0380「真理と正義の希求」への修正の意義

 

 

164国会 衆特別委 第8回(62日)

○笠井委員 だめです、そういうごまかしは。だって、のっとりという話と憲法の理想を実現するという話は全然違うんです。だから、これを削ったという意味は本当に重大だと私は思います。
 さらに法案の前文でいきますと、「真理と平和を希求する人間の育成」ということで、これを「真理と正義を希求し、」というふうに変えていらっしゃいます。真理と平和を希求する人間の育成というのは教育基本法の核心的内容の一つだと思うんです。なぜ平和を削って正義に変えたんですか。

○田中政府参考人 前文の御指摘の部分は、日本国民が願う理想として掲げておる、民主的で文化的な国家の発展と、世界の平和と人類の福祉の向上を実現するため推進すべき教育像を示しておるところでございまして、我が国におきましては、知徳体の調和のとれた人間、公共の精神をたっとび、国家、社会の形成に主体的に参画する日本人、そして我が国の伝統と文化を基盤として国際社会に生きる日本人の育成が重要というふうに考えておるわけでございまして、こういう観点から、公共の精神の尊重、それから豊かな人間性と創造性、そして伝統と文化を新たに規定しておるところでございます。
 そして、「真理と平和」を「真理と正義」としておるではないかという御指摘でございますけれども、我が国や世界の平和に貢献することは極めて重要なことでございまして、憲法の平和主義の理念が教育を通じて実現されることは非常に大事だと考えておるわけでございます。
 こういう観点から、前文で、日本国民が願う理想として、世界の平和に貢献することを引き続き規定しておるところでございますし、第一条の教育の目的におきましては、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた国民の育成を規定しておるところでございます。さらに、今回、本法案第二条第五号におきましても、国際社会の平和と発展に寄与する態度というものを規定しておるところでございます。
 また、人格の完成、すなわち知徳体の……(笠井委員「そんなこと聞いてないです。平和を削った理由を聞いているんだから、余計なことを言うのはやめてください」と呼ぶ)はい。
 それで、今、「真理と正義」につきましても、現行法第一条に規定しております「真理と正義」を前文で規定させていただいたところでございます。

○笠井委員 いろんなことを言われましたけれども、要するに、平和を削ったということをちゃんと正面から、なぜ削ったかという、何一つ答えがないんですよ。世界の平和のために貢献するということを言っているからということじゃなくて、もともと現行法は、人間の育成を期する上で、どういう人間の育成を期するかということで「真理と平和」というふうに言っているんです。そこのところが大事なんで、そこから平和を取ったと。平和は大事と言いながら、取っているという問題なんですよ。さっきの憲法もそうですが、今の平和も取ると。
 大臣、こういう問題について、どういうふうにお考えですか。

○小坂国務大臣 前文の役割、それから条文の中で規定すること、それぞれの書き方の問題はありますけれども、私どもは、今回の教育基本法において、現行法ですぐれた理念としての平和主義、そして真理と正義を希求する姿勢、こういったものはあくまでも尊重し、それを受け継ぐ形で、今局長の方から答弁申し上げたように、「われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成」、これについては、私どもの前文の中にも「真理と正義を希求し、公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成」と書き、なおかつ、第二条の中で、先ほど申し上げたように、世界の平和と発展に貢献する態度を養って、そういう人間を育成していくということを貫いているわけでございまして、そのように御理解をいただきたいと思っております。

○笠井委員 大事な問題だったら、これは変える必要ないんですよ。
 制定時の教育刷新委員会の議事録を私も読みました。務台理作氏がこう言っています。「誤りを二度と繰返さないような保障を感ぜしめるような言葉が、矢張り欲しい。」「憲法に示されたような戦争を放棄し、人類の平和を求めるというようなことが、矢張り教育の理念の中に置かれてもよいのではないだろうか。軍国主義や極端な国家主義に二度と利用されないという決心を現わすような言葉を欲しい」「平和を求めるということに、教育の理念が立脚して行くということ。」これを提案するということで、そういう議論があって盛り込まれたということであります。
 戦争の誤りを二度と繰り返さないという当時の熱い思いが込められている。それをいとも簡単に「真理と平和」を「真理と正義」に変えて、そして、そういう人間を育成するということについてなくしてしまう。私は、そういう中に、こうした法案が憲法九条を変えていこうという流れと軌を一にしているということを感じざるを得ない、一体のものだというふうに感じております。