0860義務教育の目的の法定の効果

 

 

164国会 衆特別委 第12回(68日)

○保利委員 …私は、この教育基本法の中で一つの大きな骨格になるものは、やはり義務教育の扱いだろうと思うんです。これは文部科学省に伺いますが、日本では、義務教育制度を施行していて、やっていて、六・三制のもとに義務教育が運営されていますね。学校教育法を見ると、小学校の目標というのも八項目きちんと例示してあります、中学校の目標も三項目書いてあるわけであります。義務教育では何をどう達成させるかという具体的目標というのはどこにどう書いてあるんでしょうか、あるいは書いていないんでしょうか。それをまず、これは初中局長かな、お答えを願いたいと思います。

○銭谷政府参考人 現在の学校教育法におきましては、ただいま先生からお話がございましたように、小学校、中学校、それぞれにつきまして、その学校の目的と教育の目標を規定いたしておりまして、学校教育法の中では、義務教育全体の目的、目標ということについては規定をしていないという状況でございます。

○保利委員 具体的に義務教育の目標というのは実はないんです。外国から聞かれたときに、日本の義務教育制度はすばらしいと言われるけれども、それはどういう目標を立ててやっていますかと聞かれたら、ありませんと答えなきゃならない。これはおかしいと私は実は思うわけであります。
 ところが、学校教育法の中で、小学校、中学校、目標がそれぞれ書いてある。私は、長いことこのテーマは、文部科学省にちょっと研究してみろということを言っておるんですが、答えはなかなか出てこないというのが実情であります。いわゆる六・三制という既成の制度を固定化して考えているのではないかなと。
 このごろ、小中一貫という言葉がありますが、小中一貫は確かにそのとおりですが、義務教育を一貫して考えるという考え方が教育社会の中にあっていいんじゃないかという感じが私はするのであります。ただ、運営上はいろいろあるでしょうから、前期、後期に分けたっていいし、いろいろやり方はあるでしょうけれども、考え方としては、義務教育制度というのを一本に考えて、そしてその目標をきちんと設定して、その目標に到達するようなカリキュラムをきちんと組んでいく。
 例えば、最近は英語の問題なんかいろいろありますけれども、小学校四年段階から始めて、六年になって一区切りついて、今度は別の学校へ行って別の先生から英語を習うという、それはちょっと、効率的に言えば余りよくないんじゃないかなという感じがしてなりません。そうすると六・三制否定論かということになりますが、そこまではなかなか行かないんですけれども。
 私は、日本の義務教育制度を効率的に運用するとすれば、やはり義務教育の目標を明示して、それに向かってカリキュラムを設立していく、そのときに小中の壁が邪魔になるということはあるでしょう、ここをどう考えたらいいかということを研究していくのが文部科学省にかけられた大きな課題だと思います。このことについて文部科学大臣はどんなふうな御感想をお持ちなのか、ちょっとお聞かせいただきたい。

○小坂国務大臣 委員御指摘の問題意識は、私も共有できるような気がいたします。
 委員ほど詳しくはございませんけれども、改正案の五条第二項において義務教育の目的を新たに規定はいたしております。しかし、それを具体の中学校の目標、小学校の目標という形で学習指導要領に落としております今日の表現の仕方というのは、やはりもっと柔軟性を持って、一つの目標を、段階的にやるものではなくて、その全体を俯瞰した上で、それぞれの状況に応じて指導者の判断においてそれを指導していくべき問題なんだろうと思うんですね。その意味からすれば、小学校、中学校の目標というのは統合的にとらえて、その中で到達目標として規定していくのが一つの考え方としてあるだろうと思っております。
 中央教育審議会の「新しい時代の義務教育を創造する」という答申を、昨年十月二十六日、いただきました。私、就任して直後それを見せていただきましたが、国は義務教育の到達目標を明確にし、その質の保証、向上を図ることが必要であると提言されております。
 本法案の成立後、学校教育法等の関係法令の見直しの中でしっかりと検討させていただきたい、このように思っております。

 

164国会 衆特別委 第6回(531日)

○斉藤(鉄)委員 …次に、第五条、義務教育について質問をさせていただきます。
 現行の第四条は、本当に簡単にしか書いていないわけです。「国民は、その保護する子女に、九年の普通教育を受けさせる義務を負う。」「国又は地方公共団体の設置する学校における義務教育については、授業料は、これを徴収しない。」ということだけが書いてございますが、今回、政府案におきましても民主党案におきましても、では義務教育で何をやるのかということが書かれている。これは、私は、ぜひ今回の改正の一つの大きなポイントで、なさねばならないことだと思っております。
 この新しい教育基本法の案に義務教育の目的が規定されました。この規定を受けて、今後関係法令の整備が必要である、このように考えますが、大臣の御所見を伺います。

○小坂国務大臣 御指摘のとおり、今回の改定によりまして、「義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。」このようにされまして、中央教育審議会答申にありました「新しい時代の義務教育を創造する」というこのタイトルのもとに、国は、義務教育の到達目標を明確にし、その質の保証、向上を図ることが必要である、こういう提言をいただいたところでございまして、本法案において、教育の目標や義務教育の目的が規定されることを踏まえまして、今後、学校教育法等の関係法令の見直しに着手をし、その内容の検討を進めてまいりたいと存じます。