「【アピール】公述人・参考人として教育基本法案の徹底審議を求めます」への市民緊急賛同署名の報告とお礼

 

20061222

 

西原博史(早稲田大学教授)

廣田照幸(日本大学教授)

藤田英典(国際基督教大学教授)

 

 

 私たち3名は、参考人・公述人18人とともに、連名で、法案の国会における徹底審議を求めるアピールを126日に公表し、12日に参議院議員会館内で記者会見を行い、マスコミに対して、法案審議において浮上している重要な論点を国民に対して報道すべきことを訴えました。

 また、アピールに対する緊急賛同電子署名を9日に呼びかけ、13日の朝までに、18084名の方々から署名が寄せられました。署名簿を13日に参議院教育基本法に関する特別委員会委員に提出しました。

 

 私たちは、法案の問題点を参考人・公述人として国会において指摘し、問題点の丁寧な議論が必要とされていることを指摘しました。各種世論調査を見ても、世論の多数が、同様に法案の徹底審議を求めていることは明白でした。さらに、私たち研究者を中心とするアピールに18000もの署名が市民から短期間に寄せられたことは、世論が徹底審議へと大きく移行しつつあることを示していました。

 にもかかわらず、与党は、1214日に、参議院教育基本法に関する特別委員会において、審議を打ち切り、政府提出による教育基本法の全部を改正する法案を強行採決し、1215日夕刻には、参議院本会議において、与党多数により法案を可決しました。与党が、準憲法的性格を有する教育基本法の改正にあたり、国民的合意の実現のための努力を放棄し、国民の大多数が徹底審議を求めているときに、国会内議席数のみに頼んで、法案を採決したことに、強い憤りを感じざるをえません。

 

 今後、2006年教基法を具体化するために、教育再生会議からは学校、自治体の教育をめぐる競争を組織するプランが提示され、政府からは、学校教育法などの法改正案が提出され、さらに、文科省によって学習指導要領の改訂が進むことになります。具体化にあたり、このアピールに賛同した21名もの参考人・公述人が指摘したさまざまな問題点が浮上し、あるいは顕在化することは間違いありません。

 新しいプラン、法案、そして改定される学習指導要領のすべてを精密に検証し、論点を明らかにし、改正法案審議でスキップされた国民的議論と合意を実現していくことが今後の課題となります。

 

 私たちは、この課題が国民全体によって取り組まれることになるものと予想しています。18千人余ものアピール賛同者が、この課題への取組みにあたって、地域や職場で、リーダーシップを発揮するものと確信しているからです。

 私たちは、来年初頭からなされるはずの国民的議論の中で、06年教基法の実行は不可能になるものと考えています。それが実行しようとしている教育が、子どもの人間としての全面的発達の実現という教育本来の使命とは大きく矛盾することが明らかになるからです。

 私たちは、近い将来に、「個人の尊重」原理(憲法13条)に基づいて、教育における国家と個人との関係をもう一度整理し直すべきであるとの声が国民の多数を占め、47年教基法を発展させた新しい教基法を国民が手にする時期が来ると確信しています。

 

 私たちは、この展望の実現に向けて、アピールに賛同された皆様と一緒に、歩みたいと切望しております。このささやかな希望を表明し、賛同署名に協力していただいたことに心からの感謝を申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。