声明

伊吹文科大臣の罷免と、安倍総理大臣の不信任を求めます!「特定のイズム」(=自民党新憲法草案)によって立憲主義にもとづく教育の根本を変質させてはなりません!

採決阻止を掲げて国会に押しかけよう!

12日午後4時より、参議院議員会館前にて集会を開催します!

 

20061211

 教育基本法「改正」情報センター(代表:佐貫 浩)

URLhttp://www.stop-ner.jp/

 

1 驚くべき事実が発覚―政府法案は自民党・新憲法草案を踏み台にしていた

 台風を理由とするASEAN会議の突然の延期により、安倍首相が、日程を早めて11日に帰国することになりました。このため、教育基本法改正法案が13日にも採決される危険性が生まれてきました。事実、与党の国対関係者は「『神風だ』と口をそろえて歓迎している。」と報道されているのです(朝日新聞129日付)。

 しかし、教基法改正法案の審議は、170時間もかけられたにもかかわらず、立法事実(教育問題の何をどのように解決するのか)も、立法者意思(各条項とその文言が何を意味しているのか)も明らかにされていません。

 そればかりか、125日での参議院教基法に関する特別委の審議では、何と、与党協議会のみならず、文科省も一緒になって、自民党の手による「新憲法草案」に基づいて法案を作成した、という驚くべき事実が明らかとなりました。神本議員の追及に対して、伊吹文科大臣は「自民党案との整合性はチェック」した(125日、神本議員に対する答弁)と明言したのです(注*)

*伊吹文科大臣:この提案は内閣が提出しておりますが、原案は文部科学省が作成しております。そして、その文部科学省が作成する原案の基本になっているのは、公明党と自民党の与党協議で出てきた案です。その各々の場面で、文部科学省も、そして自民党、公明党の与党協議会も自民党案との整合性はチェックいたしております。

 さすがにこれはまずいと考えたのか、塩崎官房長官は、「民主党が憲法草案をつくっていれば参考までに見ていたかも分からないと、そんな感じだろうと思います」(同)(注*)とトーンを下げた答弁をしています(詳しくは、センター論説すべての報道関係者に訴えます。 165国会における教育基本法案審議の「劇的変化」をリアルにとらえ、〈憲法に準ずる法律〉の大改定が進行している重大事態に、報道のメスを!」(12/9))

*塩崎官房長官:今、伊吹大臣が答弁されたとおりだと思います。仮に、民主党が憲法草案をつくっていれば参考までに見ていたかも分からないと、そんな感じだろうと思います。

 

 

2 法案作成過程は「特定のイズム」(=自民党新憲法草案)に支配されていた可能性が大

 しかし、法案作成の過程で、一政党の憲法試案が参照基準とされ、それに基づいて法案が、文科省も一緒になって作成されたのであれば、これは重大問題です。

1. 政府には憲法擁護尊重義務があり(憲法99条)、立法をする場合、国の根本法である日本国憲法以外のものを参照基準とし、あるいはそれとの整合性を検討することは許されないはずです。

2. 一政党の憲法試案に基づく教育基本法案の作成は、それ自体で、政府のみならず、政党などによる教育の支配を「不当な支配」として禁止した現行教育基本法10条に違反するはずです。

 

 

3 人権の保障範囲を法律に丸投げした自民党新憲法草案に合致した政府法案16

 そして、自民党新憲法草案を参照して法案を作成したとすれば、いくつもの疑問が氷解します。

1. 政府はこれまで与党協議会の議事録の公表をかたくなに拒んできました。与党協議会の議事録を公表すれば、自民党新憲法草案を先取りしたかたちで、教基法改正法案を作成したことが判明し、大問題になってしまうからです。

2. 政府案は、1976年の最高裁学テ大法廷判決において示された現行法10条の解釈、すなわち、法律に基づく行政の行為であっても、例外的な場合を除き、10条の趣旨に基づいて実行されなければならず、そうしなければ10条の禁止する「不当な支配」に該当する、という判断をことごとく無視し、さらには最高裁判決の論理を否定する答弁をしています(注*、注**)。そして、最高裁学テ判決の都合の良い部分だけをつまみ食いして、法律に基づきさえすれば行政は教育にいかなる干渉もなしうるという改正法案16条は、最高裁の判断と整合していると強弁してきました。

 このような強弁も、実は、自民党憲法草案において、大日本帝国憲法における「法律の留保」と同じ考え方、すなわち、「憲法に規定された権利や自由の具体的な保障内容であるとか、あるいはその保障の範囲、これは憲法ではなく法律で定める…つまり、すべてはその法律任せ、法律次第ということ…」(121日、成嶋隆参考人発言)という考え方が取られているからこそ、なし得たと考えられます(注***)。

 つまり、(i)現行憲法の解釈として示された最高裁学テ判決における最高裁の有権的解釈も、自民党新憲法草案のもとにおいては有効ではなくなるので、無視できるようになる。だからまじめに考慮しなくても良い。(ii)憲法改正前にあっては、そのことを明言するのはまずいので、そのことは隠しておいて、政府法案と最高裁の有権的解釈とが矛盾していないと、兎にも角にも、強弁しておけば良い、と腹をくくったのでしょう。

125日の特別委員会 旭川最高裁判決を引用した井上哲士委員に対して、伊吹文科相は「先生が、せっかくですがこれ二つにお分けになったことがかえって問題を非常に複雑というか、分かりにくくしていると私は思いますよ」と最高裁判決を否定する答弁をしている。

**76年最高裁学テ判決「憲法に適合する有効な他の法律の命ずるところをそのまま執行する教育行政機関の行為がここにいう「不当な支配」となりえないことは明らかであるが、上に述べたように、他の教育関係法律は教基法の規定及び同法の趣旨、目的に反しないように解釈されなければならないのであるから、教育行政機関がこれらの法律を運用する場合においても、当該法律規定が特定的に命じていることを執行する場合を除き、教基法一〇条一項にいう「不当な支配」とならないように配慮しなければならない拘束を受けているものと解されるのであり、その意味において、教基法一〇条一項は、いわゆる法令に基づく教育行政機関の行為にも適用があるものといわなければならない。」

***自民党新憲法草案と現行憲法の比較

12条(国民の責務) 改正
 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、保持しなければならない。国民は、これを濫用してはならないのであって、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚しつつ、常に公益及び公の秩序に反しないように自由を享受し、権利を行使する責務を負う。
(現:12条)
 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

13(個人の尊重) 改正
 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
(現:13条)
 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

 

 

4 立憲主義の道を踏み外した首相・文科相は罷免しかない

 政府は、自らの法案を、現行憲法および現行教基法に反するプロセスを経て作成してきました。これは、伊吹文科大臣が国会答弁においてさんざんくりかえしてきた「特定のイズム」による教育支配の途を開くもの、すなわち、国民の自由な合意によって作られた最高法規である日本国憲法を蹂躙するものです。そして、伊吹文科大臣の一連の答弁は日本国憲法を蹂躙するものであると同時に最高裁判決をも蹂躙するものであり、閣僚として許されることではありません。しかも、この事実を隠蔽しながら国会審議にあたっていたことは、国権の最高機関に対する侮辱に他なりません。

 私たちは、政府によるこれら無法な行為に対して、最大限の怒りを表明します。

 私たちは、伊吹文科大臣の罷免、および、内閣総理大臣の不信任を、断固、求めます。

 皆さんに呼びかけます。明日11日以降、文科大臣罷免、内閣総理大臣の不信任を求めて、国会に押しかけましょう!

 

 

5 12日午後4時より国会参議員会館前にて集会をします!

 教育基本法「改正」情報センターは、11日に国会要請行動を行い、12日午後4時より、イエローののぼりを立てて、参議院議員会館前においてこの呼びかけに呼応する方々と一緒に、国会前の小集会を開催します。是非ともご参集ください。