趣旨・運営
■教育基本法「改正」情報センター設立趣旨
教育基本法改正案が去る4月28日に閣議決定され、国会に提出されました。
国会提出前からマスコミは愛国心問題に特化させて教育基本法改正について論じてきました。しかし、教基法改正の狙いは「戦争ができる国づくり」にだけあったわけではありません。また、法案を見てみても、「愛国心」教化に劣らないほど、あるいはそれ以上に重要な問題が含まれていることがわかります。
日本教育法学会教育基本法研究特別委員会が5月9日に公表した『教育基本法改正案に対するコメント<第1版>』は、的確に、法案の特徴を次の4点にまとめています。
第1. 教育基本法を、教育の自主性保障法から教育の権力統制正当化法へと基本精神を180度転換させていること。
第2. 公教育を道徳教育に一元化し、国家法定の道徳を法律によって強制することを可能にし、国家道徳強制法とでも言うべき実質を備えていること。
第3. 評価を軸にした学力競争とそれが生み出す格差を是認する学校教育制度づくりを実行していく権限を国に包括的に授権していること。
第4. 計画・実施・評価・それに応じた財政配分という安上がりな手法を用いて、規制緩和と統制を内容とする教育改革をトップダウン方式で実行することを可能にしていること。
教化されるのは愛国心だけではありません。より広い人間像そのものが教化されるのです。押し付けられるのは人間像だけではありません。評価を軸として国による学力統制と学力競争が押し付けられようとしています。政府が掌握するのは道徳と教科を含む教育内容統制権限だけではありません。バウチャー制度の導入、学校選択制の導入、国による財政責任の放棄とそれの自治体への押付け、などなどの新しい教育制度をフリーハンドでトップダウン方式で導入する権限も政府に与えられます。国による包括的な権力統制の対象となるのは初等中等教育だけではありません。家庭教育、幼児教育、社会教育そして大学までもがその対象となるのです。
これらの問題点が国会で明らかにされないまま、国民に理解されないまま、法案が成立してよいはずはありません。これらの問題点を厳密に審議したうえ、法案は廃案とされるべきです。
そこで、次の3つのことを目的として、「教育基本法『改正』情報センター」を同法案の国会審議に対応して立ち上げることにしました。
T 以下の情報を提供し、市民および国会議員による教基法案の問題点の理解の深化に寄与する。
・ 教基法改正に関心のある市民、研究者が、問題点の広がりと深さを理解できる情報
・ 国会における議論の状況を含む最新の情勢をすぐに把握できる情報
・ 国会議員が、論点の広がりと深さを理解し、国会質問の基礎にできる情報
U 国会審議を市民注視のもとで行わせる環境を作り、国会外の運動と国会における議論をリンクする。
V 国会に対するロビイングを行う。
■代表 佐 貫 浩(法政大学教授)
教育基本法が、教育勅語のような個人の内心を侵す徳目規範化すると共に、国家の決定した教育の「目標」にしたがった計画策定、学校と教師への実施責任を課して評価・管理するという公共管理による新自由主義の「教育改革」を一気に進める法構造が埋め込まれています。このとんでもない「改正」をなんとしても阻止したいと思います。そのためみんなの力を一つにして、運動を作っていきたいと思います。宜しくお願いします。