0290高等教育の無償制

 

 

164国会 衆特別委 第3回(524日)

○松本(剛)委員 …具体的に一つ、きょうはテレビで多くの国民の皆さんも見ておられますので、国民の負担ということで、高等教育の家計の負担の割合、これまでも国会の委員会でも取り上げてまいりました。改めてごらんをいただきたいというふうに思っておりますが、日本の親は本当に大変な苦労をしているということがよくわかると思います。
 しかも、私どもはかねてから申し上げてまいりましたが、日本も一九七九年に批准をし、六六年に国連で採択をされた国際人権規約の社会規約、A規約と言われているものの十三条、ここには、高等教育、大学ですね。ちなみに、政府提出の教育基本法は大学と書いてあって高等教育と書いてありませんから、高専とかそういうのは何か今回の教育基本法では外しておられるみたいですけれども。そこはちょっと横へ置くとして、これについて、人権規約の方で、高等教育については漸進的に、つまりだんだんと無償の方向へ持っていきなさい、こういう条項があります。
 残念ながら、日本政府は、この条項を留保、つまりそこだけいわばサインをしていないという状態であります。そもそも我々からすれば、そういう留保するかしないかということが、国会に権限があるのか内閣に権限があるのか、今内閣でおやりになっている、これが共謀罪の問題にもつながっているんじゃないかと我々は思いますが、そういった問題について留保をしている状態になっております。
 しかも、二〇〇一年に国連の委員会の方から勧告を受けていると思います。こういう高等教育の奨学金とかそういうことを一生懸命やっているからといってこれの留保を認めるという理由にはならないという趣旨の勧告を受け、二〇〇六年の六月三十日、ちょうど来月末になりますけれども、それまでにこれについて返事をするように、報告をするようにというふうに求められているはずでありますけれども、この留保、これを解除することをお考えになる気はないのか、この六月三十日、どう回答されるつもりなのか、小坂大臣に伺いたいと思います。

○小坂国務大臣 国際人権規約の高等教育無償化条項につきましては、高等学校卒業後に社会人として税金を負担される方もおられるわけでございまして、すなわち高等学校を卒業後に社会人になられる方と、学生として適正な負担をされる方との公平を図りたい。すなわち、大学へ行かれる方と働く方で、働く方は税金を納めている。しかし、この無償化条項によれば、大学へ行った方は無償になって利益を受けるということになって不公平ではないかという御指摘も出るところでございまして、留保をしているところでございます。
 また、奨学金事業や私学助成等を通じた支援に努めてまいりました結果、我が国のいわゆる高等教育、大学への進学率は先進国の中でも高い水準に達しておりまして、今後とも高等教育を受ける機会の確保について適切な施策を講ずるということを考えておりまして、この六月の際に受け入れるという形の方向性はまだ出していないところでございます。

 

164国会 衆特別委 第4回(526日)

○山口(壯)委員 …もう少し具体的なことを最後にお聞きしたいわけですけれども、きょうは順番どおりに言っていないから非常に申しわけないと思うんですけれども、高等教育の無償化のことをちょっと話をさせていただきましょうか。
 お配りさせていただいている資料の国際人権規約という、字が小さいから見にくいかもしれませんが、二ページ目の十三条「教育に対する権利」という中の二項の(b)が中等教育で、(c)が高等教育ですね。(a)は初等教育です、「義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとすること。」日本は、締結しているけれども、この(b)と(c)を留保している。(b)は中等教育、「種々の形態の中等教育(技術的及び職業的中等教育を含む。)は、すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入」、こういうことが書かれてある。(c)は高等教育、「すべての適当な方法により、特に、無償教育の漸進的な導入」ということが書かれてある。
 ただし、大臣、これはよく御存じのとおり、右側の真ん中にある第二条、締約国の実施義務というところを読んでみれば、三行目に「権利の完全な実現を漸進的に達成」、こういうふうに書かれてあるわけです。したがって、ある意味で理念法的な要素もあるわけですね。
 先日、私、大臣がなぜこれを留保したかということを聞いた場合に、これを留保している国というのは三つしかない、日本とそれからマダガスカルとルワンダですか。英仏独とか、もう全部、別に無償にしていなくても留保していないわけですね。

 だから、そういう意味で、私、これをいつまでもマダガスカルとルワンダと同じように引っ張る必要というのはないと思うんです。特にこれは、普通の予算だったら、文部科学省がつけてつけてと言うのをほかの役所が難しいですよと言う図柄があるかと思うんですけれども、これはむしろ、外務省初めほかのところは、もうどうですか、そろそろ文部科学省さんと言っている中で、文部科学省の方で一生懸命、いや、まだもうちょっと待ってくださいという話のようにもお聞きします。
 したがって、この高等教育の無償化という話は今回の教育基本法の議論の中でもある意味で関係してくるわけですけれども、大臣、政府として、この話に対して、全くどうにもならない話と考えておられるのか、あるいは、できればちょっとそろそろいろいろな違う観点も入れたいなと思っておられるのか。これはいかがでしょうか。

○小坂国務大臣 この国際人権規約の締結国でございますけれども、よく、日本とマダガスカルとルワンダだけが当該条項を留保しているとも言われますが、アメリカはこの規約全体を締結しておりません。
 また、我が国においてなぜ留保しているかということでございますけれども、高等教育すなわち大学を無償化するという形になりますと、まず、社会人として高校を卒業してから働いて税金を納めている方々がいる、一方で、大学へ行って無償で大学教育を受けられる方がいる。これはまた、無償ということは、当然税金がその原資になっているわけでございます。
 そういう意味でいうと、無償化のための財源をどのようにして賄うかという点を考えると、公平感という点で非常に難しい問題があるな。委員御自身がこの点についてどうお考えになるかは、逆質問ができるような状況なら聞きたいと思うぐらいでございまして、私としては、今後とも、奨学金制度を充実させるなどによって、私立大学等の経費助成とあわせて日本学生支援機構による奨学金事業の充実で、今御指摘のあった無償化に近づくような、大学に行きたいという人はみんなが行けるという環境づくりを整備してまいりたいと考えております。

○山口(壯)委員 大臣、ある意味で、最初から可能性をゼロとお考えになっておられるということを今御答弁で言われたわけです。

 これは不公平だというふうに言われますけれども、でも、現実に、私立大学にも二割から三割は国の補助でもってお金が入っているわけですね。そうしたら、既に私立大学ですら、行くこと、行かないことの間には、そういう大臣の言う不公平感というものは現実に今ですらあるわけですから、そういう意味では、もう既に程度の問題の話におっこちているわけです。
 あとは、二十年後、三十年後、四十年後、五十年後を見詰めて、アメリカの大学のように一年間二百万、三百万かかるような大学にしたいのか、それを奨学金だけで賄えるようなシステムがいいと思われるか、あるいは場合によっては、無償化ということも念頭に置いた大学のあり方というものを考えられるか、これは大きな分かれ道になりますから、ぜひ、大臣、これからじっくり議論する中で、この話についてもまた引き続き議論させていただきたいと思います。

 

164国会 衆特別委 第12回(68日)

○小宮山(洋)委員 …それから、高等教育の無償化につきましても、民主党案では次第に導入していくということを明記しております。国連人権規約を批准している百五十三カ国の中で高等教育の無償化条項を留保しているのは、マダガスカル、ルワンダ、日本の三カ国だけになっています。
 日本の高等教育については家計負担が六割、アメリカでは三割、ヨーロッパ諸国は平均が大体一割ぐらいで、スウェーデンは負担がないというふうなことと比べますと、著しく日本では高等教育の家計負担が高い。この所得格差が教育格差にならないようにするためにも、こうしたことの導入が必要だと思いますが、いかがでしょうか。

○小坂国務大臣 …文部科学省におきましては、私立大学等経常費補助等を通じまして、各大学における学費の軽減に努めるとともに、日本学生支援機構による奨学金事業の充実を図ってきたところでございます。無利子、有利子合わせて、貸与基準を満たす希望者のほぼ全員に貸与が実施をされております。
 また、各大学におきましては、経済的理由等によりまして就学困難な学生に対する授業料等の減免を実施しておるわけでございまして、文部科学省としては、これらに対する財政支援を行っているところでございます。
 なお、高等教育無償化の御提案につきましては、高等学校卒業後、社会人として税金を負担している勤労者、勤労をされている方との公平の観点や、また、無償化のための財源をどのように賄うか等の点を考慮いたしますと、現時点では極めて難しい問題と考えておるわけでございまして、文部科学省としては、今後とも、高等教育を受ける機会の確保について適切な施策を講じてまいりたいと考えております。