1010高校教育の実質複線化(義務教育の位置付けも含めて)

 

 

164国会 衆特別委 第6回(531日)

○斉藤(鉄)委員 …それから、この義務教育に関連いたしまして、憲法二十六条には、「すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。」このように書かれております。普通教育を受けさせる義務、ここで言う普通教育というのはどういう意味でしょうか。

○田中政府参考人 ここに規定しております普通教育というものは、国民全体に対して基礎的に必要とする知識を言うものでございます。

○斉藤(鉄)委員 基礎的知識とおっしゃいましたか。保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う、これが義務教育と。先ほどの御答弁は、生きていく上で基礎的な知識を教えると。

○田中政府参考人 普通教育とは全国民に共通の一般的、基礎的な教育を言うものでございます。失礼しました。

○斉藤(鉄)委員 全国民共通の基礎的教育、必要な基礎的教育、それが普通教育であると。このように二つの、憲法の文章と今の御答弁を聞きますと、義務教育イコール普通教育、生きていく上で基礎的な教育ですからとなるんです。
 それでは、高等学校の役割というのは、高等学校も普通教育、普通科というのがございます。普通教育と職業教育の高等学校があるわけですけれども、高等学校の普通教育というのは義務教育ではありません。そのあたり、どうもしっくりすとんと来ないわけですけれども、この問題についてはちょっとまた議論したいと思いますが、では、高等学校の役割というのは何なのかという形でまず質問をさせていただきます。

○銭谷政府参考人 現在、学校教育法におきましては、高等学校は、高等普通教育及び専門教育を施すことを目的とする教育機関として位置づけられているわけでございます。
 新制高等学校発足直後は四〇%程度でございました高等学校の進学率は、現在九七%を超えておりまして、その実態はさまざまなものになっているかと存じます。高等学校自体は、義務教育の基礎の上に、これをさらに発展拡充させて、生徒がみずからのあり方や生き方を深く考え、各自の興味、関心、能力、適性、進路等に応じて選択した分野の学習を深め、将来の進路を決定させる教育段階というふうに現在は考えられるものだと思っております。
 その中で、各高等学校ごとに随分いろいろ性格が異なってきているというふうに思うわけでございます。今回、教育基本法の中で、学校教育の目的、目標といったものが新たに定められたわけでございますし、また、その教育基本法を受けた学校教育法の改正ということを今後私ども検討しなければならないわけでございますが、こういった高等学校の実態というものを踏まえつつ、高等学校の目標、目的の規定のあり方についてもよく検討していきたいというふうに考えているところでございます。

○斉藤(鉄)委員 憲法二十六条の文章、それから先ほど生涯学習局長が答えられた普通教育の意味、そして今回九年という義務教育の年限が外れたこと、そして普通教育ということが高等学校の規定の中にもある。それらを、今回の法改正を一つの契機にして全体整合性を持たせるような法体系にしていかなくてはいけないのではないかということを、今の質疑を通して感じたわけですけれども、現行下でもちょっとかなりの混乱がありますので、今回のこの法改正を、そういう意味で制度をすっきりさせる一つの契機にさせていきたいと強く感じたということを申し上げさせていただきまして、私の質問を終わります。


164国会 衆特別委 第12回(68日)

○遠藤(利)委員 …最初に、高等学校の教育についてであります。現行の基本法は、学校教育という中で義務教育だけは項目立てをしている。しかし、新しい基本法におきましては、義務教育からさらに幼児教育、大学、こういうふうな形で項目立てをしているわけでありますが、高等学校だけが実は規定をされていないわけであります。もちろん特殊教育とかいろいろありますが、押しなべて高等学校の教育はと。
 高等学校の教育とは何だ。後期普通教育をするんだと言われますが、後期普通教育というのは何だろう。そしてあわせて専門教育をやる。いま一つはっきりしないといいますか、すっきりしないといいますか、議論の中では、普通教育という名前を取ったらいいんじゃないか、そんな議論さえもあったと聞いております。
 そこで、最初に大臣にお伺いしたいんですが、高等学校というのは何を学ぶんだろうか、そして高等学校をどのようにこれから位置づけをしていかれるのか、そして同時に、新しく制定される振興基本計画ではどのように扱っていくのか、まず最初にお伺いをしたいと思います。

○小坂国務大臣 遠藤委員御指摘なさいましたけれども、実は私も、大臣就任以前に、保利先生から高等学校というものの位置づけについて御高説を賜ったことがございます。それを思い出しながら今答弁をさせていただきたいと思うんです。
 現行の学校教育法におきまして、高等学校は、高等普通教育及び専門教育を施すことを目的とする教育機関として位置づけられているわけでございます。学校教育法の第四十一条に、「高等学校は、中学校における教育の基礎の上に、心身の発達に応じて、高等普通教育及び専門教育を施すことを目的とする。」と規定をされているところでございます。
 新制高等学校が発足した直後の昭和二十五年、四二%だった高等学校への進学率は、現在九七%を超えておりまして、また、そこに通っていらっしゃる生徒の皆さんの社会的な環境といいますか、通学の態様といいますか、この実態はさまざまなものになっておりまして、多様化した生徒の皆さんの実態に対応するために、文部科学省としては、単位制高校や総合学科の創設、中高一貫教育の推進、大学との連携の取り組み等を推進しているところでございます。
 そういった中で、現在、高等学校は、義務教育の基礎の上に、これをさらに発展充実させて、生徒にみずからのあり方や生き方を深く考えさせるとともに、将来の大学進学やあるいは職業選択の準備、こういったものを含めまして、各自の興味、関心、そして能力、適性、進路等に応じて、選択した分野の学習を深めさせて将来の進路を決定させる役割を担っている、このように考えているわけでございます。
 今後、教育基本法改正を受けました学校教育法の見直しや、あるいは、御指摘のございました教育振興基本計画の策定の検討の中で、このような高等学校の多様化の実態を踏まえつつ、高等学校のあり方についてしっかりと検討してまいりたいと存じます。


 

164国会 衆特別委 第12回(68日)

○保利委員 …ところで、小中一貫あるいは義務教育一貫ということを論じてまいりますと、今度は中等教育という言葉を文部科学省は使っておる。中学校は第一段階の中等教育である、高等学校は後期の中等教育であるということで、前期、後期と分けて中等教育という言葉が使われているわけであります。
 ところが、中等教育の中身というのは一体何なんだ。これもやはり初中局長ですかね、お答えをいただきたいと思います。

○銭谷政府参考人 通常は、中等教育という用語は国際的に広く使われているわけでございますけれども、学校教育段階を初等教育、中等教育、高等教育というふうに三段階に分けた場合の中等教育という意味で使われておりまして、日本では中学校と高等学校段階の教育を総称する用語として使われております。
 中等教育とは何かということでございますけれども、初等教育の基礎の上にそれぞれの個性、進路に応じた教育を展開し、一方、その後に控える高等教育のための準備教育という性格もあわせ有する教育段階と一般的には言われております。

○保利委員 中等教育という概念は、教育の問題を論ずる場合に重要な概念であるかそうでないか、このことについて文部科学大臣の御所見をちょっと伺いたい。

○小坂国務大臣 これは先ほども話に出ておりました、高等学校というものをどう位置づけるかということとも関係してくると思います。
 今局長が答弁させていただきましたように、中等教育が中学校及び高等学校段階の教育を総称するというのは、ではどこに書いてあるのかということになりますと、釈迦に説法でございますけれども、文部科学省設置法の四条七号におきまして、中学校、高等学校、中等教育学校、盲学校、聾学校、養護学校の中学部、高等部における教育を指す用語ということになっておりますので、ここで規定をされている以外には、中学校及び高等学校段階の教育を総称して中等教育という、こういう法律的な位置づけが明確にはなっていないと思うわけでございます。平成十一年度から、学校教育法の改正によりまして、中学校における教育と高等学校を一貫した中等教育学校という形で中高一貫教育が導入をされております。
 そういった意味で、この中等教育という言葉が、高等学校をそこに含むのか含まないのか、高等学校というものをどちらに、高等教育の前段階として位置づけるのか、中等教育の後期として位置づけるのか、これは非常に大きな違いが出てくると思っております。
 高等学校というのが人生の進路を定める重要な役割を担っているということも考えますと、職業的な訓練の場、あるいはそういった大学への接続としての高等学校の位置づけ、これを踏まえた上で中等教育という言葉をもう少しはっきりとさせる必要があるかな、こう考えております。


○保利委員 私は、先ほど申し上げました自分の経験から考えてみまして、中等教育というのは非常に重要だなという感触を持っているわけであります。
 と申しますのは、中等教育というのは、恐らく十三歳から十八歳ぐらいまでだと思います。昔の中学校に入りますと、小学校を出て旧制中学に入りますと、先輩はひげが生えかかったお兄さん、おじさんと言ってもいいような中学の五年生がいる。そこへ小学校から入っていった坊やは、おお、すごいな、すごい先輩だなということで畏敬の念を持って上級生を見るというようなことで、人生の、何というのか、人間が形成される重要な時期にそういう経験をして、自分もいよいよ大人の仲間入りをしたんだという認識を持つというようなことを考えてこの中等学校制度というのができたんだろうと、自分ではそういうふうに勝手に思っているわけですけれども。
 そういう意味でいうと、中等学校というのは非常に重要じゃないかなと僕は思うんですが、しかし、今の制度上を見ますと、中等教育というのが中学校と高等学校に分かれている。何を中等教育という中で教えるのか、どういうプロセスで何を教えていくのかということの理念がないというような気がしてしようがないのであります。
 それは、戦争が済んですぐ、旧制中学を分解して、片っ方は新制中学にし、片っ方は新制高校にした、そういう非常に大手術をやりましたから、その残渣というのは今もずっと残っているんじゃないかな。そうすると、それを理念的にどう整理していくかというのは、まさに立法府でよく考えるべきことであって、ほかのどこもやはり考えてくれないんじゃないかなという気がして仕方ありません。役所というのはやはり立法府でつくった法律にある意味でいうと縛られて行政をするわけですから、その縛られている法律そのものを基本的に変えようという構想はなかなか出てこない。やはり立法府の中で議論をする中で、これはどういうふうに将来のためにしていくのかというようなことが非常に大事なんじゃないかなと思います。
 そこで、それをずっと突き詰めていきますと、先ほど遠藤委員もおっしゃっていましたけれども、あるいは初中局長からもお話がありましたが、高等学校というものの位置づけがどうも明白ではないというふうなお話があったやに伺いました。
 高等学校の処理の仕方というのは、処理の仕方と言っては失礼ですが、に対応するやり方としては、私は二つのことが考えられる。それは、高等学校を大学に入るための一つの準備期間である、大学予科という言葉が昔ありまして、私は内容はよくわかりませんが、大学に行って勉強をするための素地を高等学校できちんとつくる。したがって、大学では今教養課程というのがあるんだろうと思いますけれども、教養課程というのは高等学校の段階で全部済ませておく。そして、大学に入ったら、きちんと大学らしい専門教育をやっていかなきゃいけないんだろうと思っておりますが、そういうことについては私もいろいろ議論をしております。
 そこで、高等教育局長おいでですから、今のような考え方に対してどういう御所見をお持ちか、ちょっとお聞かせください。

○石川政府参考人 お答えを申し上げます。
 高等学校における教育を、大学の教育の準備期間というような位置づけ、そして、今大学で行われております教養教育もそういったところで充実をさせていくというようなお話かというふうに受けとめておりますけれども、大学につきましては、学校教育法上、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究する場として規定をされておるわけでございまして、また、今回の教育基本法の改正案におきましても、高い教養と専門的能力を培う場として規定をされております。
 そしてまた、大学におきます教養教育というものは、従来より、高等学校において培った基礎的な素養の上に、広い視野を持って社会のさまざまな分野で活躍し得る基礎的な能力を身につけさせるものというような一つ位置づけがありまして、それと同時に、この教養教育というものが、専門教育の基盤を培うとともに、これと一体となって社会を支える人材としてふさわしい資質を養うために不可欠なものとして観念をされているというようなことで、基本的には、大学教育として実施されることが必要なものとして考えられてきておるというようなこともございます。
 そういった意味では、教養教育、大学で行われるそういった教育というのは、引き続き必要な要素として充実をしていくべきもの、このように考えているところでございます。

○保利委員 私は、今の御説明には余り賛同いたしません。つまり、現状肯定なんですね。これはぐあいが悪いから変えていこうという発想は役所にはなかなかない。性質上、ないものでしょう。だから、必要なものは必要ですというふうな言い方しかできないんでしょうけれども、私は、高等学校を充実させる意味で、大学の教養課程でやっているものは高等学校で済ませなさい、そして、大学に入ったら本当に専門的な領域で勉強をしていく。その間には、多少社会常識的なものも取り込んで勉強しなきゃいけないことはわかりますけれども、しかし、一般論としての教養課程は高等学校で済ます、そう言えば高等学校の存在価値が随分出てくるんじゃないかなと私は思います。
 同時に、専門高等学校、例えば工業高校とか農業高校とかというものについては、三年間の履修期間では足りませんね。やはり高等専門学校のような五年制のところにそれは直して、これは県立の高校がほとんどでしょうから県立の高等専門学校にして、そして五年間で社会で働く方々を養成していく、そういう一つの実務教育になりますね。手に職をつけますね。それがニート対策の一つになるんじゃないかなという感じを持っているわけであります。ここら辺は制度の大改革ですからなかなか難しいことだと思いますけれども、学校教育法を再検討する場合には、そういうところまで含めて再検討をしていただきたいなと思うのであります。

 

164国会 衆特別委 第12回(68日)

○保利委員 …私は、この教育基本法の中で一つの大きな骨格になるものは、やはり義務教育の扱いだろうと思うんです。これは文部科学省に伺いますが、日本では、義務教育制度を施行していて、やっていて、六・三制のもとに義務教育が運営されていますね。学校教育法を見ると、小学校の目標というのも八項目きちんと例示してあります、中学校の目標も三項目書いてあるわけであります。義務教育では何をどう達成させるかという具体的目標というのはどこにどう書いてあるんでしょうか、あるいは書いていないんでしょうか。それをまず、これは初中局長かな、お答えを願いたいと思います。

○銭谷政府参考人 現在の学校教育法におきましては、ただいま先生からお話がございましたように、小学校、中学校、それぞれにつきまして、その学校の目的と教育の目標を規定いたしておりまして、学校教育法の中では、義務教育全体の目的、目標ということについては規定をしていないという状況でございます。

○保利委員 具体的に義務教育の目標というのは実はないんです。外国から聞かれたときに、日本の義務教育制度はすばらしいと言われるけれども、それはどういう目標を立ててやっていますかと聞かれたら、ありませんと答えなきゃならない。これはおかしいと私は実は思うわけであります。
 ところが、学校教育法の中で、小学校、中学校、目標がそれぞれ書いてある。私は、長いことこのテーマは、文部科学省にちょっと研究してみろということを言っておるんですが、答えはなかなか出てこないというのが実情であります。いわゆる六・三制という既成の制度を固定化して考えているのではないかなと。
 このごろ、小中一貫という言葉がありますが、小中一貫は確かにそのとおりですが、義務教育を一貫して考えるという考え方が教育社会の中にあっていいんじゃないかという感じが私はするのであります。ただ、運営上はいろいろあるでしょうから、前期、後期に分けたっていいし、いろいろやり方はあるでしょうけれども、考え方としては、義務教育制度というのを一本に考えて、そしてその目標をきちんと設定して、その目標に到達するようなカリキュラムをきちんと組んでいく。
 例えば、最近は英語の問題なんかいろいろありますけれども、小学校四年段階から始めて、六年になって一区切りついて、今度は別の学校へ行って別の先生から英語を習うという、それはちょっと、効率的に言えば余りよくないんじゃないかなという感じがしてなりません。そうすると六・三制否定論かということになりますが、そこまではなかなか行かないんですけれども。
 私は、日本の義務教育制度を効率的に運用するとすれば、やはり義務教育の目標を明示して、それに向かってカリキュラムを設立していく、そのときに小中の壁が邪魔になるということはあるでしょう、ここをどう考えたらいいかということを研究していくのが文部科学省にかけられた大きな課題だと思います。このことについて文部科学大臣はどんなふうな御感想をお持ちなのか、ちょっとお聞かせいただきたい。

○小坂国務大臣 委員御指摘の問題意識は、私も共有できるような気がいたします。
 委員ほど詳しくはございませんけれども、改正案の五条第二項において義務教育の目的を新たに規定はいたしております。しかし、それを具体の中学校の目標、小学校の目標という形で学習指導要領に落としております今日の表現の仕方というのは、やはりもっと柔軟性を持って、一つの目標を、段階的にやるものではなくて、その全体を俯瞰した上で、それぞれの状況に応じて指導者の判断においてそれを指導していくべき問題なんだろうと思うんですね。その意味からすれば、小学校、中学校の目標というのは統合的にとらえて、その中で到達目標として規定していくのが一つの考え方としてあるだろうと思っております。
 中央教育審議会の「新しい時代の義務教育を創造する」という答申を、昨年十月二十六日、いただきました。私、就任して直後それを見せていただきましたが、国は義務教育の到達目標を明確にし、その質の保証、向上を図ることが必要であると提言されております。
 本法案の成立後、学校教育法等の関係法令の見直しの中でしっかりと検討させていただきたい、このように思っております。