164国会 衆特別委 第3回(5月24日)
○志位委員 …具体的な問題を伺いたい。政府が基本法を改定して、新たにつくる教育振興基本計画に盛り込んで真っ先にやろうとしていることは何かという問題であります。
首相は本会議での答弁で、来年度に全国一斉学力テストを実施するとお述べになりました。小学校六年生と中学校三年生のすべての児童生徒に、国語、算数、数学のテストを全国一斉に受けさせ、すべての学校と子供に成績順の序列をつけようというものであります。この間、全国の幾つかの自治体では独自に一斉学力テストを実施していますが、それが現場にどんな矛盾を引き起こしているのか、総理は御存じでしょうか。
例えば東京都では、都独自に、さらに区や市独自に一斉学力テストを実施し、少なくない区や市ではその結果を学校ごとに順位をつけて公表しています。これが小中学校の学区制廃止とセットで進められています。その結果、どういうことが起こるか。新入生はいわゆる成績上位校に集中します。逆に、新入生がゼロの学校も生まれているんですよ。都の教育委員会に調べてもらったら、荒川、文京、墨田の小中学校で新入生ゼロの学校が生まれているんです。新入生を迎えるのが楽しみなはずの四月に入学式がない、これがその学校の子供たちにどのような心の傷になっているか、私ははかり知れないものがあると思います。
そこで、総理に問いたい。これは教育に関する基本的な問題として問いたいと思います。
こういう一斉テストで、子供と学校に序列をつけ、勝ち組、負け組に振り分ける、これが現場で起こっていることなんです。そして、教育基本法改定を推進してきた元教育課程審議会会長の三浦朱門氏はこう言いました。できぬ者はできぬままで結構、戦後五十年、落ちこぼれの底辺を上げることにばかり注いできた労力を、できる者を限りなく伸ばすことに振り向ける、限りなくできない非才、無才には、せめて実直な精神だけを養ってもらえばいいんです、ここまで言ったんですよ。
ですから、総理に基本的な教育観を伺いたい。子供たちを競争に追い立て、序列をつけてふるい分けする、こういうやり方が教育として好ましいと考えますか、それとも、ここに正すべき大問題があるとお考えになりますか。端的にお答えください。
○小泉内閣総理大臣 学力テストがいけないとは私は思いませんね。学力テストが学校の格差をつけるとか、あるいは生徒に特別な負担を強いるかということじゃなくて、やはり読み書きそろばんというように、基礎的な学力は子供たちにつけてもらわなきゃならない。できない子に対してはできるように、わからない子にはわかるように教えるという習熟度別授業というものに対して、私は必要だと言っているんです。共産党は、それは必要ないと言っているんでしょうけれども。
私は、できる子はどんどん、先生がそんなによくなくたって、自分で勉強するでしょう。しかし、先生によっては、教え方のうまい下手もあります。わからない授業を、次の上のレベルに進むためには、ある段階を理解しないとますますわからなくなるから、それを丁寧に教えてもらうような環境をつくることが必要だ。
そして、学力テストを一斉にやるのがどうしていけないんですか。ある学校では、同じ問いに対して、同じテストに対してこういう成績を上げた、ある学校ではこういう成績を上げた。おかしいなと思ったら、もっと学力を上げるような努力をする、一つの資料ができるじゃないですか。それがどうしていけないんですか。私は、それは理解できませんね。
そして、できるだけ、基礎的な読み書きそろばんについては、多くの子弟が社会に出て困ることのないような学力をつけよう、これが教育のあり方じゃないでしょうか。
○志位委員 学力テスト一般を私たちは否定しているわけじゃありません。抽出的に調査をして、実態がどうなっているかということを調べることはあるでしょう。しかし、全国一斉にすべての子供に対してやる必要はない。それをやったらこういう競争や序列化が起こるということを私は指摘したのに、あなたは全くそれに対する自覚がない。
ここに、首相が議長を務める経済財政諮問会議に前の文科大臣の中山さんが提示した資料があります。何のために学力テストをやるのか、競争心の涵養のためだと言っていますよ。もっと競争に追い立てるために学力テストをやる、こういうことを言っています。
しかし、日本の教育における過度の競争主義の問題というのは、国連の子どもの権利委員会から繰り返し批判されている。九八年の勧告では、高度に競争的な教育制度のストレスで児童が発達障害にさらされると批判されている。二〇〇四年の勧告では、にもかかわらずフォローアップがされなかったと批判されている。この国連の勧告にも全く逆行する競争のあおり立てだと私は思います。
習熟度別学級、何で悪いんだと言いましたけれども、フィンランドでは、学力水準世界一と言われている、しかし、これは競争教育を一掃してどの子にもわかるまで教えるようにしたこと、そして二十人学級など少人数学級をやったこと、先生の自由を尊重したこと、この三つでやっているんですよ。教育基本法は、そのときのお手本とされた。それを生かした教育改革こそ必要であって、私は、憲法を踏みにじって愛国心を強制し、子供たちを競争に追い立てて、勝ち組、負け組にふるい分けるというこの改悪は、徹底審議の上、廃案にするしかないということを強く主張して、質問といたします。
164国会 衆特別委 第8回(6月2日)
○笠井委員 …問題は、こうして行われた学力テストによって評価がされた結果、どういうことが起きているかということなんです。
例えば、これはその学力テストの結果を報道した新聞で、産経新聞なんですけれども、東京面にこういう形で結果が出まして、東京の区市町村の順位が一位から最下位の四十九位まで一覧で出されております。もう一つは、これは区の名前はA区というふうにさせていただきますが、A区の場合は、独自に学力テストをやりまして、そしてその結果について区のホームページで、こういう形で、小中学校別に平均の到達度のランクづけが一位から最下位までされている。学校が全部ランクづけされているわけです。
こういう中で、都内の小中学校の教員や父母の方々から話を聞きますと、子供がクラブ活動の大会に行った、そしたら、ほかの学校の生徒から、あなたの学校は一番ばかな学校なんでしょう、こう言われてショックを受けてきた。あるいは、みんなに迷惑をかけるからテストの日は休んだという子供もいる例があって、本当に子供の心が傷つけられているというふうに思いますが、小坂大臣、東京のこういう実態があるということについては御存じだったでしょうか。
○小坂国務大臣 今御紹介をいただきましたような東京都の学力テストでございますけれども、東京都は東京都として独自に、児童生徒の学力向上を図るための調査という形で、先ほど御提示をいただいた、国語、算数といいますか数学、それから社会、理科、英語、英語は中学のみと聞いておりますが、及び意識調査という形で実施をしておって、十五年、十六年、十七年、それぞれ、中学二年、あるいは小学校五年と中学二年の全員とか、小学校五年と中学二年については十六、十七と継続して、経年的な変化も見るということなんでしょうが、こういうふうに実施をしていることは承知をいたしておりますし、この学力調査が子供たちの学力の向上や学校教育の充実に役立っているものと考えるわけであります。
しかし、今御指摘がありましたように、学校別に順位づけを行って、それを公表するということについては、私は慎重であるべきだと思っております。