学生の感想(2006年12月11日)
12月11日、大学で挙げたアピールと賛同者名(503名)を参議院教育基本法に関する特別委員会委員に届けた2名の学生の方から、当日の模様やそこで考えたことなどについての手記をお寄せいただきました。
参議院教育基本法に関する特別委員会の議員に、「教育基本法の全部を改正する法案の165国会における採決に反対し、法案の徹底審議と、国民的議論の実現を求める新潟大学有志のアピール」という形で計503名の署名を届けてきました。
特別委員会があったため、議員の方々には直接会うことはできなかったのですが、大学生の声を聞いてもらうために、私たちの現状として秘書の方々に以下の点を伝えてきました。
@ 現状の基本法の何が悪く、改正により教育の現場はどうなるのかまだまだ分からないので説明してほしいこと。
A 私たちはこの問題に関して、興味を持ち始めた段階であり、自分の未来に直接かかわる問題として、これから真剣に議論したいので、採決を急がないでほしいこと。
私は、特別委員会の議員が、この意見をひとつの世論として審議に反映させてくれると信じて、東京から帰ってきました。
今回、私は初めて議員の方と面会する目的で、参議院会館を訪れるという経験をしました。それに関して個人的な感想をまとめたいと思います。
私はどうしても、上に挙げたような私たちの声に耳を傾けてほしいという気持ちで、各議員の部屋を訪れました。対応はそれぞれでした。たいていは、にこにこして、話を聞きながら「お預かりします」と受け取ってくれました。「FAXは迷惑だが、持参してくれたものは受け取りやすい」と快く受け取ってくれる方もいました。しかし、私が残念だった対応のなかに、「ああ、反対派ね。今忙しいから手短に。」というものがありました。残念なのは「忙しい」という言葉で片付けられたことではありません。秘書の方が忙しいのは私も承知の上なので、話を聞いてもらえるだけでも十分だと感じています。私が残念だったのは、「反対派」とまとめられ、私たちの話を一義的なものとしてとらえられたことです。私たちは「自分の未来にかかわる大切な法律を、もっと自分たちに考えさせてほしい。」ということを伝えにきました。改正反対・阻止のみを真っ向勝負で訴えにきたのではありません。
このことに関して、真剣に話を聞いてくれた秘書の方がいました。自民党のある方の秘書の方なのですが、長い間話を聞いてくれ、自分の意見も述べてくれました。基本法の改正案の成立に関しては賛成の方だったので、私たちとは違う意見だったのですが、上記にある私たちの主張の内容は正しいと、言っていただけました。今期の国会における改正案の成立に関しては、政局も絡んでいる、その一方で、「みんなで考えたい」という意思のもと、FAXでも、抗議行動でもなく、直接に訪れてきたことは新鮮であるとのことでした。直接に署名を持参したことをかってくれ、話をしっかり聞いてくださる秘書の方は、ほかにも何名かおられました。
今回、このような活動をして率直に感じたのは、さまざまな人の考え方に触れたうえで、問題に対するアプローチの仕方を考えることの大切さです。私は165国会における改正案の成立には反対です。その一方で、議員の方の中には賛成の方が多くいます。その理由は、ある秘書の方が言われたように、もしかしたら政局にかかわる理由も含んでいるのかもしれません。しかし私は、そういう理由もあることをいったん認めた上で「自分はみんなと一緒にもう一度ちゃんと考えたい」という考えを(503人の新大構成員有志のみんなの考えを)議員の方々にどうしても聞いてほしかったのです。
FAXや抗議行動も、自分の意思を伝えるために大切なことだと思います。一方で、直接にひとりひとりの議員の方々を訪れるという行動にも意義があるのだということを実感しました。前者では漠然と「国」に対して主張していたことが、人に対して直接に自分の思いを聞いていただくことができました。そして、中には意見を交流してくださる方もいました。それは、「賛成派」対「反対派」という一義的な対立では解決できない(してはならない)問題の解決方法を模索していく、合意形成の場を求める姿勢そのものだと感じました。
私は引き続き、165国会における改正案の採決に反対します。そのなかで一番主張したいのは、「改正反対!!」ということでは決してなく、私たちの間でも、広く考えるための情報と時間がほしいことです。教育基本法は本当に大切な法律だと考えています。だからこそもっと私たちの間でも考えたいのです。今回の参議院議員会館への訪問が、私たちの思いや考えが、ひとつの世論として今後の審議に反映されることを心の底から願っています。
12月11日新潟大学構成員有志のアピール署名を届けた感想
<きっかけ>
朝6時半の電車にのって、新幹線に乗り換え、二度目の東京に向かいました。ヒューマンチェーンから一週間もたっていません。目的は、新潟大学で集めたアピール署名を参議院特別委員会の議員さん全員に届けるためです。まさか、自分が国会までいき、大学の研究室のようにならんだ議員さんの事務所を一つひとつ回ってお願いして歩くなんて考えてもみませんでした。8日といわれていた審議が延びて、次は月曜に持っていく予定で、たまたま講義がなかったということと、署名を集めた私たちが渡しに行ったほうが伝わるかもしれないという思いと、実際に参議院はどうなっているのかという興味からでした。アピールに賛同してくれた503人の思いを無駄にしたくないという思いで、とても不安でしたが行くことにしました。
<秘書の方の対応>
10時半、月曜の朝ということで議員さんはおらず、東京大学の先生と、新潟大学の先生とまわり始めました。最初は野党の議員さんです。なので、快く受け取ってくれ、緊張はしましたが昨日の夜急遽作った名刺とともになんとか渡しました。このアピールの趣旨を説明し、本国会での審議を待ってくださいと話しました。一つ一つの部屋の秘書の方に挨拶するのはまるでセールスマンになったかのような気分でした。午後からは、先生方と別れ、与党の議員さんをまわりました。テレビでは今自分たちが伺っている議員さんたちが特別委員会で話し合っています。与党の方はいやな顔をされるかと思いきや、私たちのつたない話を最後まで丁寧に聞いてくれ、「おあずかりします」という対応でした。与党の秘書の皆さんは、いろんな人が毎日尋ねてくるのにもかかわらず、比較的丁寧に対応してくれたことがとてもうれしかったです。たいてい、秘書の方には扉を少し開けてドアの外からこちらのお話を聞いてもらいます。でも自民党の議員さんの秘書の中には、事務所の中に少し入れてくれ、毎日届くFAXの山を見せてくれる方、私たちの話をもっと聞きたいということで少し秘書の方と討論になったところが2つの議員さんの部屋でありました。与党20名の中で、何の地位もない学生の話をきいてくれたこと、秘書の方が思っていることを見て、聞けたことは大きな感動でした。
<考えたこと>
「改正」反対とか、倒そうといったことではない何か他の道もあるのかもしれないということ。
<アピールする際のスタンス>
私たちの今日のスタンスは、「改正」反対という立場ではなく、次のようでした。「学生の現状は、まだまだわからないことが多すぎて、やっとこのことを考え始めた段階である。現行法のどこが問題でこのように「改正」すると教育の現場ではこのようになるということがわかない。もっと、新聞やテレビでも明確に報じてもらい、学生も(国民も)話し合うべき内容であること。500人以上が3日で集まったことから、みな興味を持ち始めていること。これらから、本国会での採択は急ぎすぎではないか。情報を的確に伝えてほしい・国会でもより徹底した審議をお願いしたい。」このようなスタンスで私たちが話したから、秘書の方の仕事の苦労が聞けたと思います。その苦労を聞くことで、相手の立場に立って、まず聞いてもらうにはどうしたらいいかを考えなければならないと思いました。
<行動の自由・内心の自由>
国会を守る警察の若いお兄さんに罵声を浴びせる「改正」反対者・国は悪だと決め付けざるを得ない歴史をもったお年寄りの方・一人で孤独に国会前に座り込む人・「改悪」をとめようとビラをまく人…。国会前は実に多種多様な立場でいろいろな思想や思いを持った人であふれています。それらを客観的に目の当たりにすることで感じたことがあります。「改正」案の中に内心の自由を侵す危険性のある内容をふくんでいる与党と、「改悪」反対という一つの主張を押していく反対派の人々は、ある意味で似ていませんか。言論の自由があるので、自由に思いを表現することはすばらしいです。しかし、他の人にも考えを広めて世論を盛り上げたいというとき、なぜ私の考えをなぜわかってくれないの?というように一つの主張だけでつめよったら、結局押し付けなのではないでしょうか。内心の自由を謳うなら、それを自分の行動に省みなければならないと感じました。
<世論を伝える方法>
FAXはてきめんにダメージを与えている事実は痛いほどにわかりました。でも、そこから世論を伝える方法を考えたいです。秘書の方の話では、「このような署名といった形で直接きてもらうと、しっかり受け取ろうと思う。しかし、FAXでしかも殴り書きや同じ文章を大量に送るのは、どうなのか」ということをおっしゃっていました。想像してください、ただでさえ仕事がたくさんある時にFAXを一枚一枚確認するつらさ・紙がものすごいスピードでなくなる・世論は重要だとわかるが、こちらの立場も考えてほしいという秘書の方の立場を。相手も感情があるのでどのように伝わるかということは違うのだと思いました。しかし今、なんとしても「改正」をしてほしくないという差し迫った状況でのFAX行動は議院の皆さんにかなり影響をあたえていることはたしかだと思います。
<結局国民が選んでいる>
政治に国民が参加する道は開いていると感じました。誰でも紙さえ書けば、議員さんとの面談の権利が与えられています。今日みたいに、趣旨をはっきりとさせ、たくさんの仲間を集めて訴えかける道もあるのです。
そして、やはり与党を選んでいるのは国民です。国民一人ひとりの意識が変わり、政治に向き合うことが大切だと思います。私は今21歳になりますが、選挙にいったことがないし、政治なんて遠い遠い話であり、私なんかが一票いれたところで何も変わらないと考えていた普通の学生でした。はっきり言って教育のことでなかったら、こんな運動はしていなかったでしょう。偶然が重なって参加していったこの運動を通して、世論が動いてくれば、必ず政治に影響を与え、変えていく力があるのだと実感としてわかってきました。8日の採択を延ばしたのは国民の声だと思います。反対運動をしているみなさんも感じていると思います。だから、一国民が何か行動することには大きな意味があって、有権者としての責任と権利を大事にしようと思いました。
<学生の実際>
政治に関して、無関心だというほうが圧倒的に多いです。もちろん私もその一人です。この問題に関してだけ、現場の先生とのご縁がありいろいろな教基法のシンポジウム、国会を見る、自分で文章を読み比べる、友達と議論するといったことを通して、教基法の問題は改憲ともつながっており、許してはならないということがわかりました。そしてやっと私は一個人として、教育教基法を「改正」する必要はなく、むしろ現行法の理念をきちんと条件整備によって具現化していくことこそが求められてるのではないかという立場にたどりつきました。現行法を正しく理解し、目の前の子どもにあたっていけば、政治無関心大学生は減るのではないでしょうか。私は他の学生にも政治に関心や疑問を持ってほしいと考えます。なので、事実を伝え、「一緒に考えませんか?」と呼びかけ、一人でも多くの学生が自ら考え判断するように、また、自分と一緒に考えてくれるような仲間を増やしていきたいと思います。