0040低学力、理科離れ

 

 

164国会 衆特別委 第8回(62日)

○川内委員 学力問題についてどのような認識を持っているのか?

 

○小坂国務大臣 理数および読解力の低下がある

 

○川内委員 今、文部科学大臣から、義務教育の中においては学力の問題がある、それは具体的に言うと理数系の力が弱まっている、そして読解力についても低下傾向にあるということが政府の課題として示されました。
 では、その原因は、理数系の力が低下をしてきていること、あるいは読解力が低下をしてきていることの原因は何だというふうに認識をされていらっしゃいますか。

○小坂国務大臣 私は、その一番もとは、好奇心という、みずから学ぶ力を育成するための環境が変わってきたということにあるように思っております。…理数の力を育成するというためには、やはり実験とか体験的な教育をもっと身近に取り入れて、好奇心を満たす、そしてかき立てる教育環境というものをつくり出して、そして、子供たち、児童生徒のみずから学ぶ力を引き出す努力が必要だ、こうも考えております。

○川内委員 …では、好奇心がはぐくまれない環境になってきたこと、その好奇心がはぐくまれない環境というのがいかなる環境なのかもよくわからないですけれども、そのことが理数系離れを、理数系の成績の低下を招いているのだという科学的なデータ、根拠というものはあるんですか。

○小坂国務大臣 私はできれば、質疑の充実のためにも、細部にわたる御質問の部分だけでも政府委員答弁を認めていただきたいと思いますが、そういう御指名ではないので、私から答弁をさせていただきます。
 中央教育審議会の教育課程部会等を初めといたしまして、専門の先生方が、しっかりと科学的な見地も踏まえまして議論をしていただいております。残念ながら、私はそのすべてを記憶しているわけではございません。また、そのすべてが資料としてここに提示をされているわけでもございませんので、その御質問の意向は、こういう細部にわたるものであれば事前に私もそれなりに準備をしたのでございますが、残念ながら、今できる範囲内で補充をしながら答弁をさせていただきます。
 まず、生涯学習の到達度調査、いわゆるOECD・PISA調査、二〇〇三年実施の分でございますが、その中のアンケート調査の部分で、学ぶ意欲、その中での数学で学ぶ内容に興味がある生徒、こういう項目でいいますと、日本は三二・五%、OECD平均で五三・一%。すなわち、数学で学ぶ内容に興味があるという学生が割合としては日本の方が少ない。数学、理科に対する意識。勉強は楽しいと思う。数学では、日本の中学校で三九%、国際平均は六五%。理科においては、日本の中学校が五九%、国際平均では七七%。したがって、勉強は楽しいと思うというのは、数学、理科においても、日本は、OECDあるいは国際平均から見て低い。
 同じような意味で、得意な教科であるという中で、数学と理科を選んだそれぞれの生徒の割合も、国際平均五四%に対して日本が三九%の数学、また、国際平均五四%に対して四九%の理科、いずれも日本の方が低くなっている。
 このような状況から、全体の学力低下ということも言われますが、とりわけ読解力、それから数学、理科に対する勉強の意欲、そして態度という点で、これはアティテュードという形になっているわけですけれども、低下をしている。このような認識を数字として示されております。

○川内委員 …文部大臣、ここで一つはっきりしたのは、理数系の力が弱まっているという現象に対する原因は、最初に文部大臣がおっしゃった、好奇心がはぐくまれない環境になってきているということよりは、統計的な数字で出ているのは、学ぶ意欲が他国に比べて低い。その原因は、理数系に対する学ぶ意欲が低くなってきているということがその原因であると思うんですよ、データに出ているのは。学ぶ意欲が低くなってきている。
 では、その学ぶ意欲を高めていくことが、問題解決のための第一歩であるというふうに思いますが、文部科学省としては、子供たちの理数系の力が低下している、読解力が低下しているということに関して、どのような対処方針を持ち、どのような法律をどのように改正することによって意欲を持たせようとしているのかということについて、教えていただきたいと思います。

○小坂国務大臣 川内委員もわかっていらっしゃって言っているんだと思いますが、私は決して細かいことと言ったわけじゃなくて、細かいデータを提示しろと言われるのであればで、決して理数系の教育が細かいことと言ったことではないことは御理解をいただいていると思うわけですよ。ですから、そういう意味で手を挙げたのでございます。
 いずれにいたしましても、学習意欲の低下の原因としては、一つは、非常に豊かな社会になったということがあるでしょうね。そして、その豊かな社会の中で、勉強への動機づけ、自分は何のために学ぶかということがわかりにくくなったということですよ。勉強しなければならない切迫した事情というものがなくなったということも事実であります。早く社会に出てうちにお金を入れなきゃいけない、そういう切迫した状況ではない家庭がふえたということもありますからね。
 その中で、私は、一つは好奇心がないということもその原因であろう、意欲をかき立てるものが、動機づけが少なくなったものの一つとして、私は、やはりそういう点で、社会環境の変化、これはかなり大きな部分を占めていると思うので申し上げました。そのことは、法律の第六条の第二項に、みずから学ぶということについては述べているわけですが。
 実生活や将来の職業などとの関連づけ、児童生徒が実感を持って理解できるようにするなどの指導の工夫ということが求められておりますが、こういったことについては、施策といたしましては、平成十八年度の予算案でも、スーパーサイエンススクールとか、スーパーサイエンスハイスクール事業だとか、理数大好きモデル地区事業など、科学技術・理数大好きプランというものを拡充させる形で取り組んでおりますし、また学習指導要領の今後の改訂もあるわけでございますが、そういった中においても取り組んでまいります。
 また、今日、学習指導要領の見直しの中で、すべての教育活動を通じて、言葉や体験を重視した学習や生活の基礎づくり、国語や理数教育の充実、全国的な学力調査の実施により、いわゆるPDCAサイクルを学校教育の質の向上に役立てる、今までは検証ということまでも行っておりませんので、プラン・ドゥー・チェック・アクションという一つのサイクルをしっかり確立することが教育においても必要だと考えておるわけでございます。
 こういった観点から、平成十八年度末までに学習指導要領の改訂を行いたいと考えておりまして、今委員がそれぞれ御指摘をいただきました、また私が答弁を申し上げた課題についての取り組みをこの中で専門の先生方に御協議をいただき、また学習指導要領の中教審の中の部会でしっかり御議論をいただく中で改訂を進めてまいりたいと考えております。

○川内委員 今さまざまに文部科学大臣の方から御答弁をいただいたわけでございますが、それらの施策というのは教育基本法を変えなければ実行できないものなのでしょうか。
 いいですか。今文部科学大臣がおっしゃられたそれらの施策というのは、今現に行われている施策もあるし、これから行おうとしている施策もあろうかと思います。しかし、それらは教育基本法を変えなければできないものではない、今現にやろうとしているわけですからね。
 私が聞いているのは、教育基本法を変えることによって、そして初めて、今、義務教育に関して、ほんの、理数系のこと、読解力のこと、さまざまに膨大に課題がある中で理数系のことと読解力のことを今私はテーマにしているわけでございますが、これらは学ぶ意欲が減少しているからである、では、それを上昇させ、子供たちが、学ぶことを楽しいと、そして知識を得ることが楽しいんだと思えるようにしていくことの施策というのが、教育基本法を変えなければできないものなのかということを聞いているわけですよ。

○小坂国務大臣 これはたびたび答弁もさせていただいていますけれども、戦後半世紀がたって、最初の御質問に答えた部分がその部分に当たりますから省略いたしますけれども、そのようなことから今回改定をすることにしたわけですが、この改定をしたことによって直ちに、自動的に今の課題が解決していくわけではないわけでございます。
 そして、二〇〇三年のPISAの調査を参考に、先ほど答弁させていただきましたように、この問題は、この法案を提出させていただくときに生じて認識が出たわけじゃなくて、以前から常に、教育の取り組みの中で、学習指導要領の随時の改訂の中で取り組んできた施策も含めて今日的な課題というものがあるわけですから、その対処方針もその中にあるわけでございますし、昨年度の事業も今年度の事業も、また来年度の事業の中に組み込まれたことも、これらは教育基本法の改正の成立を前提としてやったわけではなくて、今日的な課題に一つ一つ常に対応する形の中でこの事業を推進しているわけですが、そういったものを教育現場においてより明確に取り組んでいただくこと。
 そして、今日的な課題を解決するための教育の抜本的な理念として、これまでの教育基本法で培われたすぐれた理念というものは継承しつつも、新たな、生涯学習だとか幼児教育だとか私立学校だとか、先ほど挙げていただきました、これが新しい分野だとおっしゃった、それらの項目をここに書き加えたわけでございます。
 したがって、これが自動的に解決すると思ってやっているわけではございませんで、この教育基本法の改正をしていただきましたら、第十七条にありますような教育振興基本計画を初めとした計画をしっかり立てて、それとともに学習指導要領のさらなる見直しも行い、そしてその上で、学校教育法や地教法やその他の関連法律を整備する。また、その改定の必要があるかどうかをしっかり見守ってチェックをしてまいりたい。理科教育振興法というのもありますし、もうあげつらう必要はないと思いますが、たくさんの法律がありますので、これらを順次改定の必要があるかどうかを検証して進めていく、こういう段階に入っていくと思います。

○川内委員 教育基本法を改定することによって直ちに問題が解決するわけではないという御答弁をされました。
 では、子供たちの理数系の学力低下あるいは読解力の低下という義務教育の中の一つの問題は、この教育基本法を改定することによって直ちに解決はしない、そして、具体策についても、今直ちにこの法律をこう改正する、あるいは、こういうふうな名称の法律を新たにつくるんだという具体策についても、ないということでよろしいですか。

○小坂国務大臣 一生懸命答弁しているつもりなんですけれども。
 先ほど申し上げたように、教育基本法を改正したから直ちにこれらの問題が解決するわけじゃないけれども、二〇〇三年のPISAを引き合いに出させていただいたように、これまでもいろいろなアンケートや他の機関がやった調査や、そういったものも参考にしつつ、その現状認識というものを、その都度対処する方策を考えて事業をやってきているわけですから、スーパーサイエンスハイスクールのような事業も、教育基本法を改正してからやろうというんじゃなくて、もう既にそういうものに問題認識を持って取り組んでいるわけですよね。
 ですから、直ちに改正できるわけではないと言ったのは、教育基本法ができたって直らないと言っているんじゃなくて、今も直そうと努力しているわけですから、それは教育基本法が改正されなくてもこれらの事項にはしっかり対応していくことがやはり今の文部科学省の責任でもあり、それは私の責任でもあると思うわけでございます。
 そういった意味で、教育改革ということで今取り組んでいるこの改革は、これらの今日的課題と申し上げたそれらに対処するための方策としての改革でありますから、その一つの道筋といいますか、過程の中で教育基本法の改正をしっかりとさせていただいて、より理念をしっかりさせて、これからの教育に、現場においてもこの基本法の理念にのっとった教育をさらに推進していただきたい、そのためにはやはり教育基本法の改正が今必要である、こういう認識に立つわけでございます。

○川内委員 いや、全くわからないですね。対処する方策を考えてやってきてはいると。であれば教育基本法など改定する必要はないわけで、教育基本法を改定しなければできないことを答えてくれというふうに私は申し上げております。
 そして、これだけ偉い先生方がこの委員会室に集まられて、具体策を解決できないような法律をがん首そろえて審議しているほど教育の現場は落ちついてはいないというか、先ほど問題として掲げられた、いじめや学級崩壊や不登校、さらには子供たちの学力の問題、それらのさまざまな問題を抱えて、学校現場あるいは義務教育の現場は苦しんでいるわけですよ。
 それらの問題に対して、教育基本法を変えることによって具体的にこうアプローチするのであるということを示さずして、ただ、変えさせてくれ、これを変えればよくなるんだと言うのは、スポーツのコーチがプレーヤーに対して、まあとにかく頑張れ、ここは行けと。どう行くんだ、何をすればいいんだとプレーヤーは思うわけですから、その具体策が大事なんじゃないですか。その具体策をきちっと裏づけとして持っていただきたい。
 それがもしないのであれば、今は具体策としてはないが、学力を向上させる、その学力の内容とは、理数系の力が低下をしている、読解力が低下をしているということが明らかだから、それらの力を伸ばすための具体策を、教育基本法を国会でお認めいただいたならばすぐさま中教審でその具体策について議論をさせるというふうに御答弁いただかないと、はっきりわかったということにはならぬですよ。
 何となく、やりますやりますと言われて、いいですか、親にとっては、うちの子供をどうしてくれるんだ、うちの子供どうなるのというのが教育の一番の興味ですからね。うちの子供がどうなるのかということについて文部科学大臣として明確に、今は何法をこうするとかは言えないが、しかし、しっかり議論をさせるということは、理数系の力を上げるんだ、読解力を上げるんだ、そのために具体策を議論させるということを言っていただかないと、問題の解決に向かっていないということになりますよ。

 

 

164国会 衆特別委 第12回(68日)

○小杉委員 …そこで、現在、小中高における理数科教育について、小坂文科大臣に伺いたいと思います。
 たびたびここの国会でも取り上げられますが、小中高の国際科学オリンピック、これでは、もはや日本は、中国、韓国よりも低かったと聞いておりますし、最近、日本の子供たちは、理科、数学に興味や楽しさを覚えていないのではないかと気になっているところでございます。
 そこで、科学技術創造立国に向けて、小中高等学校の理科教育をどのように強化する方針でしょうか。そして、総合科学技術会議、ここでは理数教育の抜本的強化が話し合われたと聞いております。理数教育、特にその中でも教科書の充実というようなことにどう取り組んでおられるのか、お答えください。

○小坂国務大臣 今松田大臣から答弁させていただきましたように、世界に通用する科学技術系の人材を育成すること、これが二十一世紀の日本の発展に非常に大きな使命を担っている、こういうことでございますし、知価社会と言われる二十一世紀において、しっかりと科学技術を根づかせていくことが必要だと考えております。そういった意味で、今小杉委員が御指摘なさいましたように、小中高等学校における理数教育の充実を図ることが喫緊の課題だと思っております。
 現在のことからまず申し上げたいと思いますけれども、理数教育の教育内容につきましては、学習指導要領におきまして、児童生徒の知的好奇心や探求心を喚起し、思考力を育成する観点から、観察、実験などの体験的、問題解決的な学習を重視するとともに、理解が進んだ児童生徒については、選択教科や発展的な学習によって、より先へ、発展的に学ぶことができるようにしたところであります。
 文部科学省といたしましては、理数教育の振興のための施策である科学技術・理科大好きプランを実施しておりまして、理数教育については現在、中央教育審議会において、教育内容を充実することが必要との認識のもとに、学習指導要領の見直しについて具体的に検討を進めていただいております。あわせて、教科書についても検討をしていくことにいたしております。

 私は、基本的に理数というのは、理科が本当に大好き、おもしろいと思ってもらわないとリテラシーというのは向上しないんですね。ですから、まず小学校のときから、理科、科学というのはおもしろいものなんだなと、体験的にそれを学んでもらうこと、それが一番大切なことだと私は思っております。それが好奇心を発揚させ、そしてその好奇心でさらに先を学んでみたい、知りたい、そういう気持ちになって学びが進んでいく、こう考えております。
 そういう意味で、それを満足させるために、今の教科書だけではなくて、外国の教科書のように発展的な部分がもっとたくさん書いてあって、自分が進みたいときにはそこへ進めるように。日本の教科書は、自分で持ち帰って、独習できるようになっています。外国の教科書の場合には、教室に置いてあるような、非常に分厚い、百科事典のような厚さのものもあるわけですね。
 私は、心の教材のように副読的な教材というものを科学技術においてももっと充実すべきだと思っております。各教室に一冊はそれが置いてあって、そして、興味のある子はそれが見られるように、そしてそれが本当に必要ならば貸し出しができるような、そういう体制も整えて、いろいろなものが勉強できるようにすることがやはり理数教育には必要だと思っております。