テーマ:地方教育行政法改正案の批判的検討

報告者:中嶋 哲彦(名古屋大学)

200748

 

 

不十分で、で、政策意図の不適切性を疑わ必要があるときは」といだめてこうひょうするとともに対するの対応ぶりとしてう教行法」をの必要があるときは」といだめてこうひょうするとともに 地方教育行政法改正の特徴または効果

地方教育行政法改正案の個別の改正内容を見る前に、改正案の全体としての特徴または効果を確認しておきたい。

まず、地方団体や政府内部から教育委員会廃止論が提起されているなかで、文科省が地方教育行政を統制するルートとしての教育委員会制度を維持するために、廃止論に譲歩するポーズを取りつつ、実質的には現行教育委員会制度を温存する方向での改正を行おうとしている。

そして、文科省による統制の手法の一つとして、「目標管理」と「事後評価」を導入使用としている(もう一つの手法として、後述するように権力的統制がある。)。その際、教育委員会に対して、自己決定と自己責任を求め、点検・評価を通じて地方公共団体・教育委員会に括弧つきの自律性を求めている。しかし、これは文科省が枠付けかつ容認する範囲での自己決定と自己責任を強要するという矛盾を当初から孕んでいる。

さらに、住民・保護者の教育要求の市場主義に閉じ込めて、学校自治・地方自治への参加を通じて地域の公教育を主体的に担う契機を奪おうとしている。

これらはいずれも、我々自身が教育委員会制度をどのようにしていくべきか・どういう展望を持つかということに関わってくる大きな問題である。424日に行われる全国学力テストに対して、犬山市以外の教育委員会は文科省の法令違反の可能性や政策意図の不適切性を疑おうとしない。このような対応ぶりを見るにつけ、現行教育委員会制度の存在意義を問わざるをえない。地方教育行政法改正案を批判するだけでは不十分で、我々は現行教育委員会制度を変革する展望をもたなければならないだろう。

 

2 文科省の地方教育行政管理システムとしての教育委員会制度の温存

地教行法改正案の第3条には、教育委員会は原則として5人の委員をもって組織するとしつつ、都道府県及び市については条例により教育委員6名以上とすることができるとの文言が見られる。これにより、構成ばかりでなく、その機能においても、多様な市区町村教育委員会が作られる制度的可能性が生まれるだろう。

改正案第24条の2には、教育委員会が所管するスポーツ・文化に関する事務を首長に移管できるとの規定が見られる。文言上、これは教育委員会の所掌事務の首長部局化促進を意味しているように見える。しかし、同時に、首長部局に移管できる所掌事務をこの二つに限定することにより、教育委員会の首長部局化(教育委員会制度廃止)に歯止めをかけようとするものであるとも言えよう。

さらに、法案第55条の2には、教育行政の広域化(市町村間による共同設置や組合を作った上での教委設置など)を促進する定めが見られる。広域化によって教育委員会制度自体を温存しつつ、地方教育行政を市町村・地域住民からこれまで以上に切り離すことになるだろう。

これらは、教育委員会制度を、教育の地方自治をささせる制度から、総務省・首長部局の影響力を排除しつつ文科省を頂点とする中央集権的教育行政制度を構築することに貢献するだろう。

 

3 教育長への教育委員会権限の委任

改正案第26条では、教育委員会の所管事務のうち、教育長に委任できないもの、すなわち合議制教育委員会が自ら行わなければならない事項を制限的に列挙している。このことは、表面上、合議制教育委員会の役割を明確にしたものと見ることができるが、実質的にはそれ以外の教育委員会の職務権限は教育長に委任することを承認するものである。これは教育委員会の職務権限を教育長に委任し、それらを教育長の専決事項として処理させる傾向をこれまで以上に促進することになるのではないか。

合議制独立行政委員会としての教育委員会制度には、責任の所在が不明である、意思決定の迅速性に欠けるなど批判がある。これらの批判を利用して、教育長への権限集中が正当化しようとしたものと考えられる。

これは、合議制教育委員会の役割を「教育する事務管理及執行基本的方針」(改正案第26条第22号)と点検・評価(後述)に限定し、日々の地方教育行政を教育長・事務局に一任させようとするものである。これにより、今回の法改正には教育委員に保護者を必ず含めることとする趣旨も含まれているが、教育委員会の役割がこのように限定されてしまえば、保護者を教育委員に加えることがもちうる積極的意味もほとんど意味を失う可能性がある。

地域住民や保護者の教育意思から切り離された教育長に一任された地方教育行政は、これまで以上に中央依存を強め、教育専門性や住民意思から切断され硬直化した地方教育行政になるだろう。

 

4 地方教育行政への国家関与

改正案第49条(是正要求の方式)と第50条(背税の指示)は、中央統制の強化を意味するもの、すなわち権力的統制の復活として注目されている。すなわちいるいるいだめてこうひょうするとともにすなわちいるいるいだめてこうひょうするとともに

地方公共団体の事務は、国から地方の自治体へ委任される法定受託事務(第一号法定受託事務)と自治事務に区分される。そのうち、教育事務は基本的に自治事務である。地方自治法に定める国の地方公共団体に対する関与の原則として、法定受託事務について地方公共団体の法令違反等が合った場合、国は当該地方公共団体にその是正を指示できる(地方公共団体は指示に従う義務を負う)。しかし、自治事務については、国は地方公共団体に対して是正を要求できるものの(地方公共団体は是正要求に従う義務はない)、原則として是正を指示することはできない。ただ、国民の生命・財産を守るために緊急に措置する必要があり他に方法がない場合にかぎり、国は自治事務についても是正を指示することが認められている。

改正法案第49条については、文部科学省が市区町村教育委員会に対して直接是正の要求ができること、しかも要求の方式として「講ずべき措置の内容を示して行う」ことを定めている点に注目すべきである。これは、文科省にとって「指示」(改正案第50条)よりもとって使い勝手がよく、かつ踏み込んだ介入を可能とするものだろう。地方教育行政が強く中央依存している現状から判断して、「是正の要求」でも実質的には「是正の指示」と同じ効果を発揮すると思われる。

改正案第50条では、是正の指示は「児童、生徒等の生命又は身体の保護のため、緊急の必要があるときは」に行いうるものとの限定がかかっている。これは、上記の関与のルールに従ってものである。しかし、是正の指示を行使できる場面が限定されているとは言うもものの、文科省が自治事務について是正の指示を行いうることが明確に規定されることがもつメッセージ効果は大きく、教育委員会が文科省から自律して地方教育行政を遂行する難しくするだろう。

 

5 地方教育行政へのPDCAサイクルの導入

改正案第27条には、教育委員会は自己点検・評価を行って報告書を作成し、報告書を議会に提出するとともに、公表しなければならないとされている。これは教育委員会制度にPDCAサイクルを導入であり、地方教育行政に対する権力的な統制(上記4)と相まって、教育の地方自治に対する国家統制のルートを準備するものである。その際、点検・評価の基準と方法に全国学力テストが活用される可能性は大きいだろう。

なお、法案立案段階では教育委員会に対して国の調査への参加義務を規定することが検討されていたが、法案からは消えている。しかし、学校教育法において学校に対して点検・評価を義務づける規定が強化されている。これを根拠に、学校教育施行規則において、国公私立の別なく学校に対して直接、国の調査(たとえば、全国学力テスト)に参加することが義務づけられる可能性がある。これは教育委員会への調査参加義務づけよりも有効に働くだろう。

 

6 私立学校に対する管理強化

改正案第27条の2では、知事の私立学校に関する事務の管理・執行に関する教育委員会の助言・援助を定めている。しかし、そもそもこのような権限が知事に与えられているか疑問であり、私立学校に対する管理強化を意味すると考えるべきだろう。