前対策の模擬試験を授業中に行うなど学校現場が“過熱”している地域のあることが分かった。「ひとりひとりの学力作り」という本来の目的と、「1点でも高く」と奔走する現場と。ずれの根底に何があるのか。
授業中に模試・予想問題…
小3から中3までの全員を対象に毎年10月、学力テストが実施される岩手県。3回目の昨年、ある小学校で1か月前から連日、テスト準備が行われた。
10分間の朝自習の時間や授業の一部を使い、試験科目の4教科でテスト対策の学習をした。教材は「おさらいプリント」。教師が過去の出題から正答率が低かった個所を抽出し、市販の問題集を参考に対策問題を作った。
本番2週間前には「模擬テスト」も実施した。当初は一部の教師だけで行っていたが、未実施の学年と大差がついたため、いつの間にか全員が取り組むようになった。保護者に事前に知らせていたが、授業は押せ押せになった。
テスト対策で授業に支障が出るのは本末転倒だ、と教師自身も思っている。「校長や親が点数を気にするし、自分らの評価に響くかも、といった不安もある。でも一生懸命頑張ってくれる子たちを見ると、これで良いのだろうかと……」と同校の教師は打ち明ける。
小5と中2の全員にテストを行う東京でも、放課後や授業中に、予想問題を繰り返し解かせた学校があった。一昨年には、テストと酷似した「予想問題」を直前に実施した学校のあったことが判明。都教育庁が関係者に事情を聞く事態になった。真相は未解明だが、同庁は問題用紙をギリギリまで学校に運ばないなど不正防止策をとることになった。
競争に拍車をかけるのが市区町村の教育委員会の姿勢だ。岩手県教職員組合の昨年末の調査では、約200校中約4割の学校で「事前指導の要求があった」「点数を上げるよう求められた」など“圧力”があった。東京でも、テストが近づくと、「授業で毎回小テストを実施」などと文書で指導した市区教委は少なくない。
こうした現状について、岩手県教委は「テストは健康診断と同じで、授業の問題点を見つけ、解決策を探るためのものだ。点数稼ぎのその場しのぎは姑息(こそく)だ」と困惑を示す。都教育庁も「事前指導がすべて悪ではないが、直前の指導ではなく、年間を通した学力づくりが望まれる」と話す。
結果公表について、岩手は「点数争いは好ましくない」と県全体の正答率にとどめる。東京は市区町村単位だ。しかし、教委や学校は、学校・学級ごとの結果を把握している。結果を把握し、診断しなければ改善はできないからだ。
「診断」と「授業力の評価」。テストはこの二つが表裏一体となっている。「評価」への不安が“過熱”を招いているようだ。
東大大学院の苅谷剛彦教授(教育社会学)は「今のテストの作問や分析技術では、結果が学校や教師の力を示すのか、塾通いの成果なのか分からない。その意味からも、点数争いは無意味だ」と現状のテストのあり方を批判。「現場の教師たちに、問題作成と分析を任せてはどうか。確認すべき点が整理され、結果分析でさらにクリアになる。そうすればテスト本来の意義も再確認できるはずだ」と強調する。(松本美奈)
讀賣新聞 2006年6月30日
都の学力テスト1位、小学は文京区・中学は国分寺市
東京都教育委員会は8日、今年1月に都内の公立校に通う中学2年生と小学5年生を対象に行った学力一斉テストの結果を公表した。今年で3回目の中2は、理科の平均正答率が昨年の67.1%から79.5%へと上昇。2回目の小5は国語が78.9%から82.2%に改善した。
都教委は、小中学校数がそれぞれ3校以上、生徒・児童数が100人以上の条件を満たす区市町村について、教科ごとの平均正答率を公表。全教科の平均正答率を合計すると、上位はいずれもわずかな差だったが、中2は昨年3位の国分寺市が、小5は同4位の文京区がそれぞれトップになった。
中2の2位は武蔵野市、3位は目黒区。小5の2位は昨年トップの千代田区で、目黒区は小5も3位だった。
都は区市町村のランキングを算出していないが、各区市町村の教科ごとの平均正答率などはインターネットのホームページで公開する。アドレスは http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/pr060608s.htm
Nikkei Net 2006年6月8日
学校別順位公表は慎重に 全国学力テストで文科相
小坂憲次文部科学相は2日午後の衆院教育基本法特別委員会で、2007年度から実施する全国的な学力テストの結果について「学校別に順位を付け公表するようなことをさせるつもりはない」と述べ、自治体が学校別に公表し、序列化につながることのないよう配慮を求める考えを示した。全国的な学力テストは小学6年と中学3年を対象に国語と算数・数学の2教科で実施し、学習習慣と学力の関係などの調査も行う。
文科省の専門家会議の最終報告によると、同省による調査結果の公表は都道府県単位までだが、市町村自らの公表については「序列化や過度な競争をあおらない工夫を求める」とした上で「それぞれの判断に委ねる」としている。
共同通信 6月2日
2006年5月19日
全国的な学力調査について(文科省HP)
新たな義務教育の質を保証する仕組みを構築するため、国の責任により義務教育の結果の検証を行う観点から、全国的な子ども達の学力状況を把握する全国的な学力調査を平成19年度から実施することとしており、現在、準備を進めています。