2490国と自治体間の権限関係

 

 

164国会 衆特別委 第6回(531日)

下村委員 …教育基本法だけ変わってこの国が変わるということじゃなくて、教育基本法を変えることによって、その下部法令、学校教育法とか地方教育行政組織法とかあるいは地方自治法とか、あるいはさらには学習指導要領も含めてこれを大きく変えていくということになる、またそうでなければ教育の構造改革あるいは教育改革ということにはならないというふうに思います。政府案は、議連とかそれから民主党案と比較しますと、第三項で「国及び地方公共団体は、義務教育の機会を保障し、その水準を確保するため、適切な役割分担及び相互の協力の下、その実施に責任を負う。」としているんですね。この案は、我々の議連それから民主党案に比べると、今後の国と地方公共団体のあり方、これが明確に書かれていないわけであります。国とそれから地方公共団体の関係についてどういうふうに読み込む必要があるのか、また、基本法そのものが、相互に責任を負うということであれば、先ほど申し上げたように、下部法令等でどのように位置づけようと考えられているか、まず伺いたいと思います。

○小坂国務大臣 下村委員におかれましては、教育行政にふだんから大変御熱心な関心をお持ちいただきまして、いろいろな場で意見を述べる等、日本の教育行政の進展に対して日ごろから御貢献を賜っていることにまずもって敬意を表したいと思います。
 義務教育を初め教育を推進するに当たりましては、国と地方公共団体が一定の役割分担のもとに、相互に協力しながらそれぞれの責任を果たしていく、そういうことが重要だと思っておりますが、現行基本法におきましては、国及び地方公共団体相互の関係に関しては規定をしておりません。これらの具体的な内容については、学校教育法や地方教育行政の組織及び運営に関する法律など、委員が御指摘をされました下部法令という、いわゆる個別の法令において規定をしているところでございます。
 このために、法案の第五条では、義務教育について、国と地方公共団体が適切な役割分担及び相互の協力のもと、その実施に責任を負うと定めておるわけでございまして、また、第十六条におきまして、教育行政全般につきまして、国は全国的な教育の機会均等と教育水準の維持向上を図りということで、この総合的な教育施策を実施すべき面がこの責任の範囲であるということを明確にしております。また、地方公共団体は地域の実情に応じた教育施策を実施すべき旨を規定しているわけでございまして、国と地方公共団体が相互に協力すべき旨を全般として規定しているところでございます。

 

164国会 衆特別委 第6回(531日)

下村委員 もともと、教育委員会やあるいは地方行政のことが不当だと言うこと自体が、民主国家我が国において、自由と民主主義のこの国において、そもそも法律用語としてなじまないというふうに私は思うんですね。ですから、この言葉を入れることによって、これが一部の組合等のイデオロギー集団だけだということをあえて限定するということ自体が、いろいろな解釈が生まれてくるのではないかなというふうに思います。ちょっと今後の課題ではないかと私は思います。
 それから次、今の十六条ですけれども、先ほどの義務教育のところと同じ文言が十六条でも入っているんですね。「教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。」こういうふうに、短い教育基本法改正案の中で似たような文言がこの十六条にも、先ほどの五条にもある。
 しかし、先ほどの大臣の答弁でもちょっと感じたんですが、では、実体的にどうするのかということについてまだ抽象的ではないかということで、適切な役割分担ということは要するに今のままでもいいじゃないかということでもあると思うんですが、今のままでいいのか悪いのか、あるいはなぜさらに同じような表現を五条、十六条で繰り返し述べられているのか、それについて伺いたいと思います。

○小坂国務大臣 法案第五条では義務教育について、御指摘のように国と地方公共団体が適切な役割分担及び相互の協力のもとその実施に責任を負う旨を定めております。これは、憲法第二十六条がすべての国民に対して無償の義務教育を保障していることを受けて、国と地方公共団体の両方が一定の役割分担と協力のもとに義務教育の実施に責任を負うということを明確に規定したものであります。
 法案の第十六条において同様に、義務教育も含め、教育行政について国と地方公共団体の適切な役割分担及び相互の協力のもとに行われなければならない旨を規定しておるということは、国及び地方公共団体の主な役割を明確にするという意味で規定をしたものでございまして、繰り返しになりますが、国が全国的な教育の機会均等と教育水準の維持向上を図り総合的な教育施策を実施すべき旨を、また地方公共団体が地域の実情に応じた教育施策を実施すべき旨を規定することとしたところでございます。
 繰り返し同じような規定を設けているのではないかということでございますが、片方は義務教育というものについての考え方を述べたものでありまして、第十六条では教育行政においてどのような役割分担をなすかということについての根本的な考え方を示したものと理解していただきたいと思います。