0200法案起草の経緯

 

 

164国会 衆特別委 第4回(526日)

○小坂国務大臣 今回、教育基本法改正案を提出させていただきましたのは、単に突然思いついて出したり、どこかから求められたからいきなり短期間に考えたというわけではないわけでございまして、具体的に申し上げれば、平成十三年の十一月に、中央教育審議会に、新しい時代にふさわしい教育基本法のあり方についての諮問を行ったわけでございます。
 それにさかのぼりますと、平成十二年の十二月には教育改革国民会議の報告というものがなされまして、ここでも提言をされております。ただ、私ども文部科学省としては、文部大臣が中央教育審議会に諮問するという形で十三年十一月にスタートし、以降四十回以上にわたります議論をいただいて、またその間には、一日中教審など、国民の意見を聞く機会も設けてまいったわけでございます。
 そして、平成十五年三月に答申をいただいてからは、教育基本法改正に向けた準備を進めるとともに、全国各地において教育改革フォーラムあるいは教育改革タウンミーティングを開催し、さまざまな手段を通じて国民や関係の皆様の理解や議論を深めつつ、教育基本法の改正についての取り組みを進めてまいったわけでございまして、また同時に、与党におきましては、平成十五年五月以来、与党教育基本法改正に関する協議会及び検討会を設けていただきまして、精力的な検討が進められ、本年四月には、教育基本法に盛り込むべき項目と内容についての最終報告がまとめられた、このように承知をいたしております。
 こうした五年以上にもわたるさまざまな取り組みを踏まえまして、今回の教育基本法の改正案を提出させていただく段取りになったわけでございます。

○笠議員 私ども民主党でこれまでこの教育基本法の問題についてどういう形で議論を行ってきたのか、また、今回、日本国教育基本法案提出に至りました経緯を簡単に説明させていただきたいと思います。
 民主党では、平成十二年三月に教育基本問題調査会を設置して、新たな時代における新たな人づくりのあり方について、教育現場の抱えている問題を踏まえつつ議論を重ねてまいりました。同時に、先ほどありましたように、教育国民会議や中教審といった政府の中における教育基本法をめぐる議論を注視しつつ、教育基本法のあり方についても党内議論を積み重ねてきたわけでございます。
 そして、こうした議論を踏まえまして、具体的には一昨年に、鳩山由紀夫現幹事長が会長を務めるこの教育基本問題調査会になりまして、新しい教育基本法のあり方について具体的な検討に今度は入らせていただきました。このときには、自由党が二〇〇三年でしたか、通常国会に提出をした人づくり基本法案もまたベースに、参考にしながらの議論を重ねたわけでございます。そして、十一月からは調査会のもとに作業部会を発足させまして、各方面の皆様との意見交換も行いながら精力的に議論を行い、この結果を去年の四月七日に報告書として取りまとめ、国民の皆様に発表させていただいた次第でございます。
 そして、この報告書、「新しい教育基本法の制定に向けて」と題しておりますけれども、党内でもさまざまな議論がありまして、両論併記の部分もたくさんあったわけでございます。しかしながら、この段階であえてこれを広く世に問うことにいたしましたのは、まさに教育基本法の問題は教育の根本にかかわる問題でありますから、国民的な議論を喚起することが必要だという考えからです。
 そして私どもは、この教育基本法、当然ながらこの委員会でもさまざま議論が行われておりますけれども、憲法に準ずる大変重要な法案であるということで、衆参両院に調査会などを設置して、国会の場でしっかりと調査検討を行うように求めてまいりました。残念ながら、この間、そうした場は設置されず、与党内で進められている議論についても、一部報道で報じられるもの以外にはその過程やあるいは具体的な中身についても知ることができませんでした。
 そして今回、大型連休、ゴールデンウイーク前に突然政府改正案が国会に提出をされたわけで、こうした中で私どもは、先月二十日に、調査会のもとに、参議院議員である西岡元文部大臣を座長とする教育基本法に関する検討会を設置いたしまして、そして党内の全議員に呼びかけて、またさらには、出席できない議員にはそれぞれ別途意見を聞くなどいたしまして、この報告書をもとにして連日集中討議を行ってきたわけでございます。
 議論の中では、いわゆる愛国心問題などをめぐって激しい議論も交わされましたけれども、多くの議員の出席のもと、今の教育の現状を改善するための前向きな議論が展開され、最終的に今月の十五日に日本国教育基本法案の要綱がまとまり、その後、法制局と法案化の作業を進め、今週二十三日に衆議院に提出をさせていただいた次第でございます。

 

164国会 衆特別委 第6回(531日)

○石井(郁)委員 それで、具体的に、内容に入ってお尋ねをしたいと思います。
 昨日の参考人の質疑でも一定出されましたけれども、中教審答申とそれから今回の法案との間には、幾つか違いがございます。そういう意味でも、なぜこういう法案になったのかということを私たちは知る必要があるわけですね。
 中教審には、現行の教育基本法を貫く個人の尊厳、人格の完成、平和的な国家及び社会の形成者などの理念というのは、憲法の精神にのっとった普遍的なものとして今後とも大切にしていくとか、また、今日極めて重要と考えられる以下のような教育の理念や原則を明確にするため教育基本法を改正することというようなことになっておりまして、つまり、現教育基本法をベースにして、私たちはこれをいわば部分改定だというふうに受けとめたわけですね。
 ところが、今回は、いわば総改定だ、全面改定というふうになっているわけで、この点でも、やはりどういう審議でこういうふうになったのかというのは御説明いただかなきゃいけないと思うんですが、いかがですか。

○小坂国務大臣 法令について改正を行う場合には、その改正部分が広範囲にわたり、かつ規定の追加や削除、移動が大幅に行われる場合には、一部改正の形式をとらずに、法令の全部改正という場合が多いわけでございます。
 教育基本法につきましては、昭和二十二年の制定以来、一度も改正が行われておりませんで、今回の改正におきましては、前文を初め改正部分が広範囲にわたりまして、また規定の追加等が大幅に行われることから、全面的に改めるというふうにしたわけでございます。
 なお、中央教育審議会答申におきましては、具体的な改正方式についての提言はいただいていないところでございます。そういった面から、今回の全部改正ということの御理解を賜りたいと存じます。

○石井(郁)委員 中教審のことですけれども、確かに条文立てということまではしていなかったというふうに思うんですね。それを一点確認をさせていただきたいと思います。しかし、結果として出された案、検討会の案というのは、前文と十八条立てということになっておりますので、どういう審議を経て、今多少お話しいただきましたけれども、この十八条立てになったのか。その審議の経過、そこがまだ明確になっていないというふうに思うんですね。
 そういうプロセス、例えば、そこにはいろいろな議論がやはりあっただろう、教育ですから、やはりそういう議論を経てこういう結論に至ったという部分があると思うんですね。それがまた、私たちも、国会審議、また国民の皆さんに説明する上でも大変大事なところだというふうに思いますので、どういう議論でこの十八条立てということになったんですかということを重ねてお聞かせください。

○小坂国務大臣 今回の改正に当たりましては、中教審答申、そしてまた与党における最終報告、またその前の国民会議の報告、こういったものを全体的に配慮して、そういったものの中から私どもとしてこの法案の条文立てを行い、提出したわけでございます。
 したがいまして、私どもとして必要な条項を立ててまいりますと、最終的に十八条という条文立てになったということでございます。

○石井(郁)委員 中教審の場合、義務教育の年限についてですけれども、この義務教育の九年間の規定は引き続き規定していくということが適当だというふうにあったかと思うんですね。ところが、今回、それが取り払われています。それから、幼児教育についても、中教審では全く議論されていませんでした。この点も、どういう議論を経て今回の条文立て、そして義務教育の年限を取り払ったのか、幼児教育を加えたのかということはいかがですか。

○小坂国務大臣 中教審答申との違いを述べられましたけれども、昨日の参考人質疑におきまして、鳥居中教審会長は、九年の年限を削除したことについて、自分もこれを事前に知っていたわけではないけれども、これを見てみて、これは適切だ、こう考えたという答弁といいますか、意見を述べておられます。
 教育の年限につきましては、今回の法案においては規定せずに、将来における延長の可能性も視野に入れつつ、その手続が柔軟に行えるように学校教育法にゆだねることとしたわけでございます。
 また、幼児期の教育につきましては、心身の健やかな成長を促す上で重要な意義を有することにかんがみまして、家庭、幼稚園等の施設、地域社会における幼児期の教育の重要性を規定するとともに、国及び地方公共団体がその振興に努めなければならない旨を規定することとしたものでございます。
 なお、これらは、教育基本法改正に関する中教審答申には必ずしも明示されてはおりませんけれども、その後の中教審答申や、この教育基本法改正に関する与党協議会の最終報告などを踏まえて、このような規定としたものでございます。

○石井(郁)委員 今の御答弁を伺っても、結果としてというか、こういう結論です、その結論はこういうことですということはおっしゃったわけですけれども、お聞きしていますのは、それにはやはり相当な議論があっただろう、だから与党検討会も三年間かけてこられたわけでしょう、その議論が見えないんですよね。そこには、やはり賛否両論があったり、あるいはまた、賛成でもいろいろな理由づけがあったりするでしょう。それが全く示されないんですよ。結論だけが押しつけられている。
 それは、私は、国民の方にしたらもっと深刻だと思うんですね。だって、中教審答申は三年前ですけれども、二年前に与党の中間報告案というのが出されました。その後、今日までというのは全くのブラックボックスです。そして四月、突然この法案概要として示されて、四月の末、法案提出ということになりました。だから、国会も国民もこの法案についてはそれまで全くわからない。しかも中教審とは違うものが随分入っている、こういうことですから、それはどういう議論でそうなったのかというのは、私は、文科省が説明責任を果たすべきだというふうに思うんですね。そうしなければ、余りにも国会軽視でもありますし、また、国民に対する説明責任を果たすことにもならないというふうに思うんです。その意味で、私は、到底今のような御答弁だけでは満足できないわけですね。
 教育刷新委員会では何しろこれだけの議事録が残る話ですから、戦後初めてのいわば大改定のときに、ただ結論だけおっしゃっても、それでよしとするわけにはいかない。どういう議論があったのかということは、徹底して、議事録として、あるいはできる限り国会に開示されるべきだというふうに思います。
 この点では、政府提出ということでございますので、きょうお越しいただいている官房長官にも、通告はしておりませんけれども、一言、こういう事態をどのようにお考えになっていらっしゃるのか、お尋ねしたいと思います。

○安倍国務大臣 私も二年前幹事長として与党の協議に参加をしていたこともあるわけでありますが、会を重ね、極めて広く深く議論をしていた、このように思っております。
 これは与党での協議でございますから、政府として、その中身を出せとか議事録を出せと言う立場ではないというふうに考えております。

○石井(郁)委員 私、ありがとうございますとあえて言いたいんですけれども、広く深く議論されたんだったら、やはりそれはぜひお示しください。それは文科省がお入りになってされているんですから、それは当然審議に当たって示していただきたいと思うんですね。それは申し上げておきます。
 それで、きょうは猪口大臣にもお尋ねしたいと思います。
 やはり中教審との関連でございますけれども、中教審答申では、新たに規定する理念として、男女共同参画社会への寄与というのを挙げられておりました。ところが、政府提案の法案にはその文言はなく、男女の平等、公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参加し、その発展に寄与する態度を養うということになっております。
 この男女共同参画社会への寄与ということが男女平等ということに置きかえられただけなのかどうか、なぜそうなったのか、その議論の経緯をお聞きでしょうか。

○猪口国務大臣 石井先生にお答え申し上げたいと思います。

 まず、男女の平等という表現ですけれども、これは非常に重要、そして非常に積極的な趣旨で規定したものでございます。政府提出の法案におきまして、第二条第三項、これはまず正義と責任、あるいは自他の敬愛と協力、あるいは先生もおっしゃってくださいました、主体的に社会の形成に参画、このような態度とあわせて、男女の平等を重んずる態度、そういう表現にしております。ですから、これは私としては非常に積極的な内容と考えております。
 言うまでもなく、男女共同参画社会の実現が求められていて、その観点も踏まえていると考えております。大変に積極的かつわかりやすく重要な表現、男女の平等でございます。